もしもシャーレにヒモを養う適性の有る娘が応募してきたら   作:一ノ瀬 崇

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二十八話目

 あの後、一先ず補習授業部と先生はチハヤちゃんに合宿所まで送ってもらい、私は元不良生徒達を連れてシャーレへと戻って来ていた。

 朝日が眩しいねぇ。

 綺麗に片付いている執務室にみんなを連れて、温かいココアを振る舞って一息吐いてもらった。

 初めて入るシャーレの中に、興奮したり気後れしたりと微笑ましい。

 

 

「ひぇぇ⋯⋯なんか落ち着かない」

「ソファーめっちゃフカフカ!」

「椅子もなんか、沈む」

「良いのか私達がこんなとこ来て⋯⋯」

「良いの良いの♡ もうみんな友達だし、シャーレは常に開かれてるからね♡」

 

 

 申請書類の棚からシャーレへの入部届を見付け、ボールペンと一緒に取り出していく。

 来客用の机に置いて、みんなに見せる。

 

 

「んだぁ?」

「んだんだ♡」

「いや訛りじゃなくて何だって意味で」

「知ってる♡」

「なっ、コラァ!」

「やーん♡ ゆるして♡」

「早速イチャ付いてやがる⋯⋯で、何だよこの書類」

「取り敢えずみんなの所属をシャーレ預かりにする為の書類かな。これに記入してもらったら兼部って形でシャーレに入部した事になるから、色々な支援を受けたりシャーレの施設を利用出来たりするんだよ♡」

「なぁ、良いか?」

 

 

 私の言葉にヘルメットを被った子が手を挙げる。

 

 

「私は退学処分になってるんだけど、その辺大丈夫なのか?」

「もちろん♡ 復学支援って名目で預かるから、シャワーも居住区の部屋も、なんならカフェのドリンクバーも使い放題だよ♡」

「マジかよ⋯⋯」

「私達騙されてない? 大丈夫?」

「まぁ疑う気持ちも解る♡」

 

 

 そこからは一人一人の事情を聞きつつメリットデメリットを説明してお手々にぎにぎ誘惑してげふんげふん。

 最終的にはみんなこの辺を拠点とする自警団として活動してくれる事になった。

 代わりに乱暴な事はしない事、困っている人が居たなら助ける事、手を出す時は相手が攻撃してから、やるなら徹底的にボコしてヴァルキューレに引き渡す事。

 それらを約束してもらった。

 評判が上がったらご褒美に好きなお菓子やご飯を作ってあげると約束する。

 

 

「お菓子やご飯て」

「ガキのお手伝いじゃねぇんだからさ」

「じゃあ朝ご飯も兼ねてちょっと作って来るから待ってて♡」

 

 

 始まりましたご飯で籠絡タイム。

 徹夜明けの朝ご飯という事でさっぱりと潮汁にしてみた。

 佃煮昆布のおにぎり、冷たい烏龍茶も添える。

 あぁ~、出汁の効いた塩味が沁みる〜♡

 

 

「うまっ! え、うまっ!?」

「オイシイ⋯⋯オイシイ⋯⋯」

「やべぇ、その辺の料理屋より美味いぞ」

「胃袋が堕ちちゃう!」

 

 

 大好評でなにより♡

 みんなお腹が空いていたのかすごい勢いで食べておかわりを要求してくる。

 デザートに芋羊羹もあるから食べ過ぎたら入らなくなっちゃうよ?

 

 

「デザートまで!?」

「よし、私はフミとマブダチになるぜ!」

「じゃあ私は嫁に」

「やん、モテモテ♡ みんなで私と先生のハーレム広げていこ♡」

「えっ、先生とも?」

「それってつまり⋯⋯先生ともやれるって事か!?」

「ま、まぁ見た目は結構悪くないし、優しくてちょっと天然なところも可愛いし? 求められるのは悪い気はしないし?」

「前向きなご様子♡ ちなみに先生の副担任のサイズがこれくらいで⋯⋯♡」

「えっ、うそ!?」

「ムリムリムリムリ! 絶対裂けるって!?」

「うわ⋯⋯へその裏より上に届いちゃうじゃん⋯⋯」

「やっば⋯⋯え、あんな可愛い顔してるのに⋯⋯?」

「こんなん雄じゃん⋯⋯♡」

「小指でもキツイのにこんなの壊れるって⋯⋯♡」

 

