もしもシャーレにヒモを養う適性の有る娘が応募してきたら   作:一ノ瀬 崇

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六話目

 はい。

 空腹ぺこりんちゃんだったフミちゃんです♡

 あの騒動の後、犬耳もといオオカミ耳のシロコさんからエナジーバーをもらって復活したよ。

 風紀委員会とのアレコレは全部先生に投げっぱなしだったけど、なんか丸く収まったみたいなので、とにかくヨシ!

 遅れてやってきた自称おじさんのホシノさんも交えて自己紹介を済ませ、先生にフミちゃんパンチをぺしぺしして鬱憤を晴らして近況報告。

 聞けば聞くほどめっちゃイベントに巻き込まれてるじゃん先生、覆面水着団って面白過ぎない?

 楽しそうじゃん、って言ったらほっぺたをもちもちされた。

 やーん♡

 でもブラックマーケットでヒフミンと会ったのはもう如何ともしがたい、しがたすぎて呆れ返ってしまう。

 収まるどころか悪化してるじゃないのペロロ信仰。

 そのうちテストもブッチしてイベント参加してそうだな⋯⋯。

 まぁペロキチヒフミンは置いておこう。

 触っても障りにしかならない。

 荒神か何か?

 そして何やかんやでアビドスに九億もの借金があり、その諸悪の根源がカイザーコーポレーションにあると。

 話のスケール差が大きすぎてちょっと理解が追い付かない。

 九億?

 えっ、ヤバ。

 毎月の返済が八百万弱?

 もうね、私みたいな庶民には分からない世界よ。

 取り敢えずアビドスから金と土地を巻き上げて何か企んでるカイザーPMCってのがボスね。

 おけおけ、完全に理解したわ。

 まぁ先生はアビドスに残ってみんなと問題を解決したいそうだから、そっちはお任せしちゃう。

 連邦捜査部シャーレとしては、アビドスとカイザー間で交わした書類や契約が正式なものである以上は下手に介入出来ないからね。

 生徒を導く大人としての先生という立場で頑張ってもらおう。

 という訳で私が現地で出来そうな事はないので一旦戻る事にした。

 ネコ耳ちゃん──セリカちゃんとはモモトークも交換して柴関復活の際には是非お邪魔させて欲しいと固い握手を交わしておいた。

 秘密の呪文『全マシ』というのも教えてもらったので、再度アビドスを訪問するのが待ち遠しい。

 みんなに別れを告げ、一人シャーレへ⋯⋯行きませーん!

 ちょっと仕込みまーす♡

 という訳でさっさか小道具やらフラッシュライトやらを手配して色々やった。

 その集大成がコレである。

 

 

 

 

『⋯⋯今回、君達に依頼したいのはとある地点に集結したカイザーPMCへの襲撃だ』

 

 

 逆光に照らされ、シルエットしか見えない謎の人物がカメラ越しに語り掛けてくる。

 ボイスチェンジャーを使っているのか、声は低い男性のものだがノイズが激しく合成音声のようにも聞こえる。

 謎の人物はデスクの上に両肘を突き手を口元で組むポーズのまま動かない。

 

 

『この一帯ではアビドス自治区から切り取った土地を掘り返し、何かを探し当てるようなプロジェクトが進行中だ。彼らカイザーの目的は今回の依頼には関係ないが、プロジェクトの対象となるエリアの警備の為、カイザーPMCが多数の部隊を展開している。君達便利屋には、これらの部隊を襲撃、撃破してもらいたい』

 

 

 砂漠を表示した画像の上に赤い凸のマークがいくつも置かれ、画像下側から便利屋を表した青い凸のマークが敵陣へと進み周囲の赤い凸マークにバツ印を付けていくアニメーションが再生される。

 

 

『警戒は厳しく多数のパワーローダーに加え、カイザーPMCが設計した新型機が配備されているとの噂もある。確定した情報ではないが、念の為頭の片隅に入れておくと良いだろう』

 

 

 淡々と説明する謎の人物の横に簡易マップが表示され、作戦エリアを赤く染めていく。

 ポイントにズームする演出の後でパワーローダーが警戒に当たっている映像が流れ、視覚的にも分かりやすくなっている。

 

 

『報酬は百万クレジットを用意した。君達、便利屋68の流儀に合わせて成功報酬型の後払いとなるが、カイザーPMCの兵士一人につき一万、パワーローダー一台につき十万、新型機の撃破で百万の追加報酬を出そう。そして使用した弾薬費もこちらが受け持つ。存分にその力を見せ付けてやってほしい』

