もしもシャーレにヒモを養う適性の有る娘が応募してきたら   作:一ノ瀬 崇

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ミニストーリーVol.3
懐かしの我が校


 電車に揺られる朝八時。

 今日は先生をワカモさんに任せ、一路ワイルドハントへと向かっていた。

 きっかけはエデン条約調印式での負傷とそれにまつわるゴタゴタの報告だ。

 日頃の業務ならメールでのやり取りで済むんだけど、流石に今回のは規模も大きく色々と直で聞きたいと言われたので一度我が校へ戻る事に。

 見慣れた景色のはずなのに、なんだか懐かしく感じる。

 電車を降りて校舎を目指すとワイルドハントを象徴する大きな門が見えてくる。

 一部生徒からは《クソデカ検閲所》と呼ばれる場所だ。

 ワイルドハントは校内への荷物の持ち込みに色々な制限が課せられており、寮監隊による厳格なチェックがある。

 特に嗜好品の類は厳しく、激辛ポテチなんかはしょっちゅう弾かれてたりする。

 多分、数世代前の学生がなんかやらかしたんだと思う。

 芸術と言い張れば大概は通るので、誰かしらお尻に激辛系のお菓子を入れて暴れ回るとか、そういうしょうもない騒動が有ったに違いない。

 たまに逆マイクロビキニと言い張って局部だけ丸出しのまま身の丈ほどの毛筆を操って風景画を描いてる娘も居るからね。

 ちょっとよくわからないです。

 芸術は懐が深ぇなぁ!

 

 

「次、入りなさい」

「はーい♡」

 

 

 担当生徒からの呼び出しに応じて検査場へ。

 パリッとした制服を着た生徒は、私を見ると相好を崩して出迎えてくれた。

 

 

「あっ、フミじゃん。久し振りー、なんか大立ち回りしたんだって?」

「ただんもー♡ 今日はその報告で帰ってきたよ♡」

「じゃあこの後は評議会か。なら手早く済ませちゃおう、はい鞄の中見せてー」

 

 

 お互い慣れたものでスムーズにチェックを済ませていく。

 鞄の中身は評議会に提出する用のレポートと先生からのお手紙。

 手持ちはいつものように小麦粉や砂糖、卵に香料。

 量は多いけど問題の無いラインナップだ。

 既製品は引っ掛かるけど、材料はほとんど大丈夫。

 料理やお菓子を題材に使う芸術の為の道具って認識だからね。

 

 

「はい、おっけー。ポケットはいつもの弾薬?」

「うむー、リボルバー用の弾薬♡」

「全チェック完了っと。差し入れ期待してるね!」

「にしし、任されよー♡」

 

 

 という訳でするっとパス。

 門をくぐれば懐かし我が校のキャンパスが広がっている。

 右を向いたら良く分からない前衛芸術の彫像、左を向いたら謎の全身タイツの集団。

 これぞワイルドハントだ。

 

 

「いやワイルド過ぎる♡」

 

 

 感性は常人寄りなので出来れば大衆受けしやすいものをお願いしたいところさん。

 歩き慣れた道をのっぽりのっぽり歩いて行くと、見知った顔に出会う。

 トレードマークの大きな帽子と、そこから流れる長い白髪。

 そしてどたぷんと揺れる大きなおちち。

 

 

「エリちゃんせんぱーい♡」

「あ、フミちゃん! お久しぶりです♪」

 

 

 駆け寄って両手を広げると、エリちゃん先輩はにこっと笑ってハグしてくれた。

 あぁ〜おっぱいに埋もれるぅ〜♡

 久し振りにエリウムを補給していると砂糖菓子のような甘い声が耳にかかる。

 

 

「あ〜、フミおねぇちゃんだぁ〜♪ なにしてるのぉ~?」

「おっほ♡ 耳が悦ぶ♡」

 

 

 突如聴こえてきた生ASMRに身体を震わせながら音の出所を探すと、イタズラっぽい笑みを浮かべたカノエ先輩が立っていた。

 さっきは気付かなかったけど、エリちゃん先輩の後ろに居たらしい。

 すぐに声をかけずアンブッシュを仕掛けてくるとか流石はカノエ先輩。

 私のイタズラの師匠の名に恥じない。

 

