もしもシャーレにヒモを養う適性の有る娘が応募してきたら   作:一ノ瀬 崇

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ミニストーリーVol.6
ASMR現状報告ゲヘナ編


 今日はのんびりお休みの日。

 ここ数日は不自然なほどにキヴォトス全体で争いというか小競り合いが少ないらしい。

 みんな何してるんだろうねー?

 と、すっとぼけていた私にモモトークが。

 ユズちゃんからだ。

 なになに……ほほう、売れ行きに対してレビューの投稿数が前回よりも低い、と。

 今回のASMR、初動の勢いそのままに一週間常にボイス・動画ランキングで一位を獲っていた。

 売上は前回の四つを合わせた本数を初日で軽々と超え、来月の入金で部費も潤沢になる予定だ。

 評価も非常に高いが、何故かレビューは片手で数えるほど。

 その謎を探るべく脇野隊長はキヴォトスの各地へ向かった!

 

 

「って訳なんですよ♡」

「いや無駄に壮大」

 

 

 いつものジト目で呆れながらフウカさんは寸胴鍋にカレールーの素をどばどば投入した。

 やって来たのはゲヘナ学園。

 手始めに挨拶がてら給食部へお邪魔したのだ。

 エンジニア部へ繋いだ縁もあって給食部では調理補助のARMSが導入されて、戦場さながらだった仕込みにも随分と余裕が生まれた。

 相変わらず部員は増えてないけど。

 

 

「私も買ってますけど、確かに中毒性というか、ずっと聴いていたいなって思いますね。みなさんもまだ聴き足りないのではないでしょうか?」

「なるへそ♡ ……ちなみにジュリちゃんはどの先生が良かった?」

「わ、私ですか? そ、その……ち、小さくなった先生が、その、守ってあげたいな、って……♡」

「ショタ先生良いよね♡ 闇堕ちが解けてからもチラチラこっちを見てきそうで♡」

「はい♪ 寝る時にもじもじしてるのを気付かないフリして抱き締めてあげたくなります……♡」

「ジュリが! ジュリが汚染されてる!!」

「汚染て♡」

 

 

 トマトのヘタを取りながら頬を染めるジュリちゃん。

 やはりショタ先生の需要は有ったのだ。

 うむうむと頷く横でフウカさんはショックを受けた様子でキャベツを千切りしている。

 手馴れてるから普通にお話してても手元が狂わないの流石フウカさん♡

 

 

「そのまま寝たフリして、ショタ先生が我慢できずにこっそり合体しようとしたりして♡」

「きゃー♡ いけません先生♡♡ で、でも私は寝てるので抵抗できないんですよね……♡ ダメです、そんなイタズラしたら……♡ あっ♡ あっ♡ 最後まで先生にされちゃう……♡♡」

「ダメなのはアンタらのピンク色の脳細胞よ」

「いやん♡ フウカさん辛辣♡」

「朝っぱらからそんな話してるからよ」

「フウカ先輩は買ってないんですか?」

「買ってないわね……でもジュリがそこまでおかしくなるような劇物、興味は有るわね。怖いもの見たさ、ってやつかしら」

「果たしてフウカさんはハマるのか♡ 気になりますにゃー♡」

「あら、フミさん。ごきげんよう。ゲヘナで会うのは久し振りですわね?」

「あっ♡ ドスケベ会長♡」

「風評被害ですわ!?」

 

 

 可憐なボイスを響かせてやって来たのは美食研究会会長にして爆破テロ以外は完璧な女と評判のハルナさんだ。

 今日もえっちな声と顔と身体してんねぇ!

 全部ドスケベでは?

 

 

「そんな事をおっしゃるのはこの口ですの?」

「ひにゃー♡ ゆるちて♡」

 

 

 ほっぺたをむにーんと抓まれる。

 伸びちゃう伸びちゃう♡

 

 

「相変わらず仲良いわね……」

「ご安心なさってください、私の一番の仲良しさんはフウカさんですわ」

「こっちは願い下げなのよ」

「うふふ、恋のライバルにして想い人は先生ですものね? どちらも手にしてこその美食、私邁進しますわ」

「なっ!? ちっ、ちが……! わなくは無いけど……! べ、別に私と先生はそんなんじゃ……!」

「きゃーテンプレなツンデレ♡ ジュリちゃん、これがフウカさんが強敵なとこだよ♡」

「流石です、フウカ先輩♪」

「ジュリもこんな風に引っ張るわよ?」

「にゅわー♡ ほぺたが伸びるがな♡」

 

