もしもシャーレにヒモを養う適性の有る娘が応募してきたら   作:一ノ瀬 崇

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五話目

 床を蹴り飛ばし左腰に手を伸ばす。

 掴んだ取手の横にあるスイッチを押すと同時、大将さんに覆い被さるように身を躍らせる。

 

 

「みんな伏せてっ!」

 

 

 その声が届くか否か、というタイミングで視界の全てが爆ぜる。

 

 

「のわぁっ!?」

 

 

 もふっとした手触りと共に大将さんの驚きの声が上がり、全身が浮く様な激しい風、それに一歩遅れて熱、さらに遅れて物凄い圧力が店内に吹き荒れた。

 何とか展開出来たシールドが軋むように音を立て、どんどん左手に負荷が掛かっていく。

 コートの改造を頼んでおいて良かったと思える頃には、辺りは静けさを取り戻していた。

 まだパラパラと小さな瓦礫は降ってくるけど、どうやら追撃は無いらしい。

 押し倒す形になった大将さんは目を白黒させていたけど、どうやら見える範囲に怪我はしていなさそうだった。

 

 

「大将さん、無事ですか?」

「あ、あぁ⋯⋯お嬢ちゃんが守ってくれたんだな。ありがとうよ、かすり傷くらいで済んだ」

「いえいえ、ご無事でなによりです。追撃は無さそうですが、安全が確保された訳ではないのでどこか近くの避難シェルターへ。お一人でも大丈夫ですか?」

「あぁ、恩に着るよ。お嬢ちゃんも怪我しないようにな!」

 

 

 立ち上がった大将さんは全壊した店の様子に少し目を伏せた後、避難シェルターを目指して駆け出していった。

 周囲を警戒しつつその背中を見送って、みんなの様子を窺う。

 柱も壁も椅子もテーブルも、全て吹き飛んですっかり見通しが良くなってしまった瓦礫の中に、四人の姿が見える。

 

 

「けほっ、けほっ⋯⋯」

「いたた⋯⋯なんなのもうー!」

「アル様、大丈夫ですか!?」

「う、うーん⋯⋯」

 

 

 カヨコさんとムツキさんは服がちょっと煤けているけどほぼ軽傷、アルさんは直撃を受けたのか少し朦朧気味、はーちゃんは⋯⋯埃で汚れただけで大丈夫そう。

 多分この惨事を引き起こしたのは迫撃砲だと思う。

 爆発の範囲が普通の榴弾より広い気もするけど⋯⋯一先ずは無事を喜ぼう。

 でも一体誰がこんな事を。

 便利屋68を狙った商売敵だろうか。

 私はともかく民間人の大将さんごと巻き込んで攻撃するだなんてなかなかやるじゃない。

 おまけに私の柴関ラーメンも吹き飛ばしてくれちゃってさぁ⋯⋯まだ一口も啜ってなかったんだぞ!

 お腹の虫も怒り狂っておられる。

 口惜しや恨めしや。

 

 

「状況は⋯⋯多数の人影を確認。囲まれてますかね?」

「あれは風紀委員会⋯⋯!」

 

 

 私の問い掛けにカヨコさんが答えてくれた。

 

 

「風紀委員会⋯⋯ゲヘナの治安維持組織でしたか」

「ゲヘナ内ならともかく、よその自治区まで出てくるだなんて流石に予想してなかったけど」

「おまけに民間人ごと迫撃砲で攻撃ですか。余程恨みを買うような依頼でもありました?」

「いや、最近は逃げ出した猫を保護したのと⋯⋯アビドス高校を襲撃したくらいだね」

「なら今回の事は便利屋のみなさんを狙った訳では無さそうですね⋯⋯なら何故? 何を? それとも⋯⋯誰を?」

「まさか⋯⋯先生? シャーレの権力が目的か」

「なんだって良いじゃん」

 

 

 私達の考察を止める声。

 見ればムツキさんがイイ笑顔を浮かべて得物である軽機関銃を構えていた。

 そのこめかみの傍には青筋が立っている。

 

