もしもシャーレにヒモを養う適性の有る娘が応募してきたら   作:一ノ瀬 崇

83 / 84
五十七話目

 時刻は夜七時。

 凡そ八時間に及ぶ大攻勢を弾き返してようやく交代で休息を得る事が出来て、しばしの時間が流れた。

 自警団のみんなには頭が上がらないね。

 

 

「んぁ〜……いいわぁ、そこ、そこよぉ……」

「やんっ♡ アルさん艶めかしい♡」

「うふふ〜……魅力にクラクラしちゃうでしょぉ……♪」

 

 

 執務室のソファーに寝そべりぐてーっと脱力するアルさんの背中や肩を揉みほぐすと、なんだかえっちな声が漏れ出てくる。

 普段が元気いっぱいアウトローだからか、今みたいにダウナーお姉さんな雰囲気になると途端にインモラルなドスケベアルちゃん社長になっちゃうの良いよね♡

 一日中布団の中でイチャイチャ退廃的な過酷したい♡

 

 

「本当にお疲れ様でした♡ アルさんを始めとしてみんなが居なかったらどうなっていたか♡」

「ふっふっふ〜、報酬は弾んでもらうわよぉ〜……んぁぁ〜、効くわぁ……」

「アルさんおっぱいも大きいから凝りが強い♡」

「これで先生を籠絡しちゃうわよぉ〜……♪」

「やーん♡ アルさん傾国♡」

「あぁ~ん……♪ 良い、良いわぁ……♪」

「せくちー過ぎてムラムラしちゃう♡」

 

 

 肘で肩甲骨の下をごりごり押していくと、アルさんから幸せそうな声が上がる。

 すっかりお疲れモードだ。

 一人で撃墜スコアを荒稼ぎしてたらしい。

 私のお家芸だった跳弾を会得してどの角度からでも爆発する弾を撃ち込めるようになったスナイパーとか怖すぎ♡

 はーちゃんは向かいのソファーで小さく丸まってうとうと、ムツキさんはシャワーを浴びに行って、カヨコさんははーちゃんに優しい目を向けつつのんびりお茶を啜っている。

 スクワッドのみんなは仮眠中、RABBIT小隊のみんなは食堂でご飯中だ。

 ワカモさんは執務室奥の仮眠室で先生と添い寝中。

 自警団のみんなは交代でお風呂に行ったりご飯を食べたり仮眠を取ったりとリフレッシュ中だ。

 今日はみんな頑張ったからねぇ。

 全部終わったら何かリクエストを受けて色々作ってあげよう。

 

 

「フミも隙を見て休みなよ。なんだかんだ気を張ってたんでしょ」

「じゃあカヨコさんとむぎゅむぎゅ添い寝したいですにゃー♡」

「ネコミミカチューシャ付けてね」

「ここぞとばかりに欲望を前面に♡ きゃーカヨコさんに弄ばれちゃう♡」

「尻尾のアクセサリーもあるらしいんだけど」

「モモイちゃんとミドリちゃんが付けてたやつ♡」

「今度どこで買ったのか聞いてみようかな」

「本格的にネコにされてしまう♡」

「それかあのウェーブキャットパジャマでも良いよ」

「かなりハードル下がってる♡」

 

 

 最近カヨコさんがネコ不足であやしい。

 ウェーブキャット抱き枕貸してあげようかな?

 肘掛けに肩肘突いて頬杖突きながら、反対側の手で優しくはーちゃんを撫でている姿は我らがアルちゃん社長よりアウトローな雰囲気あるよね。

 コレを言ったらアルさんがしょぼーんってしちゃうから言わないけど。

 

 

「……ふぅ。ありがとフミ! なんか身体が軽くなったわ!」

「お疲れ様でした♡ 日頃の凝りも纏めてほぐしたのでしばらくは身体ぽかぽかするかも♡」

「じゃあ後でシャワー入らないとね。フミは疲れてないかしら?」

「癒しのハグが欲しいです♡」

「良いわよ!」

 

 