 

「カノエ先輩もお久しぶりですー♡ むぎゅー♡」

「イヒヒ……相変わらず甘えん坊さんだねぇ……」

 

 

 むぎゅむぎゅ抱き着くとカノエ先輩は優しく髪を梳いてくれる。

 体型は私とそう変わらないのに、溢れる母性が比べ物にならない強さだ。

 カノエ先輩は私の母になってくれるかもしれない。

 

 

「んー♡ 先輩好き好き♡」

「私もフミの事、好きだよぉ……」

「やーん♡ 両想い♡」

「ふふっ、お二人はいつでもラブラブですね」

「エリちゃん先輩も一緒にむぎゅー♡」

「わぁっ、相変わらずの欲張りさん!?」

 

 

 二人まとめてむぎゅぎゅぎゅーっと。

 実家のような安心感♡

 一通りイチャイチャしてから、お散歩中だった二人を連れて私は調理室へとやってきた。

 手にした食材でいつものようにクッキーを焼くのだ!

 

 

「という訳でフミちゃんクッキングのお時間でーす♡」

「わぁ、ぱちぱち♪」

「イヒッ……今日はクッキーなんだね」

「トリニティで色んな香料を買えたので試したくなっちゃいまして♡ お二人には試作に付き合っていただこうかと思います♡」

「確かに、見た事ないのもあるねぇ……?」

「味見なら任せてください!」

「うぅん、力強い♡」

 

 

 きゃいきゃい賑やかに雑談しながらクッキー生地を捏ねていく。

 すっかり慣れたもので分量さえ気を付ければ後はもう流れで全部進んでいくから、必然的にお喋りへと意識が向いていく。

 

 

「そう言えばフミちゃん、シャーレでのお仕事は順調ですか?」

「ばっちり♡ 色々刺激的な事も有ってインスピレーションに繋がるので、案外創作活動の息抜きにも良さそうですねぇ♡」

「シャーレの先生はどんな人なんですか?」

「一言で纏めるととてもステキな男性ですね♡ あれは多分カノエ先輩の前世の恋人さんに違いないです♡」

「……フミちゃんがそう言うなら、そうなのかもねぇ」

「一目見たらビビっと来ますよ♡ あ、良ければお二人もせんせーのハーレム入りしません?」

「うえっ、え、は、ハーレムですかっ!?」

「やぁん♡ エリちゃん先輩反応が可愛い♡」

「お二人も、って事は……イヒッ、なるほどぉ。もう先生は大人気なんだねぇ……」

「学校の垣根を越えて形成されてますからねぇ。ただまぁ、私たちが生徒の間は絶対に手を出さないと決めているので軽いボディタッチくらいで我慢ですけど♡」

「でもフミは、軽い、で済ませてないみたいだねぇ……?」

「なぜバレたし♡」

「前世で旦那様と居た時の私と、同じ顔してたよぉ」

「いやん、強くてニューゲームはズルい♡」

「あわわ……フミちゃんが一足先にオトナに……!」

「エリちゃん先輩もせんせーに気に入られそうだから大丈夫♡ その豊満なおちちを使うのです♡」

「おおおおおちちですかっ!?」

「エリちゃん先輩風に言うなら……マナの補給には、身体を密着させると効率が良いんですよ♡ せんせーはクソデカマナサーバーなので、マナも愛情も、いっぱい注ぎ込んでくれますよぉ♡ オトナになったら、もっとステキなものも、いっぱいとぷとぷ♡♡」

「いっぱい、とぷとぷ……!」

 

 

 ごくり、と生唾を飲み込むエリちゃん先輩。

 程よくムッツリさんなの好き♡

 実際にマナ補給する時の誘惑演技指導はカノエ先輩にお任せしちゃおう。

 と、賑やかに談笑していると二人分の足音が近付いてくる。

 扉を開けて入ってきたのは、これまた顔馴染みの二人だった。

 

 

「フミ、帰ってきたなら連絡寄越しなさいよ!」

「フミちゃん、おかえりなさい」

「レナちゃん、ツムギ先輩やほやほー♡」

 

 

