もしもシャーレにヒモを養う適性の有る娘が応募してきたら   作:一ノ瀬 崇

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九話目

 どうにか廃工場を抜けてミレニアム中心部へと戻ってきた私達ゲーム開発部探検隊。

 一先ずアリスちゃんをゲーム開発部に送り届け、私達は一旦シャーレへと戻る事にした。

 新しい問題は出てきたけど、依頼自体は一応解決したから今回はここまで。

 また様子を見に行くねと約束してモノレールと電車を乗り継ぎ、私達はシャーレの執務室へと帰ってきたのだった。

 

 

「いやー、大冒険でしたね♡」

 “久しぶりに走り回って筋肉痛だよ”

「あら、マッサージ要ります?」

 “お願いしようかな⋯⋯”

「せんせー専用の特別な朝までぬるぬるコースもありますけど♡」

 “普通の! 普通ので!”

「にしし、ざーんねん♡」

 

 

 遠慮されてしまったので、普通に先生の肩や背中、ふくらはぎを中心に揉みほぐしていく。

 普段のデスクワークで固まった筋肉を優しく優しく、時にはぐりぐりと。

 その度に変な声を上げる先生が可愛くて仕方がない。

 

 

「肩甲骨回りの凝りを剥がしていきますよー♡」

 “おぉう⋯⋯んぉ”

「同じ体勢でデスクに向かってるとどうしても固まっちゃいますからねぇ」

 “そうなんだよね⋯⋯ぉおっ”

「にしし、面白い声出ちゃってますよ♡」

 “フミのマッサージが気持ち良くて、勝手に出ちゃうよ”

「せんせーばっかり気持ちよくなってズルい♡ 私もせんせーに気持ちよくしてほしいなぁ⋯⋯♡」

 “マッサージの話だよね?”

 

 

 そんな風に先生と戯れて、時々身体を密着させて先生を慌てさせて。

 満足したら書類作業に戻って、疲れたら一緒にコーヒーブレイクを楽しんで。

 いつも通りの時間を過ごしているとなんだか帰ってきたなぁって実感があるよね。

 さっさか仕事終わらせてぐぐっと身体を伸ばす。

 執務室の大きな窓からは夕焼けの明かりが差し込んでいた。

 

 

 “お疲れ様、フミ”

「せんせーもお疲れ様でした♡」

 “晩御飯はどうしようか?”

「買っておいた豚肉を解凍しておいたので回鍋肉でも作ろうかなって」

 “やった! フミの回鍋肉好きなんだよね。どのお店のよりも好みの味付けで”

「にしし、せんせーの胃袋は掌握済みですから♡ 副菜はピリ辛冷奴で良いです?」

 “うん、それも大好物。まいったな、本格的にフミがいないと生活出来なくなりそう⋯⋯”

「私もせんせーがいないと寂しくなっちゃいます。似た者同士ですね♡」

 

 

 これまでだったら出てこないようなセリフを口にする先生に、ニヤニヤが止まらない。

 生徒と先生の線引きはしっかり引きつつも、私の存在が先生の中でちょっとずつ大きくなっていってる。

 それが堪らなくくすぐったい。

 デスクに身を預けて脱力している先生の背中に覆い被さる。

 

 

 “フミ?”

「ちょっとせんせーへの好きが溢れちゃったので♡」

 “そっかぁ。⋯⋯これを聞いたら色々と引き返せなくなりそうなんだけどさ。フミはどうしてそんなに私の事を気に掛けてくれるの?”

「んー⋯⋯最初は庇護欲ですね。銃弾一発で死んじゃうかもしれないのに、臆せず生徒の為にと走り回って身を投げ出すせんせーが危なっかしくて。私の手の届く限りは守ってあげなきゃって、思ったんです」

 “確かに、フミだけじゃなく色んな子に危ないからって心配されたなぁ”

「それだけヘイローが無い、って事は大ごとなんです。なのにせんせーはいつも私達の隣に立って、同じ目線で考えて導いてくれる。ご存知の通り、キヴォトスではまともな大人より悪い事を考える大人の方が多いです。そんな中、何の見返りも求めず辛い時、苦しい時に寄り添ってくれる大人の存在は私達生徒には眩しすぎました。劇薬ですよ劇薬」

 “⋯⋯それは、大人としては悔しい事だよ。本来守るべき子供に対して大人が危害を加えたり搾取の対象とするなんて、以ての外だ”