 

 やいのやいのと賑やかに会話と食事を楽しみ、みんなを居住区のあるフロアへ案内する。

 今の所ほぼ使われてはいないので、三、四人ほどのグループで一室を使ってもらう。

 とは言っても部屋自体は多いし二段ベッドもあるのでルームシェアに近いかもしれない。

 一先ずみんなに今日はゆっくり休んでもらって、明日からはパトロールと御用聞きで頑張ってもらおう。

 モモトークも交換して見送り、私も仮眠室で休憩。

 休んだらまた合宿所に戻らないとね。

 あ、寝る前にモモトーク送っておこっと。

 アルさんへ。

 シャーレ自警団として元不良生徒達を確保したので、アウトローの先輩として治安維持と困りごとの解決、そしていざという時に先生を護る為の戦力としてビシバシ鍛えてあげてください、っと♡

 あとはーちゃんにぽっちチラ見えの自撮り送信♡

 はーちゃん愛してるよー♡

 

 

 お昼過ぎ、チハヤちゃんに送ってもらって合宿所に帰ってきた。

 あの後は特に怒られるでもなく、普通に夜勤明けでお休みをもらえたらしい。

 なんかやーな感じー。

 正義実現委員会の動きすら些末な事として捨て置けるだけの余裕が有るとでも言いたそうな、傲慢に似た対応の気配を感じる。

 とは言え無理を聞いてもらったので、チハヤちゃんへ累が及ばないに越した事は無い。

 チハヤちゃんには今回の協力のお礼として、バケツプリンを三種類お土産で渡して置いたけど大丈夫かな?

 普通のプリン、濃厚なカスタードプリン、トーストに塗るのもオススメなこってり牛乳プリンだ。

 是非みんなで楽しんで頂きたい。

 

 

「ただいまー♡」

 

 

 からからと教室の扉を開けると、みんなの顔がこっちを向く。

 おや?

 みんなの顔は思っていたよりも暗いものではなく、至って普通の精神状態のものに見える。

 少なくとも、まだ意欲は充分に残っているみたい。

 

 

 “お疲れ様、フミ。色々ありがとう”

「お疲れ様、せんせ♡ みんなもおつおつー♡」

「お疲れ様、フミ。今日はゆっくり休んで明日からまた試験に向けて勉強だ」

 

 

 むん、と両手を握るアズサちゃん。

 ハナコちゃんはにこにこ、ヒフミンはいつも通り、コハルちゃんはちょっと眠たそう。

 

 

「こう言うのもアレだけど、みんな意外と堪えてないね?」

「そんなに不思議?」

 

 

 髪の毛の先をくるくると弄ぶコハルちゃん。

 くぁ、と小さくあくびを噛み殺しながら私に流し目を送る姿はなんだかすごく色っぽい。

 

 

「今回は残念だったけど、これ以上はハナコとフミがなんやかんややって止めるんでしょ? なら、私達は大人しく試験勉強を続けるだけよ。まぁ退学の手続きをされる前に何処かへ転入した事にするってのも先生──シャーレの権力を使えば出来るらしいし」

「コハルの言う通りだ。例えどんな困難が待ち受けていたとしても、それは私達が努力を止める理由にはならない」

「うふふ、そういう事なのでフミちゃんと一緒に、怯える猫ちゃんにするお仕置きの方法を考えないといけませんね♡」

「あはは⋯⋯いざとなったら先生のお妾さんになれば良い訳ですし」

 “それは初耳かなぁ!?”

「えっ、もらってくれないんですか!?」

 “もらうけども! そうならないように頑張ろうね!”

