もしもシャーレにヒモを養う適性の有る娘が応募してきたら   作:一ノ瀬 崇

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トリニティ編Vol.2
三十一話目


『……依頼の内容を、説明させてください』

 

 

 ノイズ混じりの年若い男性の合成音声がスピーカーから流れる。

 画面に映るのは白い背景に浮かぶ十字と円にヘイローを掲げた、連邦捜査部シャーレのエムブレムだ。

 

 

『本日、トリニティ総合学園にてトリニティとゲヘナ両校による友好条約の締結──エデン条約の調印式が行われます。場所はトリニティで第一回公会議が行われた通功の古聖堂です』

 

 

 映像が切り替わり、白亜の城とでも評せそうな重厚感のある建物が映し出される。

 リハーサルの映像なのか、儀仗兵代わりに旗と銃剣を構える両校の生徒が互いに口汚く罵り合いながら参列する様子が流れた。

 首脳陣の考えはさておき現場では未だ雪解けは遠そうだ。

 

 

『エデン条約が締結されれば両校の首脳陣により新たにエデン条約機構が創設されます。これにより両校の間での紛争はエデン条約機構が解決する事となります』

 

 

 これまでは対立の種だった紛争を両校から創出したメンバーが解決する事で公平かつ迅速な対応を行う、と言うのが対外的な目的だ。

 実現したならキヴォトス史に名を残す偉業となるのは間違いないだろう。

 

 

『無事に締結される事を依頼人は望んでおりますが、念には念を入れて今回皆様にお話をさせていただきます』

 

 

 再び映像が切り替わり、今度は古聖堂を中心とした上面図が映し出される。

 トリニティとゲヘナの防衛隊が青い凸で示され、古聖堂の周囲をぐるりと警戒している。

 主要な通路や建物にも防衛隊は配置されており普通に考えればどんな部隊の侵入も阻む事が出来るだろう。

 それくらい厚い陣容だ。

 

 

『ご覧の通り警戒は万全です。周囲360°どの方角から攻め込んだとしても突破は不可能に近いでしょう。──ですが万が一、億が一にもこれらの防衛網を突破されては困るのです。理由は一つ。今日、古聖堂には連邦捜査部シャーレの先生がいらっしゃいます』

 

 

 古聖堂の中央に金の王冠でユニットが示され、画面の右側に先生のバストアップ写真が掲示される。

 取られてはいけない、最重要防衛対象だ。

 

 

『何が有るとも思えませんが、皆様には有事の際、シャーレの先生の警護と敵対勢力の撃破をお願いしたいのです。何も無ければそれで良し、エデン条約の締結を見届けた後は撤収していただいて構いません。勿論、出来る限りの謝礼はさせていただきます。何事も無く撤収した場合も、報酬は満額支払う事をお約束します。報酬は前金で百万、依頼終了で百万。有事の際の出動で五百万を追加でお支払いします』

 

 

 提示されたのは二百万にプラスで五百万。

 一般的な護衛任務と考えれば法外と言っていい額だが、それだけこの依頼は何か計り知れない怖気のようなものが漂っている。

 

 

『どうか、皆様の力をお貸しいただきたいのです。何卒、よろしくお願いいたします』

 

 

 ブツッ、と一際大きなノイズと共に映像は終わる。

 黒く染まった画面に反射して映るのは、それを覗き込んでいた先生の顔。

 

 

「って訳で、一応ワカモさんと便利屋のみんな、それとシャーレ自警団のみんなにも外周部で待機してもらってます」

 “ほぁー……”

 

 

 説明を終えたけど先生はまだぽけっとしていた。

 朝これを見せたアルさんと同じ反応なのちょっとウケる♡

 

 

 “あ、外周部で待機って言ってもワカモは大丈夫かな? 災厄の狐として手配されてるんじゃ”

「そこは連邦生徒会の防衛室からヴァルキューレへ話を通してもらってます。災厄の狐はシャーレで確保、更生が期待される為特別保護観察として奉仕活動を課す、って。なので対外的にはシャーレでこき使って罪滅ぼしさせてるから手出し無用、という事になってます」

 “前に言ってたやつ本当に通したんだ?”

