もしもシャーレにヒモを養う適性の有る娘が応募してきたら 作:一ノ瀬 崇
シャーレには色々な設備が揃っている。
時には用途が分からないような専門的な部屋もある。
これまでは人の出入りが無かったそんな部屋の一つに、今日は数人が集まっていた。
先生、私、コタマさん、ハレさん、マキちゃん、そしてコユキちゃん。
ヴェリタスのみんなは機材のチェックを手早くこなしている。
流石はサイバー系の部活だけあって頼もしい。
先生はふかふかの椅子に座って原稿を読みながら全体の流れを頭に入れている。
まぁ進行表は出すから気楽に構えて大丈夫。
私はみんなの様子を、防音ガラス越しに眺めている。
部屋の名前は放送室。
そう、今日はシャーレラジオの初放送日なのです!
「まだかなまだかなー! 楽しみですね、フミちゃん♪」
私の膝の間に座って背中を預けるコユキちゃんが楽しげに笑う。
今日はシャーレにお泊りの日でもあるのだ。
おゆはんはみんなのお肉を食べたいというリクエストですき焼き、朝ごはんは私の得意料理という事になった。
既に牛肉は解凍済み、野菜はカット済み、割り下は調合済みだ。
なのでラジオの打ち上げを兼ねてすぐにでも宴会突入が可能だったりする。
飲み物はソフトドリンクだけど♡
「放送予定まで後五分♡ 座して待つべし♡」
「待ち切れませんよー!」
「じゃあ逃げないようにしっかり捕まえておかないと♡ むぎゅむぎゅー♡」
「にはは♪ 捕まりましたー♪ 離してくださーい♪」
「神妙に致せー♡ ほっぺたちゅー♡」
「きゃあん♪」
ちたぱた身体を揺するコユキちゃんを抱き締めて、ほっぺたにキスの嵐をお見舞いする。
くすぐったそうに笑いながら甘えるように背中をすりすり押し付けてくるのがもう可愛くて堪らない。
ぽかぽか体温を移し替えるようにしっかり抱き締め、ほっぺたもくっつけっこ。
「うーん♡ コユキちゃんひんやり♡」
「にはは、フミちゃんはあったかです♪ 冬場は重宝しそうですねー」
「夏場も愛して♡」
「クーラー無かったら逃げちゃうかも……?」
「薄情者めー♡ そんなコユキちゃんは夏場もむぎゅむぎゅの刑だー♡」
「うわぁぁー、なんでー♪」
そんな風にイチャイチャしてると、ガラスの向こうで先生がこっちを見て微笑んでいたのに気付く。
コユキちゃんと一緒にダブルピースを向けると、先生は笑って手を振ってくれた。
佇まいが休日のおとーさん♡
と、機材のチェックも終わったみたいで三人も一旦ブースから退出。
コタマさんはツマミがいっぱい付いてる機材の前に、ハレさんとマキちゃんはモニターの前に移動する。
コタマさんは音声関係を一手に引き受け、ハレさんは配信状況のチェックと映像トラブルの対応、マキちゃんは配信に関するコメントをモデレーターとして管理してくれる。
そう、ラジオと言いつつ実態はライブ放送なのだ。
本当のラジオ放送だと電波の兼ね合いとかで許可やら何やら凄く大変らしい。
でもライブ配信ならモモチューブへの接続だけで済むから楽々ちんちんなのだ。
おお、ちん楽ちんちん♡
「いよいよですね!」
「うん♡ こっちの声は届かないけど、一応静かにね♡」
「はぁーい♪」
「ちゃんと静かに出来てたらデザートにクレープ焼いてあげる♡」
「!」
それを聞いたコユキちゃんは口をぴたっと閉じてキリッとした顔になった。
何故かコタマさんとハレさんとマキちゃんもキリッとしてる。
「みんなにも焼いてあげるから安心して♡ ほらほら、配信開始のカウントと合図♡」
「おっと、そうでした」
コタマさんが左手を上げて指を振って合図する。
流石は音響担当、ジェスチャーもお手の物だ。
配信開始のランプが点灯し、先生が手元のカメラに向けて語り出す。
『……と言う訳で楽しい時間だったけどみんなも楽しめたかな?』
「待って♡」
初手でとんでもないボケをぶち込んできた。
予定にないボケにみんなも目を白黒させている。
配信のコメント欄では案の定阿鼻叫喚のお祭り騒ぎだ。
