もしもシャーレにヒモを養う適性の有る娘が応募してきたら 作:一ノ瀬 崇
ぷにゃーん。
ぷみーん。
気の抜ける音の二連発で目が覚めた。
最初のはヒフミンからのモモトーク着信、次のはその音で寝返りを打ってウェーブキャット抱き枕が鳴った音だ。
眠い目を擦りスマホを手に取る。
起きてますか、の文面の下にアイマスクを付けたペロロのスタンプが付いている。
朝六時。
朝早くから珍しいなと思いつつ、のっそり起き上がるウェーブキャットのスタンプを送る。
と、着信が来た。
「おひゃー♡」
『おはようございます、フミちゃん♪』
「今度は何を見付けたのよ♡」
『ブラックマーケットでプライズ品として回収されたペロロ様のフィギュアがディスカウントショップに並ぶとの情報がありまして』
「毎回どこで拾ってくるのよその情報♡」
『モモフレネットワークは深いんですよ♪』
「んで、なんで私?」
『今日はアズサちゃんがスクワッドのみなさんと公園でピクニックに行くとの事で』
「おー、そりゃ何より♡ って事はこっちに来るのね♡」
『アズサちゃんを送ってフミちゃんを回収しようかと思いまして』
「それだけじゃないんでしょ♡」
『あ、あはは……その、今月ちょっとピンチでして。出来ればフミちゃんの援助がほしいなーって』
「ふーん♡ 身も心も既に差し出してるあんたは何を対価に出せるの♡」
『えぅ……。わ、わかりました……今日はタイツじゃなく下着を付けないスパッツ直穿きで過ごします』
「なんでも買ってあげる♡♡♡」
『わぁい♪ それじゃ後でアズサちゃんとシャーレにお邪魔しますね♪』
ぴっ、と通話が切れる。
わくわくしてきたな!
私とヒフミンの間では幾つかの符丁がある。
スパッツ直穿きは耐久お豆チャンバラのお誘いなのだ。
わくわくしてきたな!!!
布団から起き上がり私服へお着替え。
ブラックマーケットに行くのに制服だとちょっと目立つからね。
あ、ヒフミンにも送っておこう。
あいつ度々トリニティの制服で行って騒動起こすからな。
送信ぽちー。
プレイ用じゃない方のクローゼットを開けて物色してると返事が届く。
やっぱり制服で来ようとしてたな。
私が久し振りに私服のあんたを見たいの、と送る。
これなら大丈夫だろう。
さて、私もお着替えタイムだ。
紫陽花色のブラウスとタイトジーンズ、ちょっとゴツい感じのスニーカー。
ウエストポーチの位置を調整してホルスターと干渉しないようにして、パーミッションも差し込んで、と。
姿見の前でくるくる回ってみる。
ヨシ!
コーディネートが決まったら脱いで畳んでおく。
朝ごはん作ったりスクワッドのみんなにプリン作ってあげたりしないとだからね。
ヒフミンが来るまでは一旦制服なのだ。
と言う訳で執務室へごーごー♡
「姉御、おはっす」
「おはよー♡」
「今日も小さいすね!」
「そんな事言うのはこの乳かー♡ おらー♡」
「わー姉御に襲われるー」
途中自警団の元スケバンサイドポニーことユキちゃんときゃいきゃい戯れる。
流石に朝方だから人は少ない。
なので存分に乳繰り回せるのだ♡
「おっ♡ ちょっとカップ大きくなった?」
「姉御が揉むんで成長したんすよ」
「なるへそー♡ 好きな人に揉まれると大きくなる、なんて言うけど♡ おやおやー♡」
「……ま、まぁ、そう言う事っす」
「可愛いんだから♡ ほっぺちゅーしたげる♡」
「うひー♪」
屈んでもらって飛び付くように背伸びしてほっぺちゅー♡
甘えん坊さんなんだから♡
自分用にこっそり持ってたドライフルーツを幾つかあーんで食べさせてあげてユキちゃんとはお別れ。
早朝パトロール帰りだったみたいで今から仮眠するらしい。
ゆっくり休んでねー♡
入り口のロッカーにパーミッションをぶち込み執務室に入ってそのまま給湯室へ。
朝ごはんはどうするかなー、と考えた所でぴこぴこ揺れる淡い緑髪が見えた。
「くせものー♡」
「わぁっ!? 見つかりました!?」
こっそり覗いてたヒヨリちゃんを捕まえる。
早朝なのにごはんの気配を察知して起き出したらしい。
もう、可愛いなぁヒヨリちゃん♡
「どれどれ♡」
「ひゃう!? も、揉まないでくださぁい!」
「ふむふむ♡ 栄養状態はだいぶ改善されてるね♡ 肌荒れやむくみも無し♡」
「あ、触診だったんですか?」
