もしもシャーレにヒモを養う適性の有る娘が応募してきたら   作:一ノ瀬 崇

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三十五話目

 駆け出して行ったサオリちゃんを追って古聖堂跡地へ。

 ヒナタさんが案内してくれた時に見た立ち入り禁止の所から地下へと続く階段が伸びていたのはちょっと笑う。

 綺麗に意識の穴を突かれたと言うか、いやここかーいみたいなツッコミを入れたくなった。

 埃の溜まった通路を駆け抜け奥へと進む。

 洞窟のように自然の形を残した廻廊や、古い建築様式を色濃く残した通路、ここ最近手を入れたと思しき真新しいコンクリートの廊下。

 年代も形式もバラバラなのはちょっと見てて楽しい。

 こんな状況じゃなければじっくり眺めてみたいんだけどね。

 

 

「ちっ……どこまでも追い縋ってくるつもりか、アズサ!」

「当然。私一人なら厳しかった。でも、私は一人じゃないから」

 

 

 広い空間へ出るたび、サオリちゃんとアズサちゃんが銃撃を交わす。

 時折牽制かこちらへも弾は飛んでくるけど、ワカモさんが渡したシールドを展開させて先生をしっかり守っている。

 イズナちゃんも身体能力を活かして頭上や側面から援護射撃を加えてアズサちゃんをアシスト。

 流石に四対一では分が悪く、じりじりと後退しながら戦っている。

 いやこの状況でも撃ち返してくるのサオリちゃん凄いね?

 闘志も燃え尽きてはいないし何かを目指して進んでいる姿から余程の戦力となるもののアテがあるらしい。

 単純な銃器とか待機部隊とかでは無さそう。

 

 

「何もかも、全て片付けてやる。お前も、その大人も! 全てが虚しいこの世界で、真実を思い知れ!!」

 

 

 アサルトライフルを薙ぎ払うようにして銃弾をばら撒き、こっちが遮蔽に隠れたのを狙ってグレネードを投げ込んでくる。

 だけどそれは私が跳弾で撃ち落とす。

 狙いとは違う場所で爆発した事で粉塵が視界を遮り、お互いの姿が隠れる。

 その奥から苛立った声が届く。

 

 

「くそ……何なんだ、お前は!」

「みんなの心の妹、フミちゃんだお♧」

「初耳ですわね?」

「フミは大抵突拍子も無い事を言う。そういう時は黙って頷いてスルーしたら良いと、ヒフミが言っていた」

「にゃろう許さん♡」

「わわ、フミさんがぷんすかぽんモードです!?」

 “なにその可愛いモード”

「ふざけた奴らだ……!」

「ごめんて♡」

 

 

 シリアスが続かない面々でごめんね、と謝ったら全員から私だけだとツッコまれる。

 異議あり♡

 

 

「却下しますわ」

「あぁん、ひどぅい♡」

「何ですのそのイントネーション」

「時々フミはおかしくなるけど、そういう時は大体変なネットミームを使ってるらしい。ヒフミが言っていた」

「ぬぅ、私への対処法がダダ漏れしてる♡」

 

 

 やはりヒフミンには鉄槌を下さねばならぬ。

 取り敢えず三日間耐久お豆チャンバラとぽっち二点攻めで腰が抜けるまでアヘアヘさせよう。

 ふんすふんすと鼻息を荒くしていたら、付き合っていられるかとばかりにサオリちゃんが移動する。

 付かず離れずの距離を保ちつつそれを追い掛ける。

 戦力は十分だから、サオリちゃんが目指す逆転への一手をここで処理して置きたい。

 そうして数度の短い交戦を経て幾つか目の広間へ辿り着いた所で、これまでの疲労が一気に噴き出たのかサオリちゃんはバランスを崩して、壊れた壁に背を預けるように倒れ込んだ。

 

 

「くっ……、くそ……!」

 

 

 アズサちゃんも額に汗を浮かべてはいるけどまだまだ元気いっぱい。

 対するサオリちゃんは肩で息を吐いていて誰が見ても疲労困憊だ。

 ちょっと追い詰めすぎたかな?

