もしもシャーレにヒモを養う適性の有る娘が応募してきたら 作:一ノ瀬 崇
「今日はなんにもない素晴らしい一日♡」
「え、えへへ……」
今日は祝日。
シャーレのお仕事もお休みなので居住区にある便利屋68のオフィスへとやってきていた。
先生はレッドウィンターにお出掛けである。
ゆっくり休めば良いのにとも思うけど生徒と触れ合ってるのが一番のリフレッシュとか言うのでそういうものだと思う事にした。
まぁ普段なら平日だから書類仕事が無い分生徒達と触れ合う時間を取れるのは確かにプラスかも。
「いや、迷惑って事は絶対に無いけど、折角の祝日なんだから二人で出掛けて来ても良いんじゃない? デートとか行かないの?」
困惑した様子でこっちを見るのはカヨコさん。
コーヒーを飲みつつ私が厳選した子猫動画詰め合わせを視聴している。
ムツキさんはアルさんがパソコンで今月分の支出を計算してるのを時々訂正しながら先程私が焼いたスコーンをぽりぽり摘んでいる。
愛するはーちゃんは、ソファーの上に寝転ぶ私の掛け布団になって密着イチャイチャ中だ。
「はーちゃんの大好きな便利屋のみなさんの空間ですからどこよりもリラックスしたはーちゃんが見られるんですよ♡ お家デート的な♡」
「あぅ……お、お邪魔でしたらどこかへ行きますので……」
「いや、だから邪魔なんて欠片も思ってないから。ハルカとフミが良いなら良いけど」
「くふふ〜♪ カヨコっちもフミっちかアルちゃんに抱き着いてみたら?」
「……そんな事言ってるとムツキに抱き着くよ」
「えっ? ……えっ!?」
「反撃されるムツキさんもかわかわ♡」
「あわわ……」
某ディスクを送り付けて以来、便利屋では時折百合の花が咲く事がある。
元々仲良し四人組だったからか汚染げふんげふん啓蒙が高まるのも案外早かったらしい。
ニンマリして口角が眉尻とくっつく勢いだ。
そんなご機嫌フェイスな私のほっぺたをはーちゃんが指先で軽くつついてくる。
「ぷみー♡」
「えへへ……フミちゃん、可愛い……♪」
「はーちゃんも可愛いよー♡ 依頼の時はカッコいいし、とってもステキ♡」
「そ、そうですか……?」
にやにやと緩む頬を叱咤するも堪えきれずにだらしなく崩壊するはーちゃん。
可愛いでしょう、私の嫁なんすよ♡
華奢な身体を抱き寄せて瞳を覗き込むと、あわあわと戸惑った様子で小さく手をぱたぱた振る。
動きが可愛すぎる。
これはもう法律で規制した方が良いのでは!
堪らず舌を伸ばしてはーちゃんの唇をちろっと舐める。
一瞬動きを止めたはーちゃんの顔が、ぽんっと真っ赤に染まった。
「あわ、あわわわわ……!?」
「はーちゃん好き♡ 好き♡ いっぱい好き♡ 愛してる♡ 私のステキなお姫様♡」
「あ、あぅぅ……そ、その……私も、フミちゃん、大好きです……♪」
「……えぇーい! 二人がラブラブなのは分かったからそれ以上の事をするなら部屋でやってきなさい! 目のやり場に困るのよ!?」
と、私とはーちゃんの睦事に痺れを切らしたアルさんが立ち上がってビシィッと私たちに指を突き付ける。
敬愛しているアルさんの言葉にびくりと固まるはーちゃん。
そんな彼女の髪の毛を優しく梳きながら左手でぐいっと身体を引き寄せソファーから起き上がる。
「混ざります?」
「混ざらないわよっ」
「にしし、それじゃはーちゃん借りていきますね♡」
「し、失礼しますっ」
抱き着くように腕を回して歩き出す。
はーちゃんの方が大きいから並ぶと良い高さにお尻とお胸が来るんだよねぇ。