「スクワッドに限らずアリウスの子たちは栄養状態が悪かったからね♡ ヒヨリちゃんは毎回ちゃんと食べてくれてるし、一安心かな♡」
「えへへ……いつも美味しいごはん、ありがとうございますぅ……♪」
「じゃあこっちももみもみ♡」
「ひゃあっ!? 結局えっちな事もされちゃうんですね……うわぁん! なら私だけじゃなくスクワッド全員ハーレムに入れて末永く養ってください!」
「良いよー♡ むしろそのつもりだったし♡」
「やったぁ、将来は安泰です! ……あ、あれ? フミさん? 何故揉み続けているのでしょうか……」
「朝ごはんの前にヒヨリちゃんを食べちゃおうかな♡」
「えぇっ!? あ、あの、そのっ、や、優しくお願いしますぅ!?」
「にしし♡ 冗談♡ 食べちゃうのは今度ね♡ さてー、朝ごはん作るけど食べたいのある?」
「あ……。……ハッ!? ざ、残念がってはいないですから……! え、えっと、豚汁が食べたいですっ」
「おっけー♡」
ヒヨリちゃんからの好感度も高いようで何より♡
それじゃ鍋で具材を炒めて水を入れて、お米も炊いて、おかずはどうしよっかなー。
そう言えばからし漬けにしたレンコンが有ったからかまぼこと一緒に小鉢にしちゃうか。
そのままだと辛いから箸でレンコンの穴のからしをヒヨリちゃんに抜いてもらう。
通は抜かずに行くらしいけど、ちょっと私たちには刺激が強すぎるからね。
後は米の友に梅干しの種を抜いて包丁で叩いて、小さく刻んだ茗荷と鰹節で和えて大葉に乗せて、と。
お、具材が煮えてきた。
長ネギと豆腐も入れて、合わせ味噌とヒヨリちゃんがレンジにかけてから揉んで細かく粉にした鰹節も入れて弱火でじっくり。
「はわぁ……毎回すごい手際の良さですぅ」
「ありがと♡ そうそう、今日はみんなでピクニックなんだって?」
「えへへ、そうなんです! ミユさんから子ウサギ公園のラベンダーやカサブランカが見ごろだと聞きまして……そしたら姫ちゃんが、みんなでピクニックしようって。今回はアズサちゃんも一緒なんです……♪」
「楽しみだね♡ よっし、腕によりをかけてプリン作ったげる♡」
「わぁい♪ フミさんのプリン♪」
「良かったらヒヨリちゃんも一緒に作ってみない? みんなに美味しいって言わせちゃお♡」
「えぇっ!? わ、私に出来るでしょうか……」
「だいじょぶだいじょぶ♡ フミちゃんに任せなさい♡」
「えへへ……お世話になりますぅ♪」
と言う訳で一緒にプリン作り。
分量と火加減さえ間違わなければ誰がやっても美味しく出来上がるのがお菓子なのだ。
まぁ火加減が一番難しいんだけど、そこは私が見てるから初心者のヒヨリちゃんでも楽々簡単クッキング♡
「後は固まるのを待つだけ♡」
「私がプリンを作れる日が来るなんて……事実は小説より奇なりですねぇ……」
「これからもっと、やりたい夢を現実にしてこ♡」
「はいっ!」
“おや、楽しそうな声が聴こえると思ったら”
ひょこっと入り口から先生が顔を覗かせた。
ちょっと眠そうなの可愛い♡
「あっ、おはようございます!」
「おはよー、せんせー♡」
“二人ともおはよう。朝ごはんとプリン作り?”
「今日はスクワッドとアズサちゃんで子ウサギ公園にピクニックなんだって♡」
“へぇ、楽しそうで良いね。という事はプリンはお昼のデザートかな?”
「うむ♡ なんとヒヨリちゃんが作ったのだ♡」
「い、いえいえっ!? 私はお手伝いしただけで……!」
「つまり二人の合作♡」
“いいなー美味しそうだなー”
「にしし♡ ヒヨリちゃん、せんせーにあーんしてあげたら?」
「えっ、い、良いんでしょうか……?」
「こっそりイチャイチャ出来るチャンス♡」
「……ごくり」
“ヒヨリが食べさせてくれるの? 嬉しいなぁ”
寄ってきて屈んで雛鳥みたく口を開ける先生。
ささっと取り分けておいた試食用プリンをヒヨリちゃんに渡してスプーンを持たせる。
自分で食べちゃダメよ♡
「で、では僭越ながら……あ、あーん」
“あーん……美味しい!”
「よ、良かったですぅ……♪」
“ふふっ、ヒヨリの手作りプリンを食べられるなんて幸せだな。良ければまた作ってくれるかい? 今度は一緒に食べる大きなやつを、ね”
「はいっ! ……えへへ♪」
うむうむ♡
ヒヨリちゃんと先生の絆も深まっててヨシ!
