もしもシャーレにヒモを養う適性の有る娘が応募してきたら   作:一ノ瀬 崇

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ミニストーリーVol.2
とある日のシャーレでの一幕


「ワカモさーん、お茶入りましたよー♡」

「ありがとう、フミちゃん」

「せんせーも一旦区切って一休みしましょ♡」

 “ありがとうフミ、もうこんな時間かぁ”

 

 

 ぐぐっと伸びをする先生。

 外から差し込む陽光はだいぶ傾き、そろそろシャーレの業務時間も終了する。

 仕事自体はもう終わっていて、今はシャーレに上がってきた生徒達の要望を纏めたりスケジュールの割り振りだったり、業務ではない先生としてのお付き合いの調整中だ。

 学生って事もあって基本土日に集中しちゃうからね。

 

 

「あぁ~……ワカモさんの尻尾もふもふなんじゃあ〜♡」

「もう、おイタはダメでしてよフミちゃん」

「あふん♡」

 

 

 艶々な尻尾に誘惑されて堪らずもふもふしていると、ワカモさんにおでこを優しくピンと弾かれた。

 この穏やかで割烹着の似合いそうな和服スケベなお姉さんが『災厄の狐』だなんて物騒な名前で呼ばれる停学中のテロリストだとは未だに信じられないよね。

 ワカモさんと私の出会いはトリニティの騒動を終えてシャーレに戻ってから数日しての事。

 いつものように先生とイチャイチャしてたらいつの間にか銃剣を喉元に突き付けられてたのが始まり。

 いやぁ、一切傷付けるつもりの無い威圧目的だったら私の勘が働かないってのは新しい発見だったよね。

 慌てて仲裁に入ってくれた先生の執り成しもあり、ワカモさんと一先ず休戦。

 御用向きを伺ってみた所、一目惚れした先生に逢いに来たとの事だった。

 そうしたらお慕いしている先生に馴れ馴れしく纏わり付く卑しい雌が居たから警告しようと……いや雌て。

 雌だけども!

 なんなら卑しい自覚はあるけども!

 うん、何なら秘密裏に処理されるわコレ。

 色々聞いてみたら大胆かつ奥手という絶滅危惧種のヒロインみたいな生態をしているというのが解り、私はそこから一気に距離を詰めに行った。

 こんな面白くて可愛い人見た事無いよ。

 

 

 “最初の出会いからは考えられないくらい二人が仲良くなってくれて、先生嬉しいよ”

 

 

 しみじみとお茶を飲みながら微笑む先生。

 確かに出会いは殺伐だったもんねぇ。

 

 

「今ではワカモさんも、せんせーラヴァーズを取り纏める正室候補ですからねー♡ 側室としてはしっかり正室を支えて推してく所存♡」

「……なんやかんや押し切られていますけど、普通に考えたら謎すぎる説得でしたね」

 “なんだっけ、正室になろうという気質の持ち主を待っていました! だっけ?”

「我ながらとんだパワープレイ♡」

 

 

 そう、ワカモさんは先生の正室候補なのだ。

 私は先生に愛されていろいろえろえろされつつ他のお嫁さんともラブラブ出来れば言う事無いから、先生の正室という立場には特にこだわりが無い。

 ヒフミンやアリスちゃん、セリカちゃんなんかはそもそも性格が正室に向いてなさそうだし。

 

 

「せんせーの愛を疑わず、せんせーへの献身に溢れ、いざという時他の全てを投げ棄ててでもせんせーを優先出来る信念を持ち、弓引く者からせんせーを護り切るだけの武力を持ち、せんせーの望みに合わせて他者への迎合も出来る滅私の心構えがあり、どすけべボディである事。これが私が正室へ求める条件です。この全てを兼ね備えているのワカモさんがせんせーに一目惚れをしていた、こりゃもう運命ですよ」

 “どすけべボディのくだり要る?”

「要る♡」

「ま、まぁこの駄肉も先生が喜んでくださるなら……」

 “ワカモ、語弊を恐れずに言うけど。私はワカモの身体をこの上なく魅力的だと思うよ。もちろんその心も、全部含めてワカモはとてもステキな女の子さ”

「あ、あなた様……♡」

「私もワカモさんのボディにメロメロなのでいっぱいイチャイチャしたいです! なのでせんせー、早くワカモさんの身体の一番を全部奪い尽くしちゃってください♡」

 “言い方ぁ!?”