部屋を後にする時に見たアルさんは、左側にさりげなく身を寄せるカヨコさん、右側に顎を肩に乗せたムツキさんに挟まれていた。
めっちゃ狙われてる♡
百合は良いぞ♡
空いてる右手を振ってアルさんの健闘を祈りつつ、はーちゃんを連れて自分の部屋へ。
何回かはーちゃんを招待したけど、まだ慣れないのかきょろきょろと部屋を見回すの小動物みたいで可愛い♡
はーちゃん用の枕やクッションを取り出してセットしていく。
そのままベッドに腰を下ろして隣をぽんぽん叩くと、はーちゃんはおずおずと隣に座った。
これだけ仲良くなってもまだ奥ゆかしいのほんと可愛い♡
すかさず抱き寄せてほっぺたすりすり♡
「ひゃわぁ」
「んー、はーちゃんのほっぺたすべすべ♡」
「ふ、フミちゃんのほっぺたはもちもちです……♪」
「にしし、可愛いはーちゃんを独り占めだー♡」
はーちゃんをぐいっと引き寄せ私の身体の上に乗せてベッドへ倒れ込む。
相変わらず羽のように軽い。
火薬と硝煙と土埃の臭いに交じって、甘い香りが鼻をくすぐる。
最近ハマってる私お気に入りの匂い。
「すぅーっ♡」
「わぁっ、そんな、す、吸ったら恥ずかしい……」
「大好きなはーちゃんの匂い♡ ドキドキしちゃう♡」
「……お、お返しに、吸っちゃいますよ……?」
「ばっちこーい♡」
「で、では失礼します……くんくん……、あ……えへへ、フミちゃんの匂い……♪」
私の鎖骨に鼻先を付けて堪能するはーちゃん。
余りの可愛さに心の副担任が臨戦態勢になっちゃう。
反撃とばかりに右手を伸ばしてお尻を撫で上げると面白いように身体が跳ねる。
やわやわすべすべのゆで卵みたいな肌触り。
これは傾国のお尻に違いない。
そんな事を考えていると頬を赤く染めたはーちゃんが何か言いたそうに口元をもにょもにょさせていた。
何だその可愛い顔は!
ちゅーしちゃうぞ♡
「ちゅー♡」
「んむっ!? んっ、はわぁっ!?」
「にしし、はーちゃん可愛すぎ♡」
「うぅ……フミちゃんのえっち……」
「嫌だった?」
「……嬉しい、ですけど……」
「じゃあもっかいちゅー♡」
「んっ、フミちゃ、んっんっ」
もう一回口付けるとはーちゃんは両手を回して私の頭を抱き込んだ。
いつもはされるがままなのに、一度スイッチが入ると自分からは絶対に私を離さず密着してくるんだよね。
まるで食虫植物みたいに私を食べようとしてくる。
やーん、はーちゃんなら良いよ♡♡♡
何度も唇を触れ合わせたり舌先を絡めたりしてお互いに好きを交換していると、遠くから何やら迫真の叫びが聴こえてきた。
『……な、なななな、なんですってぇー……!!?』
「鶏より通る声♡」
「な、何か有ったんでしょうか……!?」
「確認してみよー♡」
起き上がって再び便利屋オフィスへ。
扉を開けると先程までは空いていた来客用のソファーに、見覚えのあるふわふわした白いモップのような後ろ姿が鎮座していた。
「あれ、ヒナさん?」
「フミ、久し振りね」
「どももー♡ 便利屋オフィスに訪ねてくるなんて何か厄介事ですか?」
「そうね……ちょっと手を借りたくて」
「わぁほんとに珍しい♡」
来客はゲヘナの風紀委員長ヒナさんだった。
先生と同じく仕事を抱え込むタイプで、他の人に仕事を割り振るのが下手っぴなタイプでもある。
ゲヘナの事なら自分で解決しようと前線に出ていくヒナさんが、わざわざ便利屋を頼るとは余程面倒臭い事が起きているのだろうか。