『ふふっ、ごめんごめん。冗談だよ。放送はまさに今始まったばかり。驚かせちゃったかな? いやぁ、一度やってみたかったんだよね。では早速、シャーレラジオ初回放送をお届けしたいと思います。語り手はシャーレの先生、放送時間は一時間を予定しています。良かったら最後まで聴いてくれると嬉しいな』
してやったり、と笑顔の先生。
カメラに向かって見覚えしかないダブルピースをぶぃぶぃしている。
忘れがちだけどたまにこういう爆弾を投下してくるんだよね。
コメント欄の加速が半端ない。
>>終わったかと思ったよ
>>とんでもねぇ、待ってたんだ
>>今ので寿命縮んだので人生の半分をください
>>リアルで何でよぉって叫んだ
>>隣の部屋から何でよぉって慟哭聴こえてきた
>>先生、今度お時間いただきますね
何か隣同士で同時視聴してる子も居て草。
先生のお茶目だと分かって三人はほっと一息吐いてる。
コユキちゃんはちょっとジト目でガラスの向こうの先生を見つめていた。
「先生って私以上に問題児な瞬間ありますよね」
「んんん否定できない♡」
そんなやり取りを知ってか知らずか、先生はからからと笑いながら進行していく。
『このシャーレラジオではみなさんからのお便りをお待ちして……おりません! 受付フォームも無いんだよね。何でかって言うと、単純に手が回らないからです。ええと、私にモモトークを送ってくれている子は分かるかもしれないけど、一人一人しっかりお話してる分、すぐにはお返事できていないんだよね。なので未読のまま時間が経っちゃったりして、そこは本当にごめんね。届いたのを古い順にソートして返してるから、途中で「お返事無いけど大丈夫?」みたいに送っちゃうとますます後回しになったり。そんな状態なので、お便りをもらっても読む時間が無いんだ』
>>お返事待ってます!
>>実は想像以上に多忙な先生
>>もう直接会いに行くしか
>>モモトークなかなか既読付かないのはそれか……
>>でもこないだフミちゃんとデートしてなかった?
>>ちゃんと相談に乗ってくれるの嬉しい
>>分身してもろて
『とは言え話すネタが無いとさみしいので、じゃじゃーん! 今日はシャーレで処理した書類の中で、どういうことなのと思わず二度見した陳情書ならぬ、珍しいの字を当てた「珍情書」を一部紹介したいと思いまーす! あ、リンちゃんにはナイショにしておいてね。黙ってコッソリ内容を写したやつだから。とは言っても個人情報は伏せてるから、純粋に内容を聴いて楽しんでもらえたら、と思います』
>>無許可で草
>>連邦生徒会コラボ(無許可)
>>先生、後でお話があります
>>リンちゃんもよう見とる
>>嫌なら先生に回す仕事量減らせ、何だあの書類の山
リンちゃん先輩に捕捉されてて草♡
仕事しながら聴いてるんだと思うとなかなか趣深い。
『ではまず一通目。宛先はシャーレ、つまり私宛てだね。内容は「元気にしていますか? こちらはマンドラゴラが咲き狂い始めました。この季節になるといつも山にヘルカオスドラゴンを狩猟に行っていたのを思い出します。結局狩れなくて近場のスーパーでモスマンのモモ肉を買って誤魔化していましたね。母さんは全部お見通しですよ。ますます暑くなりますが、夏風邪を引かないように、お腹はしまって寝てください。それではまたお手紙を出します。あなたの母より。追伸、ヒヨドリ区七号道路の電柱にヒビが入っているので担当の部署の方に連絡願います」との事でした』
>>まてまてまてまて
>>情報量が多過ぎるっピ!
>>全体的にどういうことなの
>>母を語る不審者
>>初手からすごい加速したな
>>モモフレの町三作目の手紙パロディですね
『なお該当地区の電柱は本当にヒビが入ってたので連邦生徒会に連絡して、新しく建て替えてもらったよ。前半はこれ「モモフレの町」っていうモモフレンズのゲームで一人暮らしを始めた主人公に時々お母さんが送ってくる手紙のパロディだね。本編にはマンドラゴラもドラゴンもモスマンも居ないから安心してね。コメント欄でも当ててる子がいるね? もしかしてあの子かな? ふふっ、聴いてくれてありがとう。でも一瞬で分かるの怖い……怖くない?』
>>なんで分かるんだよ
>>怖くないですよ!?
