もしもシャーレにヒモを養う適性の有る娘が応募してきたら   作:一ノ瀬 崇

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五十三話目

「アバンギャルド君の動きが鈍った今がチャンスだ! いくよ、エンジニア部!」

「はい! ラジャー!」

「分かった。アレを設置するね」

 

 

 ウタハさんの号令で一斉に動き出すエンジニア部。

 ここまで動かしてきた指揮車のコンソールを叩くと後部コンテナが開き、中から更に小さなコンテナがせり上がってきた。

 その光景にわくわくを隠し切れない様子で先生が口を開く。

 

 

 “い、一体何が始まるの!?”

「自律追跡機能に加え、防水防塵も完備」

「さらに、絶対零度や三千度を超える高温下でも安定性を誇る超超超超安全認証を保証した……!」

「半年分の予算をつぎ込んで作った最強の──」

「「「最新式遠隔スピーカー!」」」

 

 

 三人が変身ヒーローのようにポーズを決めて高らかにその名前を呼ぶ。

 そうして姿を見せたのは先端から黄、黒、黄と警戒色で彩られた爆撃弾頭のような何か。

 え、なにこれ♡

 この見た目でスピーカーなのバグでしょ♡

 その余りにも余りな外見にモモイちゃんやミドリちゃんは口を空けて唖然としている。

 ユズちゃんは困惑した様子で私と先生を交互に見てきた。

 なにもー可愛い動きして♡

 抱きしめてあげるからおいでおいで♡

 てててと駆け寄ってきたユズちゃんをむぎゅっと抱きしめておでこにちゅー。

 

 

「ひゃぁん♪」

 

 

 可愛い声を上げて赤くなった顔を隠すように私の胸に顔を押し付けてぐりぐりしてきた。

 ユズちゃん好き好き♡

 

 

「で、見る限りはただの弾頭なんですケド♡」

 “…………スピーカーになんでそんな機能が?”

「それは愚問だよ、先生」

「そもそも機能というのはですね! つけられそうな時に──」

「……目一杯つけておくのが鉄則」

「そういう事だよ」

 “どういうことなの……?”

「困惑しておられる♡」

「それでは──発射!」

 “え!? 発射!?”

 

 

 スピーカーというお題目をかなぐり捨てて飛翔する最新式遠隔スピーカー。

 これアレだね、スピーカーって品目にする事で色々な検査やら基準やら誤魔化してロマン全振りのミサイルを作ったやつでしょ。

 精巧なプラモデルにガム付けてお菓子売り場に売るようなもんだよコレ。

 凄い勢いで飛んでいったスピーカーがアバンギャルド君に着弾し、周囲を黒煙で包み込む。

 それを見て、モモイちゃんがごくりと喉を鳴らした。

 

 

「……わ、私、あのセリフを言いたくてムズムズする……!」

「お姉ちゃん、それはちょっと我慢して!」

「……ぜ、絶対言う必要ないよ」

「どうせなら小型ミサイルでも連続着弾させたいところさん♡」

「フミさんも我慢してください! なんなら私だってちょっと言いたいんですから!」

 

 

 やんややんやとはしゃぐ私たちとは別に、エンジニア部の三人は額の汗を拭うジェスチャーをして満足げに息を吐いていた。

 

 

「……やはり、私たちが作ったスピーカーは響きが良いね!」

 “そういう意味のスピーカーだったの!?”

「まぁまぁ細かい事は置いておきましょう!」

 “そういう所こそ説明が欲しかったなぁ!”

「とにかく、これで……!」

「……うん、やっと倒せたね」

 

 

 可哀想に、先生の渾身のツッコミはスルーされていた。

 振り回されてますにゃー♡

 とは言え威力は確かに凄かった。

 そう考えるとスピーカーの名前はなかなか良いセンスをしていたのかもしれない。

 ちなみにその辺の許可とか届け出をユウカちゃんには……あっ、コトリちゃん目を逸らすな♡

 お得意の説明しなさいよぉ♡

 

 

「やったー! 倒したよー!」

 “いやぁ……アバンギャルド君は強敵でしたね……”

「……み、みんなで力を合わせたおかげで、た、倒すことができました」

「そうだね。その、なんて言うか……」

「レイドボスの討伐に成功した、みたいな!!」

『みんなお疲れ様。でも、本番はこれからだよ。まだ鏡でネットワークを維持できているうちに移動しないと……とりあえずナビするよ』

「あ、その話なのだが……」

「その……」

「……ごめん、私たちはここまでみたい」

 

 

 そう言うと崩れ落ちるように指揮車のシートに身を預けるエンジニア部三人。

 えっ、なにごと♡

 

 

 “だ、大丈夫!?”