 

 両方からほっぺたを抓まれてむにーんと伸びちゃう。

 たちけてジュリちゃん♡

 視線を送るとくすりと小さく笑って二人を宥めてくれた。

 

 

「まあまあお二人とも、そのくらいで……ハルナさん、本日はどうされました?」

「あぁ、そうでしたわ。このイタズラっ子に気を取られてしまいました」

「ぷみゅんっ♡」

「本日は良い鶏肉が手に入りそうなので、夜にフウカさんがお手隙でしたら調理をお願いしようかと」

「合法な入手方法でしょうね?」

「そこはご安心を。私が懇意にしているお店とも契約をしている鶏舎で買い付けたものですわ」

「ふむ……鶏肉か。何が良いかしらね」

「ぱみゅんっ♡」

「フミさん、ほっぺがぷくぷくですね」

「おもちになっちゃう♡」

 

 

 ジュリちゃんにほっぺたをもちもちしてもらって、ついでにむぎゅむぎゅ抱き着いてみる。

 ちょっとびっくりしつつも抱き返してくれた。

 きゃージュリちゃん好き好き♡

 

 

「にしても今日はテンション高いわね。何かあった?」

「久し振りにお二人に会えたので♡」

「あら、私は蚊帳の外ですの?」

「もちろんハルナさんにも会えて嬉しー♡」

「きゃっ、もう、甘えん坊さんですのね」

 

 

 ジュリちゃんからハルナさんに目標変更してダイブ。

 しっかり受け止めてもらったので存分にすりすりむぎゅむぎゅ♡

 ちょっとジュリちゃんが寂しそうにしてるの可愛い♡

 しかしハルナさんのボディはやはりドスケベ。

 大き過ぎず小さ過ぎず、美乳という言葉そのものを表しているような形の良さ。

 私が抱き着いた勢いでぷにゅんと揺れる柔らかさ。

 ウエストも健康的な細さできゅっと締まり、お尻も上品なムチムチ具合。

 

 

「これはせんせーも納得の逸材……♡」

「何の話ですの??」

「せんせー曰く『お店のパネルで出されたら即決するレベル』って♡」

「何の話ですの!?」

「ハルナさんがドスケベ会長って話です♡」

「何の話ですの!!」

「おー、三段活用ね。中々テクいじゃない」

「え、えっと……焦点はそこで良いのでしょうか」

「良いのよ、ハルナだし。相手もフミだし」

「やーん♡ ハルナさんと一緒ですって♡」

「異議を申し立てますわ!」

「えー、ハルナさんと一緒が良いなー♡ フミちゃんの事キライ?」

「好きですけどそれとこれとは別ですわ!」

「わーい私もハルナさん好き好き♡」

「良かったわねハルナ。あんた育児の才能有るわよ」

「……ならば将来先生とフウカさんとの生活のシミュレーションとして受け止めますわ」

「転んでもただでは起きないわね……」

 

 

 同棲してる未来については異議無いんだ。

 そう思っても口には出さない。

 またほっぺた引っ張られちゃうからね。

 ジュリちゃんも気付いて目をキラキラさせている。

 てぇてぇですわー♡

 

 

「あ、そうだ。ハルナさんはこないだ発売されたASMR買いました?」

「私は買ってませんが、アカリさんがご機嫌で聴いてましたわ」

「おー、アカリさんかぁ♡ どれが好みとか言ってましたか?」

「ASMRの内容かは存じませんが『先生を小さく出来ないでしょうか』と呟いてましたわ。どういう意味ですの?」

「アカリさんもショタ先生沼だった♡」

「ショタ先生……?」

「内容の一つに先生が小学校卒業したくらいの子の演技をして我慢出来ずにオスとして襲い掛かってくるシチュがありまして♡」

「詳しくお聞きしましょう」

「いやあんたもか」

「フウカさんは興味有りませんの?」

「んにゃ、興味出てきたから帰ったら買うつもり。ジュリがドハマリして頭フミになってるのよ」

「待って♡」

「重症ですわね。アカリさんも頭フミさんでしたのね」

「異議あり♡」

 

 

 えっちの隠語に使わないで♡

 抗議の意味も込めてハルナさんのほっぺたを人差し指でえいえいと押していく。

 しっとりやわらか!

