もしもシャーレにヒモを養う適性の有る娘が応募してきたら   作:一ノ瀬 崇

50 / 69
四十話目

 今日は朝から雨だった。

 どうやらキヴォトスの広い地域で雨が降っているらしく、アビドスでも久し振りに大雨が降っているとセリカちゃんがモモトークで教えてくれた。

 補習授業部で合宿していた時を思い出す。

 あの時は風も強くて洗濯物が全滅してしまった。

 着るものが無くなって急遽水着パーティーが始まったのは記憶に新しい。

 またみんなに会いたくなってきたなー。

 

 

「フミちゃん、手が止まってましてよ」

「はぁーい♡」

 

 

 たおやかに微笑むワカモさんに指摘され、ぺろっと舌を出して肩を竦める。

 普段は『フミ』と呼び捨てにするけど、お姉さんモードの時は『フミちゃん』と柔らかく呼んでくれる。

 つまり今のワカモさんには甘えたい放題出来るのである。

 モードの切り替わり条件はまだ掴めていない。

 先生とのイチャラブで先生分を規定量摂取するとモードチェンジするのではないかと睨んでいる。

 

 

「ワカモさん、終わったら一緒にお昼作りましょー♡ 一緒に愛情たっぷり料理でせんせーを籠絡したいです♡」

「ええ、構いませんわ。一緒に先生に可愛がってもらいましょう♪」

 “なにやら計略が張り巡らされている!”

「せんせー何食べたいですー?」

 “今日はお魚の気分かな”

「ほいさー♡」

「ウフフ、楽しみにしていてくださいませ……♪」

 “こんなステキな女の子侍らせて仕事しつつご飯作ってもらえるとか、学生時代だったら間違いなく休み時間で吊るし上げられてたなぁ……”

「安心してくださいませ、貴方様。私が身も心も捧げるのは貴方様だけですので……♪」

「合間で良いので私にもお情けくださーい♡」

 “腎虚で倒れそう”

「そ、そこまでは望みませんので……!?」

「いやーワカモさん、多分私とワカモさんが布団の上で大人みるくに溺れてもまだまだせんせー元気ですよ? へろへろになって情けなく許しを請う事しか出来なくなっても雄々しい剛直で一番奥までずんずんって♡」

「……貴方様が望まれるのでしたら、私の身体を、お気の済むまでお使いください……♡」

 “アロナ、今すぐ除湿機点けて! すっごいしっとりしてる!”

 

 

 左からワカモさんのしっとりした視線を、右から私のイタズラな笑みを向けられて数秒。

 先生は椅子の車輪をくるくる回して部屋の隅へと逃げていった。

 そんなお茶目な姿にワカモさんは柔らかく微笑んで、書類作業へと意識を戻す。

 やっぱ本妻の素質バリバリでは?

 逃げ出した先生を連れ戻してワカモさんを先生の膝の上に座らせて二人の初々しい空気を味わいつつ残った書類を捌いていく。

 普段あれだけ好き好きアピールしてるのにくっついたら顔真っ赤に染めて固まるの初心すぎんか!

 総評するとワカモさん可愛い。

 ちなみに除湿機は朝からフル回転である。

 そろそろ水捨てないといけない。

 

 

「あ、貴方様……重かったらすぐに退きますので……」

 “ううん、全然。むしろ幸せを感じる重みだよ”

「少し気恥ずかしいですけれど、貴方様の御心のままに……私の全ては、貴方様のものですから……♡」

 “とても嬉しいけど、そんなに可愛い事を簡単に言ったらダメだよ? 私みたいな悪い大人に何をされるか分からないんだから”

「まぁ……私、なにをされてしまうのでしょう……♡」

 “こんな風に耳の後ろをカリカリって”

「ふぁぁぁ……♡ い、いけませんわ……♡」

 “お腹もナデナデ……首筋の匂いも吸っちゃおう”

「あぁぁ♡♡ 幸せ過ぎておかしくなってしまいます……♡」

 

 