 むぎゅっと正面からアルさんに抱き締められる。

 おほーっ♡

 おっぱいがいっぱい♡

 やわやわふにふにで最高ですな♡

 抱き締め返すと優しく頭を撫でてくれた。

 どんどん好きになっちゃう♡

 

 

「アルさん好き好き♡」

「うふふ、私も好きよ! 毎日美味しいご飯をありがとね、フミ♪」

「どういたしましてー♡」

「ん〜、フミって体温高くて抱き枕にちょうど良いわね。でもあれだけ食べてるのにぷくぷくしてないのは何でかしら?」

「にょわー♡」

 

 

 背中に回された手で脇腹をむにむにされる。

 くすぐったくてひゃんひゃんしちゃう♡

 そんな私の反応が面白いのか、アルさんは両手で色んな所をさわさわもちもちしてくる。

 

 

「やーん、ゆるちて♡」

「日頃私をもちもちしてるお返しよ♪ それにすべすべお肌なんだし良いじゃない♪」

「うひぃー♡」

「ほっぺたももちもち〜♪ 癖になるわね!」

「アル、次私ね」

「予約されてしまった♡」

「このほっぺたの感触を活かしてクッション作れないかしら?」

「大福とかの甘味も良いかもね」

「ほっぺ開発部が始動してしまう♡」

「フミちゃんのほっぺですか……?」

「あ、はーちゃん起きた♡」

 

 

 眠たげに口元をもにゅもにゅさせて目覚めた私のお姫様。

 どの瞬間も可愛い♡

 いっぱいちゅき♡

 

 

「あら、私に抱かれてるのに目移りするなんて悪い子ね?」

 

 

 アルさんが両手に力を入れていっそう強く抱き締める。

 んぉぉ♡

 良い匂いがするし柔らかいし温かいしで頭がくらくらふわふわしちゃう。

 やはりアルさんは傾国の器……!

 そんな私を見てはーちゃんがぷるぷる震え出した。

 

 

「ああっ……!? フミちゃんが、アル様と……!!」

「ハルカが嫉妬を……いや、この場合はどっちにだろう」

「お二人が仲睦まじく……ステキです! で、でもなんだか胸がどろどろと熱く……不思議な感覚が……か、顔が火照ってきました……!」

「待ってハルカ。その扉は開いても碌な事にならないから。ほら、深呼吸して」

「すー……はー……」

「よしよし、良い子」

「えぅえぅ……♪」

 

 

 危うい所でカヨコさんがインターセプトを決めた。

 ナイスでおじゃる♡

 流石に性癖が捻じくれちゃうのはちょっとびっくりしちゃう♡

 でもそんなはーちゃんも可愛くて好き好き大好き♡♡

 そんな風に盛り上がってた所へムツキさんがシャワーから帰ってきた。

 楽しそうな空気を感じ取ってか、早速アルさんの背中に飛び付いてくる。

 

 

「ただいまー♪ なになにー? ムツキちゃん抜きで楽しい事してた?」

「おかえりムツキ。フミにマッサージしてもらって抱き締めて弄ってたくらいよ」

「弄られてました♡ ぶぃぶぃ♡」

「……ん?」

「どうかした? アルちゃん」

 

 

 不意にアルさんが何事か考え込む。

 中空に視線を向けてから一つ頷き、アルさんは優しくムツキさんへ微笑んだ。

 

 

「大きくなったわね、ムツキ」

「ぷひゃあっ♡」

「ちょおーっ!? 乙女に向かってなんて事を!?」

「んふっ」

 

 

 堪らず吹き出してしまった。

 カヨコさんも顔を背けて笑いを堪えている。

 はーちゃんは首を傾げ、ムツキさんは顔を赤くしてアルさんの肩をぽかぽか叩いていた。

 

 

「解るわよ。フミの料理は美味しいものね……」

「私が育てました♡ ぶぃぶぃ♡」

「くっ、おのれフミっち……!」

「おやつ減らします?」

「量と美味しさはそのままにカロリー減らして♪」

「いやん無茶振り♡」

 

 