「……あの瞬間、スピーカー設置するまでは良かったのだが」

「インドア派には……あ、あまりにも無茶な動きをしてしまい……」

「…………もう、指一本動かせない」

「見ての通りだ。最後までついていけず面目ないが、私たちはここでお別れだ」

「ウタハ先輩……ううん! 大丈夫! 助けてくれてありがとう! さっきのスピーカー! すごくカッコよかった! この先は私たちでどうにか頑張るね!」

 

 

 モモイちゃんの力強い宣言に、ミドリちゃんとユズちゃんが頷く。

 すっかり頼もしくなった後輩を見て、ウタハさんは眩しそうに目を細めた。

 

 

 “心配しないで。みんなで必ずアリスを連れ戻してくるよ”

「……そうだね。そこまで言うのなら。モモイ」

「ん?」

「これをあげる。いざという時に役に立つはずだよ」

「これは……うん、分かった」

 

 

 何かを受け取ったモモイちゃん。

 その横顔はとても凛々しくて、ちょっとときめいちゃいそうだった。

 

 

「それでは、皆さん……この先の事、よろしくお願いします!」

「みんな、頑張ってね」

 

 

 コトリちゃんとヒビキちゃんも笑顔で見送ってくれる。

 ありがとうエンジニア部。

 ここから先は、ゲーム開発部が全力で行くよ!

 

 

「それはそれとして運動不足な所が目立つから全部終わった後でスミレさんにトレーニングメニュー組んでもらうね♡」

「そんな!? 死んじゃいますよ!?」

「インドア派の虐待はミレニアム校則で禁止されているはず……!」

「待ちたまえフミ。私たちは話し合う事が出来るはずだ」

「だめでーす♡ 健康指導として私が一週間お弁当作ってあげるから諦めて運動するよーに♡」

「くっ、これがアメとムチですか……!」

「うぅん……フミのお弁当はちょっと魅力」

「…………おやつの差し入れも付けてくれるなら受け入れようじゃないか」

「交渉成立♡」

「やりました! さすがウタハ先輩!」

「フミのおやつとお弁当があるなら……」

「ふふふ、楽しみだね。けれど、本当にお手柔らかに頼むよ……!!」

 

 

 拝むような視線を背にいざ出発。

 さらばエンジニア部!!

 淑女の涙は一度だけ!!

 

 

 

 

 

 

 “えっと、ここを曲がったら……次はどこに向かえばいい?”

『右に曲がって、直進! そこが目的地だよ』

 

 

 チヒロさんのナビゲートを受けて都市を駆け抜ける。

 ヴェリタスのハッキングを逃れた数台のドローンを蹴散らして進めば目的のタワーはもう目前に迫っていた。

 

 

「よーし、行っくよ〜!」

「ここにアリスちゃんが……!」

 

 

 モモイちゃんとミドリちゃんのテンションも最高潮だ。

 ユズちゃんもゲームの時よりキリッとしててカッコいい。

 意気揚々と辿り着いた場所はミレニアムの駅前のように洗練されたデザインの広場と、その奥の複合施設にも似た大きな入り口が待ち構えている。

 左右対称なのが実に良い。

 これは爆破しないでおこう♡

 

 

 “ここが要塞都市エリドゥの中央タワー……”

「アリスちゃんが……ここに……」

「……行こう!」

「うん!」

「うん……お?」

「え?」

「あっ! ご主人様とみんな〜! やほやほ!」

 

 

 と、気合を入れたその時、私たちがやってきた方向とは別の路地から人影が出てくる。

 メイド服に身を包んだ美少女軍団C&Cのみんなだ。

 早速アスナさんに捕まって抱き上げられたままくるくる回る。

 

 

「うひゃ〜♡ アスナさ〜ん♡」

「あははっ、フミちゃ〜ん♪」

「アスナ先輩、走り出すのが早い……!」

「皆さん到着されていたのですね」

「先輩!」

 “ネル達がここにいるという事は……トキは?”

「……ぐっ!!」

 

 

 先生の問い掛けにネルさんは悔しそうに歯を噛み締めた。

 ボロボロにはなっていないしここに到着出来ている事から追われている訳では無さそう。

 ネルさんの反応も併せて考えるとこの場合はトキさんが退いたんだろうね。

 小声でアスナさんにこしょこしょ聞いてみると「正解♪」とさらにむぎっと抱きしめられた。

 おっぱいがいっぱい!

 先生、羨ましそうにチラチラ見ないの♡

 

 

「んぅ? ご主人様も後でむぎゅむぎゅする?」

 “……………………機会が有ったらね!”