 良い空気吸ってるなー♡

 日頃私相手にスキンシップを取ってるからか、先生から遠慮が無くなりつつある。

 こないだはヒフミン相手にも割と過激な事してた。

 いや、スク水姿でお尻振ってアピールしてたヒフミンが悪いんだけど、だからって腰掴んで乱暴に自分に引き寄せて抱き締めるのは刺激が強すぎると思うの。

 多分私がやられても腰砕けになっちゃう。

 案の定ヒフミンは一瞬であへあへしながら崩れ落ちた。

 クソザコで草。

 あれ抱き寄せるだけだったからまだ良かったけど、お尻掴んでズボン越しに腰打ち付けてたら一日中ヒフミン幸せになって使い物にならなくなってたね。

 まぁ、そこまでやってたらヴァルキューレに通報されそうだけど♡

 イチャイチャする二人を眺めながら緑茶片手に書類へ認可ハンコをぽんぽこ。

 気付けば小さな雨粒を運んできた空から、いつしか大粒の雨が降り注ぐようになっていた。

 ふと、RABBIT小隊の事が気になった。

 

 

「せーんせ♡」

 “うん?”

「雨降りですけど、ちょっとお散歩行きません?」

 “この雨の中を散歩……あぁ、そう言う事か。雨合羽と長靴用意しなきゃね”

「ワカモさんには温かい鍋ものを用意して欲しいんですけど良いですか?」

「構いませんが……何人分要りますの?」

 “少なくとも四人分だね”

「どうせなら暇してる自警団のみんなや便利屋68も巻き込んで賑やかに行きましょうか♡ 材料はありますし♡ 人手が必要だったら私の名前でビシバシ徴発しても♡」

「ならお外はフミちゃんと先生にお任せしますね。貴方様、風邪など引きませぬよう温かくしてくださいませ」

 “風邪引いたら添い寝看病してもらおうかな”

「ウフフ……貴方様がお望みでしたら、いつでも添い寝致しますわ♡」

 “いかん危ない危ない危ない……!”

「今日はせんせーの理性ガードがゆるゆる♡」

「もしや攻め時ですの?」

 “卒業するまで待って!”

 

 

 名残惜しそうに椅子から立ち上がるワカモさんに続いて私たちも椅子を離れて外へ出る準備。

 こんな事もあろうかと買っておいたウェーブキャット雨合羽をロッカーから引っ張り出し長靴やタオルを用意しておく。

 戻ってきた時の為にバスタオルや替えの下着、ジャージなんかも籠に入れておかないと。

 粗方準備が終わったのでワカモさんに向けて両手を広げて待機。

 

 

「どうしました?」

「いってらっしゃいのハグ♡」

「あらあら、甘えん坊さんですのね♪」

「にしし、ぎゅー♡」

「はい、ぎゅー♪」

「うん、元気いっぱい♡ 次はせんせーの番ですよ♡」

 “えっ、私も?”

「その、宜しければ……」

 “なら遠慮せずに……ぎゅー”

「ウフフ……♡ 貴方様、いってらっしゃいませ♡」

 “行ってくるね”

 

 

 うむうむ、先生とワカモさんをハグさせる実績も解除出来た。

 それじゃあ張り切って子ウサギ公園に行ってみよう。

 大丈夫だと良いんだけど。

 

 

 

 

 雨合羽で来たのは正解だったかもしれない。

 風が結構強く吹いてるし傘を差してたらビル風で壊れてたかもね。

 私たちの雨合羽はヘルメットみたいに顎下まで透明な部分が伸びてて首元に雨が入らない完全防備型のやつだから、雨も風もへっちゃらだ。

 結構なお値段してそう。

 追加装備としてお互いの会話を聞き取れるように右耳にインカムを付けているので、この雨風の騒音の中でもしっかり声が届く。

 

 

「んー、雷雲が出てますね。ビルの避雷針に落ちてくれるなら良いんですけど♡」

 “思ったより雨量が多いね。普通の靴だったらびしょ濡れになってそうだ”

「流石に人通りも少ないですねぇ。っと、これは近くに落ちる……?」

 “えっ?”

