もしもシャーレにヒモを養う適性の有る娘が応募してきたら 作:一ノ瀬 崇
五十六話目
“……いや、うん。仲睦まじいのは良い事だし、非常に目出度い報告ではあるんだけども”
「あわわわ……ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……!?」
「めっちゃ久し振りに聞くはーちゃんの謝罪連打♡」
“でも流石にセリナのお世話になっちゃうくらい激しいのはちょっと控えて欲しいと言うか、周りのみんなも心配しちゃうからね”
「予想以上に盛り上がっちゃって♡」
うつ伏せの状態で両手を合わせてごめんねと視線を向ける。
医務室のストレッチャーに乗せられて、身動きの取れない私は背後に立つセリナさんからのプレッシャーから逃れるように先生へ意識を割いていた。
大満足と大好評で迎えられたはーちゃんとの初夜。
資金と技術とデータを惜しげもなく注ぎ込んで完成させた双頭先生棒の活躍によって、私とはーちゃんは文字通り昇天しかける程の幸せを享受していた。
しかしながら当然その反動も大きく。
キヴォトス人の耐久力が悪さをして朝まで繋がり幸せいっぱいになっていた私とはーちゃんは、言語を忘れて快楽に揺られる愛人形となっていた。
念の為にと用意しておいた先生への緊急信号のボタンを押せたのは奇跡かもしれない。
ブザー音を受け取り執務室から急行してくれた先生が見たのは、エンジニア部の最新開発物で深く繋がり淫水を垂れ流しながら掠れた嬌声を上げて抱き合い舌先を擦り合わせる女の子二人の姿でしたとさ。
「いやまぁ、そういう事もあるとは構えてたつもりだけども。二人ともまだ一年生でしょう? 若い内からドハマリしちゃうのはちょっとマズイんじゃないかしら……?」
「あぅあぅ……アル様にご心配をおかけしてしまい、どう償えばいいか……」
「償いとかは別に気にしなくていいわよ。ただ、今後はもう少し早めに切り上げて、少なくとも自力で歩ける程度には抑えてもらえると、その、ありがたいわね?」
「は、はいぃ……」
顔を真っ赤にしたアルさんと顔を真っ青にしたはーちゃんの対比がなんか面白い。
と、そんな気配を感じ取ってかほっぺたをムツキさんとカヨコさんにもちもちされる。
「にゅわー♡」
「フミ、ちゃんと反省してね」
「くふふっ♪ 流石にハッスルしすぎじゃない?」
「はーちゃんへの好きが止まらなくなりまして♡」
「気持ちは解るけどー、脱水で倒れちゃうのは危ないよ?」
「しばらくは禁欲生活だね」
「ひょんなー♡ うひっ♡」
「ダメですからね」
動かない身体を左右にくねくねして抗議をするも、セリナさんのお叱りぺちんで沈黙する。
軽くお尻を平手打ちされただけなのに、腰がガクガクになって力が抜ける。
あっ、先生が生唾飲み込んでる♡
みんな居なくなった後でこっそり戻ってきて、そのまま私をいっぱい使って良いんですよ♡♡
オモチャなんかで満足してるお子ちゃまな私に大人の本気を教え込んで先生専用に躾けて良いんですよ♡♡♡♡
腰ガクガクで抵抗出来ない愛人形に、幸せミルクいっぱいとぷとぷ注いでください♡♡♡♡
そんな風に瞳にハートマークを浮かべて先生へ秋波を送っていると、セリナさんが溜め息を吐いて問い掛ける。
「フミさんを縛り付けたままみなさんで囲炉裏焼きでも楽しみましょうか?」
「ゆるちて!」
ちたぱたと足先を振って許しを乞う。
あの声色のセリナさんはガチでやるのだ。
先生も咳払いして視線を逸らす。
残念ながらラブラブお嫁さんごっこは延期です。
かなしみ♡
「改良案や使用感は後で纏めてウタハさんに送っておかないと♡」
“取り敢えず緊急用に留め具はワンタッチで外れるようにした方が良いかもね”
「しっかりホールドしつつ外す時は簡単に外せるように、ですかねぇ♡」
「……先生?」
“いやいや、もうこうして現物がある以上は止められないからさ。それならいっそコントロールする側に回った方が最終的な被害は少なくなるんだよ”
先生の説明にセリナさんもそういうものかと納得する。
さっすが先生♡
という訳なので双頭先生棒の開発は進むのであった。
次は疑似みるくとぷとぷ機能を付けたい所さん♡
オモチャでお互いに仲良しとぷとぷを楽しみつつ本物の大人みるくで先生に解らせされちゃうとか最高なのでは?
