もしもシャーレにヒモを養う適性の有る娘が応募してきたら 作:一ノ瀬 崇
「……ふむ。経過は良好、後遺症も無く血液検査の結果も問題なし。これならもう通常業務に戻っても良いでしょう。手首に異変を感じたらすぐに来てください。それではフミさん、先生もお疲れ様でした」
「お世話になりました♡」
救護騎士団団長、蒼森ミネさんのお墨付きをもらってようやく通院が終わった。
ここ一週間ほどは右手で銃を撃つのも禁止されてシャーレの業務も当番のみんなに頼りっぱなしだった。
まぁ先生もこないだまで毎日一緒に通院してたから仕事自体はそんなに進められて居ないんだけど。
セリナさんが付きっきりでお世話してたけど案外楽しそうだった。
ナース服のリクエストしてたけど先生結構満喫してない?
「お、診察終わったみたいね」
「フミ、今日もお疲れ様。どうだった?」
「バッチリ♡ もう通院しなくて大丈夫だって♡」
「ほっ、良かった」
「一安心ですねぇ♡」
外に出た所で補習授業部のみんなが迎えに来てくれた。
取り敢えず寄ってきたヒフミンを捕まえてむぎゅむぎゅすりすりしておく。
なんとかミカさんの救援が成功したのは彼女たちのお陰と言っても過言ではない。
ツルギさんとハスミさんを連れてきてくれたのも助かったし、何より頭数が揃った事で先生の意識から大人のカードの存在を追い出せたのが良かった。
どんな代償を支払うにせよ、支出は少ない方が助かる。
「あ〜、久し振りの女体の感触なんじゃあ〜♡」
「こら、えっちな事言ってると膝枕ASMRするわよ」
「ただのご褒美では?」
「演目はチハヤよりすぐりの怪談シリーズ」
「ゆるちて!」
「あんっ♡」
ちたぱた暴れるとヒフミンが嬉しそうに声を上げる。
やめろヒフミン、コハル裁判長を刺激するんじゃあないっ!
「じゃあ代わりにペロロ様の大冒険シリーズを読み聞かせでも♪」
「それはそれでキツイ」
「なんでですかっ!?」
「アンタに何度聞かされたと思ってんのよ♡ もうだいたいの流れは暗記してるわっ♡」
「流石はフミちゃん♪」
額に優しくデコピンをぺちっとお見舞いしてヒフミンを引き剥がす。
いつもの緩い空気感が堪らないねぇ♡
おっと、私が療養してた間のトリニティについてハナコちゃんから報告を聞かねば。
と言うことでハナコちゃんにねばねばくっつき。
「やんっ♡ ふふ、ちゃんと構ってくれて嬉しいです♡」
「有能なだけでハナコちゃんも普通の女の子だし、どんどん青春を楽しんで良いのよ♡ やり過ぎたらコハル裁判長が動くし♡」
「任せなさい、もうハナコは恐るるに足らず、よ」
「本当にたくましくなりましたねぇ……。こほん、先ずは査問会でミカさんへ下された評決ですが。300時間分の奉仕活動、対外的なティーパーティーとしての活動の制限、校外への外出制限が課せられました」
「なんやかんや穏当な着地♡」
「ナギサさんとセイアさんの嘆願提出、先生からの意見書提出が大いに効いたのは間違いありません。ですがパテル分派を取り纏める存在が居なくなるのは政治的空白を広げるだけでなく、執務にも影響があり無用な出費や他のティーパーティーの人たちにこれまで以上の職務を割り振る事となってしまう為、席は残すが本人の権限は絞る形で決着しました。パテル分派には『文句があるならミカさんに殴り勝ってトップの座を奪え』とも」
「ムリゲーがすぎる♡」
「やるにしても草むしりやゴミ出ししてるミカさんに不意打ちドロップキックする光景は……流石に女の子としてちょっと……」
「絵面が面白すぎる♡」
「一応ミカさん側も返り討ちにした相手にその日の奉仕活動を押し付けても良い、としてあるので全力で迎え撃つでしょうね。と言うか早速一人返り討ちに合いました」
「動きがはやぁい♡」
「その子は元々ミカさんを慕っていたようなので、合法的にお手伝い出来る、と張り切っていたようですが」
「意外と慕われてるようで何より♡」
「もちろん、こっそり私物を破壊したり嫌がらせのビラを撒いたりする輩もいるわ。けど、そう言うのは見つけ次第正義実現委員会として警告、二回目以降は問答無用で本部に連行して悪質な行為として報告を上げるようにしてるから」