「雷です。足元はゴム長靴だから大丈夫ですけど、念の為建物内に避難します?」

 “そうだね、それじゃちょっとお邪魔しようか”

 

 

 先生と二人で横手のビルへ。

 一階はロビーになっているみたい……って、ここはビジネスホテルか。

 ついでにホットのお茶をカイロ代わりに買っておこう。

 自販機で四本購入した所で、近くに雷が落ちた。

 凄まじい振動が窓ガラスをビリビリと揺らす。

 

 

「思いの外近かったですね?」

 “……公園に落ちた?”

「えっ」

 

 

 慌てて外に出る。

 ここは子ウサギ公園の正面なので、RABBIT小隊の張ったテントもよく見える。

 けど、そのテントは落雷の衝撃で支柱が折れたらしく地面へと崩れ落ちていた。

 その近くにはRABBIT小隊の四人が立ち尽くしている。

 すぐに駆け出そうとした先生を止め、少し様子を窺ってみる。

 

 

 “フミ?”

「まだダメ。あの子たちが……ううん、少なくともリーダーのミヤコちゃんが動き出すまでは待って」

 

 

 なんだかんだ、RABBIT小隊の精神的支柱となっているのはミヤコちゃんだ。

 ここでテントと同じように崩れ落ちるのか、それともまだ立ち続ける事を選ぶのか。

 きっと、ここが分水嶺だ。

 会話の内容は雨音に掻き消されてここまで聞こえてはこないけど、何かしら諦観した様子で会話しているのは解る。

 見守っていると、ミヤコちゃんは円匙を手に取って排水路に溜まった土砂を掻き分け始めた。

 自棄になっての行動じゃない。

 かと言って直前の行動を繰り返してもいない。

 ちゃんと、自分の意志で続けようとしている。

 堪らずといった様子で先生が駆け出した。

 私も後に続く。

 ミヤコちゃんは任せよう。

 

 

「やーやー諸君♡ やっとるかね♡」

「フミ……」

「先ずは倒れたテントをどうにかして、雨に濡れない空間を確保するよー♡ ほらモエちゃん、私は中の物の優先順位分からないんだから教えて教えて♡」

「え、あ、うん……」

「サキちゃん、私一人だと梃子摺るから反対側の方持って欲しいなー♡」

「お、おい……」

「はーやーくー♡」

「わ、わかった」

「ミユちゃんは私のほっぺたにちゅーして♡」

「う、うん……うんっ!?」

「騙されなかったか♡ こっちに防水シート入れてきたから自由に使って♡ 早くしないと全部沈んじゃうよ♡」

「わ、急がないと……!?」

 

 

 その後も矢継ぎ早にやる事を指示したり教えてもらったりして崩れたキャンプを修復していく。

 いつの間にかサキちゃんは先生から円匙を受け取ってミヤコちゃんと一緒に排水路の掃除を始めていた。

 うむ、先生には悪いけどやっぱりパワーが違うね。

 

 

「せんせー、新しくテント張るから手伝ってー♡」

 “よしきた!”

「やる気いっぱい♡ 夜のテントも張って♡」

 “それは毎日やってるから……”

「……エロ教師」

 “ちがっ、モエ、これは巧妙に仕組まれた誘導尋問なんだ……!”

「はぁ……もう、アホらし。シャーレの二人はどこまでもお人好しなんだからさ」

「それが売りな所あるから♡」

「……手伝います」

「ミユちゃん素直で良い子♡ 後でぎゅーしない?」

「ええ……!?」

 

 

 テントを張って機材を避難させたらみんなで排水路の整備に勤しむ。

 次第に足元の水が引いていき、キャンプ地周辺から完全に水が無くなった頃には雨も上がっていた。

 夕闇に染まる頭上では幾つもの星が瞬いている。

 自販機で買ったお茶もすっかり温くなってしまった。

 けれど、キャンプは大方復旧出来たと言って良いだろう。

 後でこっそり記録した機材をモモゾンやエンジニア部に発注かけておかないと。

 