「シャーレの権力と自警団運用の実績、防衛室発案の更生プログラムとして喧伝するって鼻薬も嗅がせてのパワープレイですよ。二度は使えない手法です」

 “ものすごい暗闘が有りそう”

「まぁ、こういうのは事前の調整が九割ですから♡」

 

 

 先生には言えないようなダーティープレイも多少有った事は事実だ。

 学生の身でそんな汚職が通じる時点でだいぶ組織としては拙いんだけどね。

 そのうち何かの火種にならなきゃいいけど。

 ともあれそんな感じで私作製の依頼映像を先生に見せて暇を潰してはいたけど、本格的にハイパー暇ぷータイムに突入してきた。

 エデン条約の調印式が始まるまで私と先生は古聖堂内で待機しているのだけど、トリニティに着いてからもうかれこれ二時間は経過している。

 その間やる事も無いのでひたすら椅子に座ってのんびりするしかない。

 

 

 “暇だねぇ”

「暇ですねぇ」

 

 

 拝礼用の長椅子に座って足をぷらぷら。

 通りかかる生徒はみんな忙しそうにぱたぱた動いているのでちょっかいも掛けづらい。

 調印式に於いては私達シャーレは見届人でしかないので特別挨拶も無ければ出番も無い。

 なので本当に置物状態なのだ。

 

 

 “……そこらへん適当にぶらついてみようかな”

 

 

 遂に暇を持て余した先生が古聖堂内を散歩し始めた。

 が、すぐに正義実現委員会と風紀委員会の生徒に止められてしまう。

 面白い事に双方先生とは面識が無く、迷い込んだ外部の人間だと思っている。

 

 

「すみません、業者の方ですか? こちらは入れませんのでご遠慮を」

「そこ、こっちは関係者専用だ。見物人はあっちの方に」

 “えっと……一応関係者です……”

 

 

 クソワロ。

 余り見たことのない対応をされてしょんぼりしている先生をけらけら笑っていると、先生が恨めしそうにこっちを振り返った。

 ごめんて♡

 駆け寄って頭をなでなでしてあげると、すぐ機嫌を直してくれた。

 そんな私達そっちのけで、正義実現委員会の人と風紀委員会の人は何やらバトり始める。

 

 

「……そこの風紀委員会の方、今この線を越えませんでしたか?」

「は? そっちが線を踏んでたから、どかそうとしたんだけど?」

 

 

 子供のケンカみたいな事を言い出す二人。

 すると別の風紀委員会の人がすかさず援護にやってくる。

 

 

「もしかしてトリニティのやつら、喧嘩売ってんのか? こうなったら話は早い、取り締まってやる!」

「なっ、急に増員……!? 支援を要請します、増援を!」

「待って♡」

 

 

 エデン条約を前に何してるの♡

 と言うかどっちも器が小さい♡

 一年の娘達は素直で可愛かったのに、二年生以上になると偏見が凝り固まってしまうのか微妙に当たりがキツイ。

 どうしたもんかなーとほっぺを掻いていると、ぬっと増援の人が現れた。

 

 

「きひひっ……」

「ひいっ!? 急に委員長!?」

「ぞ、増員どころかツルギ先輩……!?」

「んんんー、最高戦力♡」

 

 

 まさかの正義実現委員会委員長、剣先ツルギさんが現れた。

 最強のひよこ決定戦にひよこって名前のライオンを連れてくるが如き所業である。

 まぁ、本当は変な事してないか見回りつつ先生の顔を見に来たんだろうけども。

 つんざく奇声とパワフルな戦い方で怖がられる事も多いツルギさんだけども、実は結構乙女な感性をしていてとても可愛らしい所がある人だ。

 

 

「くひひひひひひっ……。ひゃっはあぁぁぁぁつ!!」

「ひ、ひいいいっ?!」

「どこから出るのその声♡」

 “うーん、これは迫真ホラー映画並”

 

 

 さっきまでバチバチ視線をぶつけ合っていた三人が仲良く抱き合って震えている。

 これもエデン条約だね。

 よきかなー♡

 そんな事を考えているとどすけべシスター服のヒナタさんが騒ぎを聞き付けてやってきた。

 今日もぷるんぷるんたゆんたゆんですな!