 この肌触りは私よりもえっちなのでは。

 やはりドスケベ会長はドスケベだった。

 

 

「何やら邪な事を考えてますわね?」

「気のせい気のせい♡」

「まあハルナがドスケベなのは今に始まった事じゃないでしょ」

「フウカさん!?」

「ネタは上がってんのよ。こないだ先生とジュース回し飲みした時にストローをいやらしく舐めて見せながら『先程よりも美味しく感じますわね。先生の味が加わったからでしょうか……?』って言いながら頬を染めてたらしいじゃない」

「フウカさんっ!?」

「なにそれ知らない♡」

「わぁ、大胆です……!」

「流石ですドスケベ会長♡ 私も会長目指してドスケベになります♡」

「フミさんっ!!」

「ぐえー♡」

 

 

 抱き締められたままだったからハルナさんの両腕でギリギリと締め上げられる。

 ちょっと苦しいけど代わりに顔いっぱいにハルナさんのおっぱいが!

 やわっ♡

 良い匂いもする♡

 ここに住民票を移そう♡

 

 

「何で幸せそうですのっ」

「そりゃフミだからよ」

「ハルナさんに誘惑されちゃうー♡」

「今度真似してみましょうか……」

「ジュリがフミってきたわね……」

「活用しないで♡」

 

 

 

 

 

 

 おっぱいいっぱいフミ元気☆、になった所で給食部を後にしてのっぽりのっぽり歩いていく。

 次は風紀委員会でもお邪魔してみようかな?

 そんな事を考えながら廊下を歩いていくと、正面左手の階段から小さな影が上がってきた。

 

 

「あっ!」

 

 

 なんだこの可愛いを詰め込んだ声はぁ!

 余った袖をふりふり靡かせながらとてとて駆け寄ってくるのはゲヘナのアイドルことイブキちゃん。

 膝を曲げて腰を落として正面から抱き留める体勢に入ったのを見て、イブキちゃんは笑顔で飛び込んできた。

 

 

「フミせんぱーい♪」

「イブキちゃーん♡」

 

 

 そのまま抱き上げてくるくる回る。

 階段横のベンチに勢いのまま腰掛け、くるっと回って二人で横になる。

 お腹の上にイブキちゃんが寝そべる形だ。

 一連の動きにイブキちゃんも大満足らしい。

 

 

「わー、フミ先輩すごーい♪」

「にしし♡ イブキちゃんに喜んでもらえて何より♡ 今日も可愛くてステキ♡」

「えへへ、ありがとー♪ フミ先輩も、今日もとってもステキ!」

「いやーん♡ 照れちゃう♡」

 

 

 きゃっきゃうふふと楽しんでいると、ゲヘナモップ属の片翼であるイロハさんが階段を上がってきた。

 私とイブキちゃんを見て微笑みながら小さく息を吐く。

 

 

「こんにちはフミ」

「イロハさんもこんにちは♡」

「あっ! フミ先輩、こんにちは♪」

「うん♡ イブキちゃんこんにちは♡」

 

 

 にぱー、と笑うイブキちゃんが可愛すぎて思わずむぎゅむぎゅしちゃう。

 やわっこくて良い匂いしてあったかい。

 イブキちゃんからも抱き返してくれていっぱい密着。

 ほっぺたをくっつけっこしてむにむに。

 

 

「イブキちゃん好きー♡」

「イブキもフミ先輩好きー♪」

「きゃー両想いだね♡」

「うんっ♪ えへへ〜♪」

 

 

 一頻りイチャイチャした所で本題を思い出した。

 私をここまで魅了するだなんて、イブキちゃん、恐ろしい子っ。

 

 

「んぅ〜?」

「イブキちゃん可愛いなって♡」

「えへへ、ありがとー♪ フミ先輩も可愛いよ!」

「やったー♡」

「それで、今日はお一人ですか?」

「せんせー居なくてごめんね?」

「別に謝る必要はないでしょう。珍しいなと思っただけです」

「にしし♡ 今日は新発売されたASMRの評判を直に聞いて回ってるの♡」

「あぁ、あれですか。好評なのでは?」

「好評の☆マークは付いてるんだけど、レビューが少なくて♡ せっかくだから意見を吸い上げてほしいって要望がきたのです♡」

「なるほど、そう言う訳ですか……」

 

