もしもシャーレにヒモを養う適性の有る娘が応募してきたら 作:一ノ瀬 崇
『作戦を説明する。雇い主はいつものシャーレ。目標はアビドス砂漠に出現した虚妄のサンクトゥム、識別名第一サンクトゥムだ。第一サンクトゥムは現在、デカグラマトン3番目の預言者ビナーによって守られている。ビナーは砂漠を縦横無尽に泳ぎ回る、巨大な機械の蛇だ。カイザーPMCの主力戦車級の火力であっても全く歯が立たない。それ故に、これまでアビドス砂漠の頭痛の種だった訳だ』
モニターに映し出された異形の蛇について、男性の合成音声が説明する。
カイザーPMCとの交戦記録が流されているが大部隊の一斉射撃を物ともせず、薙ぎ払いによる砂の瀑布や口から発射される熱線で傭兵たちを蹴散らしていく。
その圧倒的な火力を前に、カイザーPMCは為す術無く撤退を余儀なくされた。
『それを倒せと言うからには、勿論理由がある。ビナーの弱点は、口腔内の充填装置らしい。そこを壊せば、めでたく機能停止、作戦完了と言う訳だ』
映像が切り替わり、熱線を発射する為に大きく開いた口腔内の様子が映し出される。
発射口と思しき円筒の後ろに、六角形に開いた銀色の装置が見える。
これが体内のエネルギーを変換しているようだ。
熱線の放射時には多大なエネルギーがこの装置に集約される為、ここを撃ち抜けば強固な装甲の内側から破壊する事が可能となる。
『正直、解析班の連中も確証は無いんだろう。最悪、頭部が破壊されただけでなお暴れ回るかもしれない。それでも、見返りは莫大だ。やるか? 吉報を待っている』
ぷつり、とモニターの映像が切れた。
ブリーフィングを受けていたみんなの反応は様々だ。
これからの激戦に武者震いするもの、情報を整理して脳内で戦術を組み立てるもの、いやいつの間にこんな映像作ったんと呆れを滲ませているもの。
いいじゃんアルちゃん社長はもうおめめキラッキラよ♡
「んはーっ! これ、これよ! 決戦を盛り上げるカッコイイ依頼映像、これこそアウトローよ!」
ぺかーっ、とご満悦な顔をするアルさん。
自警団の何人かは同じようにテンションが最高潮に高まっている。
まぁ、ただでさえキヴォトス存亡の危機に駆け付けて未来を手に入れる戦いに臨む、ってなったら興奮しちゃうよね。
「にしてもフミっちー、いつの間に録画したの?」
「実はある程度の流れは作ってあったので、細かい所を追加で入れるだけで良かったんです♡」
「いや、それにしたって時間足りなくない……?」
「カヨコさんのお陰です♡ 情報の纏め方が上手い♡」
「前衛はお任せください……アル様とフミちゃんの為に、全部吹き飛ばしちゃいます……!」
「はーちゃん頼もしくてカッコイイ♡ 好き好き♡ 流石私のはーちゃん♡」
「……えへ、えへへぇ……♪」
「隙あらばハルカちゃん誑し込むよねフミっち」
「報酬にフミのにゃんにゃんコース追加しておいて」
「カヨコっち?」
「はいなー♡ ムツキさんにはせんせーの伊達眼鏡家庭教師プレイとかでどうですか♡」
「心の友よ!」
ひしっ、とムツキさんに抱き着かれた。
やーん♡
めっちゃ良い匂いする♡
そんな風にいつものイチャイチャを楽しみつつ、各々装甲車に乗り込んで指定されたポイントを目指す。
相手が相手だけに、今回の作戦は段階を踏んで遂行する事となった。
