もしもシャーレにヒモを養う適性の有る娘が応募してきたら   作:一ノ瀬 崇

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ミレニアム編Vol.1
七話目


 朝九時のチャイム。

 すっかり聞き慣れたその音色に身体を揺らして、執務室のドアを開く。

 

 

「おはよー、せんせ♡」

 “おはよう、フミ。今日も元気だね”

「せんせーと一緒ですからね♡ ユウカさんもおはようございます♡」

「おはよう、コーヒー淹れてあるわよ」

「ありがとごじゃまー♡」

「なによそれは」

「可愛くないです? ユウカさんの心の幼女フミちゃんだお♧」

「⋯⋯いや、アリか⋯⋯?」

「ガチで悩まないで♡」

 “仲良しだねぇ”

 

 

 当番のユウカさんにじゃれついてから自分のデスクへ。

 いつものように書類を仕分けて認可のハンコをぺたんこぺたんこしていると、不意に先生が声を上げる。

 

 

 “おや?”

「どうしました?」

 “前にユウカに運用をお願いしてた銘柄が上がってるらしいよ”

「え、本当ですか?」

「やったー♡ お小遣いげっとー♡」

 “お小遣い⋯⋯って言える可愛い額じゃないけどね”

 

 

 先生が手元のタブレットを動かして、私達の所のモニターにもチャート表を共有してくれる。

 見れば分かりやすいように強調表示された企業の株価がすごい勢いで値上がりしていた。

 

 

「わ、すごい。どのタイミングで手放します?」

「んー、期待出来そうな情報はあるけど⋯⋯いえ、欲を出さずに全部売っちゃうわ。二人ともそれで良い?」

「おっけー♡」

 “お任せするよ”

「じゃあ全部売り注文で、っと」

 

 

 ちょっと前に私と先生はユウカさんにお願いして、貯金を使って資産運用をしてもらう事にした。

 先生はオモチャや課金、生徒への奢りやちょっとしたプレゼントなどの出費が多く、食事をコッペパンともやしで済ませようと画策していた所を御用となった。

 最低限健康的な生活、特に食生活を送ってもらう為に一月分の食費は確保しておき、余ったお金から色々と使ってもらうようにしようと提案、ついでにその余ってるお金をただ置いておくのではなく誰か信頼出来そうな人に資産運用してもらうのはどうかという話に。

 そこで白羽の矢が立ったのがユウカさんだった。

 セミナー会計として日々資金のやり繰りをしていて信頼感もバッチリ、既に個人で株取引や投資で資産を増やしていた事もあり、私達の知り合いでユウカさん以上の人材は居ないと頼み込んだのであった。

 もちろん運用に失敗しても文句は言わないし責任も問わない、元より自分の至らなさが原因なんだから感謝こそすれユウカを悪く言えるはずも言うつもりもないよ、との先生の言葉にユウカさんも資産運用を承諾。

 かくして、先生の食費は確保され無駄使いしないように注意もしつつある程度趣味に散財出来るだけの資産を得る事が出来たのでした。

 めでたし!

 ちなみに私も一緒に資産運用をお願いしてみた。

 前に便利屋のみなさんにバラ撒きしてちょっと目減りしたけど、ショートショートやら短編集やらの賞金や印税なんかで得た貯金はほぼ手付かずで放置してたからね。

 結果、えらい勢いで私の資産が増えた。

 増える倍率は先生と同じだけど、元金がゼロ四つは違うからそりゃもうトンデモ資産よ。

 こわ♡

 すぐさまユウカさん馴染みの税理士さんに処理お願いしたよね。

 まぁ将来先生やはーちゃんを纏めて養う資金が出来たし良いか⋯⋯総資産額はちょっと見ないでおこっと。

 そんな感じで私はただの庶民から一気にお金持ちになったのでした。

 ひかえおろう、ハブマネーだぞ!(英語力中学生並感)

 

 

「じゃあ儲かった事だし今度私用でトリニティ行く時にお土産で有名なスイーツ店回ってきますね」

「あら、悪いわね♪」

 “珍しいね、トリニティまで行くなんて”

「ハスミさんやスズミさんへの差し入れと、あとちょっとペロキチヒフミンに焼きを入れようと思って♡」

 “あ、あはは⋯⋯程々にね?”