「逡巡が長い♡」

「先生? 終わったらお時間いただきますね?」

 “そ、それよりみんなに怪我が無くて良かったよ!”

「あからさまに誤魔化した♡」

 

 

 冷や汗を掻く先生は置いといて、アカネさんからトキさんとの戦闘について一部始終を聞き取る。

 なかなかの激戦だったらしい。

 途中有った地震は戦闘の余波だったんだね。

 え、スゴい爆発音?

 あれはエンジニア部の秘密兵器ですよ♡

 みんなは疲れてダウン中です。

 復活したら来るかな?

 

 

「なるほどー。そっちも楽しそう!」

「なかなか刺激的でした♡」

「オラッ、いつまでイチャイチャしてんだ!!」

「リーダーもフミちゃん抱き枕にしたいの? いいよ!」

「うおっ!? 投げんな!!」

「そう言いながらもしっかり受け止めてくれるネルさん好き好き♡」

「バッ……バカ言ってんじゃねぇ!?」

「ちょっとぉ! いよいよラストダンジョンなんだからもう少し緊迫してよぉ!?」

「はぁーい♡」

 “……ええと、チヒロ。このタワーにアリスがいるの?”

『その……会長が言ってたんだよね? アリスのヘイローを破壊するって。そのためには、相応の施設が必要なんじゃないかな。そして、ここエリドゥは全ての電力がこのタワーに集中するような構造になっている。これほどの規模の施設が、会長の手によって作られた理由……そして、会長の動機……答えは明白だろうね』

「本当に……アリスがあそこに……」

「つまり」

 

 

 私を降ろしてネルさんが一息吐く。

 優しく降ろしてくれるの好き♡

 笑顔を向けられてそっぽを向いて鼻を鳴らしつつ、ネルさんはタワーを見上げた。

 つられて見上げれば首の後ろがコキッと鳴る。

 結構な高さだ。

 少なくとも階段では登りたくない。

 

 

「後はこのバカデカいタワーを登りゃあいいんだろ?」

 “そうだね、あとは登るだけ……”

「露骨にテンション下げないで♡」

 “……流石にエレベーターはあるよね?”

「少なくとも建築基準で言えば設置は必須だし、リオさんが徒歩で登っていったとは考えにくい♡」

 “だよね!”

「元気になったようで何より♡」

『ただ、残念だけど──あの会長が、門番を用意しないわけがないよね』

「お待ちしておりました、先輩方、先生」

 

 

 ノースリーブメイド服姿の金髪生徒が正面ドアから現れた。

 彼女が噂のトキさんだね。

 

 

「私とは初めましてかな♡」

 “やっぱり、トキが門番なんだね……”

「あっ! また会えたね〜! トキちゃんやほ!」

「あぁん? んだよ、さっきは尻尾巻いて逃げ出したくせに……一体どのツラ下げてあたしらの前に現れてんだ?」

「うーん、言動が完全に人食い反社♡」

「うるせー!」

『作戦を変更したのは、貴女たちだけだと思って?』

「あ、リオさんだ♡ アバンギャルド君強かったです♡ 実際に動くとなかなかカッコいい♡」

『……そう』

「オメーもご機嫌になってんじゃねぇ!!」

『……こほん。貴女たちが来ることを見越していくつもの計画を準備してきたけれど──まさか、防衛システムをすべて壊して、ここまで到達するなんて……。変数として機能し、私の計画を狂わせたのも、すべては──シャーレの先生、貴方が関わったからかしら?』

 “…………リオ”

『それならそれで構わないのよ。貴方が規格外の力を見せるのなら、こちらもそれ相応の切り札を出すまで。トキ。現時刻をもって《アビ・エシュフ(Abi−Eshuh)》の使用を許可するわ』

「……リオ様、それは」

『ええ、本来は《名もなき神々の王女》との戦闘用だけど……仕方ないわ。ここでこの子たちを阻止できなければ、すべてが無に帰してしまうのだから』

「……イエス、マム。パワードスーツシステム《アビ・エシュフ》へ移行します」

 “アビ……エシュフ?”