 

「……雨、ようやく止みましたね」

 “みんな、お疲れ様”

「お疲れ様ー♡」

 

 

 これにて作業終了。

 いやーこれはお風呂でのんびりストレッチしないと筋肉痛になっちゃいそうだね。

 軽く身体を伸ばしていると、ミヤコちゃんが不思議そうな顔で私たちを見ていた。

 

 

「……どうして私たちを助けるんですか? 何度もお伝えしたはずです。何も変わらないと。先生たちが私たちに何を望んでいるのか、私には全く分かりません」

 “何かを望んでいるわけじゃないよ。私は先生だから”

「私はせんせーのお手伝いだから、せんせーが《先生》として為す事をサポートするだけ♡」

 

 

 その答えに何を感じたのか。

 ミヤコちゃんは気を張るのを止めたみたい。

 小さく息を吐いて、表情を柔らかくした。

 

 

「……そうですか。装備はほとんどダメになってしまいましたが……。どうにか、公園そのものは完全に浸水せずにすみました」

「……先生たちは、この公園での生活をやめてほしいんじゃなかったのか? 何の得にもならないのに、こんな……筋金入りのバカだな」

「ま、バカなのは最初から知ってたけどね。くひひ……♪」

「も、モエちゃん……せっかく助けてくれたのに……」

「助けは要らないと言い続けてきましたが……助けられてしまったのは事実ですね。……ありがとうございます、先生、フミさん」

「にしし、どういたしまして♡」

 

 

 先生とハイタッチをして喜んでいたら、不意に腰元の微振動に気付いた。

 その瞬間、いつもの勘とは違った冷たさが首筋を撫でる。

 

 

「あっ、ヤベ」

 “フミ、どうかした?”

「お昼ごはんすっぽかしちゃいました」

 “ああ、夢中で動いてたからね……”

「いえ、その」

 

 

 雨合羽を払いスカートからスマホを取り出す。

 画面上の通知欄にはワカモさんからの不在着信。

 

 

 “あっ”

「っ、スゥー……。よし、これからRABBIT小隊のみなさんにシャーレから命令を下します♡」

「命令、ですか?」

「おい、いったい何を始める気だ」

「これから四人にはシャーレでお風呂に浸かって温まったのち、一緒にご飯を食べてもらいます♡」

 “拒否権は……あるけども、ぜひ来て欲しいなぁ……!”

「や、やっぱり私たちに変な事をしようと……!?」

「……いや、なんか破滅的なニオイがするなぁ♪」

「具体的に言うとワカモさんにお昼みなさんの分も作ってもらってたのをすっぽかしてしまったので、私たちに雷が落とされないように避雷針になってもらおうかと♡」

 “助けると思って! 実際助けて!”

「ははっ、そう言う事なら私の」

 “足だね!? 舐めるね!!”

「うわぁぁぁ!? やめろ!! 四つん這いになるな!! プライドとかないのか!?」

「へっへっへ、肩でも揉みましょうか♡」

「フミもそのキャラはなんなんだ!? 揉み手で擦り寄ってくるんじゃない!!」

 

 

 わーわーきゃーきゃーと一悶着あったのだけど、再度スマホに着信が入ったので一時休戦。

 電話口で静かに話すワカモさんへ二人で平謝りして、取り敢えずシャーレに四人を連れて向かうのだった。

 風邪を引いてはいけないからと先生以外は大浴場にぶち込まれしっかり温まる事に。

 

 

「……本当に災厄の狐がシャーレで働いてるんだな」

「勤勉で優しくて、定期的に先生吸わせてたら破壊活動もしないし良いお姉さんだよ♡」

「その先生はワカモさんに連れて行かれましたけど……大丈夫なんですか?」

「多分水着で先生の背中流してるんじゃないかな?」

「あぅ……風紀が乱れてる……!」

「やっぱり淫行教師なんじゃないの? 正体見たり、って感じだねぇ♪」

「襲われる側だから許してあげて♡」

 

 