 

 

 あのペロキチまたブラックマーケットでなんかやらかしたらしい。

 モモッターで検索ワードランキングに《ファウスト》《覆面水着団》って流れてきて二度見したわ。

 なんでも流通トラックを襲撃して手に入れた品を中古品として販売してた悪徳業者を成敗したとかなんとか。

 先生に聞いたら聞いてないよと首を振ってたので間違いなくペロキチのスタンドプレーだ。

 あんにゃろう覚悟の準備しとけよぉ。

 

 

 “それはそうと、ちょっと気になる手紙が届いていたよ”

「手紙ですか?」

「ミレニアムの消印? 誰かしら⋯⋯」

 

 

 先生が手にした封筒にはミレニアムの消印が押されていた。

 ユウカさんの知り合いからだったりして。

 二人で先生を挟むように手紙を覗き込む。

 むぎゅぎゅー。

 

 

 “ふ、二人ともちょっと近くない?”

「気のせいです」

「もっとくっついた方が嬉しいです?」

 “さぁ読んでみようか!”

 

 

 にしし、相変わらず先生可愛いー♡

 心なしかユウカさんが一歩身を寄せたところで、件の手紙を読んでみる。

 どれどれ⋯⋯『ゲーム開発部は今、存続の危機に陥ってます。生徒会からの廃部命令により破滅が目前に迫っている今、助けを求められる相手はあなただけです。勇者よ、どうか私たちを助けてください』⋯⋯なるほど。

 

 

「スパム?」

「いや、確かにそれっぽいけどウチの部活の子だわ。何やってるのよあの子達⋯⋯」

 “昔あったよね、主人がオオアリクイに殺されて一年が経ちました、とか”

「お祖父さんが隠してた金庫から桐の箱に入った鏡が出てきたんだが、とか♡」

 “なにそれ見たい”

「ちょっと面白そうなのやめてよ」

 

 

 多分厄ネタだと思うんですけど♡

 ともあれゲーム開発部って部活がミレニアムにある事、セミナーから廃部命令が出ている事は本当らしい。

 それで困ったこの娘達は先生に助けてほしいとお手紙を送った、と。

 

 

「でも廃部命令なんて珍しいのでは?」

 “確かに、ユウカは面倒見も良いから廃部にならないように色々と助言してそうだけど”

「もちろんしてましたよ! でもあの子達ったらゲーム開発部って言っておきながらゲームも作らず余所の部活を襲撃したり違法賭博を開いたりと問題ばかり起こしてて!」

「ゲーム開発部って人生をゲームだと思ってます?」

 “それで開発してる方向性がそっち向きなのはちょっと”

「ユウカさんの苦労が見て取れますねぇ⋯⋯よしよし♡」

 

 

 おでこのあたりを撫で撫でぽんぽん。

 身長差があるから背伸びしてもおでこまでしか届かないのはナイショだ。

 そしたらユウカさんにむぎゅっとされた。

 いやん積極的♡

 

 

「フミは本当良い子ね⋯⋯! ミレニアム来ない?」

「流石にミレニアム行くと落ちこぼれちゃうんで♡ 今度数学の勉強教えてください♡」

 

 

 なんやかんや言っても私は文系だからね。

 複式簿記とかならまだしも、高校数学はちょっと意味が分からないので。

 

 

「せんせーは苦手な科目とかありました?」

 “主要科目は得意だったけど、副科目は全体的にイマイチだったね。特に音楽と美術は才能というかセンスの差っていうのが如実に表れるからね”

「へー、何か意外ですね」

「確かに、せんせーなんでも上手そうなのに」

 “あはは、担当教師からは『お手本をなぞるのは上手いけど、自分を出すのは苦手みたいだね』って言われたよ。楽譜通りに演奏したり技術を模倣して絵を描いてたから、自分らしくって意識が全く無かったのを見抜かれてドキってしたね”