「うんうん、コハルちゃんたちが見守ってくれるのは心強い♡」
なんならそのうちコハルちゃんの魂の輝きにミカさん焼かれそうだもんね。
政治周りは相手を追い込みすぎてもいけないし、難しい舵取りが要求されそう。
さて、お次はアリウスの子たちのお話を聞こう。
アズサちゃんかもーん♡
「うん、やはりフミと抱き合うのは良いな。心がぽかぽかしてくる」
「アズサちゃんが可愛くて困る♡」
「ならもっと困らせるから覚悟してくれ。私だってフミが大好きだからな♪」
「私の理性が焼き切れてベッドに連れ込む前に報告をお願い♡」
「む、そうだった。先ずは既に保護していたアリウス生徒だな。彼女たちはほぼ全員がトリニティに編入する事が決まった。何人かは仲のいい子がまだアリウスに残っているので離れ離れになるのは嫌だと言っている」
「アリウス自治区の建て直しも控えてるし、その辺はじっくり後悔の少ないように考えて欲しいね♡」
「アリウス自治区に残る生徒たちはトリニティやシャーレの支援を受けながら復興を目指す。最低限、人並みと言えるくらいには生活水準も知識水準も上げないといけないからな」
「識字率と戦闘に関わる計算以外は壊滅的なんだっけ。そう考えるとアズサちゃんは勉強いっぱい頑張ったんだねぇ……えらいえらい♡」
「んふふ、もっと撫でてくれ♪ 現三年生はマダムの影響が抜け切っていないからか反発したり諦観したりも多いらしいが……この辺は急いでも仕方ない。今までは許されなかった『自分で考えて決める』と言う事に慣れてもらうしかないな」
「常識から生活から、自分を取り巻くもの全てが変わるからねぇ……良い結果になると良いけど♡」
「そしてスクワッドに対する最終的な判断だが……諸々の事情を鑑みて無罪放免とは行かなかった。が、先生の尽力もあって指名手配は取り下げられたな。しばらくはトリニティは出禁処置、シャーレで身柄を預かり地域社会への奉仕活動と二十四時間の発信機による監視を付ける事で決着した」
「おー、それは何より♡ これで正式にシャーレでスクワッドのみんなを預かる事が出来るね♡」
「先生を襲撃した生徒がシャーレに行く事への反発も大きかったが、他ならぬ先生が切望した事、マダムと言う分かりやすい悪人が存在した事、アツコのロイヤルブラッドという特殊な事情が絡み合った結果らしい」
「また利用されないとも限らないからね。それならいっそ手元に置いたほうが、って事かな♡」
スクワッド、特にサオリちゃんへの判断は厳しくなりそうだったけど何とか平穏に済んだようだ。
撃たれた本人が許すって言ってるのが大きい。
ともあれこれで一件落着かな。
後処理は大変だけど、そこはみんなで頑張って欲しい。
これから人手が足りなくなった正義実現委員会の代わりにパトロールと御用聞きに出る四人と別れて駅へ向かう。
次は色んな装備を用意してくれたエンジニア部へお礼に行かなくちゃね。
「……と言う事でしたね。この子たちはしっかり役目を果たしてくれました」
そう言って私はリュックから小さな箱を取り出す。
工具なんかをしまい込むのにちょうど良いサイズのなんの変哲もないプラスチックの箱。
開くと中には三つ、壊れたドローンが入っている。
それをどこか慈しむように受け取り、優しい笑みを浮かべるウタハさん。
コトリちゃんとヒビキちゃんも誇らしそうに胸を張っている。
「そうか……うん。この子たちはたっぷり労ってあげないといけないね」
「今度この子たちの活躍を物語にしてみるのも良いかなって♡」
「ふふ、それはステキだね」
「書き上がったら読ませてください!」
「私も気になるかも」
「後はこの改良型のシールドですね♡ しっかりみんなを守ってくれました♡ 安心感もさることながら展開までが早いのも頼もしい♡」
「防御面は良さそうだね。後は重量と衝撃分散の改善かな。フミはシールドバッシュはそんなに使わないから重量は軽減させつつ、衝撃を和らげて手首への反動を軽減する機構を練り込みたいが……いや、いっそ腕にマウントさせてバックラー型の運用を目指すのも有りか?」
「先輩、そこら辺はデータを眺めながら考えましょう! 他には自動マッピングの方ですが……使い勝手はどうでした?」