>>これは茶化して皆のヘイトが向かないようにする技術
>>はぇー、流石先生だメインタンクなだけある
>>どう考えてもタンク役向いてないわよ
>>えっちなみるくタンクだから
>>はやくだして、やくめでしょ
『続いての珍情書、宛先は連邦生徒会だね。まぁシャーレは下部組織だから書類が回ってくるのは分かるけど。ええと「ねえねえ、シャーレってさ、連邦生徒会長が作った自分専用の巨大なラブホテルって本当? もしそうなら横領じゃん、お金返してよ。それか先生貸してよ。先っぽだけで良いからさぁ」です。待って何これ。もうツッコミ所しか無いよ!』
>>先生に来てほしいのは分かる
>>とんでもねぇ風評被害が発生してる
>>作ったのに失踪したのか(困惑)
>>先っぽだけって言ってるやつは基本信用ならない
>>もらうなら全部よね
『詳しく掘り下げると面倒事の予感がするので次行こうかな。なになに「はぁ、はぁ……うっ。……はぁ、ねぇ、今何色のゲロ吐いてんの……?」もらいゲロしそうになってまで聴く事!? と言うか陳情書の枠で何を聞こうとしてるのか謎だよ! そもそも他人のゲロゲロの色なんか気にしてないで介抱してあげてよ!』
>>前半でえっちな話かと思ったらレベルが高すぎた
>>でも先生前ゲロ飲めるって言ってたぞ
>>これを送ったやつの精神が怖い
>>おい待て先生のそれホントか?
>>ソース出せ
>>出すのはゲロだぞ
>>酸っぱいコメント欄だな
『と言う事で珍情書のコーナーは終わりです。いやホント、毎日書類の処理で大変なので妙な書類は送らないでください。と言うかリンちゃん最初にこういうのちゃんと精査して弾いてよぉ! 陳情書ならそれこそ紙媒体じゃなくデータで処理した方が早いし楽じゃん! あ、そうだ。今後シャーレに変なお手紙や書類を送ってきたらお尻ペンペンです』
>>ガタッ
>>ガタッ
>>ガタッ
>>アヘッ
>>おいもう手遅れなのが居るぞ
『ただし実行するのは私じゃないよ。セクハラになっちゃうからね。そうだなぁ……覆面水着団のクリスティーナちゃんにミニガンでお尻にワンマガジン撃ってもらって、そのまま赤熱した砲身でペンペンしてもらおうかな?』
>>覆面水着団って?
>>ああ!
>>ブラマで銀行襲った凶悪テロ集団
>>あれ都市伝説じゃなかったのか……
>>先生のご要望とあらばお応えします♧
>>テロリストもよう見とる
>>いやえぐいえぐい
『さて、次の話題だけど。そうそう、みんなは先日発売されたASMRは聴いてくれたかな? 今回は普段とは違う私になりきって演技してみたんだよね。そう言えばフミが直接色々回って評判を聴いてくれたみたいだけど、今そのデータってあるのかな?』
>>あっ、こりゃやべぇ!?
>>やめて、見ないで
>>ちょっと待って先生に知られるなんて聞いてない
>>私は今から腹を切ります
>>ロープどこにあったっけな
>>何人か覚悟キマってて草
>>ん、士道不覚悟
コメント欄が狂乱の渦に巻き込まれている。
コユキちゃんもユウカさんのアレがフラッシュバックしたのかぷるぷる震え出したのでむぎゅっと抱き締めて安心させる。
ついでに右手を上げて左右にふりふり。
一応横を見たらコタマさんは首を横に振り、ハレさんは両手でバツを作り、マキちゃんは同じように震えていたので右手を伸ばして抱き寄せた。
未だに傷痕は深い♡
『え、ダメなの? 武士の情け? よく分からないけど、フミがそう言うなら私は知らない方が良さそうだね』
>>ありがとうフミ
>>フミちゃん愛してる
>>家に来て私をフォックスしてもいい
>>フフフ……フォックス!