 

 

 聞き慣れない名称が出てきたと思ったら、突然トキさんがスカートの留め具を外した。

 わぉ、と驚く間もなくエプロン、腰元のベルト、背中に回したホルスターと次々に装備を足元へ落としていく。

 中にはレオタードタイプのスーツを着ていたようで、それ自体も何かしらのアシスト機能が有りそう。

 直後、上空から飛翔音が聞こえてくる。

 エデン条約の時のミサイルとは違う、もっと小さい何か。

 

 

「この音は……」

『……ッ! 上!』

 

 

 皆の視線が上空へ向く。

 見上げた夜空の中、小さく黒い点が近付いてくる。

 

 

「呼出信号確認」

 

 

 トキちゃんがそう呟くと、黒い点の後ろに青白い光が生まれた。

 夜闇を切り裂く閃光は徐々にその大きさを増していく。

 そして──案の定、ここに着弾した。

 

 

「「「わぁっ!? 一体なにっ!?」」」

 

 

 ゲーム開発部の三人が声を揃えて叫ぶ。

 周囲は着弾の影響で塵が白くもうもうと舞い上がってお互いの姿さえ見通せない。

 少しずつ視界がクリアになっていく先、トキさんの姿が見えた。

 落ちてきたのは装備ポッドらしく、中にあったものを背負うように装着していく。

 そう言えばパワードスーツシステムって言ってたね。

 なるへそ、超演算能力と動作補助、ついでに高火力を揃えたウェポンパックかぁ。

 

 

「パワードスーツシステム《アビ・エシュフ》起動。戦闘、開始します」

 “……来るよ!”

「下がってろ! 行くぞお前ら!!」

 

 

 ネルさんの声を聞いて先生を横抱きにして後方へ下がる。

 どさくさに紛れてほっぺちゅーしとこ♡

 取り敢えず射線から外れて先生を降ろし戦闘を見守る。

 せっかくC&Cの皆さんが戦ってくれるのだから、私はちょいと観察させてもらおう。

 裏工作のお手伝い、とも言う。

 スマホのカメラで戦闘の様子を撮影しつつ、時折リボルバーを鳴らして援護射撃。

 銃弾の嵐の中で器用に回避を続けるトキさん。

 跳弾が向かう瞬間だけ、強引に身体を動かして位置取りを変えているのが分かる。

 

 

「んー……?」

 

 

 その動作の中で、トキさんの反応が僅かに遅れるものが混じっている。

 最初は小さな違和感。

 他の動作との違いはなんだろうか。

 無軌道に撃ち出していた弾丸に指向性を持たせて放ってみる。

 前後左右、そして上下。

 

 

「あ、これかぁ♡」

「何か分かったの……?」

「見付けたよユズちゃん♡ チートの綻び♡」

「だぁっ、クソ! アレだけ当てて全然効いてねぇのはどんなトリックだ!?」

 “こんなに攻撃してるのに、傷一つつかないなんて……”

『特殊金属で耐久性を増加させている……いや、耐えているわけじゃ、ない……? そもそも、全ての攻撃を無力化してる……?』

 

 

 チヒロさんも異様な戦いぶりのタネに気付き始めている。

 ここは一つ、突破口をこじ開ける為の戦術が必要だ。

 

 

「作戦たーいむ♡」

「え?」

「トキさん、ちょっと待っててー♡」

「……こちらが待つ理由は無いのですが」

「待ってくれるならこのクッキー進呈しまーす♡」

「……リオ様、ご一考を」

『必要無いわ』

「戻ったらアバンギャルド君のケーキも付けます♡ それとこの戦いでこっちが負けたらリオさんの計画に参加して《Divi:Sion System》を始めとした名もなき神々の王女との戦闘に協力します♡」

『……いいでしょう』

「お前、勝手に……チッ、一旦下がるぞ」

「まぁまぁ♡ 勝つから大丈夫ですよね、勝利の象徴コールサインダブルオー♡」

 

 

 右手を挙げて宣言する。

 隣ではユズちゃんが困惑の声を上げているけど、気にせず一度C&Cの皆さんにも戻ってきてもらう。

 ネルさんが何とも言えない顔をしているのを宥めて作戦会議。

 向こう側の絶対的な優位からくる油断も利用させてもらおう。

 多分、あらゆる手を使っても勝てなかったのだから敗者として従ってもらおう、とかは考えているだろうし。

 名もなき神々の王女とやらの軍勢と戦うのに戦力はいくら有っても困らないからね。

 取り敢えず先にクッキーの袋をトキさんに手渡し。

 早速一つ食べて目を輝かせているのに微笑みを零してみんなの元へ戻り円陣を組むように秘密会議。

 話し合いの内容を聞かれないようにアロナちゃんにも助力を頼む。

 いちごミルクパフェ作ったげる♡

 

 