 

「フミっちとハルカちゃんの再会を邪魔して、私達にも優しくしてくれた大将の店を吹き飛ばして。そんなのもう、ブッ飛ばすしかないじゃん?」

「⋯⋯あー、もう。楽しい気分が台無しね。カヨコ、ムツキ、ハルカ。無粋な風紀委員会を蹴散らすわよ!」

「はいっ、お任せくださいっ!」

 

 

 立ち直ったアルさんがスナイパーライフルを片手で構え、口火を切る。

 こちらを窺っていたビルの屋上から悲鳴がこだまする。

 すぐさまムツキさんが風紀委員の前衛にグレネードを投げつけ隊列を乱し、はーちゃんが手当たり次第に前線を食い荒らしていく。

 指揮官らしき娘が統制を取り戻そうと口を開いた所でカヨコさんの銃が轟音を響かせ、一瞬気がそれた所へアルさんの狙撃で指揮官らしき娘がダウンする。

 すごい連携だ。

 これが便利屋68の戦い。

 特にアルさんの狙撃技術とはーちゃんの突破力がエグい。

 その二人を十全に活かす為にムツキさんの的確な爆破とカヨコさんの冷静に戦場を把握する判断力が合わさり、下手な特殊部隊より余程強いんじゃないかと思わずにはいられない。

 ともあれ、私ものんびり見学している訳にはいかない。

 左手のシールドを構え直し、腰前側のホルスターから銃を引き抜く。

 

 

「私も加勢します!」

「フミ、無理はしないでね」

「ええ、あの娘達に誰のラーメンを吹き飛ばしたのか教え込んであげます!」

「そう言えば私もまだチャーシューが半分以上残って⋯⋯やっちゃいなさいフミ! カヨコと私が援護するわ!」

「ありがとうございます! ⋯⋯いえ、その、私の専門はサポートなんですけどね」

「「え?」」

 

 

 お二人から疑問の声を向けられる。

 まぁこんなシールド仕込んでたらタンク役なのかなって思っちゃうよね。

 でもこれはあくまで先生や大将さんみたいな人を守る用の装備だ。

 近くのバリケード裏まで走り、シールドを地面に立てて簡易的な遮蔽とする。

 空いた左手で、腰後側のホルスターから二丁目の銃を抜く。

 

 

「私の本分はサポートです。正面からの切った張ったは苦手でして、はーちゃんみたいな大暴れは出来ません。なので私は、はーちゃんが存分に暴れられるように相手を調えます」

 

 

 両手の内にあるリボルバーを回し、それぞれ左右に向けて引き金を引く。

 一見明後日の方向に飛んでいった弾丸は壁に這うパイプや街灯の縁に当たり、その向きを変えて飛翔する。

 左手で放った弾丸ははーちゃんを迎え撃とうとした娘のスコープに、右手で放った弾丸は空いた戦列を埋めようとカバーに動き出した娘を咎めるように左のこめかみへ。

 

 

「きゃっ!?」

「うっ!?」

「死んでください死んでください死んでください──!」

 

 

 スコープを覗き込んでいた娘が怯んだ所へはーちゃんの回し蹴りが鳩尾へ決まる。

 腰の入った痛烈な一撃に堪らず身体をくの字に曲げたのを見て、すかさず顎先へショットガンの銃口を突き付けて散弾をぶちかます。

 蹴り飛ばされて両脚が浮いた所へ銃弾がもろに直撃し、風紀委員の娘はまるでゴム人形みたいにくるくると後方へ四回ほど転がって動かなくなる。

 それを横目で追う事も出来ずにこめかみを抑えてしゃがみ込んでいた娘の後頭部に、銃床が振り下ろされる。

 鈍い音が鳴り、その娘は力なく倒れ伏した。

 その様子を最後まで見届ける事なく、はーちゃんは次の娘へと挑みかかる。

 

 