その後集まってきたアツコちゃんミサキちゃんサオリちゃんも加えて六人で朝ごはん。
もちろん、ヒヨリちゃんと私のごはんは初手山盛りだ。
「今日も美味しそうだな」
「今日はなんと、ヒヨリちゃんが朝ごはんの支度を手伝ってくれたんだよ♡」
「ヒヨリが? 本当に?」
「えへへ……ほんのちょっとだけですけど」
「おぉ、花嫁修行でヒヨリに負けちゃう。頑張らないと」
“ヒヨリが奥さんになったら毎日賑やかで楽しそうだね。特にごはんの時はみんなが笑顔になりそう”
「うぇへっ!? へへ、えへへ……♪」
ヒヨリちゃんが手伝ったと聞いてサオリちゃんは凄いじゃないかと目を輝かせ、アツコちゃんは私も料理の勉強始めようかなと考え込んでいる。
一方先生のクソボケ発言でヒヨリちゃんは照れてへにゃへにゃ左右に揺れて、ミサキちゃんは眉を寄せて先生をじっと見ている。
ミサキちゃんももっと攻めないと先生には伝わらないゾ♡
「からしレンコン、穴のからしはヒヨリちゃんが抜いてくれたけど辛かったら無理しないでね♡ 隣のかまぼこと合わせて中和するのも良いかも♡」
「初めて食べる料理……はむっ。……んっ、ごくん。しゃくしゃくした歯ざわりとからしの刺激が不思議。かまぼこもちょっと厚くて味が濃いから単体で美味しい」
「良かったー♡ 実はかまぼこ、知り合いの練り物屋さんで体験させてもらった時に作ったやつなんだよね♡」
「なに、フミの手作りなのか?」
「数が作れない昔ながらの製法だから、味が詰まってる代わりに見た目は不均等なの♡」
“かまぼこ単体で主役を張れるとは、凄いね。びっくりするくらい濃くて美味しいよ”
「にしし♡ 良かった♡」
「この梅干し和えも美味しいですぅ♪ 豚汁のコクになれた口を、この酸味と爽やかさがスッキリさせて……次の一口がまた美味しいですねぇ♪」
「無限ループ入っちゃう♡ さ、おかわりよそうよ♡」
「お願いします!」
「はい大盛り♡ あ、ヒヨリちゃん口の端にお弁当付いてるよ♡」
「えっ、どっちですか?」
「ちゅっ♡ はい、取れたよ♡」
「あ、わ、ひぇぇっ!?」
「にしし♡ ごちそうさま♡」
「あ、あぅあぅ……お、お粗末さまでした……♡」
「むっ、ヒヨリからフミへのらびゅんが飛んでる」
「なにそのアホな名前のブツは」
「ミサキ、らびゅんはね、好きって感情の発露なんだよ。流行りに乗れとは言わないけど、女子高生なんだからアンテナは張っておこう、ね?」
「トンチキワードを知らないだけでそんな言われる!?」
「アツコは昔から流行には敏いからな。ファッションリーダーというやつだろう」
「サオリ姉さんは何度も騙されてるもんね」
「いや、騙されてはいないはずだが……」
“……ちなみに何を教わったの?”
「とても良いはチョベリグ、とても悪いはチョベリバと言うらしい。それぞれ超ベリーグッド、超ベリーバッドを略したものだ」
“…………よく、知ってたね?”
「ヒヨリの拾ってきた雑誌のコーナーに載ってたの。完全に風化した死語50連発ってやつに」
「なるほどな、ヒヨリの雑誌から……ん、待て、死語と言ったか?」
“今の世の中で誰も使ってないんじゃないかな……”
「なっ……なぜだ、何故だアツコ!? 何故そんな……先日バイト先で偶然出会った便利屋のアルが渋い顔をしながら褒めてくれたのは、もしや……!?」
「アルさんに気を遣われていらっしゃる♡」
「ふふっ、ごめんね? 真顔でチョベリバって言うサオリがすっごく可愛くて、訂正出来なかったの」
「くっ……アツコ、この件は……!」
「許してぴょん♪」
アツコちゃんが両手を頭の上に持っていって、ウサ耳のように揺らす。
と、サオリちゃんはダメージを受けたようで仰け反っていた。
必死に抑えてるけど口の端が上がっていってる。
追撃の上目遣いぴょんぴょんでサオリちゃんは屈した。
「くっ……許そう……!」
「良いんだ♡」
「可愛いは正義だと教わった……ならば、アツコは、正義だ……!!」
「サオリ姉さん、アツコには甘すぎるから」
“スクワッドの良識はミサキによって保たれていた……?”