 うすほそ美少女代表みたいな身体付きのムツキさんだけど、最近はお尻や太もものもちもち感が増してきてるし仰け反った時に浮き上がる肋骨の面積も減ってきた。

 健康的な柔らかさで抱き心地も非常に良いです♡

 お胸もちょっぴりふにょんと育ってえっち。

 私のは成長しないと言うのに♡

 そんな風にきゃっきゃと遊んでいると私のスマホが着信を知らせた。

 しかし呼び出し音は一瞬で途切れる。

 ワン切りとは珍しい。

 はてさてなんじゃろ、とアルさんに抱き着かれたままテーブルの上に置かれたスマホに手を伸ばすと、これまた珍しい事にリンちゃん先輩からだった。

 有事の際の取り決めとして、リンちゃん先輩とも符丁を決めてある。

 ワン切りは異常発生。

 

 

「せんせー起こすかぁ♡」

「あら、厄介事?」

「ですねぇ♡ 多分今度は連邦生徒会がカイザーに襲撃されました♡」

「えっ、一大事じゃない!?」

「まぁシャーレに襲撃かけたなら連邦生徒会も抑えますよね♡ 両方手にして先生の身柄も抑えられたらキヴォトスの八割は自由に出来るでしょうし♡」

「連邦生徒会は事務作業が主だし、腕に覚えのある生徒が居るって話は聴かないね」

「居ても焼け石に水じゃなーい? 攻め込まれたんなら数十倍の戦力を数人で捌かないといけないんでしょ?」

「自慢じゃないけど、私たちみたいな子が居ないならもう制圧はされてるだろうね」

「そこはいっぱい自慢して宣伝してください♡ じゃあ救出部隊と制圧部隊に分けて動かさないとですねぇ……やっぱせんせーが必要になりそう♡」

 

 

 と言う訳で名残惜しいけどアルさんの胸から抜け出し、とっとこ歩いて仮眠室へ。

 大きなベッドにジャージ姿で寝転ぶ先生と、胸元に顔を寄せてくるんと丸くなって添い寝しているワカモさん。

 なんて健全な絵面!

 すぴすぴ安らかに寝息を立ててる所申し訳ないけど起きてもらおう。

 

 

「せんせ、起きて♡」

 “んぅ……フミ……?”

「お、目覚めが早い♡」

 “ふわぁ……何かあったのかい……?”

 

 

 大きな欠伸をしながら身体を起こす先生。

 釣られるようにワカモさんも耳をぴくぴくさせながら目覚めた。

 普段の七割増しでほんわかしておられる。

 可愛くてズルい♡

 

 

「ふにゅ……あなたさま……」

 “可愛い”

「可愛い♡」

「……ハッ!? お、お見苦しい所を……!」

 “凄く可愛かったからまた見せて欲しいな”

「……う、うぅ……貴方様が望むのでしたら……」

「私も私もー♡ まぁそれは置いといて♡」

 “あ、そうそう。何か有った?”

「連邦生徒会が襲撃されました♡」

 “……思ったよりも大ごと!?”

 

 

 

 

 

 

 と言う事で連邦生徒会の面々を救出がてら強襲部隊が編成された。

 アサインされたのはRABBIT小隊、自警団から室内戦が得意な子三十人、先生の警護でワカモさん。

 私は今回お留守番。

 せっかくなので今のうちに身体を休めておこう。

 

 

「あじゃじゃぃ〜ん♪」

「何そのうめき声」

「フミの感性は独特だからな」

「姫ちゃん、熱くはないですか?」

「大丈夫、ありがとねヒヨリ」

 

 

 大浴場で湯船に浸かってびびんばぼんと鼻歌交じりに息を吐いていると、ミサキちゃんが呆れたように笑う。

 隣にはお団子ヘアでご機嫌なサオリちゃんが腕を組んでしたり顔だ。

 私の生態が知られていく♡

 アツコちゃんはヒヨリちゃんにシャワーをかけてもらって洗髪中。

 即応態勢で待ってたから仮眠は取れたけど汗は流せなかったんだよね。

 なのでお風呂でさっぱりして、上がったら梅おにぎりと潮汁とお漬物の夜食セットで腹ごしらえだ。

 量と速度を重視しちゃうと中々豪勢にとは行かないのがかなしみポイント。

 全部終わったらみんなの慰労に子ウサギ公園で大々的にバーベキューでもやろっかな?