「ちっ、こいつ──!」

「遅いです」

「よくもアル様を、よくもムツキ室長とカヨコ課長を、よくも──!」

 

 

 はーちゃんを制圧しようとライフルを構える娘。

 しかし、その銃口に異物が入り込む。

 その衝撃で銃全体が跳ね上がり無防備な姿を晒す事となった。

 

 

「んなっ!? 跳弾が銃口にっ」

「よくも──私の、私のフミちゃんを──!」

 

 

 私のサポートを受けたはーちゃんは迷う事なくショットガンをフルスイング。

 脇腹を強か打ち付けられて風紀委員の娘が一歩後退する。

 ショットガンの銃口と風紀委員の娘の間に隙間が生まれた一瞬。

 マズルが光り散弾が彼女の腹部へと殺到した。

 悲鳴も上げられずに吹き飛び、ヘイローを明滅させながら何人かを巻き込んで倒れていった。

 

 

「大した腕前だね、フミ」

「ありがとうございます。ほんの手慰みですよ」

「ハルカが私の、って⋯⋯そこまで執着するなんて」

「フミっち、ハルカちゃん引き抜いちゃダメだよ?」

「大丈夫です、避妊はしますから」

「何の話よぉーっ!?」

 

 

 いやぁん、あのはーちゃんが『私の』ですって♡

 はーちゃんに想われてフミちゃん照れちゃう♡

 ニンマリと持ち上がる口角をそのままに、私は両人差し指でトリガーを引き絞った。

 

 

「はーちゃん、一度後退! 援護するよ!」

「わかりましたっ!」

 

 

 牽制も兼ねて散弾を顔の高さに合わせてばら撒きながらはーちゃんが戻って来る。

 良いね、目に向かって飛んでくるのがなんであれ大抵の人は咄嗟に目を瞑って構えちゃう。

 離脱する隙を作った所にムツキさんのグレネードが追い打ちをかけて、前衛の娘達の何も出来ない時間を増やしている。

 だけど、そのまま悠々と離脱出来そうな中で動く姿が一つ。

 

 

「くそっ、思い通りにさせるか!」

 

 

 銀髪褐色ツインテールの、勝気そうな娘。

 先生が好きそうな属性の娘は牽制を掻い潜り、スナイパーライフルを構えてはーちゃんを狙う。

 

 

「でも残念♡」

「っ!? 弾が、んぎっ!?」

 

 

 先程放っていた弾丸。

 一発目はその娘が構えていたライフルの側面を削るようにして飛んだ。

 衝撃はそれほどでもないだろうけど、安全装置を動かすには十分。

 引き金はガチリと固定されてしまった。

 間髪入れず、二発目で彼女の左耳に付いていたインカムのマイク部分を破壊する。

 細かく指示を出していたみたいだけど、これで少しは他の娘達の動きも鈍るだろう。

 そして安全装置を外す頃には、もうはーちゃんは私の傍まで後退している。

 

 

「おかえりはーちゃん♡」

「フミちゃん、援護助かりました⋯⋯!」

 

 

 シールドの裏へとやってきたはーちゃんを笑顔で出迎える。

 いや本当、縦横無尽の大活躍だったね。

 一人だけ一騎当千型のシューティングゲームやってた?

 それか無双系のアクションゲーム。

 それくらい圧倒的だったよ。

 

 

「風紀委員の娘達をばったばったと薙ぎ倒して、すっごくカッコよかったよ♡ ドキドキしちゃう♡」

「え、えへへ⋯⋯フミちゃんに喜んでもらえて、嬉しいです⋯⋯!」

「こらそこぉー、イチャイチャしないのー」

「す、すみませんムツキ室長!」

「にしし、ごめんなさーい♡」

 

 

 ムツキさんに呆れた顔を向けられた。

 だってはーちゃんがステキ過ぎるんだもん。

 取り敢えず残弾を部隊長っぽい娘達に向けて打ち捨て、シリンダーから薬莢を外す。

 リボルバー使ってて一番楽しいのがこの瞬間だよね。

 私のリロードはレボリューションだ!