>>やめないか!(ばしーん)
>>フォックスを隠語に使うのはやめないか!
>>まじでフミ助かった
>>流石淫魔王、民を導く術を分かっている
「マキちゃん最後の人特定しといて♡」
「あ、うん」
『なんかフミの新しい称号が出来てるね。前よりパワーアップしてない? まぁ実際色々とパワーアップしてるんだけども』
>>そう言えばフミさんって何であんなにえっちなの?
>>知らんのか、私も知らん
>>何で前に出た
>>絶対15歳の色気じゃないわよね
>>見た目はちんちくりんなのに
>>雰囲気も心もオトナっぽいです!
>>あれで自分は側室で良いって言ってるのまじ淫魔
『いや、フミに限った話じゃないんだけどね。そう言えばこの事を話すのはキヴォトスに来てから初めてか。丁度いいかもね。ええと、これを聴いてくれてるみんなは私がキヴォトスの外から来た人間なのは知ってるよね? 私がキヴォトスに来て一番驚いた事は何だと思う? 銃が当たり前にある社会? 残念、それは二番目』
先生が話し出した内容は私も多分初めて聴くものだ。
コユキちゃんと一緒に前のめりになる。
あ、マキちゃん抱き締めててごめんね。
にしても銃が二番目かぁ、なんだろ?
シンキングタイムが無言にならないように先生が秒数を数えていき、十まで行った所で時間切れ。
『はい、と言う事で正解発表〜。私がキヴォトスに来て一番驚いた事は、生徒のみんなが可愛すぎる、でした〜! わーぱちぱちー。お、みんな分かってないね? それじゃ詳しく説明させてね。まず先生としても私個人としても譲れない大前提として、みんなは本当に一人一人綺麗で可愛くて素敵な女の子です。もし私が入学したばかりの学生だったら、すっかり縮こまって何も話せなかっただろうね。そんな私に話し掛けてくれる子がいたなら、多分その子に惚れて告白してたんじゃないかな。それくらい、みんなの姿は本当に綺麗で可愛くて素敵です。それを踏まえて──実はキヴォトスの外、私の通っていた小中高そして大学では、君たちみたいな子は学校に一人居るか居ないか。当然、そんな可愛い子との接点なんて無く、男友達とバカをやって過ごした青春だったよ。そんな私が先生としてキヴォトスにやって来て、右を見ても左を見ても美少女しかいない状況は流石にびっくりしたよ。しかもそんな美少女と話して触れ合える……先生の立場が無かったら即ヴァルキューレのお世話になっていたね』
>>ん、結婚しよう
>>私はいつでもウエルカムですよ〜♧
>>やはりシャーレは連れ込み宿では?
>>でも捕食してくるのはフミちゃん定期
>>よく隣に淫婦居て先生煩悩に負けてないよな
>>私相手には負けても良いんですよ?
>>今更先生が私たちに負けるビジョンが見えない
『なのでみんなとの距離感は私自身測りかねてる所もあるんだ。もし馴れ馴れしすぎるとか逆に遠すぎるって感じる事が有ったら遠慮なく言ってね。すぐには無理かもしれないけど、少しずつ一人一人に合わせた距離感を取れるように頑張るから』
>>ん、私ともっとスキンシップを取るべき
>>もっと近付いていただいて構いませんわ
>>いっぱい撫でてください!
>>脚を舐めようとするな
>>匂いを嗅ごうと寄ってくるんじゃない
>>生徒と先生という立場をしっかり弁えてください
>>反応両極端で草
『ここで今口にした「すぐには無理かもしれないけど」って言葉が活きてくるんですね。まぁちょっとずつ改善はしていくから。とまぁそんな感じで次の話題に行こうかな? 次はシャーレ関連について、大雑把に色々話していこうと思います。ちょっと前に当番制度が複数人に拡充されたのは知ってるかな? せっかくシャーレっていう学校の枠を越えた所で集まるんだから、普段は会えないような子ともしがらみ無く交流出来る機会を作れないかな、って思ってね。それに当番へ応募してくれてる子も結構多くて、一人ずつだと待ち時間も長くなっちゃうかなって』
>>おかげで友だちが増えました!