 

 理由を聞いて納得したイロハさんはちらりと視線をイブキちゃんに向ける。

 あ、そっか。

 R-15だからイブキちゃんには聞かせられないもんね。

 よっこいせ、とイブキちゃんを抱えたまま起き上がる。

 楽しげにきゃっきゃしてる姿に私もイロハさんも骨抜きになっちゃうね。

 

 

「イ〜ブキちゃんっ♡」

「は〜ぁ〜いっ♪」

「やん可愛い♡ これからイロハさんとナイショのお話するから、ちょっと離れて耳を塞いでもらってても良いかな?」

「ナイショのおはなし?」

「ナイショのお話♡ 待っててもらえるかな?」

「わかった! イブキ、待ってるね♪」

「ありがとー♡」

 

 

 膝の上からぴょんと降りたイブキちゃんは反対側の自販機の横で両袖を耳に当てて待機ポーズ。

 小さく手を振ってみるとにぱーっと眩しい笑顔が帰ってきた。

 

 

「持って帰りたい♡」

「ゲヘナ全生徒の八割が敵に回りますよ」

「過剰戦力♡」

「残りの二割は情報が届かずいつものように街で問題を起こしている連中です」

「ゲヘナの名に恥じない♡ で、どうでした♡」

「控え目に言っても最高でしたね。やはり説明パートの存在が大きいかと。あのお陰で前作と違ってすんなりシチュに入れましたので」

「前作も買ってたらしい♡ お好みのパターンはどれでした?」

「どれも違った良さが有りましたが……普段の先生に近い年上の相棒が好みですね。ゆくゆくはあんな風に迫られてみたいものです」

「なるへそー♡ 周りで聴いてる人とか居ます?」

「チアキが幼馴染相棒を聴いてイブキには見せられない顔してましたね。戦車隊にもユーザーが数人居て、熱心に布教してましたよ。先生と会った事がある子は半分くらい買ってた印象ですね」

「すっごい有用なデータが出てきた♡ お話ありがとうございます♡」

「いえいえ、続編楽しみにしてますよ。それではイブキを呼びますか」

 

 

 イロハさんがちょちょいと手招きすると、イブキちゃんは耳を塞いだままてってこ駆け寄ってきた。

 ちょっとドヤ顔なの可愛い♡

 こっちも負けじとドヤ顔ダブルピースを決めると満面の笑みで飛び込んできた。

 むぎゅむぎゅー♡

 

 

「おはなし終わった?」

「はい、ありがとうございますイブキ」

「待っててくれてありがとー♡」

「えへへ……じゃあじゃあ、今度はイブキがフミ先輩とナイショのおはなししたい!」

「おや、イブキもナイショのお話ですか?」

「うん! イロハ先輩、待っててくれる?」

「ええ、もちろん。先程のイブキが居た場所で待ってますね」

「イロハ先輩ありがとう! フミ先輩、ナイショのおはなししよー♪」

「おっけー♡ イロハさん、しばしお待ちを♡ 気になっても読唇術使っちゃダメですよー♡」

「使いませんよ」

「出来ませんよじゃないんですね♡」

「……フミもイブキに変な事を教えないように」

「にしし、はぁーい♡」

 

 

 モフモフアカモップと評される髪の毛を揺らしてイロハさんが自販機横まで移動する。

 イブキちゃんが『こうだよ!』とばかりに袖で耳を塞いでみせたのを見て、イロハさんも微笑みながら耳に手を当てる。

 試しに私も手のひらを耳に当てるフリをしたら、イブキちゃんが笑いながら私の手を降ろした。

 

 

「フミ先輩もお耳ふさいだらおはなしできなくなっちゃうよー!」

「きゃー♡ イタズラがバレちゃった♡ これでお見逃しをー♡」

「あっ! フミ先輩のクッキー!」

 

 

 懐から取り出したるはさっき給食部で焼かせてもらった袋詰めココアクッキー。

 フウカさんとハルナさん両方から花丸合格をもらったので美味しさは自慢しても良いはず。

 イブキちゃんは出てきたクッキーに目をキラキラさせている。

 

 