出されたココアを飲んでちょっとほわほわしている姿からは日頃の溜まった疲労が窺える。
「それでどうしたの? アルさんの顔が面白いまま戻ってないけど♡」
「誰が面白い顔よっ!」
「あ、戻った♡ うんうん、いつもの美人さん♡ よっ、アウトローの頂点を取りに行く女社長♡」
「うふふ、もっと褒めても良いのよ!」
「フミ、話が進まなくなるから」
「はぁーい♡ それでヒナさんはどうしたのん?」
「……うん、まぁ良いわ。便利屋に依頼したいのは……」
「どんな依頼でも受けるわよ!」
「……休日の過ごし方を、教えて欲しいの」
「……うん?」
私も含めてこの場に居る全員の頭の上にはてなが乱舞した。
そんな困惑の渦を感じ取ったヒナさんが補足する。
「折角の祝日なんだから今日くらいはゆっくり休んで欲しい、ってみんなが言ってくれて……半ば強制的に追い出されたの。それで一日フリーになったのだけれど……丸一日の休みなんて久し振り過ぎて、何をしたら良いのか分からないのよ。それで、行く当てもなく歩いていたらシャーレに来てたの」
「…………えぇ……?」
予想を遥かに下回った答えに思わず呻き声が出る。
幾ら何でもワーカーホリックが過ぎる。
風紀委員長とはいえ絶対にその仕事をしないと首を刎ねられる訳では無いんだから、普通に休んでもらって良い。
前回お邪魔した時に先生と一緒に色々改善案を出した筈なんだけど、それでも改善しないのかまだ対処出来ていないのか。
いや、どうにか改善して絞り出した時間が今日の休みなのかもしれない。
どっちにしろ痛ましい事には変わりないので、今日はヒナさんをいっぱい癒して甘やかそう。
「そう言う事なら私もお手伝いしますよー♡ リフレッシュマスターフミちゃんに任せてください♡」
「リフレッシュ……マスター?」
「癒しの伝道師でも良いです♡」
「ふふっ、確かに休日の過ごし方を一番知ってるのはフミだね」
いち早く復帰したカヨコさんが微笑んでみせる。
絵画のような綺麗さが爆発しておられる。
「カヨコさんに褒められると照れちゃう♡」
「フミっちは暇の潰し方が上手いもんね♪ こないだもアビドス行ったりミレニアム行ったり、色んな所で遊んではお土産買ってきてくれるし♪」
「ふ、フミちゃんなら、風紀委員長に合わせた休日の過ごし方を選んでくれると思います……!」
「……そうね、便利屋で一番オンオフの切り替えが上手なのはフミだもの。しっかり教えてもらうと良いわ」
「そう……ひとつ気になったのだけれど」
「なにかしら?」
「フミ、便利屋のメンバーなの? メンバーは貴女達四人だけだと記憶しているわ」
視線を向けるヒナさんに、隣にいるはーちゃんをぐいっと抱き寄せて笑う。
「名誉職員です♡ はーちゃんのお嫁さんなので♡」
「えへへ……フミちゃんのお嫁さん、です……♪」
「…………いいわ。仲良き事は美しきかな、よね」
「そゆことですー♡」
何故かちょっと遠い目をしたヒナさんに見せ付けるようにはーちゃんへ頬を寄せる。
ぷにぷにもちもち。
「それじゃ、まずは朝ごはんでも食べますか♡ ヒナさん朝ごはんまだですよね?」
ちらと壁掛け時計を見ると時刻は朝八時。
今日は便利屋のみんなと朝ごはんを食べようと思い、何が食べたいか聞きに来ていた。
まぁはーちゃんの色香に負けてちゅっちゅしてたんだけども♡
なので朝ごはんの準備はこれからである。
「ええ、出掛けにアコに淹れてもらったコーヒーを飲んだくらいね」
「あの激渋コーヒー飲んだんですか♡」