「そう言ってくれるせんせーだからこそ、みんなせんせーを慕っているんですよ。私も、そんなカッコイイ姿を見ている間にどんどん惹かれていきました。もっとこの人と居たい、もっとこの人の隣で同じ景色を見たい、そんな風に思い始めていたんです」

 “ならフミやみんなを失望させない為に、しっかり頑張らないとね”

「ほら、またカッコイイ事言う♡ いつしかそんなせんせーに私は恋をして、愛を抱いたんです。⋯⋯出逢って半年も経ってないのにチョロインが過ぎるとは思いますけど」

 “あはは⋯⋯フミにそこまで想われて、私は果報者だね”

「なので私はせんせーが望むなら何人でも孕みますし、どんなプレイでも付き合いますよ♡」

 “あれ今話のワームホール通り抜けた?”

「アビドスで日焼けして褐色になるのもおっけーです♡」

 “それは⋯⋯ちょっと気になる⋯⋯!”

「せんせー、褐色肌が汗やオイルでぬるぬるテカテカになってるの好きですよね♡」

 “そんな!? 第一級機密をどこから!?”

「私ならしてあげますよ⋯⋯ぬるテカ褐色太ももでの膝枕と耳掃除♡」

 “うおぉぉぉ⋯⋯静まれ煩悩! 私は、私は先生としてここで負ける訳には⋯⋯!”

「ぬるテカ褐色素足でせんせーのお腹ふみふみもしてあげますよ♡ せんせーの好みに合わせて、片足は素足でもう片足はぴっちり吸い付く黒のあみあみタイツで♡ 大丈夫♡ 一線を越える訳じゃなく、日頃のお礼を兼ねた、ただのマッサージですから♡」

 “是非お願いします!! ⋯⋯あぁ、弱い私をどうか許してほしい⋯⋯!”

「いつもせんせーは頑張ってるから♡ 私の前でくらいは気を抜いて甘えても良いんですよ♡ よしよし♡」

 

 

 身体を起こして先生の後頭部を優しくなでこなでこ♡

 私ならいつでもお話聞きますからね♡

 欲望に負けて自己嫌悪に陥った先生を慰めてから、給湯室とは名ばかりのシステムキッチンで晩御飯を作る。

 出来上がった料理を笑顔で食べる先生を見てとても胸の奥がぽかぽかした。

 取り敢えずセリカちゃんにモモトーク送っておこう。

 褐色肌くらいに日焼けしたいんだけどオススメのスポット知らない?

 ついでにモモゾンで衣服を注文しておこう。

 先生喜んでくれるかな?

 悦んでくれても良いけど♡

 食後のまったりとした時間を楽しんでいると、執務室の扉が開いた。

 

 

「ただいまー⋯⋯あー、疲れたわ」

「社長が余計な見栄を張るからでしょ」

「疲れたー! フミっち飲み物ちょーだい♪」

「先生、フミちゃん、ただいま戻りました⋯⋯」

 

 

 ボロボロな様子の便利屋68の帰還だ。

 あの後なんやかんやでシャーレビルの三階へ事務所を構える事になった便利屋一行。

 家賃含めた各種固定費も下がって運営にだいぶ余裕が出来たとカヨコさんが喜んでいた。

 それでもスタンスは変わらず、落とし物探しやご老人宅の草むしり、盗まれたものを取り返したり違法なモノを扱っている企業を襲撃したりと色んな依頼を受けている。

 今日も解体中のビルを不法に占拠してた人達を追い出す依頼を受けて出掛けていたはずなんだけど⋯⋯いやなんでそんなにボロボロ?

 来客用のテーブルによく冷えた烏龍茶を四人分持っていき、アルさんの上着を預かってハンガーへ。

 

 

 “お疲れ様。随分ハードな依頼だったみたいだね?”

「いやまぁ、依頼自体は簡単でシンプルだったんだけど」

「社長、立ち塞がるヘルメット団や傭兵達に『割に合わない、痛い思いをしたくない、って言うなら帰りなさい。私達の前に立つ度胸も無い雜兵に興味なんて無いわ』って煽ったもんだから、全員ぶちキレて突撃してきたの」

 “えぇ⋯⋯?”