夢が広がりんぐ♡
「オモチャで満足しちゃう前にせんせーの本物棒で解らせされたいですにゃー♡♡」
“卒業まで待ってね!”
「じゃあ、私は来年に解らせられちゃうかな」
“カヨコさん!?”
「きゃーカヨコさんの出馬宣言♡」
「ちょ、カヨコ!?」
「くふふっ、ずるーい♪」
「あわわわ……」
「……先生? 節度あるお付き合いをお願いしますね?」
“アッハイ”
「という訳でフミちゃん復活♡」
「ご迷惑をおかけしました……」
それから二日ほど。
ようやく完治したので無事二人で通常業務に戻れる事となった。
いやぁまさか一日で復活出来ないとは思わなかったね。
でも今回のでちょっと身体が頑丈になった気がする。
より引き締まったと言うか身体の密度が増したと言うか。
まぁ元気なのは良い事だからヨシ!
“大丈夫なら良いけど、今後は気を付けてね?”
「は、はい……先生にもご心配をおかけしてしまいまして……!」
「将来せんせーに抱かれた時に向けて修行しないと♡」
“そこまで抱き潰す予定は無いけども”
「ほんとぉ? 我慢出来る?」
「わ、私で良ければ自由にお使いください……♪」
“くっ、欲望には屈しないよ!”
「いつでもどこでも♡ いっぱい使ってね♡」
「私もフミちゃんも、先生の雌ですから……♡」
“自信無くなってきた!”
「我慢しないで♡」
「お好きな時にどうぞ……♡」
“静まれ我が半身!”
そんな風にきゃっきゃと触れ合ってからデスクに目をやると、普段とは少し違う景色が。
「あれ?」
「どうかしましたか、フミちゃん?」
「書類が無い♡」
“あぁ、今日は連邦生徒会で会議があるからね。帰りにもらう事にしたんだよ”
「会議?」
「ですか?」
二人揃って小首を傾げる。
はて、何も聞いてないぞぃ。
聞けば私たちが腰へこドールと化していた時に、各地で謎のエネルギーが観測されたらしい。
不思議なのは計測出来ているのに現地では何も異常が見られなかった事。
何らかの機械が稼働してるとか地下でマグマが動いてるとか、そんな兆候も無くただ計器が異常値を示すだけ。
この不思議な現象への対応と現状報告を兼ねて、各学園の代表が集まり連邦生徒会で会議を行うとの事。
連邦生徒会からリンちゃん先輩が迎えの車を回してくれるらしい。
はぇー、知らない間にそんな事が。
“なので今後は程々にね? 二人とも頼りにしてるから”
「はぁーい♡」
「ご、ご迷惑をおかけしました……!」
“まぁ、二人がラブラブなのは良い事だけどね”
「せんせーも今度混ざっちゃう?」
「せ、先生でしたらいつでも……♪」
“今度ね! 寝かさないからね!”
「きゃー私のはーちゃんが寝取られちゃう♡」
「わ、私のフミちゃんが先生に……!? でも私も先生に……!?」
「あ、はーちゃんにはまだ早かったか♡」
“すごいぐるぐるおめめ! 大丈夫だからね、よーしよーし良い子良い子”
「良い子良い子♡」
「えぅえぅ……♪」
「はーちゃん可愛いなぁ♡」
“こんなに可愛い二人がお嫁さん候補とか、私前世で銀河救った?”
「銀河警備隊たいちょー説♡」
先生と一緒にはーちゃんを撫で回すと、ぐるぐるおめめが落ち着いてとろけるようなだらしない笑みが浮かんだ。
笑うの下手っぴなはーちゃん好き好き♡
可愛らしいふにゅふにゅほっぺたをもちもちしていると、執務室へ二人の生徒が姿を見せた。
くたびれたヴァルキューレの制服を着て円形のシールドとアサルトライフルを手にしている。
……ふーん♡
“あ、お迎えの子かな?”