先ず、先制で痛打を与えてビナーを誘導する。
アビドス砂漠は広大だ。
戦うにしろ退くにしろ砂漠の奥地では移動もままならない。
なので機動力を持った部隊がビナーを誘い出しある程度アスファルトや地面が露出している場所、最低でもその付近に戦場を設定する必要が有る。
体良く誘導出来たなら予め仕掛けて置いた爆導索で火力を増強しつつ畳み掛ける。
ビナーが熱線を撃とうと口を開いたなら、狙撃部隊が口内の装置を破壊する。
上手い事倒せれば良し、倒れなかったら装甲部隊が遅滞戦術を取ってる間に第一サンクトゥムへ強襲だ。
倒せなかったら被害が甚大になるので、何とか狙撃で撃破しておきたい。
カヨコさんは司令部、ムツキさんとはーちゃんは爆導索の設置と迎撃、アルさんは狙撃部隊だ。
私は迎撃兼装甲部隊。
両手シールドで対熱線の簡易壁と勘による戦況に合わせた指示が主な役割だ。
パーミッションは火力不足だし、エクストラミネーションは取り回しが悪過ぎる。
他の武器種も使えなくはないけど、私を運用するなら一番信頼出来るタンク役が最適、とカヨコさんから提言された。
私の扱い方を解ってらっしゃる♡
是非今後とも手のひらの上で転がしていただきたい。
『司令部より各班へ。準備は大丈夫ですか?』
『狙撃部隊、ポイント到着したわ』
『強襲部隊、いつでも行けるわよ!』
『迎撃部隊、爆薬設置中です……!』
「みんな早いねぇ♡ 装甲部隊、私の車両で最後だね♡」
ちょうど到着。
ドアを開けて外へ出ると、多数のシールドと電磁フィールドを展開するみんなの姿がある。
エンジニア部や新素材開発部に無理を言って揃えてもらった最新式のシールドが砂の上に並んでいる光景は圧巻だった。
これで一蹴されたら泣ける。
と、油を売っている私の元へおじさんもといホシノさんがうへうへやってきた。
「いやー、壮観だねぇ。いつもの閑古鳥が鳴いてるアビドスとは思えない活気だよー」
「ビナーを撃退出来ればアビドス再興も近付きますし、その予行演習みたいなもんですよ♡」
「本物の方のビナーへの試金石にもなるもんね。おじさん張り切っちゃおうかなー?」
「ゆくゆくはアビドス砂祭りの復活もしたい所さん♡」
瞬間、ぞわっと背筋に悪寒が走る。
同時に勘がぴこんぴこんと警告音を発し始めた。
ちょっと遅いんじゃないですかね勘さん♡
「……へぇ、詳しいんだねフミちゃん」
「んんんシロコさんとはまた違った圧力♡ 前に言ってたアビドス旅行の時に現地の方から聴いてたんですよ♡ 昔アビドス砂祭りって大きなイベントがあったって♡」
「……もしかして、なんだけど。その砂祭りのポスターとか、持ってたりしない? しないかな?」
「ポスターですか? 持ってないですねぇ♡」
「ホント?」
「ほんとほんと♡ フミちゃんウソ吐かない♡」
にかっと笑って両手を目の横でチョキチョキしながらぶぃぶぃピースサイン。
細めた目がじっと私を真っ直ぐ見ていたけど、不意に圧力が弱まっていつものふにゃっとした顔付きに戻るホシノさん。
「……いやー、そっかそっか♪ ごめんねフミちゃん。アビドス砂祭りの復活は、おじさんにとっても悲願みたいなものだからさぁ」
「ならその為にもここで頑張らないとですね♡」
「そだねー♪」
……っ、セェェェェフ!!