「せんせー大好きクラブの一員としてワカモさんともラブラブちゅっちゅしたいんですけど、他でもない正室ならそこはやっぱりせんせーが全部召し上がってからじゃないと♡」

「側室なら食い散らかしていたみたいな言い草ですわね……?」

「ヒフミンという前例が居るので♡」

「あの娘も後宮入りでしたね……」

 “若者の性の乱れが深刻だなぁ”

「遠い目しないで♡」

 

 

 そんな訳で殺伐としたお姉さんを先生ハーレム計画に引き入れて、こうしてのんびり仲良くお茶をしている。

 しかし先生としての立場で接する前に一目惚れでワカモさんを堕としていたとか、流石先生。

 

 

「と言うか私もせんせーとしたいので早くワカモさん娶って励んで♡」

 “卒業したらね!”

「卒業、ですか……」

 

 

 その言葉にしょんぼりしちゃうワカモさん。

 まぁ災厄の狐として大暴れしちゃってたからね。

 大人しく矯正局に行っても数年は出て来れなさそうなのがネックだよねぇ。

 

 

「破壊を求めるこの身が憎い……!」

 “自傷はダメだからね?”

「ですがっ、先生……っ!」

 “えぇと、ほら、アレだよ。ワカモの身体は私のものなんだから、勝手に傷付けちゃダメだよ?”

「あ、あなた様……っ♡ ……はい、頭から爪先まで、この身の全てはあなた様に……♡」

 “あれ、私今ルート間違えたね?”

「自覚が有るようで何より♡」

 

 

 また一つクソボケ功徳を積んだ先生はさておき、一応ワカモさんの卒業までの障壁を取り除く手段が無い訳でもない。

 

 

「要は、その分に見合うだけの良い事と言うか功績が有れば良いんです。例えば献身的に先生を支え学園規模の厄介事や騒乱なんかを解決に導いた、とかでアピールしつつシャーレの権限フル活用して恩赦を出しても『今回ばかりはまぁ良いか』と納得させられるタイミングを見付けたら良いんですよ」

「……割とハードル高めでは?」

「にしし、そこは過去の自分にジャイアントスイングでもしてあげてください♡ タイミングはともかく、功績には一つ心当たりも有りますので」

 “……あー、うん。あの子達を利用するようで嫌だけど”

 

 

 私の言う心当たりに先生も思い当たった様子。

 そう、先日のトリニティ騒動で明らかになったアリウス生徒を操る悪い大人──通称マダムの存在だ。

 投降した子達からの情報にはなるけど、結構あくどい事をやってるらしくそのうちトリニティだけじゃなくキヴォトス全土で問題視されそうな厄ネタだ。

 

 

「利用というよりは喧伝ですね。被害者たる生徒が居る事、悪意を持った大人が居る事、私達シャーレはそんな無法を許さない事。それらをしっかりと外部に説明して生徒達の為に決して諦めはしない、って事を発信するんです。もしかしたらそれをキッカケにシャーレへ相談に来る子がいるかもしれませんし、その子を救うキッカケにも繋がっていきますから」

 “……フミはズルいよね。私が前を向いて取り組む為に理論で道を舗装してくれるんだから”

「ふっふっふー、これでも先生の右腕ですから♡ あ、正面から抱き着いて身を守りつつ一番に子種を受け取るのは正室の役目なのでワカモさんしっかりね♡」

「その唐突な下ネタは我慢出来ませんの……?」

「出来ませんの♡ 早く先生と結婚しろー♡ 後がつっかえてるんだぞー♡」

「あなた様、この娘、その……わんぱくですわ!」

 “自慢のお嫁さん候補です”

「いえーい♡ ぴすぴす♡」

 

 

 チハヤちゃん直伝のダブルピースぶぃぶぃ♡

 先生も何故かどや顔で誇らしげなの草。

 

 

「それにワカモさんの破壊衝動の捌け口も探せるんですよ、これ」

「捌け口、ですか?」

 

 

 小首を傾げるワカモさん。

 余りの可愛さにテンション上げつつ先生を見ると、満足げに腕を組んで頷いている。

 やっぱ所作が可愛いよねワカモさん。

 

 

「前にお話したように、その辺の何の変哲も無い街並みにも誰かの思い出の場所になっていたりする訳です。となれば先生の愛を知ったワカモさんは以前の様に暴れ回る事が出来ません。その場所は誰かには、先生がワカモさんにプロポーズする記念の場所と、同じくらい大切な場所かもしれない訳ですから」