「お迎えに上がりました、先生」
「ここから先は、連邦生徒会の本部であるサンクトゥムタワーまで私たちが警護いたします」
“ヴァルキューレが?”
「はい、シャーレの非常ヘリポートにヘリを用意しております」
「……ならついでに、持ってきて欲しいって言われてた機密文書も一緒に運んじゃいますか♡」
ヴァルキューレの子を見て首を傾げている先生。
うーん、アウト♡
先生のデスクに移動しつつ、見えない角度でスマホをタップ。
送信するのはコードレッド。
非常事態発生だ。
カモフラージュに幾つかの書類を手にして先生に渡しつつはーちゃんに目配せ。
以心伝心、私の考えを読み取ってくれたはーちゃんは一つ頷いてさり気なく先生の手を引いた。
「で、でしたら屋上までお見送りしますね……」
“うん、ありがとう”
「ついでに上階の第三会議室でデータも受け取って行きましょうか♡ 早めに財務会計の処理したいそうですし♡」
先生は手元の書類に貼られた付箋を見て少し目を見開いてから私に微笑む。
イチャイチャ絡み付いてる風を装って左右を私とはーちゃんで固めながらロッカーから装備を取り出して執務室の鍵を掛けて、エレベーターで上階へ。
護衛の子二人も連れて第三会議室のプレートが掲げられた部屋へ入るとカーディガンを羽織って伊達眼鏡を掛けたアツコちゃんがバインダーを胸に抱えたまま出迎えてくれる。
この短時間で見事な変装だ。
どこから見ても大人しい事務方の生徒にしか見えない。
「あ、先生。こちらに資料データを用意しておきましたよ」
“ありがとう、結構量多いんだね?”
「ふふっ、提出をサボっていたからですよ? 今後はもっとこまめに整理をお願いしますね」
“あはは……善処するね”
「やらなさそうですねぇ……」
そんな風にほんわかふわふわと会話をして空気を弛緩させた所で部屋の入り口付近に潜んでいた影が飛び出す。
「っ!?」
「ぅ!」
口を押さえられて声を上げる事も出来ずに制圧される二人。
サオリちゃんとミサキちゃんが二人を組み伏せた所でヒヨリちゃんとアツコちゃんが銃を奪い通信装置を剥ぎ取っていく。
流石アリウススクワッド、手際が良い。
制圧と同時にスマホが震える。
インカムをセットしたらモエちゃんの声が届いた。
『屋上にヘリ確認。ぶっ放しちゃって良いの?』
「派手にやっちゃって♡」
『くひひ♪ それじゃレッツファイヤー!』
子ウサギ公園から発進したアタックヘリがシャーレビルを舐め上げるように飛び、屋上に止まっていたヘリに攻撃を仕掛ける。
届いてくる爆音から、相当派手に撃ちまくっているらしい。
と、窓の外で残骸と化したヘリが墜ちていく。
同時に通信が入った。
『こちらRABBIT2、敵性ヘリの撃墜を確認した』
「褒めてつかわす♡ キャンプRABBITは帰投した後、電子戦に切り替えて支援♡ 他のRABBIT隊員は屋上に降下して第三会議室へ来るよーに♡」
『RABBIT1、了解しました』
『こちら便利屋68、カヨコ。シャーレ付近の敵性存在を確認、現在正面入り口で自警団を中心に防衛戦を展開』
「こっちはせんせーを無事警護中♡ RABBIT小隊と合流したら階段で下へ向かいます♡」
『了解。各階の防衛システムを先生に起動させて時間稼ぎしてもらって。それとこっちで民間人一人を保護してる』
「民間人?」
『ソラだよ。今はムツキが側で落ち着かせてる』
「おっけー♡ それじゃまた後で♡」
思いの外相手の動きが鈍い気もするけど、いったい何を企んでいるのやら。
大して間を置かず再び通信が入る。
『RABBIT小隊、目標のドアに接近』
「入って大丈夫♡ みんな、RABBIT小隊が来たよー♡」
一呼吸置いてドアが開き、ミヤコちゃんサキちゃんミユちゃんが入ってきた。
うむうむ、練度も上がって特殊部隊らしくなってきた。
“……うん、確かに見覚えの無い子だね。生徒データにも一致する子はいないかな”
猿轡を噛まされ後ろ手に縛られたヴァルキューレに扮した侵入者二人の顔を検める先生。
仕事はうっかり忘れる事が多いのに、生徒の顔や名前は絶対に忘れない。
そんな先生だからこそ、最初に首を傾げていたのが決定打になった。
「生徒全員覚えているのか……?」
“勿論。みんな私の大切な生徒だからね”
「だからこそ、記憶に無い者は強く違和感を覚えるのか」
サオリちゃんが先生の記憶力に感嘆の息を漏らす。
人の顔を覚えるのって才能が必要なんだよね。
ともあれ戦力は揃ったのでみんなで地下を目指す。
目的はクラフトチェンバーのある区画だ。
侵入者が誰であれ、ここシャーレで最も手に入れたいものはアレ以外に無い。
おおかた、先生を拉致して権限を奪いクラフトチェンバーを使ってキヴォトスを掌握したいのだろう。
先生自体は如何に権力を持っていても生徒に害を与える選択は絶対にしないから、生徒に対する人質以上にはならない。
……いや、流石に飛躍しすぎかな?