「ミサキちゃんお疲れ様♡」
「……まぁ、こんな面々だから貧乏くじを引く役が居ないとね」
「ミサキさん、いつもありがとうございますぅ♪」
「……別に、良いって」
「ふふっ、いつもありがとね、ミサキ」
「だから良いってば」
「ありがとぴょん♪」
「……あぁ、もう!」
寄っていったアツコちゃんをミサキちゃんが捕まえた。
抱き枕の刑に処されたのにアツコちゃんは満更でもなさそう。
仲良しスクワッドは良いぞ♡
その後も賑やかに談笑しながら朝食を終えて、アツコちゃんヒヨリちゃんとピクニックのお弁当作り。
サンドイッチや卵焼き、唐揚げにポテサラ何かを作っていく。
ミサキちゃんとサオリちゃんにはその間先生がつまみ食いしないように監視をお願い、という体裁でイチャイチャする時間を捻出。
しっかり先生のクソボケを浴びるよーに♡
「私は良いの?」
「アツコちゃんは割と攻め攻めでイチャイチャ出来るでしょ♡」
「姫ちゃんも、なんだかんだアリウスですから」
「ヒヨリの分のサンドイッチ、ハム減らそうかな?」
「横暴ですぅ!」
「冗談。ちゃんとハムとキュウリ挟んであげる」
「えへへ……なら姫ちゃんのイチゴサンド、ちょっとイチゴ多めに入れておきますね」
「密約が交わされるのを見てしまった♡」
「ヒヨリ、口封じだよ」
「えっ!? で、でもお世話になったフミさんに……」
「きゃー口封じされちゃうー♡ んー♡」
「……あっ、く、口封じって、そういう……♡ で、では失礼します……ちゅ♡」
「んっ♡ にしし♡ ヒヨリちゃんの味がする♡」
「な、なんか恥ずかしいですぅ!?」
「すっかりヒヨリも懐いちゃったね」
「初手カロリーバーあげたのが効いてそう♡」
「アレは美味しかったですねぇ……」
イチャイチャを挟みつつランチボックスに詰め込んで完成。
密封したプリン容器も入れて、クーラーボックスに保冷剤と一緒に入れたら準備完了。
時間も九時で丁度いい感じ。
「そろそろ着くかな?」
「だねー♡ ヒヨリちゃんあーん♡」
「あーん……もぐもぐ♪」
「アズサと会うのも随分久し振り。のんびり出来ると良いな」
「だいじょぶ♡ アズサちゃんも朝からわくわくしてるってさ♡ ヒヨリちゃんあーん♡」
「あーん……もぐもぐ♪」
「ヒヨリ、出発前にお腹いっぱいで動けなくなっちゃうよ?」
流石にジト目で見てくるアツコちゃん。
いやぁ、ドライフルーツをあげたら美味しそうにもぐもぐするのが可愛くて♡
量自体はそんなでもないから長く楽しめるし♡
「えへへ……フミさんにごはんやお菓子をもらえますし、みんなと一緒に居られますし、フミさんや先生にえっちな事もされちゃいますし……幸せいっぱいでびっくりしちゃいますねぇ……♪」
「ヒヨリ、先生とのえっちな事は許可してないよ」
「許可制なんですか!?」
「やっぱり最初は血を繋ぐって言う使命の為にロイヤルブラッドである私が先生に抱かれるべきだと思うの」
「ロイヤルブラッドの強みをここで切ってきました!? い、一番大事なのは先生の意向ですから……!」
「なら問題ないね。先生は私を選んでくれるし」
「……せ、先生は私の胸に興味があるみたいですし、誘惑出来れば……フミさん、私に誘惑の手管を教えてください!」
「良いよー♡」
「あっ、こらヒヨリ。淫魔王の助力は禁止カードだよ」
「待って♡」
「……フミ、諦めた方が良いよ。こないだのシャーレラジオでフミの二つ名は淫婦から淫魔王にパワーアップして周知されちゃったから」
「せんせーに足つぼしなきゃ♡」
くそぅ、抜かった♡
あんな根も葉もない二つ名を流布されるとは♡
「根も葉もどころか実も種も増えて一帯地域支配してるレベルだよ」
「わ、私もフミさんに堕とされちゃいましたし……♪」
「ぐわー♡ 事実陳列罪♡」
そんな風に楽しみながら執務室に戻る。
ちょうどヒフミンとアズサちゃんも来たみたいで、サオリちゃんと向かい合ってる。
そう言えば会うのもトリニティでの事後処理のアレ以来だっけ?