 

 

「ぷえんぷぃぷぃぷ〜♡」

「……ていっ」

「ぬわー♡」

 

 

 ちょっかいをかけようとミサキちゃんに寄っていったら両手を組んで作った水鉄砲で迎撃されたでごじゃる。

 反応が早い♡

 

 

「邪な気配がダダ漏れだから」

「ふみふみ、私悪い子じゃないよ♡」

「鳴き声が邪悪」

「そんなー♡」

「ふふふ、余り虐めてやるな」

「わーいサオリちゃーん♡」

「姉さんはフミに甘すぎ。最初の頃のスタンスはどうしたの」

「何だかんだ皆も世話になっているし、懐に飛び込まれると邪険に扱うのも気が引けてな……」

「ペットの躾方針で争う夫婦みたいな会話だね」

「まさかのペット枠♡ ヒヨリちゃんを差し置いてペットになる訳には♡」

「わ、私だってペット枠じゃないですよぅ!?」

「私の愛人枠だもんねー♡」

「え!? えぇと、それは……え、えへへ」

 

 

 サオリちゃんにくっついていると、髪を洗い終わったアツコちゃんとヒヨリちゃんもやってきた。

 うひゃあ、おちちが湯船に浮いてる♡

 これを自由にして良いって優良サブスクなのでは。

 取り敢えず下から持ち上げてみよう。

 

 

「ふにふに♡」

「ええと、フミさん?」

「もちもち♡」

「あうぅ、手つきがえっちです……!?」

「……ていっ」

「わひゃー♡」

 

 

 ヒヨリちゃんを堪能していたらミサキちゃんに狙撃された。

 もしやヤキモチ!?

 

 

「違うから」

「よいではないかよいではないか♡」

「ていっ」

「ぐわー♡」

「ふふっ、ミサキも楽しそう」

「別に楽しんでる訳じゃないから」

「こんな風に気を抜いて笑い合える日が来るとは……返す返すも、先生とフミには頭が上がらないな」

「……そう言えばサッちゃん、先生に愛人宣言したんだって?」

「あぁ、先生が求めてくれるなら否は無い。私自身も先生の役に立てるのなら何でもやるつもりだ」

「子作りは私が最初だからね」

「アツコ!?」

 

 

 なにやら内戦が勃発しておられる。

 スクワッド全員で押し掛けるのも良いけど一人ずつじっくりとろとろにされちゃうのもオススメなんだけどナー♡

 三人がやいのやいのと激論を交わすのを横目に、私はヒヨリちゃんに骨抜き夜伽テクニックを伝授していく。

 

 

「……って感じで♡」

「な、なるほど……! 勉強になります!」

「これでせんせーもメロメロ間違いなし♡」

「フミさんは凄いですねぇ……ご自分では挟めないのに」

「それを言ったら戦争だゾ♡」

「わぁぁ!? ごめんなさいっ、悪く言うつもりは全くなくてっ!」

「許さぬ♡ おらーもみもみ♡」

「ひゃぁぁっ!?」

 

 

 無礼なヒヨリちゃんを成敗した。

 とろとろで可愛いね♡

 次はスクワット千回だ!

 

 

「死んじゃいますぅ!?」

「アリウススクワッドはたった千回に耐えられないと言っていますがリーダーのサオリちゃんどう思います?」

「平時に戻ったら訓練量を増やすか」

「やぶ蛇ぃ!!」

「サッちゃん、汗だくになっちゃうよ?」

「先生は匂いフェチだから良いでしょ」

「ふむ……前にフミが言っていたな。先生は蒸れ蒸れタンクトップに顔を埋めて深呼吸しながら尻を揉むのが好きだと」

「「詳しく」」

「その前に訓練量を増やさないでくださぁい!?」

「仲良しスクワッドコント好き♡」

「コントじゃないから」

「ふふ、仲良しは否定しないんだよねミサキ」

「うっさい」

「ツンデレですねぇ」

「ミサキは心優しいからな」

「……うがー!」

「ミサキちゃんバーサーカーモードだ! ヒヨリちゃんガード♡」

「肉壁ぇ!?」

「ミサキを制圧するぞ、アツコ。私は右だ」

「じゃあ私は左から」

「させるかぁ!」

 