「……そうですわね、そう考えると流石に爆破して回るのも気が引けます」

「でもボンボコ破壊してた頃みたいな爽快感は得られないじゃないですか。それってかなりのストレスですよね」

「それは、まぁ……」

「そんな悩みを解決出来るのがこの案なんですよ。シャーレの依頼と言う形で実績を積みつつ存分に暴れ回れる、そんな場所を提供出来るんです」

「聞きましょう」

 

 

 椅子に座り直してキリッとするワカモさん。

 やだもう可愛い♡

 

 

「結構単純な話です。そんな悪いヤツのアジトだなんて基本悪いヤツらしか周りに居ないんですよ。例えばブラックマーケットを根城にするヤバあじな企業にカチコミを仕掛けに行くとします。当然、そんなヤバい場所なんて一般人は近寄りません。と言う事は、辺り一面更地にしても悪人連中からしか文句が出ないって事ですよ♡」

「確かに……!」

「しかも大義名分もあって普通の人には感謝されて減刑のネタにも出来ます。シャーレのせんせーはあの災厄の狐を更生させるだなんて凄いと評判になりますし、ワカモさんもせんせーがしっかり監視するからって名目で合法的に側に控える事が出来るんです。イチャイチャしてるのを咎められても更生の一環って言い訳も出来ます」

「あなた様、この娘思った以上に遣り手ですわ!」

 “この手の理論武装させると天下一品なんだよね”

「いやん、照れちゃう♡」

 

 

 実際、ワカモさん卒業ルートはこれが一番早いと思います。

 適正に運用するなら権力は使ってナンボだからね。

 

 

「とまぁそんな感じで私達の為にシャーレの権力と人気はどんどん高めていった方が良いんですよ♡ 中途半端だと先生を狙って暗躍するヤツも出て来るかもですし」

「ならば否は有りませんね。あなた様、このワカモがお側でお守り致します」

 “頼りにしちゃうね”

 

 

 先生が微笑みかけるとすぐ耳を真っ赤にして照れちゃうワカモさん。

 なんか可愛すぎてムラムラしてきたな!

 

 

 

 

 そんな感じでわちゃわちゃしながら業務を終え、三人で近所の天ぷら屋さんへ。

 途中イズナちゃんも合流して更に賑やかになった。

 イズナちゃんは忍者に憧れる百鬼夜行の一年生。

 私の知らない間に先生が百鬼夜行で引っ掛けてきた、天真爛漫で純真な元気っ子だ。

 相性が良いのかワカモさんとも仲良くなってお互い先生を慕う同志としてちょいちょい交流を深めているらしい。

 

 

「アニメだと結構コミカルだけど、原典だと復讐が復讐を呼ぶ重厚なストーリー展開なんだね♡」

「師匠が実は亡き主君の無念を晴らそうと、主人公達に忍者としての修行を課すとは……!」

 

 

 料理が出来るまでの間、私とイズナちゃんは先生から借りたタブレットで外の世界の忍者アニメを見ていた。

 先生イチオシの忍者モノらしく、いわゆる忍術や忍法は使わず機転と体術で悪を蹴散らしていくスタイルだ。

 創作としての派手さは無いけどエンタメとしては凄い面白いタイプ。

 他にもゲームや映画、小説なんかもあり、外の世界での忍者人気を窺い知れる。

 

 

 “たまにはこうしてのんびりご飯食べに来るのも良いね”

「ええ、あなた様と外食するのもとても楽しくて……将来、こんな風に、か、家族でお出掛けしてみたいです……♡」

 “賑やかになりそうだね。やんちゃな子供達と綺麗な奥さん達に囲まれて……奥さん達とはいったい……?”

 

 

 座席の対面では先生とワカモさんがなにやら夫婦みたいにイチャイチャしてる。

 最初の頃は誤魔化したり狼狽えたりしてたのに、いつの間にか先生も受け答えに遠慮が無くなってたよね。

 精神汚染……げふんげふん。

 意識改革も順調ですな。

 と言うかそこまで吹っ切れたならもう諦めたら良いのに。

 まぁクソボケかつ誠実で愚直なのが先生の美徳でもあるんだけどね。

 むしろそんな先生が理性飛ばしてケダモノのように貪ってくれる妄想だけで薄い本が厚くなるから良いか!

 

 

「四人席で……あら、先生?」

 “おや?”