シリアスの予感♡
「サオリ……」
「アズサ……その、元気だったか?」
「うん……サオリたちは?」
「ああ……賑やかに過ごせている」
「そうか……」
いや会話下手部♡
ゲームの無口キャラ同士の夜会話イベントみたいになってる♡
こういう時には緩衝材として先生にお任せしよう。
ハンドサインを送ると、先生は一つ頷いて二人に近付いていく。
そのまま二人を抱き寄せて、ぎゅっと身体を抱き締めた。
外から見てると結構二人って似てる所あるんだね。
慌て方がそっくり♡
「わわっ……!?」
「せ、先生……!?」
“まずは謝罪を。二人の話す時間を作ってあげられなくてごめんね。一時は互いの立場から対立してしまったけど、こうして同じ場所で過ごせるようになって、本当に嬉しいよ。先生としてはもっと二人に出来た事が有ったはずなのに、今まで待たせてしまって本当に申し訳ない”
「先生……ううん、良いんだ。会いに来ようと思えばいつでも来れたのに、勇気が出なかったのは私だから」
「私もだ。自分探しなんて聞こえの良い事を言って、向き合う事から逃げていた。これではリーダー失格だな……」
“二人の背を押してあげるのも先生の役目なんだ。でもそれをしなかったのは私の落ち度だよ。本当にごめんね。それから、感謝を。アズサが頑張ってくれたから、私はスクワッドのみんなを諦めないで済んだ。サオリが頑張ってくれたから、ベアトリーチェの暴力からアリウスの子たちを解き放てた。どちらが欠けていても、ハッピーエンドには辿り着けなかったんだ。そんな二人が、銃弾ではなく言葉を交わせる事が、何よりも嬉しい”
「先生……」
「……そうか」
先生の言葉は二人だけじゃなく、ミサキちゃんヒヨリちゃんアツコちゃんにもしっかり届いていた。
なんならヒヨリちゃんなんて目がウルウルしちゃってる。
ここは我慢する所じゃない。
ヒヨリちゃんとアツコちゃんの背中を軽くとんっと押してあげたら、そのまま駆け寄って先生とサオリちゃんごとアズサちゃんを抱き締める。
ミサキちゃんは離れて見てたけど、アツコちゃんに手を引かれて一緒にむぎゅむぎゅされてた。
……うん、スクワッドとアズサちゃんはもう大丈夫だね。
上機嫌に眺めていると、隣にヒフミンがやってきた。
ツインテールは普段のままだけど、服装は空色オフショルダーのブラトップに白の長袖カーディガン、ラベンダー色のフレアスカートにブラウンのシューズ。
肩掛けポーチはペロロ仕様なのがヒフミンらしい。
ってこれ、補習授業部結成の時に牛丼屋で当てたやつか。
愛用してくれてるの嬉しい♡
「良かったですね、アズサちゃん」
「仲良しが一番♡」
「……それはそうと、フミちゃんは制服ですか?」
「朝ごはんやピクニックのお弁当作ってたからね♡ ちゃんとこの後着替えるわよ♡」
「じゃあじっくり眺めさせてもらいますね♪」
「別に良いけど♡」
「で、褒めてはくれないんですか?」
「服装?」
「分かってても言われたいものですよ♪ それこそ、毎日の愛の言葉と同じです♪」
「しかたないにゃあ……とっても似合ってる♡ 流石は私のヒフミン♡」
「あははっ♪ ありがとうございますっ♪」
「じゃ、早速着替えるか♡」
「行きましょう♪」
“……あれ、フミさん? ヒフミさん? ここから抜け出すのを助けてくれたりは”
「がんばえー♡」
「頑張ってください♪」
“待って! 置いてかないで! って、ちょっ!? シャツのボタン外さないで!? あっ、こらっ! ズボンのベルト緩めない! アツコでしょ!? めっ! めーっ!”
大変な事になりつつある先生を置いて自室へ。
すまぬ先生、今日はヒフミンとデートなのだ♡
着いてきたヒフミンは部屋を見回して何やらご機嫌な様子で頷いている。
と思えばベッドに寄ってウェーブキャット抱き枕を吸ってる。
「あぁ〜♪ フミちゃんの匂い〜♪」
「着替えるけど見なくて良いの♡」
「ハッ!? こうしては居られません!」
ささっと戻ってきて何故か正座待機。
仕方がないのでヒフミンの正面で着替える事に。
まずは制服の上着を脱いで……ぱさりと籠に落とす♡
今度はスカートのチャックを下ろして、足元にぱさり♡
ブラウスのボタンを下から上に外して後ろ手を組むポーズで肩口を徐々に露出させて脱ぐ。
とさり、と籠にブラウスが落ちれば誘惑用の黒インナーとスパッツ姿が露わになる。
頭の上で手を組んで、ガニ股でヒフミンに向けて腰をへこへこカクカク♡
「ありがとうございます」
「何の感謝♡」
そんな寸劇も楽しみながらお着替えタイムも終わり、休日私服フミちゃんが出来上がる。
くるっと回ってキメポーズ♡
「キャー♡♡♡ 私のお嫁さん可愛いです♡♡♡」
「私のお嫁さんだって負けないくらい可愛いわよ♡♡♡」
脱いだスカートも籠に入れて洗濯機の横へ。
帰ってきたら回すかー。
中敷きを新品に交換した靴を履いて、ロッカーからパーミッションを回収していざ出発。