「わぁい、どっちに転んでも安泰です♪」

「たくましくなったなヒフミン⋯⋯。まぁ元気そうでなにより♡ そんなみんなにオペラケーキの差し入れでーす♡」

 

 

 その言葉にみんなが目を輝かせる。

 先生に至っては両手を挙げて喜んでいる。

 やだもう可愛い♡

 

 

「ケーキ♪ ケーキ♪」

「フミのケーキ♪」

「大変ですハナコちゃん! アズサちゃんとコハルちゃんが可愛すぎます!?」

「ヒフミちゃん見てください、先生も可愛いですよ♡」

 “ケーキ! ケーキ!”

「あまりの可愛さに母乳出そう♡ せんせー直飲みする?」

 “の⋯⋯っ、の⋯⋯!”

「ものすごい葛藤してますね⋯⋯?」

「あ、あはは⋯⋯気持ちは分かります」

「遊んでないで食べるわよ! それとも三人の分も私とアズサで食べて良いのかしら?」

「さ、流石にみんなの分を取る訳には⋯⋯」

「今日はおかわり分が有ります♡」

「フミ! 愛してる!」

「やぁん、私もアズサちゃん愛してる♡」

 

 

 みんなでイチャイチャしながらケーキを食べる。

 オペラは歴史が古い分作り方はシンプルだけど、美味しく作ろうとすると途端に難しくなるケーキだ。

 コーヒーやアーモンドの香りを立たせつつも味の邪魔にならないようにして、ビターチョコとバタークリームの甘さを調整しないと一気に重くなる。

 

 

「甘さはそこまで強くないのにすごい美味しい!」

「初めて食べたけど、美味しいわね! これなら毎日でも食べたいわ!」

「毎日食べるとぷくぷくになっちゃうゾ♡」

「フミちゃんはお菓子作りが上手いですねぇ♡」

「うぅ、フミちゃん私の為に毎日ケーキ作ってください⋯⋯」

「良いけど材料費は稼ぎなさいよ? ちゃんと合法的な手段で♡」

「え、私そこまで信用無いんですかぁ!?」

「普段の行いを振り返りなさいペロキチ♡」

「それはほら、信仰上の理由ですから」

「真顔でなんて事言うの♡」

 “フミが居ないシャーレなんてもう考えられないよ⋯⋯”

「私もせんせーが居ない人生は考えられないです♡」

 “あれ、なんか今イコールで変な所繋がった?”

「私はいつでもせんせーと繋がりたいですけど♡ いつでも好きに使って良いんですよぉ⋯⋯♡ せんせー専用の幼妻子袋⋯⋯♡」

「こらー! えっちなのは」

「オペラのおかわりいる?」

「えっちオーケー! 存分にやりなさい!」

 “コハル!?”

「主は仰ったわ。産めよ増やせよ地に満ちよ、ってね。つまり先生との子供でキヴォトスに楽園を作るのよ!」

 “コハルさん!?”

「二人っきりの時なら私も襲って良いわよ!」

 “誰か! コハルが錯乱してる!”

 

 

 恐るべしオペラケーキの誘惑。

 ともあれみんな大丈夫そうで良かった。

 後はちゃんと試験を受けられるように色々と手を回してみようかな。

 

 

「という訳でせんせ♡」

 “殿中でござる! 殿中でござる! ⋯⋯あ、フミどうかした?”

「温度差がすごい♡ 明日から午後はちょっと暗躍してくるから、何か有ったらモモトーク飛ばしてね♡」

 “こんな堂々とした暗躍宣言を聴いたのは初めてだよ”

「せんせーの初めてもらっちゃった♡」

 “人聞きが悪いと思うんだ! フミの事だから大丈夫だと思うけど気を付けてね?”

「はぁーい♡ 戻って来たら色んなプレイしよ♡ 授乳よしよしとか♡」

 “もち⋯⋯も⋯⋯もんもんもんもん”

「理性と欲望で揺れ動いて悶々しちゃった♡」

 

 

 取り敢えずー、先生のベッドで寝たフリ無防備プレイ、カフェの隅っこで秘密さわさわプレイ、新妻キッチン裸エプロンプレイ、拘束無抵抗おねだりプレイ辺りは是非やりたい。

 後は授乳よしよしプレイ♡

 ミレニアム驚異の技術力で母乳出るようにならないかな?