>>新しい出会いで見識も広がりますわね
>>同じ学校でも当番で話すのが初めての子も居た
>>友達が出来てフミさんのごはんとお菓子も出る楽園
>>仕事少ない時はボーナスタイムだよな
>>交代で先生かフミにむぎゅむぎゅされてる
>>やはりシャーレは連れ込み宿だった……?
>>ハーレム座談会の会場やぞ
『ハーレム云々は私は何一つタッチしてないからね? その辺は全部あちらの淫魔王様が……あ、ごめんなさい、足つぼはゆるして!』
にっこり笑みを浮かべて右手で中空をごりごりするジェスチャーを送る。
先生は即座に両手を挙げて降参した。
よろしい♡
『ごほん。シャーレと言えば色々な設備があるのも特徴なんだよね。生徒のみんなが自由に使えるカフェや、全部ワンプレイ百円のゲームセンターも有るし。暇な時とか近くに来たけどお店が混んでたり雨に降られたりした時なんかは、ふらっと寄ってもらえると嬉しいな。そうそう、シャーレでは復学支援もやってます。進学したけど馴染めず学校に行く気になれない子や諸事情で学校を停学、中退した子を対象に、その子自身に合った学校への編入手続きや、学校に行かなくても一定の成績と課外活動への従事で卒業資格を付与する仕組みを作ってます。君たち子どもには無限の可能性がある。だから、君が、君自身を諦めないでほしい。私が先生として全力でバックアップするからね』
>>急にカッコいいのズルい
>>先生はこういう事する
>>シャーレも頑張ってるんやな
>>せんせいすき
>>下着がダメになったので責任取ってください
>>発情してるやつがいますね……
>>ASMRの後遺症かな?
>>ガチで被害出てるの草
『お、そろそろいい時間だね。シャーレラジオは今後も不定期だけど続けていこうと思います。配信が有る時はモモッターのシャーレ公式アカウントから告知があるので、良ければまた聴きに来てね。それじゃあ今日はお付き合いありがとう。シャーレの先生でしたー。みんなばいばい』
先生がカメラに小さく両手を振る。
数秒後配信が停止し、放送中を示すランプも消えた。
先生はふぅと一息吐いてブースから出て来た。
「お疲れ様♡」
「にはは、先生お疲れ様でしたー!」
「良い音源が録音出来ました」
「初めての配信とは思えないくらい手慣れてたね」
「最初のアレはびっくりしたけどね」
“あはは、ごめんごめん。一発目だから掴みはインパクトがほしいかなって”
「衝撃が強すぎる♡」
「先生も問題児ですねー! 反省室空いてますよ?」
“ちょっとしたドッキリだから! 実害は無いから!”
実害は無かったけどびっくりしたので、みんなで先生をつんつんぐりぐり揉みくちゃにした。
おらーもっとスキンシップしろー♡
その後は食堂に移動して遅めの晩ごはん。
メニューは予告通りすき焼きだ。
他のみんなの分も事前に用意してたので食洗機には洗浄済みの器が並んでいる。
水切り台には綺麗に洗ってある鉄鍋も三つ。
便利屋RABBITスクワッドかな?
一人で三人分以上食べるなら鉄鍋で追加しつつ焼く事になるからね。
寸胴鍋で作ってた方はほぼ空っぽだね。
みんな健啖で何より♡
いっぱい食べて大きくなるのよ♡
「はーい♡ すき焼きの準備おっけー♡ 煮えるまでしばし待つなり♡」
「おおーっ! 既に美味しそうです!」
「卵溶いておきましょう」
“ごーはーん! ごーはーん!”