 油断無く見据える役はワカモさんに押し付けて思案がてらリボルバーをくるくる弄んでいると、一人分の足音が近付いてきた。

 白いフード付きコートを羽織った、顔全体を覆うマスクを付けた紫髪の子。

 彼女の姿を見て、サオリちゃんは目に見えて狼狽えた。

 

 

「げほっ! 姫、どうして逃げなかった……」

「私たちの負けだよ、アズサ」

「アツコ……!?」

 

 

 彼女が口を開いた事に驚いた様子の二人。

 特にサオリちゃんの動揺は激しく、慌てて駆け寄っていった。

 

 

「だ、ダメだ、姫! 喋ると、彼女が──」

「大丈夫、もう全部終わりだから。それにどちらにせよ、彼女は私を生かしておくつもりは無かったはず。だから、良いの」

 

 

 その言葉に困惑するサオリちゃん。

 対して先生は静かに怒りの炎を燃やしている。

 喋ると、彼女が。

 その言い振りから察するに、彼女とやら──おそらくマダムはアツコちゃんに口を開かせない事で何かの利益を得ていた。

 それを守る為に喋る事を禁じていた。

 理由はまだ分からない。

 ユスティナ聖徒会を顕現させたように、何らかの儀式的、儀礼的な手続きに必要なものなのかもしれない。

 そして生かしておくつもりは無かった、との発言。

 先生の逆鱗を撫でるには充分すぎる。

 それはつまり、自身の計画の為に生徒に犠牲を強いた挙句なんら省みる事なく使い捨てると言っているのと同義。

 私でも滅多に見ない先生の怒った気配に、ワカモさんは驚いて口元に手を当て、イズナちゃんは怯えたように私と先生を交互に見る。

 はいはい、大丈夫よー♡

 安心させるように背中をぽんぽん。

 決して私たち生徒に向けられる事の無い、本気の怒りを間近で感じてしまったイズナちゃんは警戒しながらも私に身を寄せてきた。

 うん、可愛い。

 

 

「もうやめよう、サオリ」

「……やめる? アリウスに帰るということか……? 帰ったところで、私たちは殺されるだけ……」

「だから逃げよう、一緒に」

「逃げる……」

「うん。アズサが教えてくれた。いつからか持っていたこれは……私たちの憎しみじゃない。この憎しみを、私たちは習った。それからずっと、私たちのものだと思い込んでいた。……アズサはきっと、それに気づいたんでしょう?」

 

 

 アリウスが仕掛けてきたクーデター。

 その理由足る、彼女たちが持っていた原動力。

 トリニティとゲヘナに対する憎悪。

 当時を生きていない子供の彼女たちでは持ち得ようも無い深い憎しみ。

 それを植え付け都合の良い駒として扱う為に洗脳を施した大人の思惑を、アズサちゃんは補習授業部としての日々で完全に振り切った。

 そのアズサちゃんから、アツコちゃんへと。

 自分の意思と言うバトンが渡された。

 

 

「アズサは色々なことを学び、様々な経験を得た……。良い大人に出会えたんだね、アズサ。そして、自分のいるべき場所を見つけた……。だからサオリ……逃げよう。この場から、アリウスから。いつの間にか植え付けられた、私たちのものじゃないはずの憎しみから」

「逃げるだなんて、そんな……」

 

 

 戸惑うサオリちゃん。

 恐らく今の今まで≪逃げる≫という選択肢は無かったんだろう。

 初めて示された埒外の道に、どうしたら良いのか分からずに立ち尽くしている。

 これまで苛烈な戦士の顔をしていたサオリちゃんが、ようやく年相応の女の子の姿を見せた。

 流れが変わり新たな川へと水が流れ出そうとしていたその時、地面が揺れる。

 ただの地震ではない。

 何か大きな質量が出す地響き。

 

 

「こ、これは……」

「まさか……」

 

 

 アズサちゃんとアツコちゃんが何かを感じ取る。

 すぐにワカモさんが先生を庇うように立ち位置を変え、イズナちゃんがクナイ型手榴弾を構える。

 うん、先生は任せても良さそう。

 意識を前方奥へと向けていると、アツコちゃんが呟くように言葉を絞り出した。

 

 

「あの《教義》が、完成した……?」

「教義? ユスティナ聖徒会を呼び出した時みたいな?」

「これは、レベルが違う……」

「どういうことだ……」

 

 