「なかなか良かった♡ 方向だけじゃなく高さも視覚的に分かるのは助かる♡」
「後はセンサーを強化して室内全体の様子も情報化出来れば良いんだけど……」
「音波を飛ばすのは一番簡単で分かりやすいが、隠密性は下がってしまうね。発想の大本が潜入時のバックアップツールな以上、そこはこだわりたいポイントだ」
「むむむ……不可視光レーザーを使って距離計のように周囲へごく短時間照射してみるのはどうでしょう? 不可視光なら直接影響はありませんし、そういった装備で見ている相手にはフラッシュバンのように使えるかもしれません!」
「それだ! ナイスだよコトリ、早速その方向で検討してみよう」
「追加予算はいつでも申請してください♡ ユウカさんには話を通してあるので♡」
「いつも済まないね。予算回りはついて回る問題とは言え毎回頭を悩ませる難題なんだ」
「ロマンの追求には致し方なし♡」
「ううむ……やはり先生に頼み込んでフミを外部客員に……いや、いっそ先生ごと取り込んでしまう方が……?」
「その場合自分が先生のメスだと思い知らされますが覚悟はおっけー?」
「…………うぅむ」
「照れちゃった♡」
ウタハさんの照れ顔をスマホで保存しつつエンジニア部を後にする。
気を抜くとずっとお邪魔しちゃうからね。
調整にシールドも二つ渡して身軽になった所でお昼でも食べようかとぷらぷら歩いていくと、クエスト中の勇者とエンカウントした。
「あ、フミ!」
「んー?」
振り返ると向こうからアリスちゃんがてててっと駆け寄ってきていた。
両手を広げて待ち構えると、嬉しそうにそのまま飛び込んできた。
ほーれむぎゅむぎゅ♡
「こんにちはフミ! なんだか久し振りな気がします!」
「だねー♡ 久し振りのアリスちゃん分を摂取だ♡」
「きゃー♪ フミに吸われちゃいます♪」
アリスちゃんの方が私より大きいからどちらかと言えば私が捕食されてそうなビジュアルなんだけどね。
「私はこれからお昼にしようかと思ってたんだけどアリスちゃんは何してたの?」
「あっ、そうでした! アリスはクエスト中なんです!」
「今日は何のクエスト?」
「研究が行き詰まったり元気がない人をハグで癒やしてあげるんです!」
「辻ヒールだった♡ 他のみんなは?」
「モモイは夜更かししてたので寝てます! ミドリは筆が乗ってるとかでイラストをしゅばばばーって描いてました、ユズはいつも通りロッカーです!」
「いつも通りだった♡ また今度お菓子とお弁当作って遊びに行くね♡」
「わぁい♪ 楽しみに待ってます♪ それじゃフミ、またです!」
「ばいばーい♡」
来た時と同じくてててっと軽快に駆けていくアリスちゃん。
何だか元気をもらった気がする。
上機嫌に鼻歌なんかを歌いつつ食堂へ。
まだ空いているけど時間はそろそろ十二時前、これから一気に人が増えそう。
という訳で食券を買おう。
何がいいかなーと思いながらボタンを眺めると『会長イチオシ!』の文字が。
ふむふむ、唐揚げとポテサラに豚汁、それと日替わりで果物……今日はリンゴ四分の一が付いた定食。
これにしようぽちー♡
出てきた食券を受け取り定食のカウンターで引き換え、セルフの水を用意して着席。
ビタミンと野菜を豚汁と果物で補いつつ唐揚げとポテサラを楽しむ、どちらかと言えばわんぱく溢れるメニューだ。
会長さんって結構健啖家なのかな?
まだ見ぬユウカさんの先輩に思いを馳せつつ両手を合わせていただきまーす♡
「よう、邪魔するぜ」
豚汁のこんにゃくをもぐもぐしてウマーと浸っていた所で正面にラーメンと餃子の載ったお盆が置かれる。
視線を上げると私と同じくらいの背丈でメイド服にスカジャンを着込んだイケメンがニヤリと笑っていた。
「わぁ、噂のダブルオーさんだ♡ どぞどぞ♡」
「お、知ってんのか? なら話は早いな。メシ食いながらで良いからちょっとツラ貸せよ」
「誘い方が人食い反社♡」
「誰がホラーの怪人だ!」
ぷりぷり怒るのはミレニアムが誇る最高戦力、C&Cの美甘ネルさん。
何気にこうして顔を合わせるのは初めてだ。
お互いユウカさんやウタハさんを通して情報はもらってるんだけどね。
今日はたまたま予定が空いてたから顔を拝みに来たってところかな?