「教科書通りにやってた、って事ですか」

「誰かの有名な引用文を組み合わせて作った文より、血反吐撒き散らしながら書き上げた自分だけの文の方が迫力出たりしますもんねぇ⋯⋯」

 “そういう意味では、こっちの方が心惹かれるかもね”

 

 

 そう言って苦笑とともに先生が差し出したのは、大きく『ボツ!!』と書かれたもう一枚の手紙だった。

 読み進めていくと、ユウカさんの眉間のシワレベルが徐々に上がっていく。

 私はこの手紙を書いた娘達に会ってみたくなってきた。

 こんなの絶対面白い娘じゃん♡

 

 

「ミレニアムランド、行ってみます?」

 “先生を名乗る身としては行かない訳にはいかないよね”

「何気にミレニアムにはまだ行ったこと無いんで、どんなところか楽しみです♡」

 

 

 

 

 という訳で後日。

 お土産を手に私と先生はミレニアムへと赴いていた。

 もちろん、はぐれないようにって名目で手を繋いでる。

 チャンスを逃すフミちゃんではないのですよ。

 にぎにぎ♡

 いやぁそれにしてもミレニアムは大都会だね、モノレールで行きたい所にすぐアクセス出来るとか便利すぎ。

 歩道や並木道なんかも幾何学的に整理されてるというか、近未来的なデザインで配置されてるのが分かる。

 同時にめっちゃお金と労力掛かってるのも分かって若干腰が引けそう。

 

 

「すごいよせんせー、校舎が一流企業のオシャレなビルみたい」

 “ちょっとした通路や広場もオシャレなデザインになってるし、ゴミ箱ですらなんかSFチックだよ”

「見てせんせー、ドローンが窓拭いてる」

 “実は私達未来に来たとかじゃないよね?”

 

 

 二人でぽかーんとしちゃって、おのぼりさん丸出しなまま舗装された道を歩く。

 足元のタイルも凝っていて景観を崩さないようにしつつも図書館や実験棟なんかへの案内の矢印が伸ばされている。

 ホント映画のSFな街並みだよここは。

 

 

「あ、せんせーちょっとゴメンね?」

 

 

 繋いでいた手を解いて腰前側のホルスターから愛銃を引き抜く。

 んー⋯⋯角度が悪いね、致し方なし。

 左腕を前に突き出して射線を遮り、即興の障害物にする。

 軽い銃声とともに袖が揺れ、弾は上へと飛んでいく。

 ほぼ同時に女の子の悲鳴じみた声を伴って、開いた窓から黒く四角いものが飛び出してきた。

 跳弾はそれの角を掠めるように撃ち抜き、遥か上で窓を拭いていた清掃ドローンが持っていたくずかごへ入る。

 私は空いた左手で撃ち抜いた物体をキャッチ。

 右手のリボルバーをホルスターに収めて状況終了。

 

 

「せんせ、怪我は無い?」

 “私は大丈夫だけど、フミ、腕は!?”

「へーきへーき♡ 特注の防弾コートだって言ったじゃん、どんな銃撃からでもせんせーを守れるよ♡ 衝撃自体はこないだお見舞いしたフミちゃんパンチくらいだし♡」

 “それなら良かった⋯⋯。改めて、ありがとねフミ”

「にしし、どういたしまして♡ お礼はほっぺちゅーかせんせーからの恋人繋ぎで良いよ?」

 

 

 左手の何かを右手に持ち替えて、萌え袖にした左手をひらひら振ってみる。

 先生は目を彷徨わせてからおずおずと手を繋いできた。

 大きな手が私の手を包み、太い指が私の指を割って伸びてくる。

 くっついた所から先生の体温が伝わってきて、私がどんどん先生の熱で染まっていくのが分かる。

 

 

 “⋯⋯自分からすると、結構恥ずかしいねコレ”

「にしし♡」

 

 