 

 

 追加報酬のくだりで誰かがごくりと唾を飲んだ。

 暴れれば暴れるだけお金が入ってくる。

 しかも弾薬も使い放題ときた。

 

 

『君達にとっては取るに足らない些末な依頼だろう。だがこちらにとっては非常に重要な依頼だ。是非とも君達便利屋68の力を貸して欲しい。⋯⋯良い返事を期待している』

 

 

 ブツリ、と映像が途切れた。

 私の持ってきたタブレットに映るのは、画面を覗き込んでいた便利屋の四人。

 しばしの沈黙の後、ムツキさんが飛び上がって私の手を取る。

 

 

「なにこれヤバぁ! フミっちこれ自分で全部撮影したの!? すごいじゃーん♪」

「にしし、頑張っちゃいました。ぴーすぴーす♡」

「本当⋯⋯地図の表示からワイプ映像の演出まですごいこだわってるのが分かる。でも何で撮影したの?」

 

 

 驚いてはいるけど困惑も乗せてカヨコさんが疑問を口にした。

 いや分かるよその気持ち。

 私も冷静になったら自分でアホじゃないかって思ったもの。

 

 

「いやなんか作り始めたら楽しくなっちゃいまして♡」

「案外凝り性なのかもね。それは良いけど⋯⋯これ、本当にシャーレからの依頼で良いの?」

「もちろん♡ せんせーにも許可はもらったし、ちゃんと契約書も連邦生徒会の書式のものを用意しましたよ」

「シャーレからなら支払いもちゃんと振り込まれるだろうし契約上の心配は無いけど⋯⋯私達に美味しすぎない?」

「大盤振る舞いな所はありますけど、便利屋のみなさんには今後とも末永くお付き合いしていきたいですし、投資の意味もありますから。あと事務所引っ越してください、出費が多すぎますよ。いくらなんでも公園にテント張って野草を煮て食べる企業はイヤすぎます」

 

 

 ジト目とまではいかないけどそれなりに思う所があると意思を込めた、もちょーんとした視線を向けるとカヨコさんはそっぽを向いた。

 そんな可愛い顔してもダメー♡

 なおもじーっと見つめ続けると、カヨコさんは降参と両手を挙げた。

 

 

「分かった、後で社長にも言い聞かせておく」

「ならおっけー♡」

 

 

 そんなやり取りに満足していると、袖を小さく引かれた。

 顔を向けると何か言いたげな表情をしているはーちゃんの姿が。

 さてはカヨコさんを見つめていたから嫉妬したね?

 

 

「なぁに、はーちゃん?」

「い、いえ、その⋯⋯」

「もじもじしちゃって可愛いなぁ♡ 襲っちゃうゾ♡」

「えっ、あ、え?」

「今のナシ♡ 欲望が漏れ出た♡」

 

 

 呆気に取られたはーちゃんのほっぺたをもちもちして誤魔化す。

 はーちゃんが可愛すぎるのが悪いよ。

 でもはーちゃんに悪い所なんて無いのではーちゃん無罪。

 はーちゃん可愛いよはーちゃん♡

 もちもち撫で撫でぷにぷにむぎゅむぎゅとやりたい放題してた所で、ようやくアルさんの意識が戻ってきた。

 映像再生してからずっと目をキラキラさせてたもんね。

 今回の依頼を確実に受けてもらえるようにアルさんのツボを刺激しまくる動画を作ったのは正解だった。

 勝ったなはーちゃんとお風呂入ってくる♡

 

 

「これよ⋯⋯これぞ、私が求めていたアウトローな依頼のされ方だわ⋯⋯!」

「くふふっ、アルちゃん画面に釘付けだったねー♪」

「ご希望とあればたまにこのスタイルで依頼出しますけど」

「是非お願いするわ!」

「お願いされましたー♡」

「もちろん依頼も受けるわ!」

「やったー♡」

 

 

 という訳でサクっと契約書にお互いサインして依頼完了。

 ちなみにこの依頼、名目上シャーレは一切関わっていない事になっている。

 依頼主は謎の組織、振込元はブラックマーケットで立ち上げたペーパーカンパニー、やり取りはこうして顔を合わせて行うので証拠として残る情報は一切無い。

 しかも私が便利屋のオフィスに来るのは十年ぶりに再会した友人に会う為と対外的な言い訳もある。

 防諜は完璧じゃないから、その為にも早い所ここを引き払ってシャーレの手の入った建物に移ってほしい。

 

 