 お風呂を上がって用意していた下着とジャージに着替えてもらい、洗濯物が乾くまではしばらくかかるので先に執務室へ。

 

 

「執務室が少人数の食堂も兼ねてるのは良いのか? 防諜とか防犯の面で」

「んー、シャーレって基本的に生徒にはフルオープンだから誰も気にしてないんだよねぇ♡ 一応武器は入口のロッカーに預ける規定はあるけど、誤魔化して持ち込むのも出来なくはないし……生徒の善性を信じて運営してるってのが正しい♡」

「……色々と改善が必要そうですが、まぁ私たちには関係ない事です」

「それよりご飯って何用意してあるの?」

「魚を使った料理ってだけで、メニューは私も知らない♡」

 

 

 期待に胸を膨らませて執務室の扉を開けると、既にワカモさんが準備を終えていた。

 大きな寸胴鍋の中には根菜やネギに交じって鮭の切り身が浮かんでいる。

 あ、なんだっけ、石狩鍋?

 前に先生が教えてくれた郷土料理だったはず。

 野菜もいっぱい取れて鮭の美味しさを余す所なく味わえる鍋料理だ。

 横には沢庵と胡瓜の一本漬け、少し大きめなおにぎりが置いてある。

 急須で緑茶をとぽとぽ注いでいるワカモさん、そして隣で精神力を使い果たしてそうな先生がソファーに沈んでいる。

 なんとか童の帝は守り抜いたらしい。

 防衛戦頑張っててえらい♡

 

 

「あら、いらっしゃいましたのね。さあ、おゆはんの準備は出来てましてよ」

「あ、ああ……ホントに災厄の狐か? ただの家政婦さん状態じゃないかこれ」

「先生への愛故に♪」

「まぁその辺は気にしないで良いっしょ! それよりご飯食べようよ!」

「そうですね、ご馳走になります」

「いただきます……♪」

「はい、召し上がれ♪ 貴方様には私が食べさせて差し上げますわ♪」

 “え、自分で食べ……あ、はい。お世話になります”

「お労しい♡」

 

 

 みんなで食べる石狩鍋はとても美味しかった。

 おにぎりは具無しのごま塩で、鮭と一緒に食べたり汁を入れたお椀に入れて雑炊みたいにしたり、行儀は良くないかもしれないけど果てしなく美味しい。

 ウマーと舌鼓をぽんぽこ打っていたらワカモさんがデザートにウサギさんリンゴを切り分けてくれた。

 いやぁ非常に大満足です♡

 食後に改めて謝罪をして先生を抱き枕として差し出し、どうにか許してもらえた。

 先生はこれから防衛戦第二ラウンドである。

 なーむー♡

 

 

 

 

 そして更に後日。

 私と先生は連邦生徒会に赴いてリンちゃん先輩に一枚の書類を提出していた。

 今日もお綺麗ですねリンちゃん先輩♡

 

 

「……何ですか、これは?」

 “忙しいところ申し訳ないんだけど、リンに一度見てほしくて……”

「浸水被害に遭った《子ウサギ公園》における設備補修の提案書ですか……。市民が使う公園を補修すること、それ自体には何も異論ありませんが。これはシャーレの活動に必要なことなのですか?」

「そりゃあもう♡ 色んな所に出向いて問題を解決したり当事者同士納得の出来る方法を一緒に考えたりと精力的に活動してきましたし、市民の為の支援活動も増やしてシャーレの名声を高めいざと言う時にスムーズに市民の方の協力を得る為の布石として、またシャーレの名に恥じないキヴォトスへの奉仕活動の一環としても必要なんです♡」

「随分と早口ですね……。まぁ、その建前にも理はあります。本音としては、SRTの生徒たちに必要な支援を、という事ですか?」

 

 

 サッと目を逸らす私と先生。

 オゥ、バレテーラ♡

 そんな私たちの反応を見てリンちゃん先輩は溜息を一つ吐いた。

 

 

「……沈黙は正解ですよ。カヤからお話は聞きました。ヴァルキューレへの編入を拒否した、SRT特殊学園の生徒たち……彼女たちが公園で野宿しており、先生とフミさんがそれを陰ながらサポートしていると」

 “陰ながら……?”