 私の問いかけに首を振って答えてくれるアツコちゃん。

 サオリちゃんも想定外の出来事なのか鋭い目で通路の奥を見ている。

 まだ何も見えていないけど、次第に地響きは大きく、近くなっていく。

 

 

「せ、先生、これは……マズい、逃げないと……!」

 

 

 銃を構えながらも迫り来る何かへ警戒を露にするアズサちゃん。

 対する先生は、目を細めて忌々し気に口を開いた。

 

 

 “……どうやら、反則みたいだね”

「反則……?」

 

 

 反則。

 他のみんなは首を傾げているけど、私には分かる。

 これは大人からの干渉だ。

 生徒達の進む道を歪める為に手を出してきた、大人の力。

 それに対抗しようと、先生は懐へと手を伸ばした。

 

 

 “……フミ?”

「だーめ♡」

 

 

 駆け寄った私は、その手をそっと押し留める。

 以前先生が聞かせてくれた。

 大人として生徒達を大人から守る為に使う、不思議な力を持つカードの存在。

 奇跡とも言えるほどに出鱈目な事象を引き起こす事が出来る、魔法のような切り札。

 

 

「アズサちゃんだけならいざ知らず、ここには私もワカモさんもイズナちゃんも居る。チンケな反則程度、私たちで蹴散らしちゃお♡ その上でどうしてもダメだったらお願いね♡」

 “……そうだね。フミ、ワカモ、イズナ、アズサ。頼めるかな?”

 

 

 先生の言葉に揃って笑顔を返す。

 同時に、通路から異形の怪物が姿を見せた。

 抽象化された宗教画の偉人のような見た目の、ひどく細長く華奢な姿。

 顔が無い司祭服のような出で立ち、笏杖を持つ両手と胸の前で組んだ手──四本の腕、支えもなく浮かび上がる豪華な装飾が施されたタペストリーのようなもの。

 

 

「わぁ、分かりやすいボス♡」

 “写真撮っておいたらモモイが喜びそう”

「フミ、貴方様も……」

「え、ええと……?」

 

 

 いつも通りの私と先生のやり取りに呆れるワカモさんと困惑するイズナちゃん。

 まぁ今更気負うような事でも無いし♡

 先生が私たちに任せてくれた時点で、大人の目線から見ても()()()()()()()と言う事だ。

 それなら、変に構えず対処するだけ。

 

 

「にしし、ワカモさんもまだまだですにゃー♡」

「帰ったらもちもちの刑でしてよ」

「ゆるちて!」

「私も手伝おう」

「アズサちゃんまで!」

「わわっ、フミさん来ますよ!?」

「おっと♡」

 

 

 笏杖を大きく振り上げて頭上から赤と金の光を交互に落としてくる。

 

 

「っと」

 

 

 シールドを展開して頭上に掲げ衝撃を逃す。

 威力自体は大したものじゃない。

 なんならミカさんのサブマシンガンの方が数倍ヤバあじだった。

 なんなのミカさん♡

 

 

 “フミは前衛、ワカモは後方から援護と隙を見て一撃、アズサとイズナは物陰から遊撃!”

「わかりました!」

「了解」

「ウフフ……お任せ下さい♪」

「おーきーどーきー♡」

「フミ、その返事はいったい?」

「おっけーって意味のおちゃらけた言葉♡ 元々はおっけーも砕けた、友達とか家族に使うような言葉だったの♡ 出典は諸説あるけど、有名になったのは外の世界の名作ホラー映画でキラー役の人が口にしたセリフからなんだって♡」

「なるほど、フミは色々と詳しいな!」

 “雑学に関しては私より先生してるなぁ”

 

 

 そんな軽口を交わしながら謎の敵……もうボスで良いか、ボスへと銃弾を叩き込んでいく。

 サオリちゃんはアツコちゃんが守ってるから大丈夫そうだね。

 攻撃の始動に合わせて弾丸を当てていくけど痛覚が無いのか余り効いてる様子が無い。

 弱点みたいなのが有ったら集中して攻撃するんだけど。

 

 

「お退きなさい」

 

 

 声に導かれて射線を空けると、ワカモさんの銃弾がボスの脳天へと突き刺さる。

 流石ワカモさん、つよい。

 割と旧式モデルの銃を使ってるはずなんだけど、同口径の最新式の銃より威力とか精度とかが高い。

 本人の資質なのか、なんか良く分からないオカルトパパパッパパウワーなのか。

 ともあれ銃撃を受けたボスは初めて仰け反った。

 

 

「効いてる?」

 “みたいだね。みんな、ワカモに続いて一斉射撃!”