「ちなみに私はシャーレの執務室で溜まった書類片付けてるので撃破スコアは各自でカウントお願いしまーす♡」

「えぇ⋯⋯良いの? 水増し請求するかもよ?」

「そしたらその分書類仕事手伝ってもらいます。私はその横ですき焼きや出前のお寿司を食べます。デザートにプリンパフェを二つも食べちゃいます」

「兵糧攻めかぁ⋯⋯」

「うわぁ、想像するだけで拷問だね」

「まぁそんなみみっちい事しないから問題ないわね。依頼達成の打ち上げですき焼きでも食べましょ!」

「す、すき焼きってなんでしょう⋯⋯美味しそうな響きですけど⋯⋯」

「え、はーちゃんすき焼き知らない? じゃあ依頼終わったらみんなで食べに行こ♡ お店予約しておくから」

「そう言えば依頼はもう取り掛かって良いのかしら?」

「突入タイミングはせんせーが指示する手筈になってるので、それまではアビドス市街地のビジホでのんびりしていてください。支払いはもう終わってますので」

「至れり尽くせりじゃーん♪」

 

 

 そうして便利屋と契約を交わし、今度こそシャーレへ。

 到着した頃には、辺りはすっかり暗くなっていた。

 今回の出張にあたり一週間分の外泊届を出しておいたのでワイルドハントの寮に戻らなくても問題ない。

 執務室のドアを開ければ、デスクの上に山と積まれた書類が私を出迎える。

 

 

「私の戦場はここかぁ」

 

 

 銃弾が飛び交うよりはよっぽど良いか、とインスタントコーヒーを淹れて仕分けに取り掛かる。

 連邦生徒会に言って先生の確認でなくても良い書類は《連邦捜査部シャーレ》のハンコを押して処理出来るようになったので、決裁待ちの書類が少なくなったのは良い事だ。

 シャーレでなくともヴァルキューレの生活安全課や連邦生徒会の他の部署で対応出来そうなのはそっちに回してもらい、逆にシャーレで対応した方が丸く収まりそうな案件や報告なんかはこっちに回してもらっている。

 この辺のシステムも色々と改良したいなぁ。

 はーちゃん可愛かったなぁ。

 柴関ラーメン食べたかったなぁ⋯⋯。

 そんな事をつらつらと考えながら書類を始末していく。

 疲れたら休み、お腹が空けばご飯を食べ、眠くなったら仮眠室で眠り、起きたらシャワーを浴びてまた仕事。

 一度追加の外泊届を出しにワイルドハントへ戻ったら、シャーレ出向の特別枠として今後の外泊は自由に行えるようになった。

 処理も面倒くさいし連邦生徒会からは圧力というか要望書的なものがどっさり届くしで、いっそ面倒はシャーレに押し付けてしまえとなったらしい。

 まぁ連邦生徒会から呼び掛けるようにお願いしたのは私なんですけどね、寮監隊さん。

 という訳で後腐れなくシャーレに入り浸る事が出来るようになったので、ついでに仮眠室の一角を私物置き場にしちゃう。

 ふははは、ここが私の城だ!

 大きなベッドでごろんごろんと転がって遊んで、仕方がないのでまた仕事に戻る。

 社畜みたいじゃないですかやだー。

 ぷぃぷぃ文句を垂れつつ書類を捌く。

 そうして一日が過ぎ。

 そうして二日が過ぎ。

 そして三日目の朝。

 

 

「⋯⋯やるじゃん♡」

 

 

 モモトークに一枚の画像が届いた。

 アビドス廃校対策委員会の五人に囲まれ、笑顔でVサインを突き付ける先生の写真。

 メッセージには一言『終わったよ』と書いてあった。

 

 

 

 

「かんぱーい!」

 “お冷やだけどね”

 

 

 後日、私は先生とアビドスの五人、そして便利屋四人と共にD.U.地区にある料亭ですき焼き鍋を囲んでいた。

 戦勝祝いとアビドスの借金が大幅に減った事のお祝い。

 まだまだ残ってる金額は大きいけれど、月々の利息が大幅に減って返済にも余裕が出来たらしい。

 いやまぁ、以前の一月で八百万弱ってのがおかしかったんだと思うよ。

 カイザーPMC含め、カイザーの関連企業は軒並み株価を下落させていた。

 過去に行っていた強引に結ばせていた不平等な契約、改竄される前の決算報告書の写し、違法な労働に生徒を従事させていた映像などなど、挙げればきりが無い量の証拠があちらこちらから提出され不正が明るみになった事で連邦生徒会も重い腰を上げた。