 おっとりした雰囲気を漂わせるデスメタルの申し子ツムギ先輩とキヴォトスで一番のデザイナーを目指して邁進中のテンプレツンデレなレナちゃん。

 エリちゃん先輩とカノエ先輩合わせて四人で、オカルト研究会として活動している。

 入学当初からお世話になってる仲良しグループでもある。

 特にカノエ先輩は色んな面で私の師匠とも言える、偉大なる先達だ。

 イタズラの作法から料理の仕方、えっちな知識に戦闘の位置取りまで、ほぼ七割くらいは私の上位互換だと私は思ってる。

 

 

「イヒヒッ……そんな事ないよぉ? フミも、私には無い魅力が、いっぱいだからねぇ……♪」

「にしし、照れちゃう♡」

「ちょっと、二人でイチャイチャしてないで。クッキー焼きあがるわよ!」

「大丈夫だよレナちゃん、ちゃんとタイマーかけてるから♡」

 

 

 言うが早いか、取り付けていたタイマーがピピピと電子音を鳴らす。

 オーブンを開けると香ばしい狐色のクッキーが姿を現す。

 思わずみんなで笑顔を浮かべる。

 粗熱を取って袋へ小分けしていく。

 途中、残念ながら割れてしまったものは五人でつまみ食い。

 さくっと軽い歯応えにバターの香ばしさが口内に広がる。

 ストレートな砂糖の甘みがシンプルに美味しい。

 お、こっちはシナモンパウダーを振ったやつだ。

 香りが付くだけでまた違った美味しさになる。

 

 

「美味しい! やっぱフミはお菓子作るの上手いわねー」

「ここにチョコソースを掛けて見るのも良いかもしれませんね! 小さなキャンバスに見立てて色々描いてみるのもアリでしょうか……?」

「こら、レナちゃんにエリちゃん先輩♡ そっちは割れてないやつでしょー♡」

「わわっ、バレちゃいました!? カノエ先輩バリヤー!」

「ばりやー!」

「イヒッ、二人とも、わんぱくだねぇ……♪」

「うーん、悪魔的な美味しさ……悪魔の捧げ物にクッキーっていけますかね?」

「ファンシーな魔法陣組もうとしないで♡」

 

 

 その後も仲良くお喋りしながらクッキーを袋に詰めて配る用の詰め合わせセットが完成。

 みんなに甘味のお裾分けだ。

 それぞれ知り合いに配ってもらう為に解散し、私も寮監隊の詰所を目指して台車を押して歩いていく。

 途中知り合いに出会ったらクッキーをプレゼント。

 評判は上々だ。

 やっぱりみんな甘味に飢えてるねぇ。

 空き時間に材料買って作れば良いのにー♡

 

 

「ノックしてもしもーし♡」

「はい、ってあれ、フミちゃん?」

「やほほー♡ 今日もお疲れ様、クッキーの差し入れ持ってきたよ♡」

「クッキー!?」

 

 

 その言葉にざわめき立つ室内。

 シックな家具で統一された落ち着いた部屋で思い思いの時間を過ごしていた生徒達が一斉に顔を上げた。

 寮監隊はハードスケジュールだし、一般生徒からやっかみを受ける事も有って他の子よりも甘味への欲求が強い。

 あっという間に私の周囲には人だかりが出来ていた。

 

 

「一人一袋、人数分有るから慌てないで♡」

「わーい、フミちゃんのクッキーだー!」

「いつもありがとうございます」

「これが有るから寮監隊頑張れる……」

「はい、どーぞ♡ あとイチイ先輩が本格的にちょっとお疲れみたいなのでちゃんと診療してあげて♡」

 

 

 一人だいぶ限界に来てた先輩が居たので名指しでみんなに注意を促しておく。

 私が言うのもアレだけど、たかがクッキーのプレゼントで静かに涙を流すのはちょっとマズイ。

 心の疲れをしっかり癒して、元気になって欲しい。

 まぁ、寮監隊は本当にハードだからね。

 心身ともに健康じゃないと務まらないくらいには毎日忙しいし。

 再度先輩のケアを念押しして評議会のある建物へ。

 シャーレに居るようになって色々と手を回してもらったので改めてお礼もしておかないとね。

 時間は午前十時前。

 約束の時間にはまだ余裕はあるけど、目的の人物は建物の前でこちらに小さく手を振っていた。

 