怖いよー、ホシノさんの地雷どこに埋まってるか分からないよー。
しかしこれで私の中の疑問は解消された。
私のアビドス旅行には非常に厄い縁が紡がれてしまっている。
帰ったらシャーレのデータベース見てみよう。
多分、あの時のお姉ちゃんとホシノさんには繋がりがある筈だ、それこそ先輩後輩くらいの太い繋がりが。
これで当時一緒に描いたお互いの似顔絵とか一緒に買ったバナナとりの手帳とか見せたらどんな顔しちゃうのか若干気になる所さん。
中学の入学祝いにもらったお姉ちゃんの写真とお手紙なんて出したら首絞められるかもしれない。
……うん、時期が来るまで封印しとこう♡
命は惜しい♡
「珍しい、姉御がタジタジになってる」
「流石暁の……何だっけ?」
「ホイッスル?」
「暁だっけ?」
「ありったけのホイッスル?」
「「「それだ!」」」
「うへ〜、絶対それじゃないよぉ〜!?」
「在庫セールと化した先輩♡」
『アホな事言ってないで、準備は出来たの先輩!』
わちゃわちゃ楽しんでいると通信機からセリカちゃんのお叱りが飛んできた。
しっかりもので頼れる♡
「こっちはおっけーだよー」
「セリカおねーちゃん、初撃頑張ってね♡」
『任せなさい! カッコイイ所見せてあげるんだから!』
「きゃーセリカおねーちゃんステキー♡」
『もっと褒めても良いわよ!』
「相変わらず手玉に取られてるねぇ。おじさん心配になっちゃうよぉ〜」
「私としてはこれまでのセリカちゃんが心配なんですけど♡ 変なブレスレットとかネックレス買わないように気を付けてあげてくださいね♡」
「うっ、耳が痛いよ〜」
『それは、ほ、ほら! 騙すやつが悪いのよ!』
「間違いない♡」
『絶妙に締まりませんねぇ……』
『フミはシリアス出来ない体質だからね』
「いやん♡ カヨコさん辛辣♡」
『ならこの戦闘でカッコイイ所見せてよ。さ、そろそろ作戦開始だよ』
「フミちゃん頑張っちゃう♡」
『……そろそろ時間です。各員、ご武運を!』
アヤネちゃんの号令でみんなも態勢を整える。
地面に突き立てたシールドとは別に、みんな腰元に私が普段使ってるタイプのシールドを提げている。
全員分揃えてくれたエンジニア部には頭が上がらないね。
四人で上と横で構えれば即席のシェルターくらいにはなるから万が一の撤退時にもちょっと安心。
「そう言えば最初の強襲って具体的に何するのん?」
「ノノミちゃんのとこに提供してもらった動かしてない列車に大量のミサイルポッドとかグレネード砲をくっつけて走り抜けながらぽんぽこ撃つらしいよ〜」
「なにそれしゅごい♡」
『ミレニアムの協力で照準補正も精密になったから当初の予定より火力は上がってるね。さて、第一射』
カヨコさんの説明に続いて砲音が遠くから聴こえてくる。
……いや、幾ら何でもボンガボンガ鳴りすぎじゃない?
百鬼夜行の花火大会より大連発じゃん。
流石にミニガンとは言わないけど設置型のマシンガンくらいは間隔が短い。
そんな速度で給弾なんて……あ、その為のAMASか。
生身の私たちと違って多少なら熱も平気だし、決められた動きを繰り返すなら生徒より早い。
「もしかして一両丸々弾倉として使ってます?」
『ご名答。後でなでなでしてあげる』
「わぁい♡」
『後ろの車両から響いてくる衝撃でお腹が気持ち悪いんだけど!? よく脱線しないわねコレ!?』
「セリカちゃん頑張ってー♡」
『頑張ってるわよ! 惚れ直しても知らないからね!』
「きゃー♡ セリカちゃんステキー♡」
『そう言えばセリカはネコ生徒だったね……ふむ。右手にフミ、左手にセリカでねこねこパラダイスが開園出来る……?』
「待って♡」
『カヨコさんってそんなキャラだっけ?』
「最近ネコ探しの依頼が無くてネコに飢えてる♡ ネコミミカチューシャ付けた私でなんとか誤魔化してる所♡」
『ちょっと遠いけど今度ネコカフェ行ってみようかな……っと、指定ポイント通過。ビナーの誘引は継続中、外装の一部に亀裂、脱落を確認。……前情報と違って全体的にカラーが灰色とか黒っぽい感じになってるんだけど』
“こっちでも確認したよ。……2Pカラーかな?”
「複製だからですかね? 性能もデッドコピーだと嬉しいんですけど♡」
『おっと、列車進行方向に複製体と思われる敵戦力を確認。先頭車両の部隊は蹴散らしてあげて』
『了解っ! ぶっ飛ばしてあげるわ!』
「きゃー♡ セリカちゃん頑張ってー♡」
『姉御、一応私たちも居るからね?』
「もっちろん♡ 怪我しないで帰ってくるのよー♡ 打ち上げにケーキ用意しておくから♡」
『おっし撃墜スコアは私が独占だ!』
『あっ、ズルいぞコラ!』
『ハッ、ケーキもフミも私のものよ!』
インカムで声援を送っていると、得意げにふふんと上機嫌な鼻歌が返ってくる。
どうやらスコアトップはセリカちゃんらしい。
いや、やっぱアビドス勢って個人能力おかしいよね?