「後でみんなで食べてね♡」

「うんっ♪ フミ先輩ありがとー♪」

「どういたしまして♡ それでイブキちゃん、イロハさんにもナイショのお話って、どうしたの?」

「あっ、そうだった!」

 

 

 腰元のポーチにクッキーの袋をしまったイブキちゃんがパッと振り返る。

 イロハさんは耳を塞いだまま、イブキちゃんにニコっと笑いかける。

 それを見てイブキちゃんもにぱーっと太陽みたいな笑顔を浮かべた。

 可愛いが過ぎる♡

 向き直ったイブキちゃんはちょっと言いづらそうに身体を左右に揺らしている。

 

 

「えっとね……こないだ、イロハ先輩が聴いてたASMR、イブキもこっそり聴いちゃったの。でもそれって、十五歳以上じゃないと聴いたらダメなんだよね……? イブキ、わるい子になっちゃったかな……」

 

 

 しょんぼりと顔を伏せるイブキちゃん。

 思わずむぎゅむぎゅ抱き締めちゃう。

 悩みが可愛い過ぎた。

 私がとっくの昔に投げ捨ててドブの底に沈んでしまった純真さの塊を前に内心でのた打ち回りながら、イブキちゃんを安心させるべく柔らかく微笑む。

 

 

「大丈夫、イブキちゃんは悪い子じゃないよ♡ アレは内容が難しかったり大人向けだったりする時に、この年齢以上の人が楽しめるように作ってます、それより若い人は楽しめないかもごめんなさい、って表記なの♡」

「ほんと……? イブキ、わるい子じゃない……?」

「ホントホント♡ フミちゃんウソつかない♡」

「そっか……えへへ、よかったぁ……♪」

 

 

 安心したようほにゃっと笑うイブキちゃん。

 まあ禁止じゃなく対象だから別に問題は無い。

 禁止だったとしてもイブキちゃんを悪い子に仕立て上げてしまうような法は廃止しなくてはならない。

 なんならリンちゃん先輩へのリア凸も辞さない♡

 

 

「でもアレ聴いてイブキちゃん楽しめたかな? 結構大人向けな内容なんだけど♡」

「うん、すっごい、すっ……ごい、ドキドキしちゃった。どの先生もカッコよくて、イブキ胸がきゅーってしちゃったの」

「そっかぁ♡ どの先生が一番ドキドキしたの?」

「えっとね、自分の事を俺って言う先生♪ あんな風に先生に求められたら、イブキおかしくなっちゃう……♡」

 

 

 おんやぁ?

 純真無垢なはずのイブキちゃんから何やら淫靡な香りが滲んできたぞぉ?

 

 

「そかそか♡ せんせー普段はみんなに優しいから、独占欲丸出しで求められるとキュンキュンしちゃうよね♡」

「うんっ♪ まだまだ子どもなイブキでも、先生に欲しがってもらえるの、すごいうれしいの……♡ はやく大きくなって、先生の子ども産んであげたいな……♡」

 

 

 私は今歴史が動いた瞬間に立ち会っているのかもしれない。

 性の目覚め、恋の芽生え、あるいは淫魔の産声。

 私ですら心臓が早鐘を打つほどに官能的な微笑みを浮かべて、その年齢には早すぎる願望を口にするイブキちゃん。

 何でゲヘナにこんな良い子が居るのだろうと疑問に思う事はあった。

 けれど、これは納得せざるを得ない。

 イブキちゃんの魔性はゲヘナの名に相応しい。

 将来は傾国だろうなぁ……いや今でも万魔殿はイブキちゃんの手中かも、と考えていると視界の端で妖しい気配を感じ取ったのかイロハさんがめっちゃ口パクしてた。

 ……フミちゃん何も知らないですにゃー♡

 

 

「貴重なご意見ありがとー♡ 二人だけのナイショだね♡」

「うん♪ フミ先輩と二人だけのナイショ♪」

「にしし♡ ナイショついでにもう一袋あげちゃう♡ イブキちゃんとイロハさんで食べちゃっても良いよ♡」

「わぁっ♪ フミ先輩ありがとー♪」

 

 

 追加でクッキーの袋を渡すとイブキちゃんはぴょんぴょん飛び上がって喜んでくれた。

 直前までの空気は霧散していつものイブキちゃんに戻ったね。

 取り敢えずヨシ!