「先生誰よりもわくわくしてるじゃん♪」
「ちょっとかわいいかも……」
携帯コンロに鉄鍋をセット。
白菜、白滝、焼き豆腐、春菊、長ネギ、牛肉が所狭しとぎゅうぎゅうに詰め込まれている。
もちろん炊き立てごはんも用意済みだ。
箸休めにはきゅうりと大根の浅漬けもある。
みんなの胃袋をバッチリキャッチ♡
そして待つ事数分。
割り下がぐつぐつと煮え滾り、具材が割り下の色に程よく染まってきた所で火を少し弱めて焦げないように。
さ、れっつフェスティバル♡
「ヨシ!」
“それじゃあ両手を合わせて、いただきます”
「「「「いただきまーす!」」」」
「召し上がれ♡」
鉄鍋の半分を占めていた牛肉が即座に消えていく。
やっぱり初手は牛肉だよね。
みんな思い思いに卵を絡めてふーふー冷まし、ぱくっと一口。
一気に目が輝き出すのを見て思わず笑みが溢れる。
「そのままの勢いでごはんも詰め込んでみて♡」
促されるまま白米を掻き込み咀嚼していく。
するとみんなの顔が幸せそうにとろけた。
あ、早速牛肉追加しなくちゃね。
「んぐんぐ……はわぁ♪ フミちゃんフミちゃん、美味しいです!」
「にしし♡ 喜んでもらえて何より♡ 白菜や長ネギは表面が冷めても中は熱いから注意してね♡ まぁ分かってても火傷しちゃうんだけど♡」
「分かるー。なんであんなに熱いままなんだろね?」
「元々の水分量が多いと内部に熱を溜め込みやすいのかもしれません。白滝もほぼ水分ですが、そちらは一本が細く外気に触れる面積が広いので冷めやすいのかと」
“なるほど、流石コタマだね!”
「ふふふ、もっと褒めてください♪」
「アテナ3号、先生が喜びそうな雑学検索しといて」
適時牛肉と野菜を追加しつつ、私も食べ始める。
ウオー、味の染みた白滝は私のものだー!
「ウマー♡」
“ふふっ、ホント幸せそうに食べるよね”
「フミちゃん可愛いですよー♪」
「食べてる間は年相応の雰囲気ですよね」
「という事は食べ続けさせればフミからえっちなオーラは消える……?」
「逆にこの食欲が性欲に転じたらキヴォトス崩壊しそうだねー」
「そこまでじゃないやい♡」
“そうかな……そうかな……?”
「せんせーが困惑しておられる♡」
やいのやいのと楽しく盛り上がりながら食事を済ませ、まんぷくぷふー、と一息。
食器を食洗機に入れて鉄鍋をガシガシ洗っていると、何やらみんなから熱視線が。
みなまで言うな♡
勿体ぶらずにささっと材料を取り出して円形のホットプレートの電源を繋いで温めON♡
「わぁっ♪」
“おっ? 何か作るのかな?”
「実はフミさんがクレープを焼いてくれるのです」
「妖怪MAX取ってこよう」
「あたし、イチゴとホイップとチョコ!」
「注文が早い♡」
フライング気味に手を挙げるマキちゃんのオーダーに応えるべく冷蔵庫からトッピングを取り出して準備完了。
生地をプレートに乗せて手早くくるくる回していく。
破れないように固まったのを剥がして半分に畳み、トッピングを配置してくるくる巻けば、フミちゃんお手製クレープの出来上がり♡
おめめキラキラなマキちゃんに手渡すと、満開の笑顔が咲いた。
「はい、マキちゃん♡」
「わぁい、ありがと! 早速いただきまーす♪ んー、美味しー♪」
「ズルいですよマキ。次はコユキさん、オーダーをどうぞ」
「えっ、良いんですか?」
「ええ。普段上級生っぽくないと評判なので、こういう時にポイントを稼いでおこうかと」
“ふふ、コタマはしっかりお姉さんだと思うけどね”
「にはは♪ ありがとうございます、コタマ先輩っ♪ それじゃフミちゃん、チョコバナナホイップください!」
「ほいさー♡」
やきやき、のせのせ、くるくる、じゃじゃーん♡
おまけにアラザンと色とりどりのチョコスプレーも散らしてあげちゃう♡
「はい、どうぞ♡」
「おおーっ!? なんかすごい豪華ですよーっ!」
「愛情もマシマシ♡」
「にはは、ありがとうございます、フミちゃんっ!」
「コタマさんは
「えっ?」
「
「何故にカタコトに!?」
「
“あっははは! 似てる似てる! キヴォトスの外の世界のゲームのキャラで、何を話し掛けてもナニニシマスカ? しか言ってくれない店員が居るんだよね”