 今度ウタハさんに相談してみよう。

 一先ず今日はのんびり過ごして身体を休めよう。

 晩ご飯はお疲れ様バーベキューの予定だ。

 心機一転、全員合格目指して頑張れるようにサポートしないとね。

 

 

 

 

 

 

 そして一日が過ぎ、二日が過ぎ。

 あっと言う間に試験前日。

 試験の邪魔者を排除する為に暗躍したり、シャーレのみんなの様子をはーちゃんに聴いたり、はーちゃんにモモトークでえっちな自撮りを送ったり、欲望を抑え切れないヒフミンに襲われたり。

 私の方でも色々有ったけど、補習授業部のみんなの為なら頑張れる。

 ここ三日は試験に向けた模擬テストで全員がほぼ満点を取れるまでに学力を伸ばしていた。

 準備は万端。

 残すは適正に試験を受けるだけだ。

 前回のような狼藉を防ぐ為に、私と先生は徹夜も辞さない構えでタブレットとにらめっこをしていた。

 そんな所へハナコちゃんが顔を出し、ヒフミンが落ち着かない様子で顔を見せ、コハルちゃんとアズサちゃんもやってきた。

 結局全員揃って、何をするでもなくまったりとしている。

 

 

「⋯⋯そろそろかな」

 

 

 そう呟いたのと同時、タブレットの画面が更新された。

 見やすいように暗幕を張った壁に投影して、その情報をみんなで眺める。

 

 

「試験会場は第十九分館、試験開始時間は午前九時ですね。特に変わってはいない様な⋯⋯?」

「いえ、ここを見てくださいヒフミちゃん」

「ええと⋯⋯エデン条約に関する重要資料の取り扱いについて⋯⋯?」

 

 

 更新履歴の一番上に出てきたリンク。

 それをタップすると簡素な説明文が現れる。

 

 

「正義実現委員会により資料を保管している第十九分館は移管作業が完了する明後日まで立入禁止とする⋯⋯え、これって」

「ティーパーティーからの要請で誰一人通さないように正義実現委員会が建物を封鎖する、という事です。つまり、私達が試験を受けるには正義実現委員会を突破しないといけない」

「⋯⋯チハヤからのリークが来たわ。どうやら本当に会場は封鎖されるみたいね」

「何が有っても、ナギサさんは私達を退学させる腹積もりのようですね」

「⋯⋯私のせいだ」

 

 

 ふと、アズサちゃんがそう呟く。

 どこか苦しそうに顔を歪め、ぎゅっと拳を握り締めている。

 もちろん、そんな辛そうなアズサちゃんを放っておく私達じゃない。

 

 

「寂しんぼ警報発令!」

「確保してください!」

「わぷっ!?」

 

 

 私とヒフミンの号令で、前後左右から一斉にアズサちゃんへと抱き着いていく。

 おらー、そんな沈んだ顔してる子はこうだぞ!

 うりうりむぎゅむぎゅー♡

 突然もみくちゃにされてあわあわするアズサちゃん。

 

 

「わぁっ、な、なに?」

「大人しくむぎゅむぎゅされろー♡」

 “ええと、みんな、アズサが戸惑ってるから一旦離してあげて”

「いやよ!」

 “コハルさん?”

「うふふ、せっかくですしこのまま進めちゃいましょう♡」

「ささ、アズサちゃん続きをどうぞ♪」

「こ、このままはちょっと恥ずかしい⋯⋯!」

「ダメよ。あ、自罰的な事言ったり寂しそうな顔したら私とハナコで左右からほっぺちゅーするわよ」

「え、わ、私もですか?」

「アンタ本当にクソザコになったわね⋯⋯?」

「まぁまぁコハルちゃん♪ 実は意外とウブなハナコちゃんも可愛くて良いじゃないですか♪」

「ヒフミちゃんっ」

「うひゃぁ~♪」

 “キマシ宇宙ステーション建設しよう”