指を絡めて肩を寄せ合い並んで歩く。
「そう言えば今日はどこ行くの?」
「今日はモモフレンズ:ギャラクシーが封切りでして♪ 通路前中央席が連番で取れたのでこれはフミちゃんと行かねばと!」
「ふーん♡ 入場特典は?」
「それが今回はランダム封入ではなく全種類が最初から揃った状態で封入されてるみたいなんです! 転売ヤー対策も完璧ですね♪」
「転売ヤーはなぁ……生徒だったら、まぁヴァルキューレに突き出すくらいだけど♡」
「治りますし骨の四本くらい誤差ですもんね」
「念入りに両脚折るじゃん♡」
「腕さえ動けばなんだかんだ生きて行けますから♪」
「そーゆーとこだゾ♡」
このノリに付いていけるんだからアズサちゃんの適性はヤバ味♡
ともあれ今日の映画は私も楽しみにしてたので渡りに船だった。
存分に楽しませてもらおう。
「じゃ、ドリンクやフードは全部奢ってあげますか♡」
「わぁい♪ フミちゃんのヒモです♪」
「せんせーはヒモ嫌がってたケド♡」
「なんでですかね? フミちゃんに甘える口実にもなるのに」
「男の子にはプライドってものが有るのよ♡ それを立ててあげるのもお嫁さんの役目♡」
「でも頼まれたら買っちゃうんですよね?」
「当然♡ 手始めに服を私のお金で買ったやつで揃えたいよね♡」
「全身フミちゃんコーディネートな上にフミちゃんマネーで成り立ってしまうんですか!? そんなのもう、そういうプレイじゃないですか!」
「ごはんは私が作ったの食べてるから、そろそろ全身の細胞が私の料理で生まれたやつになってると思うんだけどどう?」
「フミちゃん取り繕うの上手いだけで割とキッショいですよね。そんな所も好きですけど♪」
「解せぬ♡」
映画館に到着して端末でチケットを出し、フードの列へ並ぶ。
ヒフミンと映画館に来るのも久し振りだなー。
メニューもシーズンごとに切り替えてるらしく、前回有ったのが無くなってたり新しいのが増えてたり。
悩んじゃうねー。
おっ、私たちの番が来た。
「ヒフミン決めた?」
「オレンジジュースLとペロロ様チキンナゲットで!」
「じゃあ私はアイスココアL氷抜きとウェーブキャットクレープを三種類とも二つずつで。あとピリ辛ペロロ「様」チキンナゲット一つ」
「かしこまりました。6600円です。お支払い方法は」
「カードで」
「タッチをお願いします。……はい、ありがとうございます。こちらレシートです。そちらのカウンターでお受け取りください。ありがとうございました」
「どももー♡ ……ヒフミン、あんた毎回私の注文の時に様をインターセプトするの止めなさいよ♡」
「それを削るなんてとんでもない!」
「昔のRPGのコマンドか♡ ほれ、ヒフミンの分のクレープ♡」
「わ、良いんですか!?」
「ヒモになるとか言ってたのにおねだりを遠慮するんじゃないの♡ 一緒に同じもの食べて同じもの見て楽しみたいでしょ♡」
「フミちゃんのそういう所、ズルいです♪」
「何年あんたと一緒に居て、何年あんたと一緒に居ようとしてるか分かってんの?」
「もー♪ もーもーもー♪」
「牛さんになっちゃった♡ なるほどこれがせんせーのやってたテクニック♡」
「あわわ、フミちゃんが先生から悪いオトナのテクニックを学んでますっ。やはり淫魔王!」
「一人でナゲット全部食べちゃおうかなー♡」
「ああっ、謝りますからそっちのも一口ください!?」
「一口と言わず半分持っていきなさい♡ 人生も半分こするんでしょ♡」
「……えへへっ♡ フミちゃんってばぁ♡♡」
「にしし♡」
「いやー良かった♡」
「凄かったですね! まさか前作で地味な場面しか無かったMr.ニコライさんが裏であんな活躍をしてたなんて!」
「しっかり前作と絡めつつ単なる焼き直しじゃない魅せ方なの上手い♡ めっちゃ引き込まれた♡」
「フミちゃんはどの場面がお気に入りでした?」
「やっぱ忍ペロ衆が駆け付けた所の大見得を切るシーンかなー♡ カッコよすぎて悲鳴上げるかと思った♡」
「カッコよかったですよねー! しかもあのポーズ、最初に忍ペログッズが出た時の缶バッジのポーズと同じなんですよ!」
「履修済み向けのファンムービーだ、なんて評論家たちは言ってるけど間違いなくファンムービーなんて枠に収まってない、既存のファンへ向けた最大限のサービス集だよねぇ♡」
「落ち着いたら二週目に行きたいですねぇ♪」
「今度はアズサちゃんやノノミさん、イブキちゃん辺りを誘ってみよっか♡ それぞれ推しのシーンでキャーってなりそうだけど♡」
「スカルマンさんやMr.ニコライさんはともかく、忍ペロさんはあのシーンがありますからねぇ……!」
映画館近くの喫茶店で喉を潤しながらの感想戦。
出てすぐはお昼時だったから喧騒をやり過ごしがてら話せる場所を求めて辿り着いたのがここだった。
いやー映画は大満足。
やはりモモフレンズ映画は良いぞ。
「そう言えば入場特典は全員一緒ですけど、物品販売の方で何か買ってましたね?」