「あははっ、アルちゃんカッコよかったよねー♪」

「はい、相手が物陰に隠れたところに、フミちゃんがやっていた跳弾で爆発を起こしてました。凄かったです」

「早速使いこなしてる♡ 才能に嫉妬しちゃう♡」

「まだまだフミの精度には敵わないわよ。でもおかげで取れる選択肢が広がったわ!」

「それはそうとフミっちー、なんか美味しい匂いがしてるんだけどー?」

「ちょうど晩御飯食べ終わったところでしたから♡ 良ければ追加で作りますよ?」

「是非お願いするわ!」

「アルちゃんに同じくー♪」

「えへへ⋯⋯フミちゃんの手料理⋯⋯♪」

「私も何か手伝うよ」

「じゃあカヨコさんには何か追加で一品お願いします♡ 三人はもうちょっと待っててくださいね♡」

 

 

 という訳でカヨコさんと再び給湯室へ。

 回鍋肉を作りつつ冷奴に掛けるピリ辛タレをまぜまぜ。

 カヨコさんはきゅうりと春雨ともやしで中華風サラダを作りつつ、油揚げとほうれん草の味噌汁も作っていた。

 手際も良いしなにより台所に立ってるだけで色気が凄い。

 視線に気付いてカヨコさんが私を見た。

 

 

「なに、フミ」

「いやぁ、カヨコさん美人さんだなって♡」

「また適当な事言って⋯⋯」

「本心ですよ♡ エプロン着けて朝ごはん作ってる後ろ姿見せたらせんせーもイチコロですよ♡」

「まずその状況になるまでが遠そうだけど」

「それは確かに♡ でもせんせー変な所でにぶちんだから、カヨコさんの味噌汁飲んで『いやぁ美味しいなぁ! カヨコの味噌汁なら毎日でも飲みたいよ!』とか平気で言ってきますよ?」

「⋯⋯いやまさか、流石に言わないんじゃ⋯⋯いや、自信無くなってきたかも」

 

 

 はぁ、と溜息を吐くカヨコさん。

 ⋯⋯瓶に詰めたら先生に売れないかな?

 新しいビジネスチャンスに思いを馳せながらはらぺ娘と化した三人の元へ。

 おらーコップをよけろー、晩御飯のお通りじゃー♡

 

 

「回鍋肉とピリ辛冷奴、カヨコさんが追加で作ってくれた中華風サラダに油揚げとほうれん草のお味噌汁♡ お米は押し麦を混ぜてあるから糖質カットでおかわりしても大丈夫♡」

「わー、美味しそー♪」

「あわわ⋯⋯ごちそうです⋯⋯!」

「二人とも流石ね! それじゃいただきまーす!」

「それじゃ私も。⋯⋯うん、塩気がちょうど良くて美味しい。でも知らない風味も⋯⋯? フミ、隠し味に何か入れた?」

「ふふー、隠し味なのでナイショです♡ あ、せんせーもカヨコさんのお味噌汁一杯どうぞ♡」

 “ありがとう、頂くね。⋯⋯⋯⋯美味しい!”

「先生の口に合ったなら良かった」

 “いやぁ美味しいなぁ! カヨコの味噌汁なら毎日でも飲みたいよ!”

 

 

 その言葉にマジかこいつ、と言いたげな目を向けるカヨコさん。

 ね、言った通りでしょ?

 しかも普通に言ってるだけでどんな文脈で使われてる言い回しかなんて考えてないんだから♡

 あまりの先生加減にムツキさんも流石に苦笑いしてる。

 はーちゃんは気付かずにうんうんと頷いていた。

 純真なはーちゃん可愛いね♡

 

 

「あらホント、カヨコのお味噌汁美味しいわね! 油揚げとほうれん草って合うのねー♪」

「すごく美味しいです⋯⋯!」

 

 

 我らがアルさんももちろん気付いていない。

 このなんとも言えない味わいが便利屋だよね。

 ファン的な意味でどんどんアルさんが好きになっちゃうよ。

 賑やかな食事も終わって再びまったりタイム。

 今日のデザートはびわゼリーですよーっと。

 

 

「あら、びわね!」

「季節モノだねー♪」

「ありがたいけど⋯⋯良いの、フミ?」

「みんなで食べる用に買ってきたのでどうぞ遠慮なく♡ はーちゃん、あーん♡」

「あ、あーん⋯⋯」

 “フミとハルカはとっても仲良しだねぇ”

「お互いファーストキスの相手ですからねぇ」

「ぶふーっ!?」

 

 

 予想しない一撃だったのか、アルさんがゼリーをスプラッシュした。

 正面にいたカヨコさんは無言で顔に付いたゼリーを拭き取ってアルさんと私に鋭い視線を向けてきた。

 やん、そんなに見つめられたら照れちゃう♡

 ムツキさんはそれを見てケラケラ笑っているし、はーちゃんはあわあわしているけど私がゼリーをあーんしていたので何も言えずにいる。

 先生はめっちゃ興味津々で私を見ていた。

 恋バナって端から聞いてると面白いもんねぇ。

 