 

 凄い勢いで皆にお湯をバシャバシャかけ始める。

 ミサキちゃんの照れ隠しはなんか子供っぽくて可愛い♡

 飛んでくるお湯をヒヨリちゃんの後ろでやり過ごし、お礼代わりにおちちを弄って気持ちよくしてあげる。

 おやおやぁ、顔が真っ赤ですなぁ?

 一緒にあっちで涼も……ぐわーミサキちゃんの追撃♡

 その後も賑やかにお風呂を楽しみ、フルーツ牛乳をくぴくぴ飲んでリフレッシュ完了。

 みんなで腰に手を当ててぐいっと傾けるのが作法なのだ。

 サオリちゃんとアツコちゃんはコーヒー牛乳の方がお好みらしい。

 飲み終わったら軽く濯いで回収箱へ。

 月曜日と木曜日の朝に業者さんが回収してくれるので、時々お手紙とクッキーの袋や栄養ドリンクを一緒に置いて差し入れてる。

 いつもお疲れ様です♡

 と、お風呂場から出た所でRABBIT小隊のみんなと鉢合わせた。

 私に気付いたモエちゃんが右手を軽く振っている。

 

 

「お、フミじゃん。おつかれ〜」

「モエちゃん? と言う事は任務は無事終わった?」

「バッチリ♪ 夜食の前に汗を流しに来たところ」

「予想通りカイザーが連邦生徒会に襲撃を仕掛けていましたが、シャーレを制圧出来なかったのが効いたのか抵抗は散発的でしたね」

「ヴァルキューレの一部も離反して援護に来てたな。防衛室との癒着の証拠も持ってきていたから防衛室長が連れて行かれてたぞ」

「なんか色々濃いイベントが起きてる♡」

「激動の一日だったんですねぇ……」

「湯船に浸かってゆっくり休んできなよ」

「みんなお疲れ様」

「後は私たちアリウススクワッドが対応しよう」

「さ、流石に今日は疲れたかも……」

「ミユちゃんもお疲れ様♡ 美味しい潮汁作っておくからゆっくりお風呂で汗を流しておいで♡」

「それじゃ、浸かって来るね〜♪」

「潮汁か……お腹減ってきたな!」

「サキ、湯船に涎垂らさないでくださいね」

「また後でね……♪」

 

 

 ご機嫌なモエちゃんを先頭に脱衣場へ向かうRABBIT小隊の四人。

 期待に応える為にも張り切って作りますか♡

 

 

「味見はお任せください♪」

「待機が早すぎる♡ ヒヨリちゃんステイ♡」

「せっかくだ、私も手伝おう」

「……まぁ、梅干しの種くらいなら取ってあげる」

「みんなでご飯支度だね」

「私は味見係で……」

「ヒヨリ、スクワットでもして腹を空かせておいたらどうだ?」

「わ、私も何かお手伝いしますぅ!」

「サオリちゃんが少しずつ良い顔するようになってきた♡」

 

 

 スクワッドを引き連れ食堂奥の調理室へ。

 途中戻ってきた自警団のみんなとすれ違い、労いの言葉をかけていく。

 どうやら銃器の手入れが終わった順にお風呂へ向かっているらしい。

 なるへそ、それでRABBIT小隊が先行してお風呂場に来ていた訳だ。

 何だかんだで元STRなだけあって、そう言う基礎的な動作の速度と精度はまだまだ他の子には負けないね。

 梅干しが苦手な子からおにぎりの具のリクエストももらったので、おかかを追加しておこう。

 時間があったら潮汁に使ったアラを解してマヨ和えにしてみようかな?