まぁ毎週数回の実戦とホシノさんの訓練が有れば鍛えられもするか……?
チラッと横目でホシノさんを窺う。
すぐに視線がぶつかった。
いや怖い♡
野生の勘で私の勘を上回ってくるのやめてもろて♡
『強襲部隊、目標地点通過! ビナーは砂原に潜りながら追尾中です!』
「返す返すも巨体で砂を泳いでくるって色々おかしいですよね?」
『出来るなら解体して調べたいよね! 新しい技術の発見とかこれまで出来なかったスペックの開発とか、夢が広がっちゃう!』
「マキちゃんから久し振りにヴェリタス部員っぽいセリフが♡ でもエンジニア部と新素材開発部で取り合いになりそう♡」
『そしてセミナーとして調整に走り回り、消費したカロリー以上にフミのお菓子を貪って体重計を破壊するユウカの姿が……?』
「ハレさんが言ってたって告げ口しちゃおうかな?」
『フミ! 淫婦! 淫魔王!』
「三段活用やめてね♡」
『あははっ♪ 会計殿、あなたもこの目盛りを見られれば良かったのに、ってね♪』
『あら聴こえてるわよ、このマヌケ』
突如響き渡る低音ボイスにヒュッと呼気を漏らすマキちゃんとハレさん。
チャンネルが分かれてるとはいえ司令部のユウカさんにもこの通信は丸聴こえなのだった。
なおセリフのチョイスは私が最近お気に入りなゲームの軍曹から。
何気にユウカさんもゲーマーだから、シャーレの休憩室で一緒に協力プレイを遊んでイチャイチャしてる。
……そうだ、ゲームと言えば。
「潜行中のビナーに音響兵器をぶつけたらスタンしながら出て来たりしませんかね?」
『あー、あの狩りゲーみたいに? ……そうね、試してみる価値はあるかも』
『音響兵器って……急に言われても備えが無いけど』
『爆雷を投下するにしても時間が足りませんね……』
「フミちゃんにちょっと心当たりが♡ せんせーせんせー、応答せよ♡ ついでに後でなでなでもせよ♡」
“はいはい、先生です。希望者全員になでなでしたら手のひらの皮剥けそうだから、日を改めてね。それでご要望は?”
「合図したらアロナちゃんに《取り扱い注意音声ファイル002》を最大音量で再生して欲しいんです♡ あっ、コタマさんは一時的に音量絞っておいた方が良いかも♡」
“なにそのファイル知らない”
『ふむ……? まぁフミの言う通りにしておきます』
「震えるせんせーも可愛い♡ 再生機材はアヤネちゃんの所のヘリの指向性スピーカーが一番性能良いかな?」
“取り敢えず準備しておくね”
『えっ、えっ。何するんですか? 何するんですか!?』
「アヤネちゃんの所なら通信用の保護ヘッドホンもあるしちょうど良いかなって♡ 上手くいけば爆導索のど真ん中でビナーに集中砲火出来ちゃう♡」
『何するのか答えてもらってませんよ!!?』
「心配ナイヨォ〜、大丈夫ダヨォ〜♡」
『なんで片言なんですか!? ビナー、爆導索の中心地点まで30秒です!!』
「しっかりナビゲートしてくれるアヤネちゃん好き♡ カッコイイ♡ 後でセリカちゃんと一緒にちゅーするね♡」
『さり気なく巻き込まれた!?』
「うへ〜、みんな仲良しで良いねぇ〜♪」
『ホシノ先輩もうへうへしてないで何とか言ってください!』
「うへぇ〜!?」
『もう、みんな私抜きでイチャイチャし過ぎですっ♧』
『あぁもう! ビナー、目標地点まで五秒!』
“頼んだよ、アロナ!”
先生の声に耳を両手で塞ぐ。
隣でホシノさんが同じように耳を塞いだのを見て周りのみんなも慌てて両手で耳を押さえた所で、もうそんなもん関係無いわと言わんばかりにビリビリと空気を圧し破りながら轟音が響いて来た。
《先生おはようございます!!!!!!!》
『『『『『ぎゃああああああ!!?』』』』』
『『きゃあぁぁぁぁっ!?』』
『『あぷっ』』
『『かぺっ』』
『『うわらば』』
『ウルッサ!!?』
『うぅ……っ!?』
『え、なに!? 挨拶!?』
『ライブハウスでも中々聴けない声量のシャウト……?』
“うわぁぁぁぁなになになに!?”