そもそもクラフトチェンバーについては私とリンちゃん先輩くらいしか詳細を知らないはず。
これまでの先生の活動から不可思議な物資調達の痕跡を発見したとしても、クラフトチェンバーの存在に思い至るにはピースが足りないからね。
となると目的は別の事だろうか。
『キャンプRABBITより通信。侵入者はカイザーグループだね。次々にカイザーPMCが集結してるよ』
「カイザー? このタイミングで……?」
「フミ、考えるのは後だ。一先ず先生を目標地点へ」
「ん、そだね♡ では諸君、目標地点はスマホで送った通り。先頭はアリウススクワッド、中央に私がシールドで先生の盾に、後方警戒と支援はRABBIT小隊に。そこの二人は二階まで降りたら、窓から投げ捨てて外の植え込みにでも転がしておこう♡」
サオリちゃんの進言を受けて進む事に。
あと会話内容から余り情報を与えないようにも注意しておく。
二階に放置するのはそのまま一階から脱出したと思わせる為だ。
クラフトチェンバーの所在地を知られる訳には行かないからね……それにしても、いったい何を狙っての襲撃なのやら。
先生の身柄を抑えて出来るようになる事と言えば……あ、もしかしてサンクトゥムタワーの制御権?
確か先生の就任直後シッテムの箱の起動を以てサンクトゥムタワーが制御を取り戻した、とリンちゃん先輩が言っていた。
オーパーツであるシッテムの箱の存在は先生と共に知れ渡っている。
状況証拠と併せて考えれば、先生とシッテムの箱があればサンクトゥムタワーの制御権を手に入れられる、と気付いてもおかしくはない。
ついでに連邦生徒会に関する機密情報でも抜ければ万々歳だ。
「……なるへそなるへそ」
“お、名探偵フミたんが何か嗅ぎ付けたみたいだね”
「いやぁ、推理と言うには証拠が足りてないですけど♡ と言う訳で捕虜のお二人さん♡ ちょぉっと失礼……そっか、各学園で動きがあったなら今日の会議に合わせて計画を練るのも納得ですね。生徒役の人員の練度が低いのは気になりますけど……あぁ、せんせーは生徒に対して猜疑心を抱かないからですか。大方ヘリに乗せてしまえばどうとでも出来ると考えたんでしょうね。自警団の結成は想定外でも元が不良生徒なら脅威とはなり得ないと。ここまで屈強な精鋭が揃ってるとは思いもしなかったでしょうね……便利屋68にRABBIT小隊にアリウススクワッド。私が信を置く事の意味も解らずに仕掛けて来たのは悪手でしたね」
私が覗き込むように目を合わせて喋ると、二人の顔色がどんどん悪くなっていく。
もごもごと口元が動いて声にならない呻くような息が漏れている。
そんなに怖がらなくても良いのに♡
「いや、普通に怖いからな?」
「サキちゃんひどい♡」
「下手に暴行を伴わない分精神的な重圧が凄いんだよその尋問……尋問?」
「私は確認しただけなんだけどナー♡」
“フミに隠し事が暴かれるのは怖いかな”
「こないだ夜中に雷鳴ってた時にこっそりミサキちゃんと添い寝してた事とか?」
「なっ、ちょっ!?」
「は?」
「そうなのか、ミサキ?」
「ほぇー、ミサキさんやる事やってるんですねぇ」
“わぁ藪蛇。あとアツコ、顔が怖いよ?”