 

 

「美味しそうですねぇ♪」

「ヒヨリ、涎垂れてる」

「ほら、お口拭いてあげる」

「じゅびび」

「つまみ食いはするなよ」

「アツコちゃんより年下に見えるのはなんなの♡」

「勝ってる部分、胸しか無いからじゃない?」

「そ、そんな事はないですよぉ!?」

「そうだな、探せば……多分、あるはずだ、と、思う」

「サッちゃんの顔がどんどん険しくなってく」

「新しい形の家庭内暴力♡」

「それは……どっちに?」

「みなさんひどいですぅ!?」

「ふふ、冗談。ヒヨリは反応が可愛いから」

「仲良しスクワッドは良いぞ♡」

 

 

 心の充足を得た所でみんなに色々と解説しながら調理を進めていく。

 サバイバルの心得はバッチリだから、家庭料理にも応用出来るコツなんかを中心に紹介しながら魚を捌く。

 ぶつ切りメインでやってきていたらしく、アツコちゃんとヒヨリちゃんは知っていたけどミサキちゃんとサオリちゃんは三枚下ろしをするのは初めてみたい。

 せっかくだからと二人にもチャレンジしてもらおう。

 

 

「最初だから上手くやろうとはしないで、理論をなぞるように♡ あと怪我しないようにね♡ あ、ミサキちゃん直接触るのがアレだったらこっちのゴム手袋使って良いからね♡」

「うん……ナイフで切るのとだいぶ違う……」

「……なるほど。今まで気にした事は無かったが、こういう風に身が付いていたんだな」

「やん♡ 二人とも上手♡ 教える事あんまり無いかもしれない♡」

「それはおだて過ぎ。……ふふん」

「ミサキ、可愛い顔してる」

「ミサキさんのドヤ顔、久しぶりですねぇ」

「ドヤ顔してないから」

「左右の身と中心の骨で三枚か。最初はこの身を三つに切り分けるのを三枚下ろしと言うのかと思ったが」

「あるある♡ 骨を一枚でカウントするのが意外とピンと来ないよねー♡」

 

 

 下ろしてもらった身に指を当てて、小さな骨が残っていないかをくまなくチェック。

 気にせずぱくぱく食べたいからね。

 小骨を処理したら背骨や頭をネットに入れておく。

 あとで一緒に煮込んで出汁を取るからね。

 寸胴鍋に水を張り、ネットを引っ掛けて切り身をどぼん。

 ついでに切った具材と塩をぶち込んで強火でカンカンに煮ていく。

 

 

「舞茸や蛤からも良い出汁が出るんだよねぇ♡♡」

「はわぁ……待ち切れないですぅ♪」

「ヒヨリ、まだだよ?」

「それじゃあまな板と包丁を洗って、おにぎりを作っていこー♡」

「お米は……もう保温になってる?」

「お風呂前にササッと炊いておきました♡ ぶぃぶぃ♡」

「手際の良さが流石ですねぇ」

「じゃあ私とサッちゃんでおかか、ミサキとヒヨリで梅干しの種抜きをやろっか」

「ああ、構わない。だか《おかか》とはなんだ?」

「まさかのそこから♡ これは是非とも試食させねば♡」

「試食ですか!?」

「ヒヨリ、ステイステイ」

 

 

 待ち切れないヒヨリちゃんと、興味深げにそわそわしているサオリちゃんの期待に応えるべく、ささっと醤油にひとつまみの砂糖を加えて煮切っていく。

 湯気が収まったら鰹節を入れて、ゆっくりかき混ぜながら味を染み込ませていく。

 そしたら笊に乗せて揉むように圧して水気を切り、半分をまな板に乗せて軽く刻む。

 もう半分は潰した白胡麻と一緒にフライパンで炒って水気を飛ばしていく。

 お寿司のしゃり半分くらいの小さなおにぎりに出来上がったおかかを乗せて二人に差し出す。

 

 

「刻みと炒り、そして二つを混ぜたやつの三種類♡」

「いただきます! 美味しいです!」

「はやい♡」

「……どれも美味い。だがそれぞれ食感や旨味の感じ方が違うな、不思議なものだ」

「二人とも良いなー。ちらっ」

「…………」

「おねだりアツコちゃんと無言の圧ミサキちゃん♡ もちろん二人にもあげちゃう♡」

 