「うへっ!?」
「ひぃぃぃんっ♡」
「「「「「おわぁぁっ!?」」」」」
「ぐへっ!?」
耳栓を貫通してくるとても元気な挨拶に続いて、みんながのたうち回る声がインカムから聴こえてきた。
そう言えばみんなには注意喚起してなかった♡
思わず両膝を曲げて防御姿勢を取った私を見つめてくるホシノさん。
視線が熱い♡
なお一番の被害を受けたのは強襲部隊のみんならしい。
ビナーのすぐ近くを列車で移動しながら撃ってたもんね。
ほんとごめんて♡
でもそんな中ピンピンしてるカヨコさんカッコイイ♡
『うぅ……っ、な、なんなんですか今のは……?』
「臨死体験ASMR用の音声ファイル♡ 収録協力はレイサちゃんです♡」
“需要が見えない……!”
「ヒーリングミュージックと囁き声による思考誘導でトリップしちゃおう、ってコンセプトの企画で♡ 現実に引き戻す為の覚醒ボイスです♡ 美少女レイサちゃんの目覚ましですよ♡♡」
“びっくりして首の筋痛めそう”
「間違いなく目は覚める♡」
“たしかに!”
「カニカニ♡」
『はにゃあ……あぅー、にゃー……あ?』
『ああっ、セリカちゃんがピヨピヨ状態に!? しっかりしてセリカちゃんっ!!』
『列車の制御をこっちで担当してて良かった。フミ、帰ったらお説教だから』
「ひぃん、ゆるちて♡」
“ともかく、ビナーの様子は!?”
『あっ、そうでした!? 映像出ます!』
すぐに衝撃から立ち直った数名と元からそんなダメージ喰らってなかったホシノさんと共に指揮車のモニターを覗きに行く。
ノイズ混じりに映し出された砂原の一角。
画面の中央ではいつ飛び出したのか、ビナーがピクリともせずその上体を砂の上に投げ出していた。
心なしかグッタリしてる。
何とも言えない空気感が漂い始めた♡
「ともあれチャンス♡ 迎撃部隊のみんな、派手にやっちゃっても良いんじゃない?」
『……そうだね。ムツキ、ハルカ、爆薬の設置と起動はいつでも行ける?』
『バッチリ♪』
『あ、あのっ。せっかくなので口の中に幾つか投げ入れてみても良いですか……?』
はーちゃんの言葉を受けて画面を見る。
ビナーは口元を開けて舌に相当する部分をだらしなく投げ出して沈黙している。
いつまた動き出すかは分からないけど、本来なら無かったはずのチャンスには違いない。
同じように考えたのか、アルさんも賛同を示した。
『そうね、好機だと思うわ! 口に詰められるだけ詰めちゃいなさい! 私がバッチリ狙い撃ってあげるわ!』
『はいっ、行ってきます!』
「アルさんカッコイイー♡ はーちゃんも頑張って♡」
『ふっふっふ、当然よ! 移ろい変わる戦場に合わせて作戦を組み直すのもアウトローの腕の見せ所よ!』
『カッコイイ所を見せて、もっとフミちゃんをメロメロにして、いっぱいベッドで独占しちゃいます……っ!!』
「予想以上にやる気♡ やーん独占されちゃう♡♡♡」
「なんかハルカちゃん、覚醒してない?」
“具体的な言及は避けるけどもフミとラブラブおせっせしてから動きや思考のキレが増したんだよね”
「待って♡」
『何を避けたのよぉーっ!?』
先生の言葉に堪らずツッコむアルさん。
赤裸々なアレだけど現場に居る子たちは動揺しておらず、それどころか『まぁ、せやろな』みたいな顔をしている。
くっ、したり顔しよって♡
『んもーっ、フミっちが居ると緊張感が柴関の特製ほろほろチャーシューみたいにすぐ崩れちゃう! 追加で指向性爆薬とパルス吸着手榴弾も投げ込んだよ!』
「また柴関で全マシ食べたくなってきた♡」
『行くならフミっちの奢りだからね!』
『爆薬を仕掛けて離脱しました! アル様、いつでも行けます!』
『よっし、狙撃部隊! これから一斉射撃を仕掛けるわ! 目標はこっちに開いたビナーの口内! 発射合図は先生に任せるわ! 総員、構え!!』
『『『はいっ!』』』
“爆破想定範囲からの退避を確認! よしみんな、射撃開始!”