 恨むなら管理が甘かったイロハさん自身を恨んでもろて♡

 一先ず話は終わったので二人で合図を送ってイロハさんに戻ってきてもらう。

 

 

「イブキ、ナイショ話はできましたか?」

「うん♪ イロハ先輩、待っててくれてありがとー♪」

「どういたしまして♪ ……どんな事を話したのか気になりますが、ナイショですもんね」

「ナイショなのです♡ ねーイブキちゃん♡」

「ナイショなのです! ねーフミ先輩♪」

「すっかり仲良しさんですね。……本当に変な事は教えてないでしょうね?」

「イブキちゃんに誓って♡」

「むぅ……まぁ、良いです」

 

 

 腑に落ちない様子のイロハさんだったけど、溜息一つで流してくれた。

 両手をぶんぶん振るイブキちゃんに見送られていざ風紀委員会のある棟へ。

 途中ですれ違ったジュンコちゃんにもクッキーを渡しておく。

 みんなで仲良く食べるのよー♡

 廊下を進んで階段を二つ上がった所で褐色ツインテールツンデレ美少女ちゃんとエンカウント。

 

 

「あ、フミ。いらっしゃい」

「イオリちゃんやほやほ♡♡」

 

 

 てててっ、と駆け寄ってくるイオリちゃん。

 顔立ちはカッコいい系なのにちょっとした動きがすっごい可愛いよね。

 両手を広げてハグ待ちしてたら、すぐ前で立ち止まって不思議そうに首を傾げる。

 

 

「何してるんだ?」

「イオリちゃんのハグ待ち♡」

「しないからな」

「えー♡ しようよー♡ 大好きなイオリちゃんとハグしたいにゃー♡」

「ふっ、タダでする訳には行かないな。やってほしいんなら……」

「よしきた!」

 

 

 パッと屈んでイオリちゃんのスカートにお邪魔します♡

 あっ、今日は黒の紐パン♡

 健康的なすべすべ太ももに軽く口付けを落とす。

 そのまま舌を這わせようとした所で頭を両手で抑え付けられた。

 

 

「バッ、何してんだ!?」

「えっ♡ イオリちゃんがタダでハグさせる訳には行かないって言うから脚を舐めようと♡」

「やめろ!! そんな事言ってないだろ!? どうしてフミも先生も脚を舐めようとしてくるんだ!!」

「イオリちゃんの脚を前にして舐めないなんて冒涜だよ! こんなに綺麗なのに!」

「嬉しくない褒め方するな!! いいから離れろ!!」

 

 

 ぽこぽこ叩かれてしまったので大人しく離れる……と見せ掛けてもっかい太ももにちゅー♡

 びくっとなって動きが止まった隙に懐へ潜り込んでむぎゅむぎゅ抱き締めつつほっぺにもちゅー♡

 

 

「イオリちゃん好き好き♡」

「わあっ!? 毎回頬にキスしてくるんじゃない!」

「唇の方がお好み?」

「もっとダメに決まってるだろ!!」

「初めてはせんせーに、だもんね♡」

「当たり前だ!! ……って違う!?」

「にしし♡ せんせーもこんな可愛い子に想われて果報者ですにゃー♡」

「違うからな!! 絶対先生本人には言うなよ!!」

「ツンデレさん♡」

「違う!!」

 

 

 ぷぉんぷぉん、と汽車の汽笛みたいに頭から湯気を放ちつつ否定するイオリちゃん。

 でも抱き着いたのは振り解かないでくれるの優しい♡

 むぎゅむぎゅすりすり♡

 

 

「適当な事ばっかり言ってるとキライになるからな!」

「えっ……イオリちゃん、フミの事キライなの……?」

「うっ。そ、そんな目で見てもダメだからな!」

「そっかぁ……ごめん、ね。イオリちゃん……」

 

 

 背中に回していた両手を戻してスカートの前をぎゅっと握る。

 しょぼーん、と俯いてみせるとイオリちゃんはわたわたと両手を振って慌て始める。

 イオリちゃんが助けを求めるように視線を巡らせれば、同じ風紀委員会の子たちが遠巻きにこっちを見ていた。

 口元がニヨニヨしてるので分かってるらしい。

 小声ながらしっかり耳に届く声量でひそひそ話を始めた。

 

 