 

 

 号令に合わせて弾丸をぶち込む。

 マガジンを二つ撃ち切る頃には、ボスは項垂れたまま動かなくなった。

 いや私はマグチェンジだからマガジンじゃないけど♡

 

 

 “……倒したみたいだね”

「勝利のぶぃっ♡」

「ぶぃっ、です!」

 

 

 イズナちゃんとハイタッチを交わす。

 取り敢えず脅威は去ったと考えて良いだろう。

 ワカモさんは先生の服に付いた埃や瓦礫のくずを甲斐甲斐しく払っていた。

 うーん、良妻♡

 アズサちゃんはきょろきょろと周囲を軽く見回して、安心したような困ったような、そんな顔をしていた。

 アツコちゃんとサオリちゃんは戦闘に紛れて姿を消していた。

 ヒフミンからヒヨリちゃんとミサキちゃんが逃げ出したと連絡が来ていたので、どこかで合流するのだろう。

 私が頼んでおいた物資入りリュックサックはちゃんと持たせてくれたようなので多分大丈夫。

 本当にどうしようも無くなったら使うようにとビーコンも入れてあるから、あの四人は一先ず置いておこう。

 

 

 「なんにせよ、これで一旦は決着♡」

 

 

 紆余曲折有ったけど今回はここまでだろう。

 エデン条約自体は騒動で仕切り直し、ユスティナ聖徒会は先生がエデン条約機構を制定した事で無力化、アリウス生徒は大半を捕縛、アリウススクワッドは逃亡。

 お互い損耗は大きい。

 しばらくは調整と療養に励む事になるだろう。

 来たるマダムとの戦いに備えて、今日は一先ず帰還だ。

 正義実現委員会の面々が復帰したら、この地下廻廊の探索も進む……かな?

 

 

 

 

 

 

「はい♡」

 “はい”

「はい、じゃありません!」

 

 

 ぷりぷり怒るセリナさん。

 後日、私と先生は約束した通り救護騎士団で一日使って健康診断を受けていた。

 体重測定から始まり検尿採血レントゲン撮影MRIと、普通の病院で受ける検査となんら遜色無い。

 ていうか流石トリニティ、色んな医療機器が置いてある。

 これが財力の下地か……!

 

 

「フミさん、ちゃんと聴いてますか!」

「聴いてます聴いてます♡ でも小さい頃からこの食事量で♡」

 

 

 今はセリナさんに日頃の食生活で詰められていた。

 栄誉バランス自体は良好なんだけど、問題視されたのはその量だった。

 親しい人は知ってるけど、私は勘を意識して使うと一気に燃費が悪くなる。

 それこそ一日でお米を一升食べ切るのも珍しくない。

 美食研究会のアカリさんと食い倒れツアーと称して大食いチャレンジに挑んだ事もある。

 水を入れたピッチャーもチャレンジ内容に含んでいたりお腹の中で膨れるダイエット補助食品をこっそり料理に混ぜ込んでいたりするような悪質料理店だったので一切手加減せず、お店の金庫と冷蔵庫の食材を空にしてからハルナさんに爆発してもらった。

 他にもお寿司食べ放題と言っておきながらお寿司を食べる前に巨大な太巻を一本食べさせる店や、サービスと称してもやしや乾燥ワカメなんかで嵩増しして元を取らせないようにする店も薙ぎ倒した。

 ジュンコちゃんに《最強の二人》と揶揄されたのはちょっと上機嫌になってしまった。

 まぁ、そんな常人離れした胃袋を持つ私が、コハルちゃんみたいに可愛らしいお弁当の量で満足出来る訳も無く。

 

 

「逆に今の食事量でもこの体型だから、抑えたらなんか悪影響が出そうな気も♡」

「そ、それは確かに……。分かりました。野菜や果物、ナッツ類や魚もバランス良く食べている事ですし、フミさんの食事量は良しとしましょう」

「はぁーい♡」

「ですが先生はダメです」

 “ええっ!? なんでぇ!?”