 

「ゲホッ、エホッ⋯⋯ご、ごめんなさいカヨコ、オッ、ゲホッ、オゲッ」

「いや、大丈夫だから落ち着いてアル。女の子が出しちゃいけないタイプのむせ方してるから」

「きゃはは、アルちゃん死にそうじゃん♪ ほら、背中とんとんー♪」

 

 

 あまりにもあんまりなむせ方だったので毒気を抜かれたカヨコさん。

 花の女子高生がオゲッは流石にねぇ。

 そして大笑いしながらも背中を叩いてあげる優しいムツキさん。

 でも両目は獲物を見付けたヒョウみたいに私とはーちゃんを捉えている。

 

 

「⋯⋯あー、何とか落ち着いたわ。ホントにごめんなさいねカヨコ」

「別に良いよ。その分、フミには色々喋ってもらうから」

「ありゃ、ロックオンされちゃいました? はーちゃん、小さい時のお話、みんなにして良いかな?」

「は、はい⋯⋯私とフミちゃんの思い出、聞いてほしいです。あ、あまり面白くないかもしれませんが⋯⋯」

「だいじょーぶだいじょーぶ♪ 既にアルちゃんとカヨコっちが面白い事になってるから♪」

「ムツキ」

「怒っちゃいやーん♪ 助けて先生♪」

 “え、私!?”

 

 

 ジト目を向けられたムツキさんは先生の後ろに隠れつつ、椅子を押してこっちに連れてきた。

 落ち着いたアルさんも、今は目をキラキラさせて私を見ている。

 そんなに特別なエピソードは無いんだけどね。

 

 

「んー、どこから話したものか⋯⋯私、十年前は見聞を広める為ってキヴォトス旅行に連れられてたんですよ。その一環でゲヘナにも滞在してた時期がありまして。そこではーちゃんと出逢った訳ですね」

 “へぇ、随分小さい頃から世界を回っていたんだね”

「文字からしか得られない感動も有るが、実際目にする事でしか得られない感動もある。それらが将来何かを表現したくなった時の支えになるだろう、って。まぁその頃の私は色んなところで遊べて楽しいなーくらいだったんですけど」

 

 

 持ってたゼリーとスプーンを置いて、はーちゃんを見る。

 はーちゃんは懐かしそうに頬を緩めて私の手を軽く握ってきた。

 そのまま指を絡めて恋人繋ぎにする。

 あの頃、毎日はーちゃんとくっついていた時のスタイルだ。

 

 

「公園に遊びに行った時、はーちゃんはちょっと背の高い他の子にちょっかいを出されていました。ボール遊びやかけっこに加わらず、大人しくて土いじりをしている姿がなんとなく気に障ったんでしょうね。その子が足元の小さな花を踏もうとした時、はーちゃんは両手で花を庇って、何度も蹴られるのも厭わずにじっとしていました」

「あ、あの時は怖くて、でも花を守らなきゃって思って、私が蹴られてすむなら⋯⋯って」

 

 

 そこまで話したところで、三人の顔が険しくなった。

 はーちゃんの為に怒ってくれる、ステキな人達。

 先生は話の流れが分かったのか、優しい顔で続きを促す。

 

 

「痛さを我慢して震えていたら、その子の驚いた声がして⋯⋯閉じていた目を開けたら、私と同じくらいの小さな女の子が、私を背に庇って立っていたんです」

「いやぁ、流石に何やってんだーってフミちゃんも怒ったよね。全力疾走からのドロップキックを決めて『こらっ、なにしてるのっ!』って大見得切って。そこからはもうその子と全力の泥仕合ですよ」

「え、フミちゃん、あの子のパンチ全部躱して『足元がお留守ですよ』って足払いしたり、前蹴りしてきたのを避けて『踏み込みが足りん』ってカウンターのラリアットしてましたよね⋯⋯?」

「⋯⋯その辺ちょーっとフミちゃん調子に乗ってて恥ずかしい瞬間だったからナイショが良かったかな♡」

「あ、あぁ、すみませんすみません! で、でもフミちゃんカッコよくて、まるで映画のヒーローみたいで⋯⋯!」

「にしし⋯⋯照れちゃう♡」

 

 

 いや本気で割と恥ずかしい。

 めっちゃ調子に乗ったワルガキ状態だったから。

 あの時は義憤も有ったけど、可愛い女の子を助けてるってシチュに酔ってたもん。

 その可愛い女の子は今こんなに可愛いレディになったんだけども。

 

 

「まぁ、そんな感じで撃退したあと持ってた消毒液や絆創膏で軽く手当てをして。そこから仲良くなった感じですね」

「フミちゃんは、ビルの陰とか高台の端とかにある雑草を見付けるのが得意で⋯⋯色んなところで知らないお花を見たり、変わった形の雑草を植木鉢に移したりして一緒に遊んでたんです」

「まぁどんな花よりも綺麗な花がこうして隣に咲いていたんですけど」

「フ、フミちゃん!?」

「ひゅーひゅー♪」

 “隙あらば口説いていくスタイル⋯⋯!”