「あんなに言わなくても……」

「フミちゃんかわいそう……」

「フミ泣きそうになってるじゃん」

「あーあ、イオリちゃん悪いんだ〜」

「ぬっ、うぐぐ……!」

 

 

 漫画だったらフキダシの端っこが矢印になってイオリちゃんにぐさぐさ突き刺さってるねコレ。

 根が優しくて良い子なイオリちゃんが耐えられる訳も無く、両手を上げて降参のポーズを取る。

 

 

「あーもう! キライじゃないから泣くな!」

「……ホント、イオリちゃん?」

「本当だ! ちゃんとフミの事好きだから!」

「じゃあ、ほっぺたちゅーしても良い……?」

「良い! 良いから! 私からもしてやるから!」

「やったー♡ イオリちゃんちゅー♡」

 

 

 ぴょんと抱き着いてほっぺたに何度もちゅー♡

 非常にチョロ……単じゅ……素直で優しい所が可愛らしいと思います!

 実はイオリちゃん、私と同じくらい簡単じゃない?

 チョロチョロコンビとして先生に手のひらで転がされちゃうかもしれない。

 援護してくれたみんなとイオリちゃんに袋詰めクッキーを渡して寸劇に付き合ってくれたお礼を言う。

 まぁイオリちゃんは本気だったんだけど♡

 

 

「心臓に悪いからもうやるなよ」

「はぁーい♡ でもイオリちゃんと両想いなのが分かってフミちゃん大満足♡」

「全くもう……あ、クッキー美味しい♪」

「愛情たっぷりだからね♡」

「フミの愛情は薄利多売っぽいんだよなぁ……」

「えー♡ ちゃんと一人一人真剣に向き合って愛情注いでるのにー♡」

「向き合う人数が多いんだよ。アイドルの握手会みたいになってないか?」

「いやん♡ アイドル並みに可愛いだなんて照れちゃうにゃー♡」

「言ってないだろ。……まぁ、かわいいとは思うけど」

「にしし♡ イオリちゃんもアイドルになれるくらい、すっごい可愛いよ♡」

「私がアイドルになっても需要無いだろ……いや、少なくとも二人はアホみたいな熱量のファンが付くのか」

「アホ二号でーす♡」

「ちゃんと一号が暴走しないように手綱握っておけよ」

「自信は無いかも♡ そう言えばイオリちゃん、こないだ発売されたASMR買った?」

 

 

 事務局へ向かって歩いていたイオリちゃんの足がぴたっと止まる。

 何やら少し頬が赤くなってる気がする。

 ははぁん、ユーザー?

 

 

「今回売上に対してレビューが少なくて♡ 実際に各地を回って直に意見を聴いて回ってるの♡」

「なんでフミが……そう言えばシナリオ原案って書いてたな」

「にしし♡ どうでした?」

「……いや、うん。良かったんじゃないか?」

「どのパターンが一番好きか教えてもらえると♡」

「一番。一番か……。子ども先生はなんかいつもと違って新鮮な気分になったし、年上お兄さんは普段の先生の延長線上だったな」

「ふむふむ♡ ワイルドな幼馴染先生はどうです?」

 

 

 ぴたっと、今度はイオリちゃんの呼吸が止まった。

 思い返しているのか徐々に頬に赤みが差し、尻尾がゆらりゆらりと妖しく揺れている。

 つい、と目を逸らしたイオリちゃんは口をもごもごさせながら答える。

 

 

「……まぁ、良かった、と思う。あんな風に強引に迫られるのも、先生になら、別に……いや、普段は人の目もあるし、先生と生徒だし、そんな雰囲気にはならないけどさ。もし、二人でどこか旅に出て、二人っきりなら……求められても、貪られても、良い、かな……って」

 

 

 フミ は しっかりと こころにふかくきざみこんだ。

 普段ツンツンな分、破壊力が凄まじい。

 このイオリちゃんを見せたら先生なんてイチコロだよ。

 我に返ったイオリちゃんに固く口止めされたので残念ながら先生にはお届け出来ないけど、しっかりイオリちゃんが先生の事好きなのが分かって大満足♡

 再び歩き出したイオリちゃんと恋人繋ぎで風紀委員会事務局、執務室へ。

 にぎにぎ、むにむに♡

 

 

「ほら、着いたぞ」

「お邪魔しまーす♡」

「……あら、フミ。いらっしゃい」

 