 是正勧告に追徴課税に行政指導、その他会社に携わる人間としては耳を塞ぎたくなるような言葉が乱舞した。

 特に大きかったのはブラックマーケットでの違法な金融取引。

 連邦生徒会の主導でかなり大掛かりな捜査がされたようだ。

 結果、カイザーPMCの理事は責任を取らされたらしい。

 トカゲの尻尾切りだけど、まぁ大企業なんてそんなもんでしょ。

 少なくとも、今までのように横暴な振る舞いは出来なくなったと言って良い。

 後は柴関の大将さん。

 怪我も殆どなく無事に退院して、何か残っては居ないかと店跡地へと足を運んでみたら、重そうなバッグとえらく達筆な文字で書かれた一枚の手紙が置かれていた。

《柴関のラーメンを、ぜひもう一度》と書かれていた手紙を読み、バッグを開いてみれば中からは大量の札束が。

 お店を復活させる為の資金として、誰かが置いていったらしい。

 いやぁ、誰なんだろうねそんな粋な人は。

 左隣で丁寧に卵を掻き混ぜているアルさんを眺めつつ小さく笑みを溢した。

 

 

「フミ、お肉が良い感じ」

「シロコさんありがとうございます♡」

 

 

 右隣に座っているシロコさんは何故か甲斐甲斐しく私のお世話をしてくれる。

 最初にエナジーバーもらった時のがアレだったかな。

 私が先生に庇護欲をそそられたように、シロコさんにとって私は守るべき対象になったのかもしれない。

 私としてはシロコさんみたいな優しくて強い人に構ってもらえて最高でしかない。

 フミちゃん甘えんぼうだからね、構って構って遊んで遊んでー♡

 

 

「熱いから火傷に気を付けて。ふーふーする?」

「そのままシロコさんにちゅーしちゃっても良いならお願いします♡」

「ん⋯⋯それは、ちょっと恥ずかしいから、ダメ」

 

 

 くぅ~これですよ先生。

 このシロコさんのぐいぐい行くのに乙女心はキュンキュンなこのアンバランスなところ!

 にしし、と笑っているとからかわれたのに気付いたシロコさんが私の器に無言で春菊と白菜を乗せていく。

 

 

「やーん、白滝のスペースが無くなっちゃうー♡」

「春菊は歯応えがあるし白菜はしっかり冷まさないと火傷する。フミはゆっくり食べてて」

「そんなー♡ ⋯⋯ちらっ♡」

 

 

 ちょうど器に白滝と牛肉を運んだアルさんに視線を向けてみる。

 でも機先を制したのはシロコさんだった。

 

 

「ん、甘やかしちゃダメ」

「アルさん⋯⋯」

「うっ、そんな目で見られると」

「ダメ、フミにはしっかりと教え込む」

「アルさーん⋯⋯♡」

「ちょ、ちょっとくらいやんちゃな方がフミらしくて良いんじゃないかしら?」

「⋯⋯なんだか子育て方針で対立する両親みたいね」

 

 

 ボスを舐めてはいけないと群れの掟を教え込もうとするシロコさんと、なんだかんだ甘やかしてあげたいアルさんとのやり取りを見て、対面に座るセリカちゃんが呆れたように笑う。

 将来二人がどんな母親になるか、その一端を垣間見た気がするね?

 器に盛られた白菜に卵をたっぷり絡めてふーふーしてから口に入れると、染み込んだタレと卵と白菜の甘みがとても美味しい。

 でもまだ中は熱々で、噛んだ瞬間じゅわりと熱を帯びた水分が一気に溢れ出てきた。

 

 

「あっふい!?」

「あぁほら、お冷や飲んで冷ましなさいよ」

 

 

 すかさずグラスを渡してくれるセリカちゃん。

 受け取って冷たい水で口内を落ち着かせて白菜を飲み込みほっと一息。

 

 

「ありがとーセリカおねーちゃーん♡」

「ええっ、私がお姉ちゃんなの!? で、でもなんか新鮮ね⋯⋯?」

「おねーちゃーん♡」

「⋯⋯うん、悪くない、わね? ほらフミ、器出しなさい。白滝入れてあげる」

「わーい♡ お姉ちゃんありがと♡」

「んふふ、いっぱい食べるのよ!」

 

 

 アビドスの中では可愛がられる事の多い末っ子扱いだったのか、セリカちゃんはお姉ちゃん呼びにネコ耳をぴくぴくさせてご満悦だ。

 好物の白滝もゲットしてほくほくしていると、シロコさんはジト目でセリカちゃんと私を見て溜息を吐いた。

 

 

「フミは将来、ううん。既に魔性の女になっているかもしれない」

「人の懐に入るのは得意そうよね」

「早くもセリカが籠絡された。あれはもうダメ」

「うちはみんなフミを受け入れてるわね。特にハルカはいつ交際宣言をしてもおかしくないくらい懐いてるわ」

「ん、先生もフミも人誑し」

 

 

 白滝と牛肉をうまうましている間に妙な結論が下された気がする。

 というかはーちゃん私と交際宣言してくれるの?