「せっかくなのでせんせーの腹筋も狙っていくスタイル♡」
「なるほど……いや、待ってください。なんで加工も無しに機械音声みたいなノイズ乗せられるんですか!?」
「フミちゃんの秘密兵器です♡ 同時に違う言葉も発声出来ますよ♡
「クレープ食べたら詳しく! 詳しくお願いします! あ、トッピングはキウイとチョコとホイップで」
「はいさー♡」
やきやき、のせのせ、くるくる、じゃじゃーん♡
おまけでゴールデンキウイも添えちゃう♡
「はい、お待たせしましたー♡」
「おお、素晴らしい……! ありがとうございます」
「二人におまけしてズルーい! あたしもあたしも!」
「ふっふっふー♡ マキちゃんまだ気付いてないでしょ♡ 生地の下の方♡」
「下の方? ……あっ! 畳んだ所にイチゴジャムが塗ってある!」
「フミちゃんに抜かりはないのだ♡」
「いつの間に……なんにせよありがとー♪」
「どういたしまして♡」
“フミは流石だなぁ……”
「どうせんせー♡ 惚れ直しちゃった?」
“毎朝フミを見る度に惚れ直してるよ”
「ぐわー♡ 返り討ちっ♡♡♡」
「ただいま……えっ、なんでフミ撃墜されてるの?」
「いつものだよ!」
「甘くないカフェオレが欲しくなりますねー」
「目の前で……これは新しい形のNTR……!?」
「寝てから言いなよ。あ、フミ。オーダー良い?」
「ほいさっさ♡」
「この妖怪MAXに合うやつ」
「んんん急に要求レベルが高い♡」
ハレさんが提示したのは妖怪MAXのホワイトサワー味。
乳酸菌系の甘さと柔らかい炭酸の刺激が癖になるさっぱりとしたフレーバーだ。
どうしよっかなー……?
冷凍庫をごそごそ漁って追加トッピングを調達。
やきやき、のせのせ、くるくる、じゃじゃーん♡
「はい♡ バニラアイスと蜂蜜とパイナップルのクレープです♡ 一応溶けた時用のおしぼりも出しますね♡」
「ありがと。どれどれ……はむっ」
ちっちゃなお口ではむはむ食べるハレさん。
やーん可愛い♡
流れるようにぐびっと妖怪MAXをキメて、くわっと目を見開く。
「なにこれ新感覚……! 酸味と甘味のバランスが完璧に妖怪MAXと調和してる……!」
「良かった♡ 実は結構な挑戦だった♡」
“普通妖怪MAXと一緒には食べないもんね”
「これはハマっちゃうかも。妖怪MAX開ける時はフミを呼ぼうかな?」
「ほぼ毎日出勤じゃないですかー♡ 血糖値えらい事になりますよ♡」
「ウッ、健康診断で赤文字が……!」
“ハレにしばらく妖怪MAX禁止令出した方が良いのかな?”
「先生は私から生きる糧を奪うつもり……?」
“そんな大層な話じゃないよ!?”
「日頃からちゃんと気を付けてね♡ じゃないと健康の為にトレーニング部の合宿に参加させるから♡」
「待って待って待って」
「待たなーい♡ アテナ3号ちゃんもハレさんには健康で居てほしいよねー♡」
『……対象:小鈎ハレへの妖怪MAX並びに糖分の摂取制限を受諾』
「アテナ3号!?」
「と言う訳でしっかり頑張って♡」
「うらぎりものー」
よよよ、と崩れ落ちながらクレープをはむはむ食べるハレさん。
そのままぐびっと妖怪MAXをキメる姿はBDで見たアルコール依存症の患者みたいだった。
これはひどい♡
「せんせーはどうします♡」
“フミと一緒ので”
「はいさー♡」
チョコバナナホイップにチョコフレークを乗せてさらにチョコソースもかける。
チョコマシマシクレープの完成だ。
とても甘そうに見えるけどチョコソースはカカオ75%のビターなやつで、ちょっとオトナな味わいになってる。
先生と食の好みも似てきちゃったなぁー♡
にゃーにゃーにゃー♡
「はい、せんせー♡」
“ありがと、フミ”
「私のチョコのとは少し違いますね?」
「一口いる?」
「はい!」
「あーん♡」
「あーん……もぐもぐ。おおー、甘さ控えめでなんだか大人っぽい味わいですねー!」
“もぐもぐしてるコユキも可愛いなぁ”
「ねー♡」
そんな感じで晩ごはんとデザートと食べ終えたのでした。
この後はお風呂に入って楽しい楽しいパジャマパーティーが待ってる!