 まぁ、ローダーで纏めて突っ込むだけなんだけど。

 両手のリボルバーに装填を終えた所で、私のスマホがブーンブーンと低い警報音を鳴らした。

 

 

「新手の接近?」

「こっちでも確認、これは⋯⋯アビドスの娘達?」

 

 

 カヨコさんの報告通り、交差点の向こうからやってきたのは写真で見た娘達と先生だった。

 一人少ないみたいだけど、別行動かな?

 一際目立つシャーレのコートに気が付いて、先生が驚いたように目を見開いた。

 

 

「柴関が⋯⋯大将は無事なの!?」

 “フミ!? どうしてここに?”

「せんせー、やほやほー♡」

「ん、先生の知り合い?」

「みなさん、警戒は怠らずに!」

「あらぁ、先生と同じコートですね?」

 

 

 ネコ耳ツインテールちゃんが警戒した目を向けてくる。

 確かあの娘は写真の中で店員さんの格好をしてた筈。

 

 

「ネコ耳ちゃん、大将さんは無事です! 避難シェルターに向かいました! 今は柴関を吹き飛ばしたゲヘナの風紀委員会と交戦中で、便利屋のみなさんは味方です!」

「ネコ耳ちゃんって私!?」

「よろしければ一緒に風紀委員会にお灸を据えてくれませんか? 民間人である大将ごと柴関を吹き飛ばしただけでなく、私がまだ一口も食べてない柴関ラーメンを木っ端微塵にしたんです! とてもくやしい!」

「なんですって!? そんな酷い⋯⋯良いわ! 私達は味方に付くわ! みんなもそれで良い!?」

「了解しました!」

「ん、分かった」

「ラーメンが木っ端微塵だなんて⋯⋯食べ物の恨みは恐ろしいですよ〜♧」

 “最後の一言に全てが詰まってたね⋯⋯こっちの戦闘指揮は任せて!”

 

 

 私の言葉にネコ耳ちゃんが警戒を風紀委員会へと向ける。

 他の娘達もそちらへ向けて戦闘態勢を取った。

 うんうん、話が早くて助かるぅ。

 見ればカヨコさんは頷き、ムツキさんはぐっじょーぶと親指を立ててくれた。

 アルさんは突然の共闘に何やら感じ入ってる。

 分かるよ、敵対してた娘達と共闘だなんて熱いシーンだもんね。

 はーちゃんは片膝を立てて座りながらショットガンのリロードをしている。

 ミニスカから覗く太ももが眩しい。

 

 

「よくも柴関を破壊してくれたわね! 百倍にして返してあげる!」

 

 

 全身から戦意が漲っているネコ耳ちゃんに続くように、アビドスの娘達から一斉に弾丸が飛んでいく。

 予想外の援軍に風紀委員会の戦列はもうボロボロ、慌てて後退し後方の部隊と入れ替わって前線を支えに来た。

 褐色の娘が大声を張り上げて指示を出し、私の方へ攻撃を集中させようとしている。

 ちょっとずつシールドにはじかれる銃弾も増えてきた。

 

 

「んー、ちょっと狙われてて危ないからもう少し二人でイチャイチャしてよっか♡」

「え、あ、い、良いんでしょうか⋯⋯?」

「私ははーちゃんとラブラブしたいなぁ。はーちゃんはどうかな?」

「えぅ、そ、その⋯⋯わ、私も、フミちゃんなら⋯⋯」

「こらー! 良い雰囲気になってないで援護してー!」

「あわわわ、すみませんすみません!」

「はーい♡」

「なんだろう、こっちが正しいはずなのにお邪魔してる感があるのは」

「奇遇ねカヨコ、私も同じ気持ちよ」

「ちょっとぉ! アルちゃんもカヨコっちもまったりしてないでよぉ!」

 

 