「眠気覚ましには良いのよ」
「あんまり濃いコーヒーをミルク入れずに飲んでると尿路結石出来ますよ♡」
「えっ!?」
「あれだけ濃いコーヒーですから、ヒナさんの場合は無糖のミルクを入れちゃった方が良いです♡ もちろん飲み過ぎは良くないので普通のコーヒーを一日二杯くらいで♡」
「そ、そうね……気を付けるわ」
少し怯えた様子のヒナさん。
キヴォトスで尿路結石になるのは老体の獣人か卒業した生徒だ。
生徒で尿路結石になる子は滅多に居ないけど、なった時の激痛に悶え苦しむ様子は貴重な資料・教材として全生徒がBDで強制視聴もとい勉強している。
なのでその恐ろしさはどんな怪談よりも伝わっている。
見ればカヨコさんやアルさんもちょっと挙動不審だ。
二人ともブラックコーヒー好きだもんね。
アルさんはカッコいいからと飲んでるみたいだけど♡
ムツキさんはカフェオレ派、はーちゃんはココア派なので心配は無い。
「尿路結石はさておき、朝ごはんですよ♡ 和食か洋食、どっちが良いです?」
「なら和食ね。普段はトーストやバゲットを食べてるからたまにはお味噌汁が恋しいわ」
「はーい♡ それじゃ和食で♡」
と言う事で給湯室とは名ばかりのキッチンへ移動する。
色々と持ち込んだり設置したりした結果、お店を出せる程度の調理器具が揃っている。
自警団の子達に振る舞う時にも大活躍だ。
「じゃあいつものようにお味噌汁とサラダはお任せしますね♡」
「解った。さて、具材はどうしようかな……」
カヨコさんと二人でごはん作り。
私も味噌汁は作れるけど、先生の好みはカヨコさんが作ったやつなので自然と味噌汁はお任せするようになった。
あれだけ美味しい美味しい言って食べてるのに、目隠しして食べさせたらいっつもカヨコさんの味噌汁を選ぶんだよねぇ。
つまり味付けはカヨコさんに正妻ポイントを10点!
悔しさも有るけどこればっかりは勝てないので諦めた。
実際私もカヨコさんの味付け大好きだし♡
「ふふーん、はーん、ふーん♡」
「ご機嫌だね、フミ」
「隣にカヨコさんが居ますからね♡ こんな美人さんを独り占めして一緒にお料理だなんで贅沢です♡」
「ふふ、褒めても何も出ないよ?」
「見惚れるくらいステキな笑顔もらいました♡」
「もう、悪い子なんだから」
鼻先をぷにっと押される。
あっあっ、カヨコさんのいい匂いがする♡
ほんの少しだけ香るのは香水なのかシャンプーなのか。
おっと、あんまりイチャイチャしてるとはーちゃんのほっぺたがぷくぷくしちゃうね。
グリルから焼けた鱈を取り出しお皿に乗せて酢漬けにしたミョウガを添える。
白味噌で焼いた鱈にはこれが合うんだよね。
四つの窪みが付いた四角い小皿に海苔の佃煮、山ワサビの醤油和え、濾した梅干し、なめ茸をちょっぴりずつ乗せてご飯の友も準備おっけー。
蒸し器で温めた茶碗蒸しをお盆に乗せて炊きたてご飯も茶碗に盛って、みんなの所へ持っていく。
「お控えなすって! お控えなすって!」
「あは、殿中でござるー♪」
「え、なに!?」
「フミちゃんのごはんの、お約束みたいなものです」
「よく考えなくても謎の文化よねこれ」
真っ先にノッてくれたムツキさんには特製茶碗蒸しも付けちゃう。
普通のと違うのは茶碗蒸しの底に甘々コーンが入っているところ。
ムツキさんはコーン入った茶碗蒸し好きなんだよねぇ。
おかずがいっぱいのお盆にヒナさんもちょっと驚いてる。
ふっふっふ、美味しさに二度驚くが良い!