 

「お久しぶりです、フミさん」

「ご無沙汰してます、ミリア先輩♡」

 

 

 寮監隊の幹部でありカノエ先輩の友人でもある、たおやかな気品を漂わせる美人のお姉さん。

 右の泣きぼくろがそこはかとなくドスケベである。

 また、私と個人的な協力関係を結んでいる相手でもある。

 

 

「今日もお忙しいところ、ありがとうございます♡ はい、ミリア先輩の分のクッキー♡」

「ありがとうございます。他でもないフミさんの頼みですからね、美味しい報酬も有るので吝かではありません」

 

 

 柔らかく微笑む姿がとても綺麗で、まるで美術品みたい。

 美人さんすぎて照れちゃうねぇ。

 そんなミリア先輩の後ろに付いて建物の中へ。

 受付で台車ごとクッキーを渡してから扉をくぐって応接室へ。

 待っていた評議会のメンバーは三人。

 全員以前からお世話になってる顔見知りの人達だ。

 今回の報告会もお茶会を兼ねての緩いものだと示してくれている。

 いやぁ、本当にありがたい事だよね。

 渡したクッキーが皿に盛られ、紅茶と一緒に出てくる。

 この紅茶も補習授業部に居た時に買っておいた茶葉だ。

 気に入ってもらえてなにより♡

 

 

 

 

 

 

「……という訳で、調印式における騒動は一旦の決着を得ました。残る事項はアリウス学区に残された生徒への対処と保護、戦闘中に離脱したアリウススクワッドや他部隊の生徒の確保、マダムと呼ばれる大人との対峙および処分あたりですかね」

「ふむ……ワイルドハントへの流入も無いとは言えませんね。アリウスの校章はこちらの資料でしたか」

「髑髏と薔薇か……随分と退廃的な意匠だ」

「寮監隊に後ほど通達しておきましょう。見掛けた場合は保護してからシャーレに連絡でよろしいですか?」

「ええ、それで。フミも構いませんね?」

「はい、そうしていただけると。アリウスに限らず、シャーレは広く復学も視野に入れた支援を行っていますので」

「非常に興味深い報告でした。ワイルドハントとして大きく動く事は有りませんが、何か起きた時の判断材料となるでしょう。フミも怪我を乗り越え、良くやってくれました。引き続きシャーレの業務に勤しんでください」

「ありがとうございます♡」

「ふふ、こらフミ。気を抜くのはちゃんと退室してからだ」

「おっと、失礼しました」

「それでは本日はこれまで」

 

 

 長時間に渡る報告会を終え、私とミリア先輩は評議会を後にした。

 ぐぐっと身体を伸ばして関節を鳴らしながら時計を見れば時間は午後二時。

 すっかりお腹の虫もキャンプファイヤーを始めて盛り上がっている。

 

 

「ちょっと遅れましたが優雅にランチと洒落込みます?」

「そうですね、流石にお腹が空きました」

「じゃあいきましょー♡ いっぱい食べるぞー♡」

「ふふ、フミさんは食べ盛りですものね」

 

 

 ミリア先輩を連れていざ食堂へ。

 ゲヘナの給食部と違ってちゃんとスタッフが配置されてるので、お昼のピーク時以外でも結構混んでる。

 いや、どう考えてもあの規模を二人で回してるのがおかしいんだけど。

 トレイを持って好きな料理をスタッフさんに盛ってもらい会計して席へ料理を持っていく。

 取り敢えず五周で良いか。

 ミリア先輩は先に席へ着いていて、山菜と天ぷらの温かいそばを前に、水の入ったコップを指で弾いて時間を潰していた。

 

 

「先に食べてても良かったのに♡ 先輩優しい♡」

「待ってるのはそうですが、先に食べ終えると満腹のままその量の食事を眺め続ける事になるので……」

「うぅん、それは確かに♡」

 

 

 という訳でテーブル三人分の幅を使ってお食事タイム。

 今日はあんかけ焼きそば、豆とチキンのサラダボウル、牛すき丼、アジフライ定食、エビのアヒージョとガーリックトーストのセット、カットフルーツの盛り合わせ。

 うむうむ、実に健康的なメニューだ。

 

 

「量以外は健康的ですね」

「まぁ全部一人前ですから♡」

 

 

 両手を合わせていただきまーす♡

 ぱくぱくもぐもぐ、と下品にならない程度に抑えて箸を伸ばしていく。

 アジフライにはやはり醤油……!