 私は嬉しさとくすぐったさで口元がニヤけちゃう。

 存分に先生ニウムを補給していると、ドタドタと擬音が聞こえてきそうな走り方で女の子がこちらにやってきた。

 ヘッドホンみたいなネコ耳カチューシャと猫しっぽアクセサリーを付けた、金髪の元気そうな子。

 彼女は私の右手のものを見て大きく口を開いた。

 

 

「私のプライステーション!」

「あなたのですか? ダメですよ窓から放り投げちゃ、危うくせんせーに当たって大惨事になるところでした」

「えっ!? それは本当にごめんなさい! 怪我とか大丈夫だった?」

 “フミ⋯⋯この子が守ってくれたからね、大丈夫だよ”

「勢いを削ぐ為に隅っこの排気口を割っちゃったけど、もし動かなくなったら弁償しますので」

「え、勢いを削ぐって⋯⋯え、空中で弾いたの!? なにそのスゴ技!」

「お姉ちゃん、プライステーションは!?」

 

 

 もう一人増えた。

 双子さんかな?

 同じようにネコ耳カチューシャと猫しっぽアクセサリーを付けている金髪の女の子。

 分かりやすい違いはお姉ちゃんと呼ばれた先に来ていた子が、全体的な服の挿し色がピンク。

 妹さんらしき後からやってきた子が、全体的な服の挿し色が緑色なところ。

 細かく見ていけばだいぶ違うんだろうけど、パッと見だと混乱しそうだね。

 

 

「そうだプライステーション! えっと⋯⋯これなら動作に問題なさそう! プラモに使うパテで修理も出来そうだし、本当に良かったー!」

「もう、物を投げないでっていつも言ってるでしょお姉ちゃん! ご迷惑をお掛けしました、ええっと⋯⋯?」

 “えっと私達は”

「せんせ♡」

 

 

 繋いだ指をきゅっと握って先生に合図を送る。

 それを受けて先生はこほん、と咳払いをして普段より少し重々しい声色を出した。

 

 

 “君達がゲーム開発部かな?”

「は、はい。ゲーム開発部一年の才羽ミドリと」

「ゲーム開発部一年の才羽モモイだけど⋯⋯?」

 “なら、この出会いは運命だ。──ミレニアムランドの麗しき女神達よ、助けを求める声に導かれ勇者──先生が参上致しました”

「その先生の供回りを務めるしもべに御座います。ミレニアムランドを襲う危機より、貴女方を救いに参りました」

「⋯⋯お、おぉ~〜〜〜っ!!!」

「あ、え⋯⋯意外にノリノリ!?」

 

 

 私達のセリフにモモイちゃんは目を輝かせ、ミドリちゃんは驚いたように目を丸くする。

 にしし、電車の中で打ち合わせした甲斐があったね。

 あんなステキなお手紙を出してくるくらいだからこういうノリは大好物なはず、って予想したけど大正解だった。

 

 

「あ、一先ずこれを。今度は投げちゃダメだよ♡」

「うん、ありがとー!」

 “改めまして、連邦捜査部シャーレの先生だよ”

「同じく連邦捜査部シャーレ所属、ワイルドハント一年の脇野フミだよ。よろしくね♡」

「よろしくお願いします。あ、立ち話もなんですから私達の部室へどうぞ」

「案内するね!」

 

 

 二人に連れられオフィスビルみたいな建物の中へ。

 ここは部活棟らしく、実験や製作過程で溶接や爆発といった危険を伴う作業をしませんと届け出た部活が入っている。

 いわゆる文化系に相当する部活が多いみたい。

 階段を上がって三階、通路を曲がった所にある一室へ。

 

 

「じゃじゃーん! ゲーム開発部へようこそ!」

「⋯⋯あっ」

 

 