先生の声に続いて密集した風切り音が奔る。
世界を切り裂くような弾丸が一直線にビナーの口内へ突き刺さり、オレンジ色の目映い閃光が視界を染める。
一拍遅れて届いた爆音に思わず口笛を吹いちゃう。
流石はアルさんが認めた精鋭部隊。
ゲリラ戦を得意とする動き回るヒヨリちゃん、気配を遮断して味方にさえ存在を気取られない才能を持つミユちゃん、そして跳弾を扱える為どの距離でも戦えるようになった私の知る最高の狙撃手アルさん。
この三人から薫陶を受けたら、まぁ最低でも特務部隊にはなれるよね。
そして周囲の爆導索が幾つもの火球を生み出して絶え間ない衝撃と熱量を撒き散らしていく。
並の装甲なら跡形も無く吹き飛ぶか融解してる火力だ。
使用弾薬費の七割を構成するだけはある。
たっぷり十秒、集めた暴虐の塊がビナーを苛んだ。
さっきから届いてくる空気の震えで腹筋がムキムキになっちゃうよ。
『……うん、みんな良い腕よ。本当ならこのまま今の射撃を振り返りながら教導に移りたいけど……ま、今日は止めておきましょうか』
『流石社長!』
『よっ、アルちゃん社長!』
『お姉様になってください社長!』
『社長になってくださいお姉様!』
『ちょっと!? 今誰か変な事言わなかった!? 言ったわよね!? と言うか誰よ!? 私に妹は居ないし元から社長よ!!』
「ンフッ」
通信越しに脳裏へ浮かび上がってくるアルさんの白目を剥いた顔に、思わず笑いが出ちゃう。
もう本当にステキ♡
溢れる笑みをそのままに、インカムのマイクへ声を乗せる。
「ビナーの様子は?」
『まだ黒煙の中です……見えました!』
『下顎の部分が剥がれてるね。さっきまで計測出来ていた熱源反応も消失。……撃破判定、だね』
『併せて第一サンクトゥムが崩れて行きます! ……倒壊と言うよりは沈澱……?』
『沈み込むように崩れてる。まぁ……元がよく分からない現象だし、決壊もファンタジーなんでしょ。その辺は調べたい子たちに任せよう』
「つまり?」
“我々の勝利だ!”
「やったーっ♡」
『えぇ……?』
と言う訳でビナー撃破です♡
ぶぃぶぃ♡
“戦闘エリアが広いから結構掛かると思ってたんだけど……凄いね、一番乗りだよ”
「シャーレ精鋭部隊の中でも指折りの戦力ですからねぇ♡ 他のエリアへの援軍はどうします?」
“今の所はみんな順調だよ。ビナー攻略の速さに戸惑ってるくらいかな”
「にしし♡ 後でいっぱい褒めて撫でて労ってくださいね♡」
“よーし摩擦熱で真っ赤にしちゃうぞー”
「まさかの物理♡」
『二人ともその辺にして。それじゃ各部隊、被害報告』
『強襲部隊、ビナーによる被害は軽微です。四体のAMASが脱落したのと、二人擦り傷ですね。どちらかと言えばあの音声ファイルによる被害の方が……』
『迎撃部隊、こっちは全員無事だよー♪ 三人ほどまだ耳鳴りがするー、って言ってるけど♪』
『狙撃部隊、全員無事よ。早く帰ってシャワーを浴びたいわね』
「うへ〜、装甲部隊、怪我人無し。四人ほどまだ目眩でくらくらしてるかな?」
『…………フミ』
「ごめんて♡」
『お説教の間は正座ね』
「いやぁん♡ ゆるちて♡」
“フミは犠牲となったのだ……”
「せんせーの薄情者ー♡」
“いや、上手くいったけど一番の被害出してるのもフミだからね?”