 ウマー♡

 あんかけ焼きそばには練からしを絡めて……これもウマー♡

 

 

「ふふっ、フミさんは本当、幸せそうに食べますね」

「美味しい食事は私の最高の娯楽ですから♡ あ、そうそう。また表には出ない場所で取引されてた美術品のリスト作って置きましたよ♡ 真贋は私には判断出来ないので取り敢えず大きな金額が動いたか無料で受け渡されたものに限定しましたけど」

「いつも助かります。後はこちらで探ってみますか」

「ミリア先輩、ちょっと提案が有るんですけど」

「どうしました?」

「資産運用で見るのが怖いくらいの資金が出来たので、信頼出来る管理人が見付からない美術品を保管して万人に見てもらえるよう、新しい美術館でも建てようかと思うんですが」

 

 

 私の言葉にミリア先輩は箸を置く。

 手を顎に当ててふむ、と考え込んでいる。

 そんな姿も似合っててカッコいい。

 

 

「……気持ちは嬉しいですが、やめておきましょう。継続的な管理となると色々手を回さないといけませんし、なによりフミさんの負担が増えます」

「いやん、優しい♡ そんなミリア先輩も好き♡ まぁ私もいきなり美術館はアレかとは思いましたけど。代案としては小規模のイベントとしてデパートや公園等で行われる美術展に幾つか出して、美術に興味を持った人達が本物を目にする機会を提供するのはどうでしょう? これなら短時間の管理で出費も抑えられ、真に美術品の素晴らしさを感じてくれる人の目に届く可能性も上がります。少なくとも、美術品の価値を金額で判断する輩の手には渡りにくくなります」

「それは……良いかもしれませんね。ちょっと検討してみましょう」

「次の仕事が終わったら色々やってみましょうか♡ 確か次はどこかのお屋敷で開かれるオークションでしたっけ?」

「ええ、コレクターとしての箔付けに利用され、そのまま死蔵されるそうです」

「個人展覧会で見せびらかすならまだしも、死蔵ですか……それは確かに、噂の怪盗も興味を示す訳ですね」

 

 

 ミリア先輩の信条というか美学からすると、その行為は看過できないだろうなー……んほー、キウイ美味しい♡

 評議会には提出しなかった紙の束を渡して、残りのフルーツを食べ尽くす。

 イチゴやリンゴだけじゃなく、キウイやライチにプラムなんかも入ってて凄く美味しいんだよねこれ。

 ともあれ、これで今日ワイルドハントでやる事は終わり。

 後はのんびりしつつ晩御飯の買い出しでもしてシャーレに戻ろう。

 献立を考えていると、不意にミリア先輩が流し目を送ってきた。

 

 

「なんですか先輩♡ そんな色っぽい視線を向けて♡ ますます好きになっちゃうんですけど♡」

「ふふっ……いえ、シャーレに所属するフミさんとしては良いのでしょうか、と」

「それを言ったら寮監隊の幹部なのにミリア先輩も結構やんちゃしてますよね?」

「それは確かに。ですが自分の欲で動く私と違い、フミさんにはメリットが無さそうですが。シャーレという秩序側の組織に所属した今でも、こうして私に支援していただける理由に興味が有りましてね」

「んー、特に強い動機は無いんですけど……強いて言えばアレですかね。美術品に対する、どこまでも純真無垢なミリア先輩の姿勢。それが私は好きなんですよ」

「フミさん……」

「あとは、まぁ」

 

 

 そこで区切る。

 気恥ずかしさで頬が熱くなるのを自覚しつつ、声を落として続けた。

 

 

「私、慈愛の怪盗のファンなんですよ。綺麗でカッコよくて、ステキじゃないですか♡」

「……もう、フミさんったら♪」

「にしし♡」

 

 

 小さく笑い合う。

 先生にも聞かれるまではナイショの、ちょっとした秘密。

 こういうロマンに憧れるお年頃って事で一つ♡

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