「今日はたまたま予定が空いてたんでな。顔を拝みに来たんだ」
「予想通りすぎた♡ あ、唐揚げと餃子交換しませんか?」
「おっ、ワリぃな!」
「んー、冷凍のはずなのにその辺の市販品より美味しい♡ これはリピートしちゃうかも♡」
「冷食ものは何故か力入ってんだよな、アイツ……まぁ美味いのに越した事はねぇけどよ」
「女子高生らしいキャピキャピしたスイーツでも研究職らしい手軽な万能食でもなく、わんぱく食べ盛りな唐揚げ定食がイチオシなのちょっと好き♡」
「割と脂っこいもん昔から好きなんだよな」
「ネルさんは……おっと、そう言えば自己紹介まだでしたね♡ 改めまして、ワイルドハント一年生、シャーレ所属の脇野フミです♡ フミちゃんって呼んで♡」
「いや、呼ばねぇからな?」
「ざーんねん♡」
「あたしはC&C三年の美甘ネルだ。ちょいちょいエンジニア部の依頼や会計の世間話でお前の話は聞いてっけどよ、実際に会ってみるのが一番手っ取り早いからな」
「もぐもぐ……ごくん。で、実際会ってどうでした? フミちゃん可愛い?」
「自分でフミちゃん言うな。呼ばねぇからな。まぁそこそこやるようだけどな……気迫が足りねぇ」
「使ってる武器も戦い方も火力出せるタイプじゃありませんからねぇ♡ 目標達成の為なら絡め手後ろ手何でも使いますし、単純な力比べ以外の所で勝利をもぎ取るのが多いですね♡」
「正面からブッ飛ばすのも出来んだろ? 聴いたぜ、ごっつい銃があるとか」
「アレは生徒相手に向けちゃいけない類の銃ですからね……基本的にせんせーが敵認定した相手用です♡」
「チッ、つまんねーの。久し振りに全力で遊べるかと思ったんだけどな」
「ネルさん始めとしてC&Cが全力出したらまたユウカさんの眉間に皺寄っちゃう♡ 毎回被害額が大きすぎるって嘆いてましたよ♡」
「目標を取り逃すよりよっぽどマシだろ」
「よりスマートに処理出来たらもっとカッコいいと思うんですけど♡」
「全部ブッ壊した方が早ぇし簡単だろ?」
「うぅん、発想がブルドーザー♡」
呑気に会話を続けつつもご飯をもぐもぐ。
途中途中でネルさんが殺気を飛ばしてくるのを全部勘が拾っちゃうから、どんな予備動作にも反応しちゃう私を見てどんどん楽しそうな顔になっていく。
「なぁ」
「やりませんからね♡」
「まだ言ってないだろ」
「ベッドの上での乳繰り合いなら受けますよ♡」
「なっ、バッ……!?」
「公平にせんせーに見届人をしてもらいましょう♡」
「どんなプレイだ!? やらねぇからな!!」
「じゃあ私もやらないって事で♡ 体質上反応しちゃうだけなので殺気ビシバシ飛ばさないでください♡」
「……報告通りなんだな」
「まぁ隠す事でもないですからね♡ まだ会ってないですけど、アスナさんにも勝てませんし♡」
「あん? そうなのか?」
「ネルさんには火力不足、アスナさんには相性最悪、って所ですかねぇ♡」
「……アイツ相手に相性で有利取れるやついるのか?」
「多分居ないと思うんですけど♡」
「だよな?」
謎の共通認識を得た所でごちそうさま。
学食とは思えない美味しさでした。
ほめてつかわす!