「それはそう♡」
『実際犠牲になったのはみんなの鼓膜なんだけど』
『後でスピーカーもメンテナンスが必要ですね……セリカちゃんは大丈夫ですか?』
『うにゃー、まだくらくらするぅー……』
『うちのフミがごめんね。今度菓子折り作らせるから』
『今すごいパワーワード生まれましたね♧』
「菓子折りって作らせるものだっけ……?」
「じゃあお詫びにお菓子リクエスト券を発行しますね♡」
『うーん……それとは別に柴関でラーメンを十回注文しなさいよね……それと抱き枕にするから!』
『セリカちゃん、独り占めはダメですよっ♧』
「モテモテで困っちゃう♡」
『その辺本妻としてはどうなのハルカちゃん?』
『うえぇぇぇっ!? ほ、本妻だなんて恐れ多いですっ!?』
『じゃあ誰かに本妻の座渡しちゃう? 例えばヒフミっちとか♪』
『……フミちゃん、先生の子を産んだら次は私の子を産んでくださいっ』
「待って♡ それは全然、何なら吝かバッチコイうぇるかむだけども♡」
『そのまま私にもフミちゃんの子を産ませてください!』
『ちょっとぉ!? 通信でイチャイチャするの止めなさいよぉ!?』
「いやー、何とも締まらないねぇ♡」
『『『『『姉御のせいだよ!』』』』』
「ひぃん♡」
自警団のみんなに総ツッコミを頂いてしまった。
一応何があるか分からないので戦力を纏め直して休憩タイム。
ビナー第二形態とか有ったらマズイからね。
ウッキウキでAMASにビナーの装甲を回収させようとしているヴェリタス勢の監視も兼ねてるのはヒミツ♡
即応陣地として使えるように幾つかのシールドはそのまま固めて設置しておく。
「いやー、出番が無くて良かった♡」
「まぁおじさん達が出張るって事は追い込まれてるって事でもあるからねぇ」
「予想熱量だと砂が融けてガラスになっちゃうんしょ? 幾らシールドがあっても怖いっすよ」
「姉御の後ろに隠れてやり過ごすしかないな」
「自前のシールドで耐えてもろて♡」
「姉御は胸部にも一枚持ってるじゃないすか」
「なんだこのやるか♡」
「キャーオカサレルー」
「ハジメテハセンセイガイイー」
「ツルペタインマオウー」
「帰ったら揉みしだいてやるから覚悟致せ♡ 特にユキちゃんは意味のある言葉が発せなくなるまでやるからな♡」
「…………くっ」
隣でホシノさんが自分の胸をぽんぽん叩いて歯を噛み締めてるの怖いんですけど♡
夜にしっかり睡眠取らないと今後も育ちませんよ♡
そんな事を考えてたらジト目がこっちを向いた。
口笛ぴゅーぴゅー♪
と、ノノミさんやムツキさん、我が愛しのはーちゃん達が戻ってきた。
両手を広げて出迎えると、はーちゃんは満面の笑みで飛び込んできてくれた。
きゃー私のお姫様可愛い♡
「おかえりはーちゃん♡ お疲れ様♡」
「えへへ……ただいまです、フミちゃん♪」
「的確な爆薬設置と調整された威力、それに影響範囲の正確な計算♡ 流石はーちゃん♡ カッコイイよー♡」
「はい、いっぱい頑張りました……!」
「そんなステキな勇者様にはお姫様のキスを進呈しちゃうのだー♡ ちゅー♡」
「んっ……えへへぇ……♪」
「ハルカちゃんだけずるーい! ムツキちゃんも頑張ったからフミっちのキス欲しいな〜♪」
「じゃあ私はハグをお願いしますね♪ いっぱいむぎゅ〜っと、熱烈なのを♧」
「やぁん♡ フミちゃんモテモテで照れちゃう♡」
と言う事で、第一サンクトゥムは無事攻略。
予想よりも手間取る事無くあっさりと済んだのは良いのか悪いのか。
ともあれ同時多面攻略作戦だから、全ての指揮を担う先生の負担が減るのは大歓迎だ。
この調子で他のみんなも一気呵成に攻略出来るように祈っておこう。