強化人間と美少女型アンドロイドが往くダンジョン殲滅記 作:Yura0628
-圧縮粒子放出完了 目標深度貫通成功-
-フツノミタマ 全射出プロトコル終了 砲身冷却開始-
-動力炉 通常作動へ移行 並びに増設回路再吸収開始-
射出が完了しフツノミタマを持ち上げた跡には、直径20cm程の小さな穴が空いていた。だがこの大きさはあくまで表層のもので、数m下からは穴の直径は大きくなっている。
-地盤沈降防止アンカー回収 退避勧告-
俺がその場から退くと、光の杭が穴の周囲から抜けて宙に霧散。途端に穴の周囲が抜け落ち2m程まで直径が大きくなった。
「フツノミタマ格納」
-了解 フツノミタマ 量子還元開始 イソノカミへ再格納-
フツノミタマは再び光の粒子となってイソノカミへ
「よし、行くぞクオン」
「了解」
すぐさま俺達は穴へ飛び込み、配信用ドローンも後に続く。
落下していく途中で各階層の様子を観察してみたが、モンスター共は突如空いた穴に困惑した様子で立ち尽くしており、落下する俺達を見ても目を見開いたりするだけで襲いかかって来る事はなかった。
-着地点まで100m-
そんなこんなで自由落下する事凡そ1分。ようやく見えてきた130層の地面に衝突する寸前で俺とクオンは反重力機構を起動し、音を立てる事なく着地する。
-反重力機構停止-
-地形スキャン開始 周囲半径500mの情報を収集-
「ここが高難易度ダンジョンの最下層部…」
1階層とまるで雰囲気が違う。明らかに空気が重いし、空気中の魔力濃度も段違いだ。おまけに至る所に透明の糸が張り巡らされ、より不気味な雰囲気を醸し出している。
『このダンジョンの下層部は通常のアラクネが生息しているから、それらが張り巡らせたものだな。先に言っておくが、一瞬でも触れると
「マジですか…クオンどうする?」
「触れてみましょう。アラクネ・エンペラーなるものがどれほどの強さか分かりませんが、その肩慣らし程度にはなるはずです」
『…一応通常のアラクネはA級モンスターのはずなんだがな』
呆れたように言う東野さんに思わず苦笑し、俺は近場に張られた糸に近づいて分析をかける。
-構成物質 タンパク質62% 解析不能物質29% その他物質9% 著しい粘性及び剛性を持つと予測されます-
「俺の膂力なら張り付いても引き剥がせるか?」
-容易に可能-
よし、なら触ってみるか。
そう思って糸に触れた瞬間、岩陰から体長2mはあるアラクネが現れ凄まじい速度で飛び掛かってきた。
「っ…っぶな、まぁこんなもんか」
普通の人間なら反応出来ず組み伏せられていただろうが、俺は易々と回避。糸の粘着力も大して障害にはならず、着地と共に脚を一本掴み取って力任せにぶん投げる。
「Gyuiiiiiiii!!!」
脚をバタつかせながら投げ飛ばされたアラクネは落ちた先で運悪く別の糸に触れてしまい、別のアラクネに襲われることとなった。
-目標を新種の生命体として登録-
「目標名称指定 アラクネ」
-了解 目標登録 名称 アラクネ-
いつの間にか解析を終えていた戦闘システムに名称を登録し、次の使用兵装を選択する。
「マスター、次は内蔵武装を使用してみてください」
「分かった」
-腕部内蔵兵装 2式腕部衝撃槌 起動-
-右前腕部変形 兵装展開-
クオンに言われ俺は右腕を
-2式腕部衝撃槌展開 インパクト・コア稼働開始-
-動力炉出力上昇 インパクト・コアへの回路接続-
ガントレットに内蔵される衝撃発動コアが放った燐光が装甲の隙間から漏れ出て、俺は右腕を淡く輝かせながらアラクネの至近距離へ接近、仲間を食うのに夢中なアラクネは未だこちらには気付いていない。
いや、気付いた上でA級モンスターである自身を、魔力が殆どない人間程度がどうこう出来ないと判断している可能性の方が高いか。
どちらにせよ、好都合。
「…あばよ」
俺はアラクネの目の前まで接近して握り締めた右拳を振り上げ、頭胸部へ全力で振り下ろす。
-インパクト-
拳が触れた瞬間、フツノミタマとはまた違う炸裂音が響き、蒼い衝撃波がコアから放たれアラクネの頭胸部を消し飛ばした。
飛び散った体液を防護フィールドで防いだ俺は腹部へと手を突っ込み中を弄ると、丸い球体状の物体へ手が当たる。
-目標体内 高エネルギー体接触 採取推奨-
戦闘システムが高エネルギー体と呼ぶこれは公的には魔核と呼ばれ、地面などから採取出来る魔法石と異なりモンスターの体内からしか採集できない。さらに魔核は魔力を生み出すことが可能で、人間やモンスターは魔核から供給される魔力を全身に血管のように張り巡らされた魔力回路を通じて魔法を発動するのだ。
ちなみにこの魔核、先天的に体内に有する人間も居るにはいるが多くが後天的に体内に現れるため俺の体にも存在はする…右半身が完全に人工物で魔力回路が存在しない上、左半身も多くの器官が人工物に置換されており殆ど意味を成していないが。
…俺が殆ど魔法を使えなかったのは別世界から来ていたから、なんて昔の自分に言っても絶対信じないだろうな。
「マスター?どうされましたか?」
「ん?あぁ悪い、少しぼーっとしてた」
一瞬思考がネガティブな方へ向かいかけたがすぐに切り替え、アラクネの魔核を掴んで一気に引き抜いた。
引き抜いたアラクネの魔核は直径7センチほどの球体で緑色の淡い光を放っており、まるで心臓の鼓動のように明滅している。
-高エネルギー体 解析開始-
「待て、それは後で良い。今は先を急ぐ」
-了解 解析中断します-
戦闘システムに魔核の分析をやめさせ、魔核を亜空間格納庫に放り込んだ俺はダンジョンの奥を睨み据える。
八王子ダンジョンの下層はアラクネの巣窟だ。そして多くのクモは振動に反応して獲物が来たと判断する。ならば今ここで巨大な衝撃を起こせば向こうからやってきてくれるはず…
そう考えた俺は、再度内蔵兵装を起動した。
「特殊打撃兵装、〈アマノイワフネ〉起動」
-了解 右腕部変形 アマノイワフネ起動-
-インパクト-
言葉の後、先ほどの2式腕部衝撃槌を超えるエネルギーが右腕に充填され、バチバチと火花が飛ぶ右腕を地面へと叩きつける。
このアマノイワフネは着弾点から巨大な衝撃波を発生させ半径約300mの敵を薙ぎ払う兵装だ。肉体強化を受けていない一般兵士相手に主に用いられるが…今回はアラクネを呼び寄せるために使用した。
-警告 全方位よりアラクネ接近 数368-
——狙い通り、この階層にいる恐らく全てのアラクネを呼び寄せる事ができたようだ。
『衝撃でアラクネを呼び寄せたのか…!?』
「クオン、ここからは共同戦闘だ」
「了解、マスター」