模擬戦はお断りしつつ今度お菓子作って差し入れに行くと伝えて何とか解放してもらい、シャーレへと戻る。
ついでに駅弁買っていこう。
おっ、特製焼き鮭幕の内……すいませーん、これ八つください♡
ソラちゃんと世間話を楽しみお茶と食後のコンビニスイーツを買い込んでエレベーターで上がると、ちょうど階段からジャージ姿のアツコちゃんが降りてきた。
靴や袖口に土汚れが付いている。
シャーレの菜園予定地で色々植えてきたのだろう。
満足そうな疲れを顔に浮かべている。
「あ、フミおかえり」
「ただいまアツコちゃん♡ 土いじりしてきたのん?」
「うん、色々植えてみた。花壇と農園、二つとも稼働開始、だよ」
「自警団の中からも一緒にやりたい子が居たら引っ張ってきて良いからね♡ 作った野菜でご馳走も作っちゃう♡」
「ふふ、ちょっと楽しみ。フミはもう外の用事は終わり?」
「うん、ミレニアムで駅弁、下のエンジェル24でスイーツ買ってきたからみんなでまったりしよー♡」
「じゃあヒヨリとミサキも呼んでおくね」
手を振るアツコちゃんと別れて執務室へ。
もうすっかり食事卓と化した来客用テーブルへ駅弁とスイーツを乗せてお茶を紙コップに注いでいく。
ランチとしては少し遅い時間だけど余っても私が全部食べるので問題は無い。
と、最初にやってきたのはジャージ姿のヒヨリちゃんだった。
「あ、フミさん! ご飯とデザートがもらえると聞いて来ました!」
「欲望に忠実♡ おしぼりで手を拭いてね♡」
「えへへ……お昼を食べたのに追加でご飯が食べられるなんて裏がありそうで怖いですねぇ……晩ご飯はハンバーグが良いです!」
「ダメ。今日は私のリクエストの番だから」
「うわぁん!?」
さっとインターセプトを決めたのは同じくジャージ姿のミサキちゃん。
みんなの制服は痛みや汚れが激しかったので専門店でしっかりオーバーホールしてもらっている。
その間過ごす用にヒビキちゃんがデザインしたシャーレ印のジャージをプレゼント。
軽いし楽だし丈夫だしで早くも馴染んでいる。
「ただいまミサキちゃん♡ 後でリクエスト聞かせてね♡」
「……まぁ、フミの料理は嫌いじゃないから」
“お、フミおかえり。……なんで駅弁が山に?”
「ただいませんせー♡ 遅めのお昼に買ってきたから余裕あったら食べて♡」
“焼き鮭幕の内……! くっ、絶妙にお腹が空いてくるやつだ……!”
「好きなおかずだけ食べて、残りは私にくれてもおっけー♡」
「贅沢ですねぇ……♪」
目をキラキラさせるヒヨリちゃんを撫で回しつつアツコちゃんを待つ。
サオリちゃんを除いた三人はシャーレ居住区で寝泊まりしつつ、BDで勉強したりシャーレの業務を手伝ってもらったり、たまに外で地域住民の方の困り事を解決したりしている。
便利屋68で請け負っていた猫探しや庭の草むしり、重い荷物の運搬等の軽作業を回してもらっている。
今日はそれぞれ課外活動。
アツコちゃんは土いじり、ヒヨリちゃんは資料室で読書、ミサキちゃんは多目的室でぬいぐるみ製作。
みんな個性が出てて可愛い。
そしてサオリちゃんだけど、色々と思う所が有ったのかキヴォトスの色んな所を巡っている。
日雇いのバイトをしたり、街並みを眺めてみたり。
自分探しの旅を始めている。
とは言えシャーレでの保護観察中なので二週間に一回は帰ってくるようにと先生から厳命されているので、次に帰ってきた時は私とアツコちゃんにもちもちされる運命が決まっている。
また夜には報告がてら今日あった事を日記みたいに纏めてモモトークで送ってもらうので、みんなそこまで寂しくはなっていない。
「みんなお待たせ。それじゃちょっと遅いけどご飯にしよっか」
「ミサキちゃんとアツコちゃんはお昼まだだったんだ?」
「……キリのいいところまでやってたら時間が過ぎてた」
「私も土を耕して肥料撒いて種を植えて、ってやってたらこの時間」
“ヒヨリは十二時になったら毎日執務室に迎えに来てくれるよ。さっきも二人でうどん屋さんに行ってきたし”
「えへへ……美味しかったです」
「ヒヨリ、抜け駆け?」
「ふーん……」
「何故かお二人からの視線がちべたい!?」
「にしし、仲良しさん♡ それじゃ食べよっか♡」
という訳で本日二度目のお昼ご飯。
おほー♡
フキの煮物美味しい♡
同じように頬に手を添えて満喫しているヒヨリちゃんと目が合い、二人でにへらと笑い合う。
やっぱ誰かと一緒に食べるご飯は美味しいねぇ。
笑顔で食べ進めていく私たちを、先生はお茶を啜りながら眩しそうに眺めている。
どこまでも優しい眼差しにくすぐったさを覚えながら、私は二つ目のお弁当に手を伸ばすのでした。