「当然私とも添い寝してくれるんだよね?」
“よぉーし、じゃあ今度みんなで一緒に雑魚寝しよっか!”
「私は二人っきりでも良いよ?」
“アツコはみんなと一緒は嫌かな?”
「……ズルい聞き方」
ぽこぽこと軽く握った手で叩くフリをするアツコちゃん。
先生はそれを見てヒャーと身体を竦めてみせる。
なにその動き可愛い♡
ミサキちゃんは耳を赤くしてそっぽを向いてるし、サオリちゃんとヒヨリちゃんは警戒しつつもちょっと楽しみな気配が漏れてる。
前衛四人がそんなにピリピリしてないって事は少なくとも階下に人は居ないね。
ゲリラ戦と言うか屋内や市街地ではスクワッドの練度が頼もしい。
使える遮蔽が多ければ多いほど輝くね。
そうして階段を降りていくと一階の銃撃戦の音が聞こえ始める。
まだまだお相手も元気な様子で、景気よく爆発音が響いてくるのは良いんだけど余り建物を壊さないで欲しいナー。
「こちらぽんぽこたぬきさん♡ 現在四階まで降りてきたよ♡」
『あははっ、なにその可愛いコードネーム♪ こっちはアルちゃんが獅子奮迅の大活躍だよー』
『フミに教わった跳弾でスコア荒稼ぎしてるわよー! あっはっは、私たち便利屋68に挑むにはまだまだ実力不足みたいね!』
『アル、はしゃぎすぎ。正面は完全に抑えてあるけど……外壁を爆破されて侵入されたらちょっと厄介かな』
「その辺は電子制御で通路を封鎖したり迎撃システムで対応するしかないですね。キャンプRABBIT、反応は?」
『二箇所センサーに掛かったけど即座に防火シャッターと防弾隔壁が降りたね。先生の方で何かやってる?』
“うん、アロナに手伝ってもらってる。今の所中央への侵入は無いね。あくまで遅滞処理しか出来ないけど……”
『それは大丈夫♪ 災厄の狐にデータ送ってるから遊撃部隊が外から処理してる』
『私はあくまで先生の為に動いているのをお忘れなく。考え違いを起こすようなら……教育しなければなりませんわね?』
「きゃーワカモさん頼りになるー♡」
“流石ワカモだね! 外は任せちゃって良いかな?”
『……ウフフ、ええ、貴方様のお望みのままに♡』
「私への言及が無くてフミちゃんしょんぼり♡」
『終わったら撫でてあげますから』
「やったーワカモさん大好きー♡」
情報を交換しながら階段を下りる。
二階まで来ると流石に戦闘音が激しい。
消火扉の横に捕虜の二人を連れていきうつ伏せに寝かせて両脚を後ろ手に縛った紐と結ばせて逆エビ固めにしておく。
これで自由に動き回る事は出来ないだろう。
おしっこしたくなったら我慢してね♡
ついでにヘッドホンを被せて音楽を流しておく。
スズミさんセレクションの名曲リストをループ再生だ。
これで階段を下りた私たちの会話を聴かれる心配は無い。
“拘束するの手慣れてるなぁ……”
「将来のプレイ用に♡」
“私に縛られる趣味は無いよ?”
「でも縛られて抵抗出来ない所をぱんぱんして解らせる監禁調教ごっこは好きですよね?」
“何で知って……!? 黙秘! 黙秘します!”