 意気揚々と案内してくれたモモイちゃんとは対照的に、ミドリちゃんはヤバって顔をした。

 広い筈の部室は色んなものが置かれていて、なんというか非常にごちゃっとした印象を受ける。

 脱いでそのままの靴下、空いたペットボトル、半分ほど中身の入ったポテチの袋、出したままのコントローラー、脱いでそのままのシャツ、溢れんばかりのゴミ箱、何故かテーブルに鎮座している冷蔵庫用の脱臭炭、ジュースを溢したのか染みがいっぱいのカーペット、お菓子の欠片が散らばっているソファー、読み終わった後で床に積まれた単行本。

 

 

「ふーん、そっかそっか♡」

 “わぁ⋯⋯”

「いやっ、これはその」

「良いんだよミドリちゃん。身内だけだとついつい気が抜けちゃう事もあるよね♡」

「フォ、フォローが心に痛い⋯⋯」

「ん、どったの?」

「モモイちゃん、取り敢えずお掃除から始めよっか♡」

「えっ」

「うぅ⋯⋯しっかり掃除しておけば良かった⋯⋯」

 “あはは⋯⋯”

 

 

 何とも言えない顔の先生。

 異性の目が届かない気を抜いてる女の子の部屋なんてこんな感じだよ?

 個人的にはお部屋の消臭に冷蔵庫用の脱臭炭を置いてるのがものぐさポイント高くて良いよね。

 いや良くない♡

 ちゃんと掃除して換気して♡

 という訳で我らがシャーレの勇者に下された最初のクエストは女神達の憩いの場を清浄化せよ、だった。

 燃える燃えないの分別をして掴めるゴミをゴミ袋へ、掃除機を使って一面を均しつつソファーの隙間の食べかすを回収、カーペットはクリーニングに出して、その後濡れた雑巾で汚れを拭き取ってから今度は乾いた雑巾でふきふき、コントローラーは本体ごとのボックスにしまって、モモイちゃんの脱ぎ捨てた衣服は洗濯へ。

 なんという事でしょう、乱雑そのものだったゲーム開発部の部室が、清潔感溢れる部室に♡

 

 

「ふぅ、一先ずこれで十分かな♡」

「おぉぉ⋯⋯部室がキレイに!」

 “お疲れ様、みんな”

「すみません、せっかく来て頂いたのに掃除まで手伝ってもらっちゃって」

「小まめに掃除しないとダメだよ♡」

「「はぁい」」

 

 

 流石にしょんぼりする二人。

 溜めてた分、結構な大掃除だったからね。

 あとモモイちゃんはちゃんと服は洗濯カゴに入れて♡

 モモイちゃんのシャツを手にした先生の動きがピクッて止まって挙動不審になってた。

 可愛すぎて押し倒そうかと思った。

 ぼんのーたいさん♡

 

 

「モモイ、先生達ここに来てない?」

 

 

 入口のドアが開き、ユウカさんが顔を覗かせた。

 私達を見て顔をほころばせて、普段の部屋の惨状を知っていたのかキョロキョロと部屋を見渡して驚いたようにあちこちを二度見している。

 するとモモイちゃんはビシッと人差し指を突き付けてユウカさんを見据えた。

 

 

「出たな! 冷酷な算術使い!!」

 “ぶふっ”

「⋯⋯っく、んふっ」

「変な異名で呼ばないで! 二人も何笑ってるんですか!」

 

 

 あんまりにも程がある異名に思わず先生と並んで吹き出してしまう。

 いや、耐えようとは思ったんだよ?

 でもユウカさんを指して冷酷はちょっとシュール過ぎる。

 すると私より先に立ち直った先生がキリッとした顔でユウカさんにお辞儀をしてみせた。

 

 

 “ドーモ、冷酷な算術使いユウカさん。冷血ロボティーチャーです。ウィーン”

「〜〜〜〜〜〜っ!!」

 

 

 自分でウィーンって言いながらカクカク動いて挨拶した先生に腹筋をやられた。

 堪らずソファーをぺしぺし叩いて崩れ落ちる。

 先生悪ノリとか大好きだもんね。

 というか冷血ロボティーチャーの字面が色んな意味で酷すぎた。

 冷血はユウカさんの冷酷と対比させたとしてもロボティーチャーが意味不明過ぎる。

 なぜロボになったのか、なぜティーチャー部分は据え置きだったのか。

 思いも寄らない奇襲に色気も何も無い笑い方しちゃうところだったよ。

 

 

「あー⋯⋯ふ、んふっ♡ ゴメ、まだダメかも♡」

 “予想以上にフミの腹筋がダメージを! ひどい⋯⋯いったい誰がこんな⋯⋯!”