 はーちゃんが引いてきた事で一番敵陣に近い位置に陣取る事になったムツキさんに叱られてしまった。

 流石に申し訳ないので右手のリボルバーをくるりと回してから三連射。

 一発目は瓦礫に当たって向きを変え、ムツキさん目指して飛び出した風紀委員の爪先にクリーンヒット。

 勢いの付いたまま顔面から倒れ込んだ。

 ありゃあー痛そう。

 二発目と三発目は遮蔽から身を乗り出してムツキさんに銃撃を仕掛けていた娘達のライフルの排莢部へ直接イン。

 分解して整備しないともう撃てないね。

 撃ち終わったリボルバーをくるくる回して腰前側のホルスターへ収納。

 こちらを見上げていたはーちゃんにウインクを決める。

 

 

「惚れ直しちゃった?」

「フミちゃん、カッコイイです⋯⋯!」

「にしし、いやぁ照れちゃうにゃー♡」

「映画で見たガンアクション⋯⋯! ええっと、こう、かしら?」

 

 

 はーちゃんよりもキラキラした目で私を見ていたアルさんが、スナイパーライフルを一回転させてからそのまま片手で射撃、撃った反動を使ってもう一度くるりと回してもう一発。

 放たれた銃弾は前線を支える娘達の頭上を通り越しアーケード街入口の鉄柱を使って射線を変え、後方に待機していた二部隊の中央辺りに着弾したかと思えば、それらが一拍遅れて爆発を起こす。

 随分な威力だったらしく、装備も士気も十分だった筈の部隊がたった二発で崩壊の憂き目に遭っている。

 

 

「やった、出来たわ! あははっ、命中よ!」

「見様見真似で出来ちゃうの凄すぎ♡ アルさんのファンになっちゃう♡」

「流石アル様です!」

「まぁ、このくらい当然よ!」

「きゃーアルさんステキー♡」

「カッコイイです!」

 

 

 二人でわーわー歓声と拍手を送ると、アルさんは自慢げに胸を張って応えた。

 ぷにゅんっ。

 うむ、いいおちちです。

 

 

「いや、フミの跳弾させる技術も大概だけど一回で成功させるアルもおかしくない⋯⋯?」

「くっふふー、さっすがアルちゃん!」

 

 

 カヨコさんはトンデモ技術に驚愕してるけど、ムツキさんはすごくご機嫌な様子。

 いやまぁ、私がめっちゃ練習して身に付けたコレを一発で再現しちゃうのは流石に才能の差を感じちゃうけども。

 それでも相手がアルさんなら悔しさよりも称賛が上回るのは人徳というか人柄の良さというか。

 直接伝えたらアウトローらしくないってしょんぼりしちゃいそうだけど。

 アビドス勢の方を見ると、先程はーちゃんが無双してた時よりもさらに圧倒的だった。

 犬耳⋯⋯オオカミ耳さんがドローンと共に十字砲火で戦列に穴を開け、ボインさんがミニガンで横一列を薙ぎ倒し、ネコ耳ちゃんが指揮を飛ばす娘を撃ち抜いて黙らせ、メガネちゃんがドローンで弾薬や医療キットを補給している。

 なにより先生の指示が的確だ。

 崩しやすい所、要になる場所、相手が同士討ちを恐れて動きにくい位置取りを的確に指示して風紀委員をどんどん倒していく。

 

 

「アルさん達、アレを相手にしてたんですか? ヤバ♡」

「端から見てたら凄さが分かるわね⋯⋯」

 

 

 その後は私達の援護も必要ないくらい暴れ散らし、風紀委員のドミノが出来ていた。

 おっ、あの娘大胆な下着付けてるじゃーん。

 おませさん♡

 襲撃の一波も終わったようで、束の間の小康状態に入る。

 相手の方で立っているのは褐色の娘と、メガネを掛けた赤いストッキングの娘、それと後方支援部隊かな。

 他にまだ部隊を残している事も十分考えられるけど、果たして他の自治区内でどれだけ暴れるつもりなのかな?