「……ふーん。やっぱりそういうのが好きなんだ。ヘンタイ。そんな趣味に付き合ってくれる子なんて居ないでしょ。まぁ私はもう先生に捕まえられちゃってるから好き勝手されても文句は言えないんだけど。ASMRでもノリノリで演技してたし、そんな仄暗い性癖を満たす為の道具として扱われるのも仕方ないかな」
「わぁ、ミサキさんが高速詠唱を」
何やらミサキちゃんがテンション上げ上げになってた。
ヒヨリちゃんが若干引いてる♡
ともあれ一先ず第一目標は達成したので、次は地下へと向かおう。
両手でシールドを展開して先生への射線を遮りつつ階段を踏んで行くと自警団のみんなの姿が見えた。
ひどい怪我をしてる子は居ないようで一安心。
「よーし♡ はーちゃんごーごー♡」
「はい、蹴散らします……!」
最愛にして最鋼の鉄砲玉ことはーちゃんを前線に送り出し正面入り口側を完全制圧してもらおう。
その間に私と先生でクラフトチェンバーの様子も見てこないとね。
「ワカモさん、アリウススクワッドと交代でこちらへ。スクワッドのみんなは外壁から侵入しようとしてるのを襲撃して、RABBIT小隊はここで自警団の援護を。何か有った場合は臨時指揮官を便利屋68のカヨコさん、副官をRABBIT1として事態に当たる事。質問あるひとー♡」
『すぐに向かいますわ』
「了解した。行くぞ」
「はい、リーダー!」
「ふふ、実戦は久し振りだね」
「了解。さっさと済ませよう」
『私なんだ……まぁ、任された以上はしっかりやるけど』
『カヨコの判断力は信用して良いわよ!』
『便利屋の頭脳だもんねー♪』
「了解しました。キャンプRABBIT、外の様子の逐次更新をお願いします」
『おっけー、やっとく♪』
「先生とフミはどうするんだ?」
「二人で大丈夫……?」
「んむ♡ ちょっくら暗躍♡」
“ここは皆に任せるね”
「お二人とも、ご武運を」
という訳で途中ワカモさんと合流して普段とは違う階段から地下へ。
先生の赴任時に地下へワカモさんは忍び込んでいたらしく、どうやら初見なのは私だけらしい。
こんな所でも本妻マウントを取ってくるなんて……流石ワカモさん♡
「後で撫でてあげますから今は集中なさい」
「はぁーい♡」
“ワカモママ……!”
「あ、貴方様? その、お気持ちは嬉しいのですが今は……!」
“あはは、ごめん。二人が居るならどんな危険も乗り越えられると思ったら、つい”
「油断してはいけませんよ?」
めっ、と人差し指を先生のおでこに向けるワカモさんだけど、尻尾が物凄い勢いで荒ぶっている。
最愛の先生にそんな事言われたら、まぁそうなる♡
薄い青を基調とした廊下を抜けて階段を降りていくと、小さな執務室のような場所へと出た。
デスクに給湯室、簡易ベッドも付いている。
部屋の壁にはスイッチが幾つも有って、作動させると分厚いシャッターが降りて籠城出来るようになっている。
セーフハウスとしての役割もありそうだね。
そんな室内に一つ、似つかわしくないオブジェがある。
よく分からない装置が鎮座していて、その中央には謎の長方形の金属らしきものが浮いている。
なんじゃこれ。
“これがクラフトチェンバーだよ”
「ほぇー」
見た限りでは全く操作方法が分からない。
コンソールも無いし、ミレニアムの現代アートと言われたら信じそうな佇まいだ。
これにシッテムの箱からアクセスして色々な物資を作り出せる。
用途によっては本当に世界を変えられるよねコレ。
“一先ず無事みたいだね。……おっと、リンちゃんに連絡を入れておかないと”
先生がシッテムの箱を操作してメールを送る。
そう言えば連邦生徒会で会議やってるんだっけ。
先生が居ないと話纏まらなさそうだなぁ……リンちゃん先輩たちだけじゃ各学園の濃い面々の制御は出来なさそうだし。
マコトさん辺りは早々に帰ってそう。
「それでせんせー、これからどうします?」
“先ずは情報を集めたいかな。地上の様子も気になるし”
「私とフミは警戒ですわね。万が一此処へ踏み込まれた時の事を考えると、先生の側を離れる訳には行きません」
「トンデモ戦力のワカモさんを動かせないのはもったいないけど、私一人だと火力不足ですもんねぇ♡ いたしかゆし♡」
“まぁ、二人には悪いけど私に侍っててもらおうかな?”