「技術の進歩が早い♡」

 

 

 そんなこんなでアズサちゃんの告解を進める。

 予想通り、トリニティの裏切り者に関しての話だ。

 初めて知らされる内容も有って非常に興味深い。

 特にもう一人のティーパーティー百合園セイアさんの状態とか、ナギサさんを狙うアリウスの襲撃予定とかね。

 取り敢えずアズサちゃんは二桁以上ちゅーされた事をここに報告いたします♡

 ただヒフミン、あんた舌入れんなっつったでしょ♡

 アズサちゃんとろとろになってるじゃないの♡

 

 

「⋯⋯はふぅ⋯⋯♡ ヒフミ、私、悪い子なんだ⋯⋯♡」

「いいえ、アズサちゃんはとっても優しくて良い子ですよっ♪ そんな事を言っちゃう口はこうです♡」

「んっ、ちゅ、んんっ♡」

「あーもう、アズサちゃんがおねだり覚えちゃったじゃない♡ まぁ情報は全部もらえたから良いけど♡」

「よし、じゃあ参謀組のハナコとフミはそっちで先生と悪巧みしてなさい。私はちょっと二人を正気に戻すから」

「⋯⋯補習授業部に入ってから、コハルちゃんの頼もしさが右肩上がりですね?」

「ふふん、私は将来の正義実現委員会を背負って立つエリートだからね。ハナコ、アンタも変に抱えてないで辛くなったら甘えてきなさい。頭くらいは撫でてあげるわ」

「ママ⋯⋯!」

 “ママ⋯⋯!”

「母性がすごい♡」

「あーうっさい、ほらさっさと行った」

 

 

 しっしっ、と追い払われてしまった。

 肉体的接触が無ければハナコちゃんもそこそこ強いんだけどね。

 という訳で先に三人でこれからの動きを詰めていく。

 襲撃前に確保してー、襲撃返り討ちにしてー、正義実現委員会の動員がー、ハナコちゃんがちょっとお話をー?

 ふむふむほむほむへむへむ。

 何とかなりそう。

 じゃあそういう方向で進めるとしてー⋯⋯。

 

 

「おーいヒフミン」

「あ、纏まりました?」

「うむ。それの一環でちょっとボイス収録したいんだけどさ」

「ボイスですか?」

「そーそー。色々画策してたみたいだけど結果的には補習授業部によろしくない方法で喧嘩仕掛けてきた訳じゃん? だからこっちからも意趣返し兼手打ちとして部長のヒフミンから一発かましてもらって、それで当事者間では話は終わったーって対外的に示すの。それに使うボイス」

「よく分かりませんがフミちゃんがやる事なので大丈夫でしょう! 協力しますよ!」

「信頼が重い♡」

 

 

 取り出したスマホに声を入れてもらう。

 建前が有るので先生は苦笑い、ハナコちゃんはめっちゃ良い笑顔をしている。

 コハルちゃんは若干引いてて、アズサちゃんは少し痛ましそうだ。

 まぁこれくらいはね?

 私の分も込みだから。

 

 

 

 

 

 

 そして作戦開始。

 先生とヒフミンとコハルちゃんは合宿所でアリウス生迎撃の為に陣地構築。

 私とアズサちゃんとハナコちゃんは先んじてナギサさんの回収とお仕置きの為に、彼女が使うセーフハウスへとやって来ていた。

 しかし屋根裏部屋とはまたロマンの有る隠れ家だね。

 道中に居た正義実現委員会の子達に以前本部でハグした子が居たのでスムーズに話し合いが出来た。

 シャーレとして協力の要請を上げてハスミさんに報告を回してもらったので、第一段階の仕込みは完了。

 今の所は順調だ。

 さ、ここからはちょっとしたお楽しみタイム。

 ノックしてもしもーし♡

 

 

「⋯⋯紅茶のおかわりなら結構です」

「残念、襲撃でーす♡」

「あらあら⋯⋯可哀想に、眠れないんですね♡」

「シュコー」

「なっ⋯⋯!?」

 