 

 

 聞き慣れた声に顔を向けると、美食研究会の四人がちょうどお店に入ってきた所だった。

 折角だからと隣の席に案内してもらい、初対面だったイズナちゃんをみんなに紹介。

 ゲヘナのテロリストだけど誠実にやってるここのお店みたいな所には普通の良客なんだよ、ほら、モモッターの美食研究会のアカウント。

 ここでオススメされてるお店は全部当たりだから他の自治区に遊びに行く時の参考になるの。

 百鬼夜行だと……おっ、私達の行きつけのお店も宣伝されてる。

 ちょっとニヤニヤしちゃうね?

 と、再度入口の扉を開けて入ってくる四人組の姿が。

 

 

「こんにちは女将さん! 依頼が終わったから食べに来たわよー!」

「あらぁ、アルちゃんいらっしゃい」

「んぇぇ?」

 

 

 聞き馴染みしかない声に変な声が出た。

 言わずもがな、我らの便利屋68のみんなのエントリーだ。

 あ、はーちゃんやほやほ♡

 朝振りー♡

 

 

「女将さん、わちゃわちゃしちゃうと思うから座敷の方お借りしても大丈夫ですか?」

「今日は予約も無いし、良ければ皆さんで使ってくださいな」

 “ありがとうございます。それじゃみんな、移動しようか”

「便利屋のみんなの分の注文は私達と同じ特製セットで良いですかね? ……うん、良さそう。それじゃ女将さん、特製セット四つ追加でお願いします♡」

 

 

 と言う訳で計十二人で大移動。

 店の奥のお座敷に座ってプチ宴会みたいだね。

 座り順は適当かつ早いもの勝ち。

 私は順当に右隣はーちゃん左隣イズナちゃんで両手に花。

 先生の右隣にワカモさんが収まって、左隣はムツキさんがちゃっかり収まっていた。

 

 

「いやぁあっと言う間に大所帯だね♡ まさかの天ぷらブッキングしちゃうとは」

「今日は天ぷら気分な日和だったのかもしれません!」

「えへへ……フミちゃんと一緒に晩ご飯……♪」

「あ、イズナちゃん。こちら私のお嫁さんの伊草ハルカちゃん。はーちゃん、こちら百鬼夜行忍術研究部の久田イズナちゃん」

「よろしくお願いいたします! って、ええ!? お嫁さんですか!?」

「よ、よろしくお願いします……え、に、忍者さん……?」

「おうおう、お互い頭にハテナマークが♡」

 

 

 初顔合わせも済ませて和やかに話していると、待望の天ぷらセットが届いた。

 季節の野菜五種に海老や鱈がそれぞれ三つ、温かいお蕎麦と稲荷寿司と自家製お漬物が付いた特製セット。

 たっぷりボリュームで千二百円と、食べ盛りの学生にも会社帰りのサラリーマンにも優しいお値段。

 味は当然バッチリ美味しい。

 ギリギリ混み始める前だから普通にみんなで席に付けたけど、お昼や夜のピーク時は行列が出来てるくらいの人気店だ。

 

 

「わぁぁ、美味しそう……!」

「ジュンコちゃん、喉に詰まらせないようにゆっくり食べてね? はいお茶♡」

「ありがとフミ! でも我慢は期待しないでね!」

「いやん、わんぱく宣言♡」

「だって美味しそうじゃない!」

「たしかに♡」

「どんなアレンジが合うかな〜?」

「イズミさん、先ずはオリジナルを味わい尽くしてからですよ♡ 原典をしっかり理解してこその守破離です♡」

「たしかにー! じゃあ抹茶塩で行ってみようかな?」

「あらまぁ☆ このお値段でこのボリュームは凄いですねぇ、追加で色々頼んでみましょうか」

「折角ですし今日のお代はシャーレ持ちにしますか♡ アカリさんも気になったメニューをどんどん頼んじゃって大丈夫ですよー♡」

「あら、ご馳走になりますね♪」

「私のオススメはこの特大穴子天ぷらですね、なんと器からはみ出る大きさのふわふわ穴子が出てくるんですよ♡」

「食べ応えが有りそうですねぇ☆」

「どれもしっかりと手間暇を掛けて作られていますわね……でも少し、私には多いかもしれません」

「そんな時にせんせーですよ♡ あーんしてあげたら口の前のモノ何でも食べますからね」

 “池の鯉か何かかな?”