「貴方様? 余り私たちの理性を削らないでくださいまし。全て片付いたらお望みのままに貪って頂いて構いませんので」
“アッハイ”
「にしし♡ ワカモさんが頼もしくてカッコいい♡」
めっ、とおでこをつんつんされて先生は深々と頭を下げた。
だんだん私に似てシリアスが保たなくなってきたね?
とは言えクラフトチェンバーの機密さから余人を交えたくないのは確かだ。
チェスのクイーンみたいに何でも出来るワカモさんがおかしいだけとも言うけど。
“お、リンちゃんから返事が……あぁ、うん。会議は流れちゃったみたいだね”
「知ってた♡」
「貴方様が居ないと烏合の衆ですから」
“みんな個性派だからね……”
「オブラートで銃弾防げそう♡」
「貴方様の心配りはいつも素晴らしいですわ」
“自警団のみんなはどうかな……あぁ、そうか。アロナ、発信元を辿られないようにダミーの地点を経由して接続をお願い。……うん、ありがとう。侵入は防いでるけど物量が凄くてまだまだ終わらなさそうだね”
「カイザーの戦力が集まってますねぇ……さて、なんで今動いたんでしょうかね?」
“ここまで大々的に動くって事は余程差し迫った事情があるのか、それとも満を持しての行動なのか。どうやら襲撃はシャーレに対してのみ行われているみたいだけど。今日の会議での議題とは関係ないのかな?”
「んー……ちょっと不確定な事が多すぎますね。むしろこの混乱に乗じて部隊を動かしたんじゃないでしょうか」
「そうですわね。キヴォトス各地での計器異常は確かに捨て置けない事象ですけれど、もっと効果的で分かりやすい方法は幾らでも思い付きますわ。様子見、と言う選択肢が生まれる時点で陽動としては弱いですわね」
“やっぱりそうだよね。となると前々から準備していた所にちょうど良く今回の事が重なって、カイザー側も動くべきだと判断したのかな?”
先生とワカモさんが色々検討してくれるので、なんだか私まで賢くなった気分。
そこでふと思い出す。
ヴァルキューレの制服と装備を身に着けていた子たちは、どうやってそれらを手に入れたんだろう?
随分と高性能なモデルのアサルトライフルを持ってたけども。
……おやおやぁん?
「せんせー♡」
“うん?”
「フミちゃんちょっと嫌な想像がありまして♡」
“嫌な想像かぁ〜……お聞きしましょう”
「さっきのヴァルキューレに扮した子たち、結構良い装備してましたよね♡」
“そうだったの?”
「そうなんです♡ 最新では無いけど安定した性能のちょっとお高い量産型♡ でも、ヴァルキューレって予算カツカツだって色んな所で聞いてたんですよ♡」
“じゃあ装備の買い替えや弾薬の補充にも苦労するかもしれないね。……うん?”
「なるほど、装備の入手先ですわね?」
「ワカモさんせいかーい♡ 前にカイザーグループとヴァルキューレで癒着だなんだと報道されてましたよね♡」
“……ヴァルキューレからカイザーへ情報が漏れたのか。各学園の動きや当日の警備状態、更にはヴァルキューレ生徒の差配まで掌握済みって事だね。となると……ヴァルキューレより上、防衛室に繋がってる子が居るのか”
先生が眉間に皺を刻む。
経緯はどうあれ悪い大人に踊らされている生徒の存在が浮かび上がってきたからだ。
それにしてもシャーレを狙ってくるとは中々大胆な手を打ってくる。
バレたら各学園の一部が先走った、って名目で精鋭を送り込んでくるだろうに。
先生の確保は勿論、後々色んな事に便宜を図ってもらえたり個人的にお礼をたっぷりされちゃったり、と夢いっぱいウフフプランを思い描く生徒も少なくない。
いやまぁ、それはそれで別の騒動になるんだけど♡
“一先ずは地上を支援しつつ各学園との連携を密にしないとね。欺瞞工作をしながらだから少し時間はかかるけど”
「じゃあ私は陣中食でも作りますか♡ ワカモさんはせんせーにくっついて今の内にセンセニウム摂取しておいてください♡」
「……摂取はともかくこのワカモ、傍にお仕え致しますのでなんなりとお申し付けくださいませ」
“ありがとう。早速尻尾をもふもふさせてもらおうかな!”
「貴方様!?」