「という訳で、あのアビ・エシュフの攻略法……ってほど確実では無いですけど、突ける隙は見付けました♡」

「ええっ、もう!?」

「お姉ちゃん、声が大きい」

『あの動き、エリドゥの電力と演算機能を使って未来予知に等しい精度でこっちの動きや弾道を計算しているようだけど』

「ハァ? 未来予知だあ?」

「それで私の狙撃も避けられたのか……」

「こっちの弾丸も撃ち落とされてましたが……そんな曲芸地味た動きを可能にするなんて」

 “つまりフミみたいなスペックなんだね”

「え、フミちゃんそんな事出来るんだ! 今度見せて!」

「それは構いませんけど♡ で、その攻略法なんですけど……♡」

 

 

 私の観察して得られた情報、チヒロさんの分析、実際に戦ったC&Cの肌感。

 それらを統合して導かれた一つの予測。

 アビ・エシュフの演算能力は地上での運用を前提としている為、自身を空中に置いての処理は想定されていない。

 そこを突けば通常時には発生しない負荷が掛かり、未来予知の魔法は解ける。

 そうなれば後は地力同士のぶつかり合い。

 ネルさんが負ける理由は一つも無くなるだろう。

 

 

「……って事なんですけど♡」

 

 

 話終えた私への返事はネルさんの吊り上がった口の端。

 めっちゃ良い笑顔してる。

 先生に目を向けると力強く頷いてくれる。

 

 

 “よし、それで行こう!”

『……それで、作戦会議は終わったかしら?』

「ばっちり♡ リオさん待ってくれてありがとー♡」

『別に、いいのよ』

「こいつこんなチョロかったか……?」

『チョロくないわ。あらゆる手段をも打ち払い、諦めて恭順させる為の合理的な判断よ』

「ホントかよ……」

 

 

 何やらネルさんは訝しげな目を向けている。

 そう言えばC&Cって元々リオさん直属の組織なんだっけ?

 二人の付き合いは結構長いのかもしれない。

 それじゃ、戦闘はお任せしちゃおう。

 私はトキさん突破に燃えるみんなから少し距離を取ってスマホを起動する。

 

 

「そっちはどーですか♡」

『うん、順調。部長も張り切って色々やってる』

「それは重畳♡ エイミちゃんの出番は無さそうかな?」

『部長が無茶振りしてこなければ、ね』

『エイミ、私がいつも無茶振りしてるような言い方はやめてください』

『いつもされてるんだけど』

『獅子は我が子を千尋の谷に突き落とすと言います。私もエイミの成長の為に心を鬼にしてやっているのです』

『超天才とか自称してるのに、やるのはライオンの猿真似なんだ?』

『エイミ!? 反抗期ですか!?』

「日頃の鬱憤が詰まってそうな切れ味♡」

 

 

 相変わらず愉快な二人。

 エイミちゃんのジト目が容易く想像出来ちゃうね。

 今度アイス作ってあげよう。

 

 

『まぁそれは一先ず置いておきましょう。エリドゥ外郭への侵入はまだ確認されていませんが、廃墟で不規則なエネルギーの発露が観測できました。恐らく一部のロボットが起動してシステムに反応しているのでしょう』

「防衛についてはどうです?」

『システムの理論から違うので現在の状況では直接ハッキングはできません。対処するなら物理的な方法になりますね。ドローンの配備は進んでいますが、やはり主力はみなさんになりそうです』

「んー、となると私が向かった方が早いですね。ゲーム開発部のみんなはアリスちゃんの所に向けたいですし」

『あの子は貴女の事も待っていると思いますよ?』

「もちろん、後でいっぱいむぎゅむぎゅ抱き締めてあげますよ♡ でも私としてはリオさんも気になるので♡」

『あのような流れていけずに淀み切った下水にして身体ばかり大きくなって中身が成長していないビッグシスター相手に物好きですね……』

「うぅんボロクソ♡」

 

 

 予想される妨害について対処法を話してまた状況が動いたら連絡する、って事で通話を終えた所で空からなんか降ってきた。

 今度は何事♡

 見れば傷を付けたネルさんがゆらりと立ち上がっていた。

 パラパラと瓦礫やガラスの破片が落ちている事から、隣のビルから落ちつつトキさんと戦っていたのが分かる。

 

 

「えっ、外壁駆け下りて戦ってたの♡」

 

 

 とんでもないフィジカルだった。

 一方のトキさんに目立った外傷は無い。

 すぐさまユズちゃんがスモークグレネードを撃ちモモイちゃんが牽制の弾をばら撒きミドリちゃんが先生を連れて下がっていく。

 仕切り直しだね。

 いつの間にかネルさんたちも下がっていたので、私ももう一つクッキーの袋をトキさんに投げ渡して背を向ける。

 エリドゥ全体の電力と演算能力、ちょっと舐めてたかもしれない。

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