「と言う訳でチャンスですよハルナさん、気になる異性との食べさせ合いも立派な美食ですから!」

「確かに、美食は誰と、いつ食べるかも重要な要素となりますわね……」

「みんなにあーんされてすぐ満腹になるせんせーが見える見える♡」

 

 

 と言う訳で早速みんなでいただきます。

 まずは蓮根から行っちゃおうかなー♡

 

 

「んーっ♡」

 

 

 しゃくしゃくの歯応えに蓮根特有の匂いがきて、衣の甘さと天つゆの旨味が駆け抜けていく。

 続けてさやいんげんの天ぷらを。

 スナック感覚でさくさく食べられる軽さが天つゆと合わさって不思議な程に美味しい。

 これはご飯が進んじゃうよねぇ、と稲荷寿司へ箸を伸ばす。

 中身はひじきの炊き込みご飯だ。

 出汁の効いたご飯が油揚げと一体になって、噛めば噛むほど美味しさが溢れてくる。

 この油揚げも自家製らしい。

 もうズルいよこんなの。

 続いて舞茸の天ぷらだけど、ここでオリチャー発動!

 なんと、温かいお蕎麦に入れちゃいまーす♡

 蕎麦のつゆを吸って衣がひたひたになった所で蕎麦と一緒に口の中へ。

 出汁の香りと舞茸の香りが混ざり合い、そこへ蕎麦の香ばしさも入ってくる。

 なんかもう息が美味しい。

 ウマーですわよ!

 ここで間髪入れず主役の海老天をぱくー!

 ぷりっぷりな海老に絡まる天つゆが堪りませんな。

 

 

「ウマー♡」

 

 

 ニッコニコで食べ進めていたら、隣ではーちゃんがくすりと笑みを零した。

 

 

「んぅ?」

「いえ、フミちゃんが幸せそうなので、私もなんだか嬉しくなって」

「私もはーちゃんが幸せだと嬉しくなるから、お揃いだねぇ♡」

「はい♪ あ、稲荷寿司美味しいです……♪」

「フミさんフミさん、こんなに美味しい稲荷寿司は初めてです……!」

「お持ち帰りも出来るから今度忍術研究部のみんなにお土産で持って行くのも良いかもねぇ♡」

「なんと、お持ち帰りもっ! うぅ、誘惑に耐えて無事に持って帰る自信が有りません……!」

「そんなイズナちゃんに、忍法おすそ分けの術〜♡」

 

 

 稲荷寿司を一つ摘んでイズナちゃんのお皿へ。

 いっぱい食べて大きくなるのよ♡

 

 

「わわっ、良いんですか?」

「うむー♡ くるしゅうない♡」

「えへへ……ありがとうございます♪」

 

 

 イチャイチャしつつ美味しい天ぷらに舌鼓。

 我が世の春だわぁ♡

 

 

 

 

 

 

「素晴らしいお店でしたわ。また来たいですね」

「お値段もお手頃で良かったですねぇ☆」

「調味料のバリエーション増やしてもらおうかな?」

「久し振りに満腹になったわ」

 “美食研究会のお墨付きなら、益々繁盛しそうだね”

 

 

 満足そうに息を吐く美食研究会の皆さんに手を振って見送り、イズナちゃんとワカモさんと別れて、便利屋のみんなを引き連れてシャーレに戻る。

 もちろん帰り道ははーちゃんと仲良くお手々にぎにぎ♡

 

 

「相変わらず二人は仲良しねぇ」

「対抗して私とアルちゃんも手、繋ぐ?」

「何の対抗心を燃やしてるのよ」

「じゃあ私は先生と手を繋ごうかな」

 “大胆だねカヨコ?”

「先生のせいだから」

 “そっかぁ”

「納得しちゃって良いのかしら……?」

「カヨコっちずるーい♪ 私も先生と手繋ぐー♪」

 

 

 先生は早速ムツキさんとカヨコさんに弄ばれていた。

 これはこっちも負ける訳にはいかない。

 そんな決意と共にはーちゃんを見ると、はーちゃんも私を見てこくりと頷く。

 以心伝心って……えっちじゃない?

 そう思っていたらはーちゃんが首をぶんぶん横に振った。

 えっちでは無いらしい。

 

 

「てぃっ♡」

「し、失礼します……♪」

「え、な、なに?」

 

 

 左右からむぎゅっとアルさんを抱き締める。

 ついでになでなでさわさわ♡

 良い尻してんねぇ!