「せんせ、しー♡」

「それについて、何かを言おうというわけではありません。そもそもシャーレは自由な組織ですし……。ただ、私の立場から言わせていただきますと、彼女たちが公園に居続けるのを是とすることはできません」

「それはそう♡」

 “……市民がみんなで使うはずの公園を、占拠してるから?”

「いえ、あの公園はほとんど訪れる人もいない、もともと辺鄙な場所に位置する公園です。そもそも実のところ、近いうちに撤去する予定だった公園なのです。ただ、それとは関係なく……」

「SRT特殊学園、っていう出自が問題なんですよね♡」

 “それはどういう……?”

「……SRTは連邦生徒会長から特権を与えられた、迅速に犯罪者を制圧する為の特殊な組織です。しかしそのような特権は、正しい目的と正しい運用方法によって価値を発揮します。そうでなければ、ただ危険を招くだけです」

 

 

 特権を有する事で自身よりも強い力を待ち自由な行動が許される存在。

 いかに連邦生徒会のメンバーとはいえ、為政者の側から見れば心安らかに構える事が出来ない人も居るだろう。

 特に荒事が苦手な子は反応が顕著だ。

 これまでは圧倒的なカリスマを持つ連邦生徒会長がその手綱を握っていたから問題は無かったかもしれないけど、今やその手綱を握る者はおらずただ特権を有したままの武装組織が在るだけ。

 特権を与える事も取り上げる事も、出来るのは連邦生徒会長だけだから。

 そんな危うい存在であるSRTの生徒をシャーレが大っぴらに支援するとなると、行政委員会からの反発は強いものになるだろう。

 リンちゃん先輩を始めとした面々が宥めようとしても、大して意味は無い。

 本来、彼女たちに言う事を聞かせられる存在は連邦生徒会長しか居ないのだから。

 ──その後、他の役員の生徒とも話をしてみると意気込んでいた先生と別れて私は一人、子ウサギ公園を訪れていた。

 ちょうどトラックが到着する所だった。

 サインをして受取証をもらい、色々とキャンプ近くまで運び込んでもらう。

 

 

「ちょいちょーい、なんなのこの荷物は」

「おっ、来たねモエちゃん♡」

「来たね、じゃないよ。フミ、また変な事を考えたの?」

「なにおーぅ♡ フミちゃんは真面目な良い子ちゃんなんだから♡ はい、これ賄賂♡」

 

 

 ついでに注文しておいた未開封のBOXから棒付きキャンディを取り出してモエちゃんに差し出す。

 昔ながらの駄菓子工場が出してるやつだ。

 それをぱくっと咥えるモエちゃん。

 訝しげだった顔が笑顔に変わる。

 

 

「くひひ、分かってんじゃーん♪ やっぱこのメーカーのじゃないとねぇ」

「この懐かしい味わいが良いよね♡ みっちりしててなかなか溶けないのも良し♡」

「で、天下のシャーレさんが私たちSRTに何の用事?」

「今後シャーレとして正式にみんなへ依頼を出す事も有るからね♡ 難易度の高い任務を遂行するには相応の装備をしててもらわないと、シャーレとして対外的に恥ずかしくなっちゃうからー? その辺のサービスだよ♡」

 

 

 という名目である。

 運び込まれたBOXはそれぞれ保存食、弾薬箱セット、通信機器、小型ドローン、防水シート、各種燃料、トリニティ印の迫撃砲、その他細々とした消耗品。

 一先ずこないだの雨でダメになった物資は補充出来たはずだ。

 品揃えをリストと見比べていたモエちゃんが、聴こえてきた音に首を上げる。

 

 

「ヘリ?」

「そ、これもプレゼント♡」

 

 