 

 満足気に受け取るミサキちゃんとその横でうむうむ頷くアツコちゃん。

 お姫様気質が強い♡

 

 

「と言う事でおかかと梅干しのおにぎりを量産していくぞー♡ 出来上がったおにぎりは別のトレーに乗せていくけど、分かりやすいようにおかかの方はてっぺんに醤油を一垂らしして目印を付けてね♡」

「解った、どんどん作っていこう」

「あ、あの、フミさん……!」

「どったのヒヨリちゃん♡」

「このおかか、叩いた梅干しと和えたらもっと美味しいのでは……?」

「なにっ……!? そうなのかヒヨリ!?」

「自力で真理に辿り着いた♡」

「えへへ……味が気になりますねぇ……?」

「おねだり上手さん♡ じゃあ手伝ってくれたみんなだけの特別♡ フミちゃんスペシャルを作ってしんぜよう♡」

 

 

 食べ物への嗅覚は一級品なヒヨリちゃんのリクエストにお応えして、梅干しを叩いてペースト状にしていく。

 そこへおかかを加えてアクセントに刻んだ茗荷をちょっぴり投入。

 小さく握ったお米の中心に埋め込んで、軽く回し握って完成だ。

 これも四人分作ってドヤ顔で差し出す。

 

 

「ふっふっふーん♡ フミちゃんスペシャルおにぎりの完成♡ 頭が高いっ♡」

「ははーっ!」

「ヒヨリちゃんの反応が過去一早い♡ みんなも召し上がれ♡」

「いただこう」

「ウキウキサッちゃん可愛い」

「珍しく上機嫌じゃん」

「んふーっ♪」

 

 

 幸せそうな悲鳴を上げるヒヨリちゃんに続いてみんなもおにぎりを頬張る。

 あらみんな可愛い♡

 サオリちゃんはクールな顔付きのまま両方のほっぺたを膨らませて、ミサキちゃんは目を大きく開いて小さくもぐもぐ、アツコちゃんは笑顔でみんなを見ながらぺろりと完食、ヒヨリちゃんはいつも通りのもちもちにこにこ。

 食の歓びを知ったスクワッドは良いぞ♡

 そんな風に眺めていると食べ終わったサオリちゃんがおずおずと口を開いた。

 

 

「フミ」

「んぅ?」

「厚かましい事とは解っているが……頼みがある」

「おおぅ、なんじゃらほい」

「こんなに美味しいものを私たちだけで独り占めするのは気が引ける。私を自由に使ってくれて構わない、このおにぎりをみんなにも食べさせてやってはくれないか?」

 

 

 見てるかい先生。

 サオリちゃんはこんなに立派な子に育ってるよ……!

 

 

「サッちゃんは私が育てた」

「そんな覚えは無いが……」

「んふっ♡ 天然サオリちゃんは強い♡」

「わ、私からもお願いします! ご飯の恨みは恐ろしいですからねぇ……」

「姉さんとヒヨリがやるんなら私も手伝う」

「フミ、お願い出来る?」

「おっけー♡ じゃあおにぎりは梅干しとおかかとブレンドの三種類にしよっか♡」

 

 

 そんなこんなでひたすらおにぎりを量産していく。

 健啖家が多いので人数を二倍した程度では全然足りない。

 多い分にはRABBIT小隊とヒヨリちゃんと私が居るから問題ないので炊飯器を空にする勢いで作っていく。

 ちなみに一升炊きの炊飯器が六つ稼働中です。

 一番かかってるのは食費かもしれない。

 炊飯器が二つ空になった所でRABBIT小隊が自警団のみんなを引き連れてやってきた。

 潮汁もイイ感じに煮込まれていたので、冷蔵庫からオクラの醤油漬けと先生に教えてもらった松前漬けを出す。

 数の子を昆布や醤油なんかと一緒に漬けたもので、名前は先生の居た所の地名に由来するらしい。

 旨味の暴力みたいな味付けなのでご飯があっという間に消えるのだ。

 