 

 

「あ、あの……! みなさん、ここで喧嘩はダメです……。せっかく平和のために、こうして集まったのですから……そ、そうでしょう? ツルギさん?」

 

 

 うむうむ、とガックンガックン首を揺らして肯定するツルギさん。

 そのままぐりんと首を三人の方へ向けて、厳かに口を開く。

 

 

「……ここにいらっしゃるのは、シャーレの先生だ」

 

 

 ずいっ、と顔を近付けてガンギマった目で見抜く。

 

 

「覚えておけ」

「は、はいっ!」

「き、肝に銘じますっ!」 

 

 

 ビシッと敬礼した三人は逃げるように、いや多分本当に逃げながら元の持ち場へと戻っていった。

 満足げにふんと鼻を鳴らすツルギさん。

 先生を知らない上に失礼を働いたと、少しお冠だったらしい。

 当の先生はそんなツルギさんを見てくすりと笑い、歩み寄って頭にぽんと手を置いた。

 

 

 “えっと、ごめんね……それにツルギ、ありがとう”

 

 

 猫背だったツルギさんがピンと背筋を伸ばして向き直り、少し恥ずかしそうに顔を赤らめてへにゃりと猫背に戻った。

 動きが可愛い。

 そのまま俯いて人差し指をつんつんしそうな勢いだ。

 

 

「い、いえ、そんな……とんでもありません、先生」

 

 

 聴こえてきたのはか細く穏やかな声。

 さっきのシャウトと同一人物とは思えない。

 どんな声帯?

 

 

「ではその、私は他の任務がありますので……」

 “うん、頑張ってね。いってらっしゃい”

「いってらっしゃーい♡」

 

 

 名残惜しそうに何度も先生に視線を向けてツルギさんは去っていった。

 去り際、私にも小さく手を振ってくれるのほんと好き♡

 またねーツルギさん♡

 ともあれ騒動も収まって一安心。

 隣でヒナタさんも息を吐いていた。

 

 

「ふぅ……」

 “やっぱりツルギは優しい……”

「ねー♡」

「はい……えっ!?」

 “助けてくれてありがとう、ヒナタ”

「はい、あの時以来ですね、先生。フミさんもお久しぶりです」

「お久しぶりでーす♡」

 

 

 急ぎの用事は無さそうなので、ヒナタさんと一緒に歓談する事に。

 長椅子に三人並んで腰掛ける。

 私と先生の二人きりだとちょっと外向きにはよろしくない、コハル裁判長に怒られちゃうイチャイチャが始まるらしいからね。

 と言う事で雑談たーいむ♡

 あ、良ければクッキーどうぞ♡

 

 

「ありがとうございます、フミさん。……ふふ、実はシスターフッドでもフミさんのお菓子は評判でして」

 “あれ、知らない間にお届けしてた?”

「補習授業部のみんなとお出掛けした時とかに、ハナコちゃん経由で差し入れを持って行ってもらいまして♡ たまにマリーちゃんにも渡してましたね」

「有名店のものと遜色無い美味しさだと、学年問わず人気になっていて……一人一つ、と制限が掛かる程で」

 “相変わらずフミのお菓子は人気なんだね”

「にしし、照れちゃう♡」

 

 

 ヒナタさんから隠れるように先生の脇腹へ頭を押し付けて視線を遮ると、わしゃわしゃ頭を撫で回される。

 わひゃーやめてー♡

 私と先生のやり取りを見て、ヒナタさんがふふっと笑いを漏らす。

 

 

「お二人は仲良しなんですね」

 “私がシャーレで働いてからずっと一緒に居るからね。……そうだ、ヒナタ。あの時、シスターフッドが来てくれて助かったよ”

「い、いえ。私はあの時、あまりお役にも立てず……」

 

 

 ミカさんとアリウス生徒による襲撃。

 大捕物となった騒動を思い返して、ヒナタさんはしょんぼりと俯く。

 

 

「私はただやたら力があるだけで……あまり役立たずですみません……」

 “そんな事ないよ”