「なるほど、小さい頃からカッコイイ動きが出来ていたのね⋯⋯!」

「小さな花を守るハルカも、それを助けたフミも、カッコイイね」

 

 

 何やら向けられる視線が温かい。

 いつもと違って気恥ずかしい感じで口がムニムニしちゃうよ。

 

 

「仲良くなってはーちゃんのひみつ基地に招待されたり、逆にお小遣いで買ったお菓子を半分こして食べたり、そんな風に過ごしてたんですけど、出発の時が来まして」

「せっかく出逢えたフミちゃんとお別れするのが悲しくて、涙が止まらなくなっちゃって⋯⋯そしたら、フミちゃんが突然私を、ギュッて抱き締めてくれて⋯⋯♪」

 

 

 どうしよう、なんだか急に恥ずかしくなってきたぞ♡

 体温が上がってきているのを感じながら、絡めた指をきゅっと握る。

 

 

「びっくりして顔を上げた私に、フミちゃんが、その、キ、キスをしてくれて⋯⋯『大丈夫、きっとまた会えるから。その時まだ私の事を好きでいてくれたら⋯⋯責任取るから。結婚しよっか、はーちゃん』って、もう一回キスしてくれたんです⋯⋯♪」

「きゃーっ♪ フミったらイケメン!」

「大胆なプロポーズぅ♪」

「ハルカがこんなに幸せそうな顔したの初めて見たかも」

 “フミってプレイガールだったんだね”

「⋯⋯ぎにゃー! なんか恥ずかしい!」

 

 

 恥ずかしさのあまりはーちゃんの後ろに回り込んで隠れる事にした。

 あ、はーちゃんの良い匂いがする。

 これを嗅いで落ち着こう。

 くんかくんか♡

 

 

「⋯⋯その、フミちゃんが目を髪で隠してるのも、実は私の為なんです。最初、人と目が合うのが少し怖いって伝えたら、分けてた髪の毛を下ろして『これなら大丈夫?』って、笑ってくれて⋯⋯」

「ぐわー追撃!?」

「そっかー、ハルカちゃんはすっかり脳を焼かれちゃったんだねぇ♪」

「で、フミはちゃんと責任取るの?」

「そこはもちろん。というか私のはーちゃんなんで誰にも渡すつもりはありませんよ♡」

「え、えへへ⋯⋯♪」

「あ、でもせんせーのハーレムには加入予定だからはーちゃんよろしくね?」

「へ⋯⋯? え、えぇぇぇっ!?」

「な、なな、なんですって────!?」

 “えっ、ちょっ”

「せ、先生ーっ! どういう事なのよぉーっ!?」

 “ま、待って! 私も初耳なんだけど!?”

「はーちゃん、一緒にせんせーの子供産もうね!」

「え、わ、私なんかが、せ、先生の⋯⋯先生の子供⋯⋯え、えへへ⋯⋯」

「え、ハルカ案外乗り気なの⋯⋯?」

「わー、修羅場だー♪」

「先生ーっ! ハ、ハルカもフミもまだ十五歳なのよ!? 流石に妊娠は早すぎるわっ! せ、せめて二人とも卒業してからにして頂戴っ!?」

 “お、落ち着いてアル! 私はまだ手を出してないよ!”

「まだ、って何よぉーっ!?」

 

 

 一気に賑やかになった室内。

 アルさんに胸元を掴まれてがくんがくんと揺さぶられる先生と、分かってて煽るムツキさん、ちょっと呆れ顔で残ったびわゼリーを食べるカヨコさん。

 そこから少し離れて、私より大きな背中に寄り掛かって耳元に口を寄せる。

 

 

「⋯⋯卒業したら、ね♡」

「えへへ⋯⋯こんなに幸せで、良いんでしょうか」

「良いの。⋯⋯幸せで溺れちゃうくらい、はーちゃんを好きで埋め尽くしちゃうから♡」

「⋯⋯卒業、待ち遠しいです」

「私も♡」

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