 

 室内へ入ってくる私達へ驚愕の視線を向けるナギサさん。

 生憎ともう正義実現委員会は私の指揮下なんだよねー♡

 シャーレの権力は各学園の生徒会の決定すら無視出来る。

 その辺の法規関連はリンちゃん先輩に確認を取ったから非常にクリーンな運用となります♡

 控えい控えい♡

 

 

「何故、貴方達が⋯⋯どうやってここに⋯⋯!?」

「あら、簡単な事ですよ♡ 私は八十七箇所全てのセーフハウスの場所を把握しています。もちろん、そのローテーションについても♡」

「⋯⋯っ!?」

「身の危険を感じた時や精神が不安定になった時、非常用退避所としてこの屋根裏部屋を使う、という事も♡ 今は試験会場に多くの正義実現委員会を配置していますから、ここの警備は薄くなっていましたね。お陰様で楽な道中でした♡」

 

 

 おーおー、ハナコちゃんが活き活きしている。

 なんだかんだで最初の頃くらいしかえっちなお姉さんムーブ出来なかったからねぇ。

 今じゃすっかりコハルちゃんとヒフミンのおもちゃだ。

 アズサちゃんも感慨深そうにシュコーシュコーしている。

 

 

「まさか⋯⋯トリニティの裏切り者に、シャーレも与しているのですか⋯⋯! いえ、それだけではなく裏切り者も一人ではなかった⋯⋯!?」

「短絡的ですね。時系列を考えればシャーレをこの件に関わらせたのはナギサさん、貴女しか居ませんよ? それに私達はただの手足。頭は別に居ます♡」

「なっ、それはいったい誰なのですか! 貴方達の指揮官と言うのは!」

「んー⋯⋯答えても良いですけど、その前に聞かせて頂けませんか?」

「何を⋯⋯!」

「ナギサさん、ここまでする必要は本当に有りましたか? 私とアズサちゃんは、まぁ分かります。でも何も知らないコハルちゃんや貴女を慕っていたヒフミちゃんまで巻き込む必要は無かったのでは? 単に拘束するならともかく、後の人生にまで関わる《退学》だなんて嫌疑に対して重すぎる手段を、しかもシャーレの先生の矜持に付け込んでまで選択するなんて」

「⋯⋯確かに、あの二人には悪い事をしたと思います。特にヒフミさんは大切な友人でもあります」

 

 

 そう言ってナギサさんは目を伏せる。

 その沈痛な面持ちは佇まいも相まって、何も知らなければ絵画のモデルになっても良いと思えるくらいだ。

 いやしかし、このセリフが出るとまで読んでたんならハナコちゃんの頭の回転凄まじいね。

 

 

「ですが、問題はトリニティのみならずゲヘナとも関わる非常に重大なものです。その円滑な締結に対する代償が生徒四人の進退で済むならば⋯⋯私は躊躇いません」

「そうですか⋯⋯では約束ですから、私達の指揮官が誰なのかを教えましょうか♡ それは貴女が裏切り者を見付け出そうと躍起になり、その結果友情を踏みにじり裏切った人──ヒフミちゃんですよ」

「は⋯⋯⋯⋯?」

「大切だなんだと仰っていましたが、貴女にとって友人とは都合の良い駒でしかなかったみたいですね。ヒフミちゃんが可哀想です」

 

 

 もう満面の笑みで振り返るハナコちゃん。

 愉悦してんねぇ!

 通話していたように見せ掛けたスマホを合図に合わせて持ち上げ、録音しておいたボイスを再生する。

 

 

『あはは⋯⋯私は友達だと思っていたんですけど、貴女は違ったみたいですね。残念です』

「⋯⋯ち、ちが、わ、わた、私、は⋯⋯」

『私は楽しかったですよ、貴女との友達ごっこ』

「いや、違う⋯⋯んです、私は、本当に友人と⋯⋯」

『──さようなら、()()()

「あ、あぁぁ⋯⋯いやぁぁぁぁぁっ!!?」

 

 

 

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