 やーん、そんなに好かれてたなんて嬉しい♡

 そんなはーちゃんは私とほぼ対角の席に座って、左右のノノミさんとカヨコさん、対面のアヤネちゃんに色々お世話されていた。

 最初は私とはーちゃんで並んで座ろうとしたんだけど、ムツキさんが「食事中イチャイチャして、食事終わったら隅っこでちゅっちゅし始めそうだからダメ」と言い、何故か全会一致で頷かれ席を離されてしまったのだ。

 ぶーぶー、と不満顔をしてたらシロコさんに抱っこされてドナドナされた。

 世は無情なり。

 まぁ私も多分そうするだろうなって納得したからなんにも言えないんだけど。

 

 

「フミ、ご飯のお代わりはいる?」

「もらうー♡ ありがとセリカおねーちゃん♡」

「良いのよ、いっぱい食べなさい!」

 

 

 セリカちゃんが笑顔でご飯をよそってくれる。

 余程お姉ちゃん呼びが気に入ったのか、もう見ててこっちまで笑顔になっちゃうくらい上機嫌だ。

 白米春菊白米牛肉、と次々口へ運ぶ。

 もうお口が幸せいっぱい。

 うまうまー♡

 

 

「セリカもフミを甘やかしたらダメ」

「べ、別に甘やかしてる訳じゃないわよ! 他校の同級生と親睦を深めてるだけ!」

「ん、ならデレデレしてる顔を引き締めるべき」

「デレデレしてないわよっ!?」

「まーまーシロコおかあさん♡」

「ん、私は籠絡されない。鉄壁の守り」

「おとうさんはせんせーでどう?」

「ん、牛肉が焼けたから取ってあげる」

「シロコ先輩も一瞬で陥落してるじゃないの! ってか先生の妻ポジションにさらっと入り込まないの!」

「わーい牛肉♡」

「フミ、あなた結構たくましいのね?」

 

 

 意外そうなものを見たと言いたげなアルさん。

 ふっふっふ、時には図太く生きるのもまたアウトローですよ。

 と、グラスが空いてるじゃないですか社長。

 追加で届いた烏龍茶のピッチャーを持ってアルさんのグラスへ注いでいく。

 

 

「まぁまぁ、社長!」

「っとっとっと」

「ささ、どうぞ社長!」

「ん、んくっ⋯⋯ぷはー♪ いやー、一回やってみたかったのよねコレ!」

「きゃーアルさん社長♡ 良い飲みっぷり♡」

「今日は飲むわよー!」

「烏龍茶だけどー♡」

「お酒はちゃんと大人になってからね」

「そーゆーとこしっかりしてるアルさんステキ♡」

 

 

 かんぱーい、とグラスを合わせて烏龍茶をくぴくぴぷふー。

 この飲み会ごっこが思いの外楽しい。

 ちょっと大人になった気分を味わえる。

 そんな中で唯一の大人である先生はと言うと、ムツキさんとホシノさんに挟まれてめっちゃイジられている。

 ホシノさんのストッパーになりそうなアヤネちゃん、ムツキさんのストッパーになりそうなカヨコさんは共にはーちゃんの方に意識を向けてる為、先生は孤立無援でもうやられたい放題だ。

 ただ満更でも無さそうなのでヨシ!

 なんだかんだ先生もノリは良いし、なによりこのメンツで無事に問題を解決出来たのが嬉しくて仕方がないみたい。

 敵対したり分裂したり、仲違いの危機を乗り越えて。

 そんな青春の手助けが出来た、と優しく微笑んで報告してくれたからね。

 

 

「⋯⋯ふふ♡」

「ん、ご機嫌?」

「ですね。ステキなお友達がたくさん増えましたから♡」

 

 

 ぐいっとグラスに残った烏龍茶を飲み干す。

 美酒ではないけど、勝利の一杯は格別だった。

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