 

 

「ひゃあぅっ!? ちょ、ちょっとフミ!?」

「なんですか♡」

「なんで私のお尻を撫で回してるのよ!?」

「ちょっとムラムラしまして♡」

「なんでよ!?」

 

 

 ガビーン、と古臭い擬音が似合いそうなリアクションを返してくれる。

 アルさんのこういう所すごく可愛くて良いよね。

 普段はセクシーなのに喋るとせくちーになるアルさん好き好き♡

 

 

「まぁまぁ、また《実録オフィスラブ 〜〜敏腕女社長が慕われていた部下三人に迫られる! 事務所が愛の巣に変わるとき〜〜》みたいなやつ差し入れますから♡」

「要らないわよ!? あの後ホントに色々大変だったのよ! ムツキはイタズラと称してボディタッチが増えるしカヨコはねっとりした熱視線を向けて耳元で囁いてくるしハルカは真っ赤になりながらくっついて離れないし!」

「え、わ、あ、ご、ご迷惑でしたか……?」

「迷惑ではないわよ! ……ハルカに分かりやすく伝えるなら、人がいっぱい居るのにフミが後ろから抱き着いてきてずっとハルカに愛を囁いてくる感じかしらね。声を落としたりしないから、道行く人達に『わ、仲良しカップルだねー』とか『おかーさん、ラブラブなカップルだよ!』とか言われるのよ」

 

 

 不安げなはーちゃんに説明するアルさん。

 ちょっと想像してみたのか、はーちゃんは顔を真っ赤にしてあわあわしだした。

 反応が可愛い♡

 

 

「そっ、それは……っ、迷惑では無いですけど、恥ずかしくて落ち着かなくなっちゃいそうです……」

「そんな気持ちよ。みんなに慕われるのも、そういった感情を向けてくれるのも悪い気はしないけど、なんかこう、こっちもどうしたら良いか」

「キスはしたんですか?」

「したわよ!」

「したんだ♡」

 “ちょっと詳しく”

「待って♡」

 

 

 そこで臆面もなく答えられる度胸が流石アルさん。

 あと先生、ガタッじゃないのよ♡

 両脇固められてるの忘れてない?

 

 

「くふふー、乙女の秘密を探っちゃう悪い先生にはお仕置きが必要だよねー?」

「そんなに気になるなら実演してあげようか? 先生を使って」

 “助けてフミ!”

「私も参加しようかな♡」

 “フミサン!? ナズェミデルンディス!?”

「なんて?」

「どこからその声出したのよ先生」

「あわわ……わ、私も参加して良いでしょうか……?」

 “本格的に助けて! 唇が腫れてタラコになっちゃう!”

「まぁまぁ、来たるべきハーレムの練習だと思って♡ 本番までは始まらないから♡」

 “それなら良いか……”

「良いの……?」

「アルさんが宇宙猫みたいになってる♡」

 

 

 合体しなければセーフ理論にアルさんが困惑しておられる。

 解説して差し上げて♡

 なお道中の会話を飲み物買おうと立ち寄ったエンジェル24でもしていた為、無事ソラちゃんの表情が百面相になりました。

 いつもごめんね?

 そんな感じに賑やかにシャーレへ戻ると自警団のみんなが出迎えてくれる。

 はいこれお土産の稲荷寿司♡

 あ、こら♡

 姐さん呼びはやめなさい♡

 なんなら私年下でしょうに♡

 え、年下で過酷なゲームの造詣が深いのはおかしい?

 それはそう。

 

 

「しかしみんなオシャレになったよねー♡」

「いつ先生のお手付きになるか分からないからな!」

「何だっけ、ジョーザイセンジョー?」

「ウチらはいつでもウェルカムだかんね」

 “生徒に手を出すのは先生失格だから……!”

「失格でもせんせーに最期まで付いてくから安心して♡ 一緒に堕ちよ♡」

 “えっちなのはいけないと思います!”

「うわぁ、流れるように淫婦しだした」

「やっぱすげぇよ姐さんは」

「これで私達と同じ処女ってマ?」

「誠に遺憾です♡」

「淫婦呼びが定着しちゃいましたね、フミちゃん……」

「私はこんなに貞淑なのにねぇ?」

「え、お、あ、ぶぶぶぶぶぶ」

「ハルカちゃんが深刻なエラー吐いてる!?」

「ちょっ、ちょっと大丈夫なの!?」

「落ち着いてハルカ、ゆっくり息を吸って」

 “フミ、めっ”

「誠に遺憾です♡」

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