 

 

 ネガティブな言葉は、即座に先生が否定した。

 あー、これは先生スイッチ入っちゃったね。

 ぽんと私の頭を一つ優しく叩いて、体ごとヒナタさんの方へと向き直る。

 

 

 “ヒナタはさっきも、争いを止めようとすぐに来てくれた。優しいヒナタだからこそ、その一歩が踏み出せたんだよ”

「い、いえ、そんな事は……」

 “そんな優しいヒナタが側に居てくれるからこそ、他の子達も安心して動けるんだ。その役目は、他の誰でもない、ヒナタだから出来る役割なんだよ。そんな素敵なヒナタの事を、私はとても尊い存在だと思うよ”

「は、はぅ……」

 

 

 いつの間にかヒナタさんの両手を取って優しく握り締めながら、正面から瞳を覗き込む先生。

 あのムーブ、口説こうと思ってやってないんすよ。

 心から素晴らしいんだと伝える為に動いてるから、やられた方はもうくすぐったいやら恥ずかしいやら。

 ヒナタさんも頬がちょっぴり上気してる。

 堕ちたな。(確信)

 ハーレム座談会来ない?

 その後たっぷり褒められ称えられ甘い言葉のシロップ漬けにされたヒナタさんは、顔を真っ赤にしながら俯くのを止めた。

 なんか先生の火力上がってなーい?

 私のせいではないです♡

 

 

 “そう言えば、今日は他のシスター達も?”

「あ、はい。サクラコ様の指示なんです」

 

 

 どうやら、サクラコさん主導で対外的にも色々と積極的に出来る事をしていこう、と言う方針にしたらしい。

 これまでのシスターフッドは内密な組織の空気が蔓延していて、それが前回の騒動の一端になっていたのではと考えたみたい。

 そこで秘密主義な組織の在り方を、小さな所からでも少しずつ変えていこう、と。

 歴史ある組織だから全部オープンには出来ないだろうけど、それでも出来る部分から歩み寄りを、って事らしい。

 いやー、サクラコさんも凄いね。

 普通は楽だから伝統を守るって言ってそのままにしそうな所を、自分が先頭に立って変えていくなんて。

 ……何故か誤解されやすい質なのを除けば、これほど理想的な上司もなかなか居ない。

 

 

「あ、よろしければお二人に、古聖堂をご案内いたしましょうか?」

 “良かったら、お願いしても良い?”

「はい、今はまだ時間もありますので。それではこちらへ……」

「わーい、ヒナタさんとデートだー♡」

「ひえっ!? フ、フミさん、それは……!?」

 

 

 顔を赤くして両手をわたわた振るヒナタさん。

 いやん、反応が可愛い♡

 これで三年生なの何らかの罪に問われない?

 ヒナタさんの純真さに癒されつつ、古聖堂を歩き回る。

 歴史が古いだけあって当時の流行りを取り入れたデザインや設計が各所に見られて、ただ眺めているだけでも楽しい。

 そこへヒナタさんの解説が入るので、気分はもう見学ツアーだよ。

 日差しの角度で浮かび上がる影の形まで計算されてて、全体で一つの絵画になるのはもう変態じみてる。

 ワイルドハントの建築学科の子がこれを見たら大はしゃぎで図面引きそう。

 ただ、古い建物だけあって階段の多さと急さはちょっと先生にはキツそうだ。

 ひいふう言いながら階段を登る先生のお尻をぺちんと叩いて気合を入れる。

 ほらほら、若いんだから頑張って♡

 

 

 “ふぅふぅ、年寄りには堪えるわい”

「先生まだまだお若いですよね……?」

「こっちは学生並みに若いのにね♡」

 “フミ、めっ! めーっ!”