「いえ、フミさんにトドメ刺したの先生ですよね?」

“ミニオボエガナイデスロボ”

「ぷっは♡ ひー、ひー♡」

「ホント何してるんですか先生」

「これも全部早瀬ユウカってやつの仕業なんだ」

「そんな訳無いでしょ!」

「う、うわー!? 暴力反対!」

 

 

 ユウカさんに捕まったモモイちゃんが左右のこめかみをゲンコツでぐりぐりされてる。

 漫画でしか見た事無いよあの折檻。

 その後落ち着くのにたっぷり十分は掛かって、ようやく話が出来る程度には回復した。

 取り敢えず先生は後で足つぼの刑ね♡

 

 

 “お手柔らかにね⋯⋯?”

「プリンパフェ口移しティータイムとの選択ですよ♡」

 “お手柔らかにね⋯⋯!”

「ちぇー♡」

 

 

 ともあれ他の部活も見回りしないといけないユウカさんにお土産を渡して見送りバイバイ。

 またねー♡

 改めてゲーム開発部の現状も聞いて、どうやら割と切羽詰まったスケジュールになりそうだと言うのが分かった。

 廃部を免れるには部員数を増やすか、目に見えて分かる程の結果を出す必要がある。

 部員数での解決はここ一カ月近く色んな人を当たってみたけど結果は芳しくないので切り捨てる。

 じゃあ結果、つまり何らかの賞を取るとか発売したゲームが大ヒットして特集を組まれるとか、ゲーム開発部の名に恥じない功績を打ち立てるのはどうか、と。

 なんとも都合の良い事に、二週間後ミレニアムプライスというミレニアムの部活の成果を発表しあい、その中で最も優れたものを表彰しようというコンテストがある。

 それに入賞出来れば、成果としては十分。

 無事ゲーム開発部は存続出来るというシナリオだ。

 

 

 “話は分かったけど⋯⋯私達が手伝える事ってあるかな?”

「スケジュール管理やテストプレイなら出来るけど、肝心のゲーム開発に関しては私もせんせーも素人だよ?」

「ふっふっふー、案ずるな! この私に秘策アリ!」

 

 

 トテテテ、と歩き出したモモイちゃんはホワイトボードを裏返す。

 そこには大きく《G.Bible人手計画!》と書かれていた。

 フフンとドヤ顔のモモイちゃんには申し訳ないけど、入手のところ誤字ってるわよ♡

 先生も気付いて苦笑い、ミドリちゃんは頭痛を抑えるかのように頭に手を当ててた。

 

 

「あれ? 思いの外のリアクション?」

「モモイちゃん、人手になってる♡」

「え? わぁ!?」

 

 

 慌てて書き直して、ドヤ顔に戻る。

 そこでドヤ顔出来るの神経太くて好き♡

 メインシナリオライターなんだからもっと頑張って♡

 それはさておき、その秘策とやらを聞いてみる。

 ふむふむ⋯⋯へむへむ⋯⋯ほむほむ♡

 わぁ、胡散臭い♡

 一応最後に稼働を確認した座標とかの情報はあるみたいだけど、その場所が封鎖区画となっている廃墟。

 出自不明正体不明のオートマタが跋扈する場所を抜けて行った先に、それはある。

 

 

「でも、そんな危険な場所なら入るにも許可が必要なんじゃないかな?」

 “手続きやらなんやらで時間を取られそうだけど⋯⋯”

「そこは、ほら。良い方法があるから。ね、ミドリ」

 

 

 水を向けられたミドリちゃんが、覚悟を決めた眼差しで口を開く。

 

 

「不法侵入をします」

「待って♡」

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