「謎のモモフレンズ福袋ってやつ、取り敢えずある分五つ買ってみた♡ そのままシャーレに郵送頼んどいたけど、何が入ってるかにゃー♡」
「フミちゃんの事ですからレアモノでしょうね」
「どうかなー♡」
メロンソーダをストローでずぞぞと吸い尽くす。
からんと氷が音を立てた。
めっちゃ盛り上がったけどそろそろ午後二時前。
お昼時も過ぎて人も捌けた所だろう。
「お昼何食べたい?」
「例の品は夕方運び込まれるそうなので、移動距離を考えると近隣まで行っておきたいですね」
「なら東口の近くに美食研究会が星五つ付けてた回らないお寿司屋さんがあったし行ってみるか♡」
「ま、回らないお寿司屋さんですかっ!?」
「ウニとかイクラとか大トロとか食べちゃう?」
「あわわ……! 萎縮しちゃいそうです……!」
「ウソおっしゃい♡ 名うてのアウトローのくせに♡」
「そ、それは成り行きでして……」
「その後の襲撃はソロだったんでしょ?」
「あれはペロロ様への不敬を働いたものへの誅罰です」
「真顔でなんてこと言うの♡」
一先ず会計を済ませて電車で近くまで移動。
車窓から見える景色は今日も遠くでなんか爆発してる。
うーんキヴォトス♡
なんかパヒャパヒャしてた車掌さんに見送られて駅を出ると、ブラックマーケットが近いからかちょっとずつ特有の空気が漂ってくる。
とは言え治安は悪くない。
ブラックマーケットのすぐ外で問題を起こせばヴァルキューレとマーケットガードの両方に狙われるからだ。
その分探るような視線は多い。
まぁ実害は無いから放置だね。
堂々と街を歩き件のお寿司屋さんへ。
お客さんも落ち着いたのか待たずにすんなりカウンター席へと案内された。
ヒフミンは壁に掛かってるネタの名前と、その下の金額を見て目を丸くしていた。
時価って書いてるの初めて見たら戸惑うの分かる♡
「マグロの赤身とコハダ、あと今日のおすすめを二貫ずつください♡」
「わ、私も同じのでっ」
バリバリに緊張してるヒフミン可愛い♡
店員さんが熱いお茶を持ってきてくれたのを受け取り、ふーふー冷まして飲む。
香りが凄く良い。
甘みも有って良いお茶だねコレ。
握られたお寿司に軽く醤油を付けて頬張ると、マグロの旨味とお米の旨みが口の中で弾ける。
ウマー♡
コハダはそのままいただく。
酢締めになってるから噛む度に美味しさが溢れてくる。
ここでお茶を飲んでリセット。
今日のおすすめはいくら軍艦とホタテだった。
まずはホタテから、おほーっ、身がデカい!
醤油を付けていただきます。
んーっ、ホタテの甘みがすごい!
水っぽくなくて旨味がぎっしりとしてる。
いくら軍艦はそのまま一口でぱくり。
つぶつぶ食感と塩気が最高だね。
「ウマー♡」
「良い食べっぷりですねお嬢さん。お次は何を握りますか?」
「えんがわ、ブリ、中トロ、ウニをください♡ それとお味噌汁と季節の漬物も♡」
「私も同じのでお願いしますっ」
「はいよっ!」
その後も舌鼓をぽんぽこ。
流石はハルナさんが認めたお店、お米もお魚もサイドメニューも全部高いレベルで纏ってる。
最初は雰囲気に飲まれてたヒフミンも、緊張が解れるにつれてお寿司の美味しさに目を輝かせていた。
お腹いっぱい食べて会計を済ませる。
総額にヒフミンが慄いてたけど、普段モモフレンズグッズに使ってる金額よりも控えめだと思うんだけど♡
お財布をポーチにしまって指を絡め合い、ブラックマーケットのディスカウントショップ目指して歩き出す。
あの店、ブラックマーケットらしく仕入れ先は何処からでも問わない代わりに扱う物は全て本物という、マニア泣かせの店なのだ。
多少値は張る代わりに絶版になった本やイベントに使われた展示品なんかのレアモノもよく売られている。
好事家御用達であり裏稼業の報酬を現金に変える事も出来る、表裏問わず重宝されている店だ。
「久し振りだし色々見てみるか♡」
「掘り出し物があるかもしれませんね♪」
自動ドアを潜り店内へ入る。
内装はD.U.やミレニアムの一般的なディスカウントショップと大差ない。
大雑把にエリア分けされたコーナーに、所狭しと商品が並べられている。
高額な物はショーケースに、定価から半額までの金額で売られているものは普通に陳列され、十枚十円のTCGなんかは小さな箱に纏められている。
ゲームコーナーに置かれている筐体から出るカードなんかは筐体がサービス終了してしまえば観賞用以外の価値は無くなるので、当時五十万を超えていたキラッキラのラメ加工されたシークレットレアが五円で投げ売りされてたりもする。
モモフレンズ関係のもあるので、ヒフミンもたまにチェックしている。
こっちの人型兵器シリーズのカードは先生好きそう。
確かオフラインでも遊べるルールが有ったし、幾つか買ってってあげよ♡
買い物カゴにブースターパックとバラ売りレアカードと専用プレイマットとスリーブと保管用カードケースを入れて店内をうろうろ。