 近付いてきたアタックヘリはそのまま公園の中央に降りる。

 これもトリニティから大枚はたいて買ったものだ。

 まぁ給料日に買う十円ガムくらいの感覚だったけど。

 運転席から顔を見せたのは正義実現委員会の生徒、我らが愛するチハヤちゃんだ。

 ヘリの免許も持っていたらしく、直接持ってくるよとモモトークをくれた時はひっくり返ったものだ。

 

 

「あ、フミちゃーん♪」

「チハヤちゃーん♡」

 

 

 てててっ、と駆け寄って来たチハヤちゃんを抱き留めてほっぺたちゅっちゅっ♡

 久し振りだけどとんでもなく可愛い♡

 

 

「あ、ヘリを扱うのはあなたですか?」

「あ、うん。そうだけど」

「はい、起動キーお渡ししますね! 結構頭が重いので動かす時はお尻が上がらないように気を付けてください」

「どうも……え? 今フミとキスしてた?」

「フミちゃんとは先生とのハーレムを誓った仲です♪」

「現地妻の一人でーす♡ モエちゃんもどう?」

「どう? じゃないでしょ。だいたいそんなノリで付き合い始めるわけが」

「ちなみに私のポケットマネーで爆発物使い放題♡」

「ちょっと詳しく聞いてみようかな?」

「おい、なんだそのヘリは!?」

「またあなたですか、フミさん」

「わわっ、箱がいっぱい……」

 

 

 おっと、モエちゃんを誘惑してたらみんな集まってきちゃったね。

 改めて物資を届けに来た事を説明、口八丁で丸め込み受け取らせる事に成功した。

 チハヤちゃんとぶぃぶぃダブルピースを交わす。

 これで一先ずRABBIT小隊の強化は出来た。

 この先どうなるかは分からないけど、いざ先生に必要な状況が生まれた時の助けとなるはず。

 貸し借りではない、投資。

 出来ればこの投資が意味を持たない方が平和で良いんだけど。

 みんなに手を振ってチハヤちゃんと腕を組んで中心街へ向けて歩き出す。

 しばらくフリーなのでちょっとお出掛けタイムだ。

 

 

「それじゃ受け渡しも終わったしチハヤちゃんデートしよっか♡」

「おっけー♪ どこ行く? 最近オープンしたペロロカフェ?」

「んんんエンカウントしそう♡」

「フミちゃんはウェーブキャットだっけ? 私はアングリーアデリーのコースターが欲しくてさー」

「そう言えば周りで推しキャラ被ってるの居ないなー♡ 融通しやすくて良いんだけど♡」

「こないだも特賞のペロロアクリルスタンド当てたんだっけ、ヒフミちゃんが惚気てくれたよ」

「自慢じゃなく惚気なの♡」

「悔しかったからアズサちゃんと一緒にヒフミちゃん吸っておいた♪」

「でかした♡」

 

 

 そんな風に歩いていると件のペロロカフェに辿り着く。

 お店の前に特設看板が置いてある。

 ふむふむ……パフェセット一つ注文でコースターと福引一回か、一等がペロロたちモモフレンズが動き回る小型デジタルサイネージね。

 いや割と大きい♡

 持って帰るの大変じゃないこれ?

 ちょっとしたマットレスくらい大きいけど。

 ともあれチハヤちゃんに腕を引かれてお店の中へ。

 

 

「いらっしゃいませ、何名様でしょうか?」

「二人でーす♪」

「ではお席にご案内させていただき」

「あーっ、フミちゃんとチハヤちゃん!」

「あー……知り合いが居るみたいなので一緒の席でお願いします♡」

「ではこちらへどうぞ、ごゆっくり」

「む、フミとチハヤか。こんにちは」

「あらぁ、こんにちはお二人とも♡ デートのお邪魔をしてしまいましたか?」

「予想はしてたから問題なし♡」

「真っ昼間から逢引とは良い度胸ね。ってかチハヤ、アンタ今日はヘリ飛ばす用事があるって言ってなかった?」

「飛ばして納品してきた帰りだよー♪」

「え、ヘリ納品したんですか? 取り敢えずパフェセット駆け付け三杯で良いですよね?」

「待って♡」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。