「にしし、はぁーい♡」

 

 

 ヒナタさんに見えない角度でこっそり太ももを撫でしたら怒られてしまった。

 副担任大きくなったら階段登りづらくなっちゃうもんね♡

 賑やかに回廊を進むと、まるで近代美術の絵画に出てきそうな廊下が現れた。

 凄いね、廊下に綺麗なんて感想抱いたの初めてだよ。

 

 

 “すごいところだね”

「ねー♡」

「はい、この《通功の古聖堂》は長い間、廃墟として放置されていましたが……今回ここで調印式を締結することが決まり、大々的な修理が行われたそうです」

「え、廃墟だったんですか?」

 “信じられないくらい綺麗だけど……”

「ええ、最初見た時は私もびっくりしました。その決定についてはトリニティのナギサさんと、ゲヘナのマコトさんとが合意したものだと聞きましたが……。それでも全体が修理されたというわけではなく、調印が行われる場所だけのようですね。下の方はまだ廃墟の状態で……」

「ほぇー……まぁ、これだけ広い場所の修理をそんな短期間で全部やるなんて無理ですよね」

 “純粋に時間が足りなさそうだね”

「あくまで噂ですが、この古聖堂の地下には大規模なカタコンベが存在するそうです。数十キロにも及ぶ地下墓地……《第一回公会議》の時の記述でも、終わりが見えないほどだったと言われていて……」

 

 

 ヒナタさんの案内で歩いていると、曲がり角で塞がれた通路が見えた。

 割と真新しく見える石材が積まれておりスプレーで《キケン! 入るな!》と書かれている。

 

 

「……あ、こちらの方は塞がれてますね。まだ修理中で危ないからでしょうか」

 “色んな歴史がある場所なんだね”

「はい。何せ、第一回公会議が開かれたところですから。公会議において締結される戒律というのは、神聖なものです……その神聖さと言いますか、戒律の守護者たちのその名残のような《何か》が、まだここに残っているような感じすらします」

 “守護者?”

 

 

 これまで聴いていた情報には無かった言葉。

 先生と顔を見合わせると、ヒナタさんは噛み砕いて説明してくれた。

 

 

「はい、それについては何と言えば良いのでしょう……《約束》というのは、同時に破った時に関するルールが一緒に設けられる事が多いですよね? そうでなければ、誰も約束を守らないということもありますし……」

「確かに、先生もいくらダメだって言ってもこっそりカップ麺で済ませたり、エナジードリンクとサプリメントだけでご飯食べたって誤魔化す事あるもんね♡」

 “ひゅーひゅー”

「口笛吹いて誤魔化してもだーめ♡」

「ダメですよ、先生?」

 “うっ、善処します”

「ふふ……第一回公会議においても、その約束を守らせる為のルールがありました。そのルール、《制約》の役割を持つ人々のことを、戒律の守護者と呼んだんです。約束を破る者たちに対するトリニティの武力集団……それが、《ユスティナ聖徒会》です」

 “今の正義実現委員会みたいな……?”

「はい、歴史的には、私たち《シスターフッド》の前身でして……」

 

 

 ほぇー、と聞き入っているとピコンと音が鳴る。

 ヒナタさんのスマホからだ。

 

 

「あ、サクラコ様が到着されたみたいですね。ナギサさんの到着もそろそろだそうです。中途半端になってしまってすみませんが、そろそろ行きましょうか」

「はぁーい♡ ヒナタさんとのデートはまた今度♡」

 “楽しみだね!”

「えぇっ!? そ、その、デートというのは……」

 

 

 わたわたと両手を振って慌てるヒナタさん。

 戻る道すがら、私と先生でヒナタさんの手を両方から握って仲良く移動。

 今度モモゾンでシスター服注文しておこう。

 と、そんな風に古聖堂の廊下を歩いていると後頭部が焼け付くように痺れた。

 今朝からずっと続いていたクッソ気持ち悪い感覚。

 ねっとりとへばり付く、鈍い頭痛と胃が重くなるような吐き気に似た、先生の言う二日酔いのような気持ち悪さ。

 便利屋のみんなや自警団のみんな、ワカモさんまで動員させるに至った、脳裏で囁き続ける勘。

 それが今、最高潮に達する。

 

 

「先生、壁際に……! 身を低くして!」

 “フミ?”

「何か……何か来る!」

 

 

 持ってきていたシールドを全部展開して、念の為にとエンジニア部から無理を言ってもらってきた開発中の簡易シェルターを広げて先生に被せた瞬間。

 視界が暗転した。

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