ちなみにヒフミンは真っ先にモモフレンズコーナーへ突撃していった。
機敏でおじゃる♡
雑貨コーナーを抜けて園芸コーナーまでやってくると、色んな花の香りが鼻をくすぐる。
そうだ、せっかくだしはーちゃんにも何か買っていこう。
何が良いかなー、と物色していると花の種の袋が目に留まった。
プリムラの袋。
これにしよっと♡
買い物カゴに入れて口説き文句も考えつつうろうろして、今度は駄菓子コーナーへ。
業務用の箱に入れられたままの駄菓子が並べられており、普段はなかなか目にする事のないものも売られている。
おっ、イカ風味かまぼこの醤油ダレ漬け。
これ好きなんだよねぇ♡
五十枚入りで七百円と結構オトク。
これは買いですな。
パチパチキャンディーも買っておこう。
エアーインチョコモナカ、イチゴ味のフーセンガム、ピリ辛魚肉ソーセージ、一口焼き芋羊羹、などなど。
あっという間に追加で持ってきたカゴが埋まる。
買い物カートにカゴを乗せてからから押していくと、両手いっぱいにペロログッズを抱えたヒフミンを見付けた。
「あ、フミちゃん!」
「お待たせ♡ もう良いの?」
「はい、お会計お願いしますっ♪」
「はいよー♡」
二人並んでレジへ向かう。
お寿司屋さんでは会計の時にあわあわしてたのに、ペロログッズの事となるとめっちゃ堂々とゴチになろうとする姿勢がもう清々しい。
「補習授業部のみんなのお財布、ペロログッズ買う時の勘定に入れてないでしょーね♡」
「どきっ。い、いやーなんのことだかー?」
「よし、帰ったら足つぼ♡」
「ひぇぇ!?」
既に何回かやってるなコイツ。
全く、私以外の人に迷惑かけすぎたらダメでしょうに。
まぁやり過ぎたらコハル裁判長が何とかしてくれるか。
頼もしさが強い♡
ぴぴっとカードをかざして会計を済ませ、マーケット便でシャーレまで郵送をお願いする。
ヒフミンのペロログッズも一緒に段ボールに詰めてもらって先生に受け取りをお願いするモモトークをぽちっと。
すぐに既読が付いて了解のペロロスタンプが返ってくる。
配信ではああ言ってたけど私のモモトークは別枠でアロナちゃんが管理してくれてるらしく、すぐ先生に伝えてくれている。
帰ったらイチゴショート作ってあげよ♡
「私のペロロ様も一緒ですか?」
「受け取るって用事で私に逢いに来てくれるでしょ♡」
「用事が無くても逢いに行きますよ♪」
「モモフレゲリラライブと重なっても?」
「……あ、あはは♪」
「こいつぅー♡」
「ひゃあー♪」
ほっぺたをうりうりしてやる。
喜ぶんじゃないっつーの♡
さて、用事は終わったけどどうしようかな?
このまま何事もなく帰れたら良いんだけども。
「あ、それならちょっと行きたい所が」
「ん?」
「来る途中電車の中で爆発が見えたじゃないですか」
「あー、あったねぇ♡」
「どうやらグワラゴワガキィーンヘルメット団が他のヘルメット団を傘下に収めようと抗争してたらしく」
「悪球打ちしてそうなヘルメット団♡」
「たまたま近くをお散歩してたハルカちゃんと先生が市民の方の避難誘導をしている際に流れ弾がお店の看板に当たり、落ちてきた破片から先生を庇ってハルカちゃんが軽傷を負ったそうです」
「…………へぇ」
先生からはモモトークで何も伝えられなかった。
それは本当に特筆するまでもない軽傷で済んだからなんだろう。
アロナちゃんバリヤーがあるとは言えその防御力は完璧ではない。
だからこそ庇ったはーちゃんには花丸満点を差し上げたい。
帰ったらいっぱい褒めてあげよう。
でも、それはそれとして。
「フミちゃんのスタイルはちょっと特徴的ですから、今回はこれを使ってください」
「これは?」
「ネットワークの方からいただきました。フミちゃんが発送手続きしてる時ですね」
ヒフミンから軽機関銃を受け取る。
マガジンは80発、口径は10mmか。
銃身は短いけど取り回しは良さそうだね。
「それとこれも」
そう言ってヒフミンが差し出したのは覆面代りの不透明なレジ袋。
目の部分が切り取られ、額にはマジックで8と書かれている。
「遂に私もデビューかぁ」
「座標はスマホに送りますね」
「ほいさ」
「で、フミちゃん。何本まで行きます?」
「んー……六かな。利き腕が動けば充分じゃない?」
「あはは、間違って首の骨折らないようにしないといけませんね♪」
「……ん? ヒフミン、はーちゃんといつの間に仲良くなったん?」
「こないだアビドスに行った時にお風呂もテントも一緒でしたので、色々と腹を割ってお話しまして♪ お互いの馴れ初めやフミちゃんのカッコいい&可愛いエピソードでキャッキャしました♪」
「なるへそー♡ 仲良しさんでヨシ!」
「あ、便利屋のみなさんもガチギレでヘルメット団鎮圧に向かったそうです。ちょうど挟み撃ちに出来ますね」
「はーちゃんめっちゃ恐縮してそう♡ ま、私らも治安維持のお仕事に行きますかね」
「大義名分は大事ですからね♪」