 

 相変わらず山と積まれた書類の間でふわふわ揺れるシロモップ。

 空崎レビュアーことヒナさんだ。

 ちょっと目が左右に動いてたので先生を探してたんだろう。

 残念ながら今日は一人なのです。

 

 

「おもてなしは出来ないけどゆっくりしていって」

「ありがとごじゃまー♡ 私で手伝える書類が有れば片付けますよ?」

「そう? ならお願いしようかしら。アコ」

「はい委員長。フミさん、こちらをお願いします」

 

 

 アコの開いた横乳さんが書類の束を持ってくる。

 今日も風通し良さそう。

 来客用のテーブルに着いて書類を見ていく。

 備品の整理票と先月の在庫とのチェックだね。

 パパっと終わらせちゃおう。

 

 

「にしても相変わらずヒナさん以外で処理した方が円滑な書類ですね。まだ改革は進んでない感じです?」

「簡略化しようと改善案を出してもタヌキに差し戻されまして。こっそりイブキちゃんに情報を回そうとしたのですが前回それで手痛い思いをしたのかガードが堅く中々近付けていません」

「謎の攻防してる♡」

「諜報の訓練にはちょうどいいのだけどね」

「ヒナさん自分の事なのに達観しすぎでは♡」

「慣れたわ。そう言えばフミ、今日は何か用事?」

「あ、そうだった♡ 先日発売されたASMRの評判を聴いて回ってまして♡」

「アレね。とても良かったわ」

「急にヒナさんがツヤツヤし始めた♡ どんな生態♡」

 

 

 見て分かる程度には髪の毛が艶を取り戻し、肌も潤いきめ細やかになっていく。

 目元のクマも薄くなって全身に活力が漲っている。

 どういう事なの♡

 

 

「ちなみにヒナさんはどれが一番良かったです?」

「……難しいわね。強引に迫られるのも優しく溶かされるのも堪らなかったし、小さい先生って言うのも新鮮で素晴らしかったわ。アフタートークも先生のラジオを聴いてるみたいで楽しかったし」

「お、アフタートークへの言及は初めて♡ 貴重なご意見ありがとうございます♡」

 

 

 流石実名でレビュアーやってるヒナさんは違うな!

 スマホに意見を書き込んで保存、っと。

 

 

「横乳さんはどうでした?」

「は?」

「え? あ♡ 間違えた♡ アコさん♡」

「ぷふっ!」

「アッハッハッハ! アコちゃんが横乳ちゃんに……アハハハ!」

「イオリは笑いすぎです! と言うかフミさん!? なんですかその呼び名は!!」

「いやー、今日もアコさんの服、横乳開いてるなー、って思ってたら逆になってました♡」

「ならないでしょう普通!!」

「うにゃーっ♡ ゆるちて♡」

 

 

 両方のほっぺたをむにーっと引き伸ばされる。

 今日はほっぺたがよく伸びる!

 

 

「ひにゃさんたちけてー♡」

「ぷっ、くくく……っ、アコ、ほどほどで許してあげて」

「委員長!? くっ、この口ですか!? この口が悪いんですね!?」

「うきゅあー♡ ほっぺたとれひゃう♡」

 

 

 その後書類提出から戻ってきたチナツちゃんにほっぺたを氷嚢で冷やしてもらった。

 ひぃん、ちべたい♡

 

 

「それで、アコさんとチナツちゃんはASMR聴きました?」

「ええ、もちろん。委員長に変なものを聴かせる訳にはいきませんから」

「今回も買わせていただきました。とても良かったです」

「二人ともお好みのやつはありました?」

「甲乙付け難いですが……強引な先生は普段と違って良かったですね。まぁ普段私に屈服していますし、たまには攻守を逆転させてあげるのも一興です」

「そーなのかー♡」

「誰もその言い分信じてないよアコちゃん」

「私は……そうですね。普段の先生に近い年上お兄さん系が良かったです。あれくらい普段から積極的でも構わないんですが……」

「脳の処理限界超えて倒れる子が多そう♡」

 

 

 風紀委員会、給食部、美食研究会、万魔殿。

 ゲヘナで交流のある所はだいたい聞けたかな?

 ヒナさんたちにもクッキーを配って、今日はおしまいにしちゃおう。

 明日はトリニティで聞き込みしようかな?

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