 

「……いや、もしかして松前漬けを具にしておにぎりを作るのもアリか……?」

「フミさん!!!」

「おっ♡ やっべ♡ ちょっと油断♡」

「是非とも!!!!!」

「ウワー圧が強い♡」

 

 

 天啓ではあったけどうっかり呟いてしまったのは失敗だ。

 ヒヨリちゃんの目がキラキラして涎がダバダバしてる。

 すかさずアツコちゃんがキッチンペーパーでヒヨリちゃんの涎を受け止めていく。

 いつもお疲れ様です♡

 

 

「いいから早く」

「アッハイ♡」

 

 

 アツコちゃんのジト目を受け止めつつさっさか握っていく。

 松前漬けの味が濃いから塩はほんのり感じる程度。

 ちょっと固めに握って差し出すと、ヒヨリちゃんは満面の笑みを浮かべて齧り付いた。

 幸せそうに咀嚼した瞬間、動きが止まる。

 なんだなんだとみんなで様子を窺っていると無事に再起動して一心不乱におにぎりを食べ進めていく。

 最後の一口をごくんと飲み込んだヒヨリちゃんは、私を真っ直ぐに見据えると深々と頭を下げた。

 

 

「結婚を前提にお付き合いしてください」

「よろこんで♡」

「わぁい♪」

 

 

 最高に美味しかったらしい。

 試食においては全幅の信頼を寄せられているヒヨリちゃんの反応を見て、みんなが唾を呑み込んだのが解る。

 となれば、後の展開は容易に想像が付くだろう。

 

 

「松前漬けの在庫が無くなるぅ!」

「ある意味自業自得でしょ」

「ミサキちゃんがセメントだぁ♡ ひんひん♡」

「泣いてないで早く握って。みんな飢えた獣の目をして待ってるから」

「ウサギは肉食ではありませんが、私はウサギではないので」

「フミ! さぁ! 早く!」

「くひひっ、フミは本当に破滅的なレシピを思い付くよねぇ♪」

「あ、あの、私のは少し大きめで……!」

「早く握れー!」

「シャーレの福利厚生だろー!」

「姉御を食べても良いんだぞー!」

「おうなんだやるか♡」

「ヤラナイヨー」

「撤退の判断が早い♡」

「ヒフミさんとハルカちゃんとの痴態が知れ渡ってるのにキャットファイト仕掛ける訳が無いんだよなぁ」

「濃厚な雌臭でひっくり返るかと思った」

「特殊清掃入ったの前代未聞でしょ」

「しまった旗色が悪い♡」

「良かった試しは有るのか?」

「サッちゃん、時に真実は人を傷付けるんだよ」

「取り敢えずヒヨリちゃんとミサキちゃんで潮汁をよそってあげて♡ サオリちゃんとアツコちゃんは私と一緒にひたすらおにぎりを作るよー♡」

「お任せください!」

「じゃあ、順番に並んで」

 

 

 どこから聞き付けたのか休んでいた他のみんなも食堂に集まって来たのでフル稼働で作っていく。

 途中ワカモさんとカヨコさんにも手伝ってもらいながら何とか全員分のご飯を用意出来た。

 昼間の襲撃より疲れたでおじゃる♡

 その分おにぎりと潮汁は大好評でみんな笑顔でお腹を擦っていた。

 コンロ全部使っても潮汁の提供がギリギリだったの怖い♡

 全部終わって一息吐いた頃にはもう夜明けだった。

 若干のおねむ♡

 手伝ってくれたみんなにお茶と水羊羹を配ってまったりしつつお片付け。

 無くなった松前漬けのストックをまた作らねば……!

 これだけの人気となると他にも色々用意しておいた方が良いのかもしれない。

 先生にまた良いレシピが無いか聞いておかないとね。

 

 

 

 

 

 

 そうして、無事カイザーの襲撃を退けた翌日。

 また平和な日常が戻ってきたと思い見上げた空は。

 

 

 ────赤く、染まっていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。