「なんでじゃありません! フミさんと一緒に食べる時は普通の食事みたいですけど、お一人の時の食事が適当過ぎます!」

 “ちゃ、ちゃんとビタミンとか摂ってるよ?”

「カップ麺にマルチビタミンゼリーを付ければ大丈夫と思わないでください! そもそも塩分と脂質が多いのでカップ麺の食べ過ぎはよくありません! 二日に一回は多すぎます、せめて一週間に一回程度に抑えてくださいね!」

 “いや、その、お手軽で時間効率が……”

「健康第一ですっ!」

 “はい、すみません……”

 

 

 セリナさんのガチ説教でしょんぼりする先生。

 こんなに小さくなってる先生は初めて見るかもしれない。

 面白くて脇腹をつんつんしてたらセリナさんに鼻先を人差し指で押された。

 

 

「めっ!」

「ごめんちゃい♡」

 

 

 一通り内臓系の検査を終えて、担当をハナエちゃんにチェンジ。

 片足で立ったり身体を捻ったり座ったまま脚を動かしたりと、主に運動機能の検査を行う。

 なんだかんだデスクワークメインだから関節の凝りは二人とも溜まっていた。

 

 

 “あばばばば”

「先生、なんでこんな固まってるんですかぁ!?」

「本格的に整体行った方が良さげ♡」

 

 

 ハナエちゃんは初めて触る先生の肩甲骨周りに驚愕していた。

 初見はビビるよねぇ。

 あの意味の分からない岩石みたいな筋肉。

 ムキムキな訳じゃなく、単に凝り凝りなだけなんだけど。

 私が隙を見てマッサージしてるんだけど、如何せん対処療法だから数日で元に戻っちゃうんだよね。

 

 

「お、大人の人ってこんなに筋肉固まるものなんでしょうか……?」

 “いや、多分私が極端なケースだと思う”

「せんせーまだ若いもんねぇ♡」

 “フミさん?”

 

 

 ちらりと副担任に流し目を送ったのを見咎める先生。

 あっちもカチカチだよハナエちゃん♡

 ともあれ日頃の運動不足を指摘されたくらいで、胸の傷痕の予後も良好。

 お小言をもらったくらいで無事二人とも入院措置は取られずに救護騎士団を出る事が出来た。

 思いの外早く終わったので、外はまだ夕日が明るく照らしていた。

 

 

「っと、そう言えば新しい補習授業部が発足するんでしたっけ」

 “今度は純粋に成績不振らしいね”

「確か今日の午後にメンバーが公示されたはずー♡」

 

 

 手元のスマホを弄ってトリニティ公式へ。

 リンクをタップして補習授業部の情報にアクセスすると、見慣れた四人の顔写真が出てくる。

 

 

「あれ、更新まだですかね?」

 “…………”

「せんせ?」

 “フミ”

 

 

 隣で画面を覗き込んでいた先生が、そっと指を伸ばす。

 そこには更新日時が記されている。

 最終更新は今日の午後二時。

 つまり、これは最新の情報。

 

 

「……え? どゆこと?」

 “ヒフミは……テスト欠席だね。アロナ? ……うん、……うん、ありがとう。どうやらペロロコンサートに行っていたみたい。アズサは惜しい所まで行ってたけど点数不足だね。勉強時間が足りなかったのかな? コハルは……また上級生のテストを受けたみたい。こっちも後一問まで迫ったみたいだけど、流石に時期尚早だったね。ハナコは……あぁ、また点数を低くして遊んでる。多分テスト前にそれとなく勉強の進み具合を聴いて調整したんだろうね。寂しんぼさんだなぁ”

「…………つまり?」

 “補習授業部、再始動だね”

「…………やだもぉ゙ぉ゙ぉ゙ぉ♡」

 “気持ちはわか……ちょっ、待ってフミ! 待って!?”

 

 

 全力ダッシュで割り当てられた教室へ向かい扉を明け放つといつもの四人が居た。

 取り敢えずヒフミンにパワーボムを仕掛けた。

 アズサちゃんにはヘッドロックをかました。

 コハルちゃんは逆エビで固めた。

 ハナコちゃんはなんか構って欲しそうだったから放置した。

 折角頑張って勉強したのにこれじゃダメでしょもおぉぉぉぉ!!!

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