 当事者になってる以上、シャーレとしての介入もやらないといけない規模なんだけど。

 取り敢えず嫌がらせとして左手リボルバーの六発全てを、ゆっくりとディレイをかけつつ発砲した。

 直後、赤ストの娘のタブレットが光を放ちホログラムが投影され、水色の髪の娘が現れる。

 

 

『────────』

 

 

 ばりん。

 先生達に向けて何事か喋ろうとしていたみたいだけど、その瞬間赤ストの娘が持っていたタブレットに銃弾が突き刺さる。

 一瞬、何事かと驚く彼女達。

 倒れていた部隊長らしき娘が持っていたタブレットが起動し、再びホログラムが浮かび上がる。

 

 

『っと、機器の不調ですかね? 改めま』

 

 

 ばりん。

 同じように弾丸が液晶ごと再生機器を破壊し、その姿をかき消す。

 今度はすぐに近くのタブレットからその姿が出てきた。

 

 

『一体何なんで』

『ちょっと』

『いい加減に』

『ふざけ』

 

 

 ばりんばりんばりんばりん。

 モグラ叩きみたいに出ては消えてを繰り返す。

 何とも言えない空気が漂っていたけど、ムツキさんには大ウケだった。

 

 

『もう! 何なんですか本当に!』

 

 

 今度はタブレットを割られないか左右にキッと目をやる水色の人。

 よくよく見れば風紀委員の腕章を付けて横乳が放り出されそうなデザインの服を着て、首輪と手錠も付けた中々エキセントリックなファッションをしている。

 

 

 “フミ”

「はぁい♡」

 

 

 通信で先生に叱られてしまったので、ここからは大人しくしておく。

 とはいえ風紀委員会がやってきた以上、便利屋のみなさんは姿を隠した方が良いだろう。

 同じ事を考えたのか私の傍の物陰にアルさん達が集まってきた。

 

 

「せんせー達に意識が向いてる間に撤退ですね」

「えぇ、これ以上騒ぎが大きくなるとは思わないけど、風紀委員長が来たら厄介なのよ」

「あの、フミちゃん、また会えますよね⋯⋯?」

「うん、今度落ち着いて話が出来る時間を作ろっか♡ 便利屋のみなさんにもシャーレから仕事を依頼する事もあるでしょうし」

「あ、じゃあこれ! 私達便利屋68の名刺よ」

「ありがとうございます、落ち着いたら連絡しますね」

「それじゃ私達は行くけど、フミもお疲れ様」

「また遊ぼうねフミっちー♪」

 

 

 軽快に、それでいて静かに駆け出していく四人。

 ばいばいと手を振って見送り、はふぅと一息。

 いやぁ風紀委員会は強敵でしたね。

 シールドに背中を預けて座り込む。

 深く息を吸い込めば土くれと硝煙とコンクリートの焼ける臭いが鼻につく。

 再度息を吐き出せば、全身から力が抜けていくのが分かった。

 両手のリボルバーにのろのろと弾を込め直し、ホルスターへとしまい込む。

 なぁなぁで誤魔化してきたけど、もう限界だった。

 これ以上はもう、頑張れそうにない。

 

 

「私のラーメン⋯⋯」

 

 

 空腹ぺこりんちゃんです。

 あんなに楽しみにしてたのに。

 一口啜る事さえ出来なかった。

 店も爆破されてしまったし大将さんの意向次第ではもう柴関ラーメンを食べる機会は来ないかもしれない。

 いったい私が何をしたというのだろうか。

 

 

「神さまとやら! あなたは残酷だぞ。風紀委員会が先生を狙うついでに便利屋を襲撃する。その結果ラーメンを食べに来た私ごと柴関はバクハツに巻き込まれ、私は飢えたまま銃撃戦に突入する⋯⋯⋯⋯そいつがあなたのおぼしめしなら⋯⋯⋯⋯飯はなんのためにあるんだ!!」

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