「それじゃみんなでいただきまーす♡」
「いただきまーす♪ お、今日の味噌汁は大根おろしと落葉キノコだ♪」
「こないだセールしてたからね。うん、我ながら美味しく出来た」
「さっすがカヨコはお料理上手よねー! あら、これは何かしら……んハーッ!?」
「アル様!? お、お水を……!」
「んぐっ、んくっ……ぷはぁっ! ありがと、ハルカ」
「山ワサビ全部行くとは思わなかった♡ ちょっとずつ食べて♡」
「あははっ、アルちゃん鼻水出てるよ♪ はい、ちーん♪」
「ちーん……うぅ、不意打ちを受けたわ。こっちなら大丈夫よね……すっぱ!?」
「アル、何で一口で全部行くの」
「いや、なんだかんだフミのご飯って美味しいから思わず……!」
「嬉しいけどもっと落ち着いて♡」
「賑やかなのね……ふふ、こんな食事も久し振りだわ」
「食事は毎日するものですから、どうせなら色んな楽しみが有った方が人生豊かになりますから♡」
「フミのバイタリティの一因が解った気がしたわ。フミ、ご飯おかわりもらえる?」
「はいなー♡ アルさんも、小皿のご飯の友おかわりします?」
「ええ、今度は少しずつ味わって食べるわ!」
二人分のおかわりを持っていき、またみんなで賑やかに朝ごはんを食べていく。
食べ終わる頃にはヒナさんの妙な気構えも無くなって自然体になっていた。
食器を洗浄機に入れてスイッチを押し便利屋オフィスへと戻る。
「さてー、早速ですけどヒナさん、何かやりたい事はあります?」
「やりたい事……」
「見に行きたい映画が有るとか、日向ぼっこしながら寝たいとか♡ 特に無ければ私がマッサージしますけど♡」
「そうね……思い付かないし、マッサージをお願いしようかしら」
「フミのは効くわよー! 私もよくやってもらうけど、肩こりとか腰回りがすっごい楽になるの!」
「ヒナさんは頸とか肩とか背中とか、めっちゃゴリゴリになってそう♡」
「確かに日頃書類仕事が多いから固まってそう……」
「それじゃお一人さまごあんなーい♡」
ヒナさんの手を引いて居住区の空き部屋へ。
途中でにぎにぎしたらちょっと照れてたのがなんとも可愛らしい。
これは先生に頭嗅がれちゃうのも納得。
部屋に着いたヒナさんは周囲を見回しながら小首を傾げた。
「ここは?」
「空き部屋の一つですね♡ シャーレにお泊りする子達の為に開放してるんです♡ マッサージの途中で寝落ちしても良いようにご案内しました♡」
「寝落ち……確かに、するかも」
「いつもゲヘナの為に頑張ってるんですから、今日くらいは何も考えないでごろごろして良いんです♡ マコトさんが茶々入れて来たらフミちゃんパンチをお見舞いしちゃいますから♡」
「ふふ……それは頼もしいわね。それじゃ早速お願いしようかしら」
「では上着を脱いでベッドに寝転がってください♡ 先ずはうつ伏せに♡ あ、髪の毛まとめちゃいますね♡」
ブラウス姿になったヒナさんの髪の毛を頭の上でお団子に纏めて背中が見えるように。
いやー、やっぱ毛量が凄いね。
髪の毛だけで数キロありそう。
「それじゃ首の骨から伸ばして行きますね♡」
「首の骨?」
「はい、ヒナさんの髪の毛長くてもふもふなので結構な重量がありますよね? その重さの分だけ常に後ろへ引っ張るように負荷が掛かってるんです。それで頚椎がちょっとずつズレちゃってるんで、まっすぐに戻して行きますね♡ じゃあ持ち上げまーす♡」
「んっ……」
「まず頭蓋を支える一番大きいところを……ぐいーっ♡」
「んぐっ」
「今首の重さが私の腕に掛かってます。普段どれだけの重さを支えているか分かりました?」
「ええ……なんだか不思議な感覚ね。まるで首が浮いてるみたい」
首を調整して背骨へ。
ここも結構歪みが酷いので一つずつゆっくり戻していく。
「それじゃ仰向けになって、右膝を立てて両手で抱えて自分の顔に近付けてください♡ 曲げますよー♡」
「おふっ」
「次は左膝でーす♡ はいぐいーっ♡」
「うっ」
「もっかい左でーす♡」
「んっ」
施術を続けて今度は肩周り。
ここが一番の強敵だ。
