リアル鍛冶師のおっさんが刀匠へと至るまで 作:バナナラッシー
俺が初めて打った刀に見とれているとレンギンの親方が近づいてきた。
「どうですかい親方?初めてにしては上出来だと思いません?」
俺が半ば掲げるようにレンギン親方に見せると、親方はそっと刀を受け取った。
そして流れるような動作で刃をそっと抜いた。
「・・・お前は、刀を打ちたいのか?」
「え?」
親方は超能力が使えんのか?まさしくその通りだ。
「俺の打った数ある武器の中でもお前は刀を選んだ・・・
もう一度聞く。お前は、刀を打ちたいのか?」
・・・昔の、それこそディスプレイとかでやるような昔のゲームをやっていた時もこんな感じの場面に何度も遭遇してきたことがある。こういう場面の時は大抵大事な選択だった。
だが今は、そんな打算無しに俺の本心からこの質問の答えを言いたい。
「はい、俺は刀を打つためにこの工房に来ました」
俺は刀作るためだけにこの工房、この世界にやってきたんだ。この気持ちに偽りはねぇ。
「そうか・・・なら、この刀は戒めにしろ」
そういいながら親方は俺に刀を返した。
「え・・・戒め、ですかい?」
まさか刀を打ったらそんな言葉を言われるとは思わなかった。
それにしたって、戒めってどういう意味だ?
「お前のあの打ち方は確かに鍛冶師の中では標準的な打ち方だ。俺も他の武器を打つってんならとやかく言わなかったが、刀打つってんなら話は違う。あの打ち方じゃだめだ」
「レンギンは刀を打つときだけうるさいんだよねー。そんなにこだわんなくたっていいじゃないか。そんなんだから弟子が逃げていくんだよ」
「うるさいぞマーデン!・・・まぁともかく、お前の今の実力は分かった。今日はもう帰れ」
「・・・わかりやした。今日はありがとうございやした」
俺は戒めとなった刀を握りながら工房を後にした。
適当に宿をとってセーブポイントを更新して俺はシャンフロをログアウトした。
「いやぁ・・・何がいかんのかったんかねぇ・・・」
ログアウトをした後でも俺の頭の中は親方のあの言葉の意味について考えていた。
「鍛冶師にとっての標準的な打ち方は、刀を打つには向いてない・・・まぁ確かに刀の打ち方ではなかったけどさぁ。システムに設定された打ち方が違うってのはどうなん?」
刀ってのは本来一つの鋼を薄ーく叩きまくって作るようなものだ。だがシャンフロではいろんな鉱石を合わせてかたどった棒を叩いて作っていた。・・・何か別の打ち方でもあるのか?
「うぅん・・・調べてみるかぁ」
どうやらシャンフロにはある一つのクランの有志達がまとめ上げた攻略サイトのようなものがあるらしい。もしかしたらそこに何かヒントがあるかもしれない。俺はさっそくサイトを立ち上げた。
「うお、すげえページ数だな・・・本当にプレイヤーが作ってんのか?」
ざっと数百ページくらいあるサイトに当たった。これホントに公式が作ってるわけじゃねぇんだよな?どういう神経してんだよ・・・
「まあそれはさておき、鍛冶関連の情報は・・・ってこれまた多いな」
スキルの種類やら素材による効果の違いやら色々出てきたが、そんなものは知ったこっちゃねえ。
刀の詳しい作り方とかあの親方関連の情報はねぇのか?
「お、【セカンディルの堅物おやじについて】・・・絶対あの親方についてだろ・・・」
ほうほう、何かしらユニーク関連の気配はするがスキルを教えてくれるどころか工房からけりだされることがほとんどで、今じゃ誰も会いに行っていない。ってのが今の最新情報らしい。
「・・・全然役に立たねぇじゃねえか!」
どうやらユニーク関連の情報は上位のクランが独占していたり、そもそも発生している母数が少なすぎてロクな情報が回っていないってのが実情らしい。サイトの一番最初にユニーク関連の情報は高値で買い取ります。なんて宣伝してるくらいだ。
「何も知らなかったときに変に言いふらさなくてよかった・・・俺の平穏な鍛冶師ライフに大量の野次馬どもは一切不要だ」
有名人になりてぇわけじゃねぇからな。好きにやってる時が一番楽しいのがゲームってもんだ。
「しっかしどうすっかねぇー。刀づくりのコツだってねぇし、親方の情報は役に立たねぇし、
なんで親方がだめって言ったのか全く分からん」
・・・戒め、ねぇ・・・確かに刀は一つの鋼を気が遠くなるほど熱して叩いてを繰り返してあの強度を作り出すものだ。俺がマニュアル通りにやったてのがそもそも間違いなのか?だがマニュアル以外の操作をいきなりできるとは思えねぇし・・・
「あああ!よくわからん!寝る!」
明日も工房は休みだし、今日はもういいや!
俺は手際よく風呂を済ませて、就寝した。明日は絶対認めてもらう!
「って、なんで緊急の注文がこんな時に限ってくるんだよー!」
「しょうがないじゃろ智也。急にわしの知人の寺の鐘が落っこちまったんじゃ。
新しく作らなまずいじゃろ」
そう、うちの工房でこういう緊急の仕事がよく入ってくる。しかも明日は休みだって安心しきってるときに限って舞い込んでくるのが質の悪いところだ。しかも全部断りずらい。
そのせいでうちの工房は休日なのにフル稼働だ。
「智也先輩!鐘の型の点検終わりました!」
「あぁ、こっちももう少しで青銅が溶け切りそうだから、そっちに運んどいてくれ!」
そんなこんなで突然の仕事は終わった。こんなんでも金払いがめちゃくちゃいいてのが立ち悪い。
あんな大仕事させられたのにもうどうでいい気分だ。
「うぅん、どうすればレンギン親方を認めれるんだろうか?」
作業している間もずっと考えていたが、何も案が思い浮かばなかった。鉄の純度か?
まさかステータス?大穴で、選んだ素材の相性とか?
「素材の相性・・・そういやあのサイトには素材のリソースやらなんやらについて解説が乗ってたな・・・レア度が高ければ高いほどリソースが増えて武器が強くなる、だったか?俺みたいな初心者がそんな素材持ってるわけ・・・あ」
あった。初心者が持ちえないようなレア素材。しかもとびきりえぐいやつ。
「・・・そうと決まれば話が早い。いい素材はここぞというときに使う。一般的なゲーマー常識を忘れちまってたな。」
俺は全速力で家へと帰宅した。
ラストエリクサー症候群って怖いですよね。
唐突で悪いのですが、皆様は主人公の身体欠損には肯定的ですか?特に他意はないです
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yes
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no