案の定先生より凝っていたので念入りにほぐしていく。
「少しずつゴリゴリ♡ 血流が良くなるとぽかぽかして痒くなるかもしれません♡」
「んっ、ぉ゙ふっ、あぁ……熱くなってきたわ」
「ヒナさん羽の付け根周辺も硬いので揉みほぐしますね♡」
「ええ、お願い……」
続けて行くとだんだんヒナさんの声がゆったりしてきた。
痛くならないように優しくリンパ節を押していく。
顔周りから爪先まで全身くまなく。
一通り終わった頃には、ヒナさんは穏やかな寝息を立てていた。
身体を冷やさないようにタオルケットを掛けて、書き置きも残してこっそり退室。
お昼ごはんは何作ろうかなー。
オフィスに戻ってはーちゃんをむにむにしつつ頭を悩ませていると、ムツキさんが手を上げた。
「はいはーい♪ ムツキちゃん、甘い物が食べたいでーす♪」
「甘い物かぁ……砂糖系? それともフルーツ系?」
「両方!」
「両方って、そんな無茶な事」
「出来ますよ♡ パンケーキとベリーソースで軽く済ませちゃいます?」
「あら、美味しそうね。それじゃフミに作ってもらおうかしら」
「ほいさー♡」
「な、何か手伝える事があれば……」
「ありがとはーちゃん♡ 一緒に作ろっか♡」
という訳でムツキさんリクエストでお昼ごはんはパンケーキに。
なんだか普通の女子高生みたいなメニューだね。
手早く作ってパンケーキタワーを建てる。
欲しい分だけ山から持っていくスタイルだ。
横にはベリーソースやホイップクリームやナッツ類を添えておく。
「女子高生っぽいー♡」
「いや、フミも女子高生でしょ」
「普段がわんぱくな食事しかしてなくて♡」
「フミっち料理上手なのに時々全面茶色のおかずで染めるからねー」
「こないだは唐揚げ、餃子、春巻き、ハンバーグだったかしら?」
「わ、わんぱくなフミちゃんも、良いと思います……♪」
「はーちゃん好き♡」
堪らずほっぺたにちゅーする。
あわあわしてるはーちゃんに存分に癒されていると、不意にはーちゃんが指を絡めてきた。
細くてちっちゃい手を繋いでにぎにぎ♡
おててあったかいね♡
「隙有らばイチャイチャするわね……」
「付き合いたてのカップルなんてこんなもんですよ♡」
「か、カップル……え、えへへへ……♪」
「ハルカちゃんも幸せそうにしちゃって♪ なんだか妬けちゃうなぁ?」
「混ざります?」
「混ざったらフミっちに毒されそう」
「もう手遅れですよー♡」
「手遅れだったかぁ」
ムツキさんとのんびりお喋りしていると、ふとはーちゃんの口の端にクリームが付いているのに気付く。
なんの気無しにそれをぺろりと舐め取る。
うん、甘々♡
「おはよう…」
「あ、ヒナさん♡ パンケーキ作ったんですけど食べます?」
「食べる……」
寝起きなのかゲヘナモサモサシロモップと化しているヒナさんの姿に困惑するアルさんとカヨコさん。
ムツキさんは楽しそうにスマホで写真を撮っている。
はーちゃんは私と一緒にヒナさんの分のお皿を出したりオレンジジュースを注いだりしてくれた。
内助の功♡
普段の機敏な姿からは考えられないもそもそした動きでパンケーキを食べていくヒナさん。
ちょっと小動物っぽくて可愛い。
「あ、美味しい……」
「お口に合ったようでなにより♡」
しばらくヒナさんの食事風景を眺めてほっこりしていたらみんなの視線に気付いてか頬が少し赤くなる。
ようやく目が覚めてきたようだ。
いつもと違う親しみやすい風紀委員長の姿にアルさんでさえ相好を崩している。
そうして楽しいお昼ごはんを終えてまったり緑茶で一服タイム。
くぴくぴぷふー、と堪能しているとモモトークに連絡が入った。
差出人は先生。
レッドウィンターでの用事を終えて帰りの電車に乗っているらしい。
もう三十分くらいで着くとか。
「ヒナさんヒナさん♡」
「なに、フミ」
「後三十分くらいでせんせー帰ってくるみたいですよ♡」
「! ……そう」
一瞬目を見開いてすぐお澄まし顔になるヒナさん。
でも羽がぱたぱた動いてるので喜んでるのは丸わかりだ。
実はファンクラブでも有るんじゃないかと思うくらいちょっとした所作が可愛い。
「遠出してお疲れでしょうし、ヒナさんが癒してあげてください♡」
「えっ!? い、いえ、疲れてるのなら無理をさせる訳にはいかないわ」
「でもせんせーはヒナさんをご所望ですよ?」
ほら、とモモトークの画面を見せると『ヒナ来てるの? すぐ戻るね!!!』とテンションの高い先生の返事が届いている。
「にしし、愛されてますなぁ♡ つんつん♡」
「つ、つつかないで……」
「大人しく後ろから抱っこされつつ頭の匂いを嗅がれてください♡」
「うぅ……」
「執務室は誰も行かないと思うので、しばらく二人っきりですよー♡ せんせーに好意を伝えるチャンス♡」
「で、でも先生の周りにはフミを始めとして色んな子が居るし、私みたいな可愛くない女なんか……」
「可愛くない子の身体抱き締めて匂いなんて嗅ぎませんよ♡ ほらほらぁ♡ せんせーのハーレム入って、いっぱいせんせーとデートして、たくさんせんせーの子供産みましょう♡♡」
「は、ハーレム……!」
「子供が出来たらみんなで面倒を見るから子育ても安心♡ ちゃんとせんせーのスケジュールを押さえられるからデートもお泊りも計画的に出来ますよ♡ それに、せんせーのお仕事に付いていってカッコいい姿を特等席で眺められますよ♡ 上手い事誘惑出来たら、路地裏な物陰なんかでケダモノになったせんせーにいっぱい幸せにされちゃったりも……♡♡」
「そ、そんな事まで……!」
「ヒナさん、私と同じくらいの身長ですし……後ろから持ち上げられてせんせーを気持ち良くするだけの幸せお人形さんみたいに扱われちゃうかも……♡ 足が地面に付かなくて、せんせーに抱きかかえられたまま、一番奥にびゅーっ♡ びゅーっ、て♡♡ くたくたになった所でせんせーが優しくキスをしてくれるんですけど、一緒にお胸のぽっちもカリカリ、くにくに、って♡♡♡ 気持ち良すぎてふわふわになってるのに、まだまだ元気なせんせーが『ごめん、ごめんね』って謝りながら奥にずんっずんって♡♡」
「せ、先生がそんな、そんな……!?」
「フミっちの囁き戦術、いつ見ても凶悪だよねー」
「風紀委員長が転がされてる所、初めて見たかも」
「あのヒナをも手玉に取るなんて……! フミのアウトローっぷりも凄いわね……!」
「流石フミちゃんです……っ♪」
無事ヒナさんの啓蒙を高める事に成功し、真っ赤な顔をして執務室へと向かっていった。
後は先生にお任せしておけばゲヘナツヤツヤシロモップになるだろう。
任務完了♡
「という訳で昂ってきたのではーちゃんお借りしまーす♡」
「どういう訳よっ!?」
「にしし♡ アルさんアルさん♡」
「なによ?」
「横、横♡」
私の言葉に首を巡らせると真っ赤な顔をして淫靡に微笑むムツキさんとカヨコさんの姿が。
私の心を尽くした説得で高まったらしい。
これは朝までぐちょぐちょコースかもしれない。
大変だろうけど頑張ってね、と踵を返そうとしたらはーちゃんが袖をギュッと握ってきた。
おや、と振り返ってはーちゃんを見る。
「どしたのん♡」
「あ、あの……フミちゃんが良ければ、みんな一緒に、楽しんでみませんか……?」
その時私に電流走る。
はーちゃんからまさかのお誘い。
それも、便利屋みんなと私でくんずほぐれずのバトルロワイヤルをやろうと言うのだ。
驚きを隠せないまま三人を見るとムツキさんとカヨコさんは満更でもなさそう。
アルさんはぷるぷると震えていたけど、キッと目に力を入れて私を見据えた。
「こうなったら便利屋親睦会と洒落込むわよ! フミ、今日は寝かせてあげないんだからね、覚悟しなさい!!」
「えっ……えっ♡」
「まぁ、日頃から色香をばら撒いたフミの自業自得って事で」
「くふふ〜♪ 今日はフミっちをひんひん鳴かせちゃうよ〜♪」
「えへへ……フミちゃんの事、いっぱい気持ち良くしてみせますから……♡」
「まさかの総受け♡ もしやピンチなのでは♡」
この後バッチリ美味しく頂かれた。
流石の私も四対一ではどうする事も出来ず、立派な腰へこ人形になったのだった。
誘惑のしすぎには気を付けよう!