リアル鍛冶師のおっさんが刀匠へと至るまで 作:バナナラッシー
ちきしょう、完全に抜け落ちちまってた。
鍛冶の・・・いや、ゲームにおいての一番大事なことを・・・!
「大事なものはここぞというときに使う・・・そんなゲーマーの常識を忘れちまうとは・・・」
あの親方がきれてたのは、多分おそらく水晶ガエルの素材を使わなかったのが原因だろう。
ああいうタイプのおっちゃんは妥協を嫌う性格がほとんどだ。そんな性格のやつが目の前で妥協
ありありの作業を見せられたらどうなるか・・・
「そりゃ戒めにしろとか言っちゃうよな~。いや、あってるか分からんけど」
だが、俺の人生の中で得た経験達が正しいと言っている・・・気がする!
「さっさと関係値取り戻さねぇと破門とかにもなりかねん。急がねぇと!」
俺は爆速で家に帰り、ヘッドギアを頭に取り付けた。
どんな刀ができるのか・・・わくわくが止まらん!!
そうして俺ことテツギリはセカンディルの宿屋の一室で目が覚めた。
「そういやレンギン親方は方には別の打ち方があるとか言ってたよな・・・もしかしたら現実と同じ感じにやることもできんのか?・・・試す価値はありそうだ」
そんなことをつぶやきながら俺は親方の工房へと足を運ぶ。
親方の工房が近づいてくると鉄を打つ音が大きくなってきた。
あの親方はずっと鍛冶をしてんのかね・・・
俺はなるべく気配を減らしつつ工房のドアを開いた。
「し、失礼しまぁす」
俺が工房へと足を踏み入れた瞬間、鎚と鉄が重なり合う音が止んだ。
「あぁ、お前か・・・何しに来た」
ひぇぇ、前来た時より空気が3℃くらい低い・・・どんだけきれてんだよ・・・
「いえ、あ、そのぉ・・・前回の教えを生かして最高の刀を打とうかな、と・・・」
「・・・今のおめぇじゃあの素材は扱いきれねぇよ」
な・・・この親方、読心術でも持ってんのかよ!・・・シャンフロならありそう。じゃなくて!
「なぜ、今の俺じゃ
せっかくのレア素材がステータス不足で使えなかったりとかだったら最悪・・・
「おめぇはまた性懲りもなく刀を打つ気だろう?おめぇのあの打ち方じゃ、あんないい素材もただのなまくらに早変わりさ。だから今のお前じゃ持て余す。必ずな」
・・・ほほう。言ってくれるじゃないか。そこまで言われちゃ仕方ねぇ・・・とはならんよなぁ?
「・・・親方ぁ、もう一回だけ自分の鍛冶、見てもらってもいいですかい?」
いいぜ、リアルの知識フルに使って魅せてやるよ。最強の打ち方ってやつをよぉ!
さて、さっそく作業に取り掛かっていくわけだが、まずは玉鋼となる素材を選ぶ。
前回は適当に選んだ鉄やらなんやらを使ってマニュアル道理にインゴットを作っていたわけだが、今回は
「そんじゃ、まずは火に入れて折り返していきたいんだが・・・」
流石にあの状態の親方に相槌はなかなか頼みずらいしなー。何か固定できそうなものは・・・
お、あれとか結構使えそうじゃね?
「親方、ここにある道具とかは自由に使ってもいいですかい?」
「かまわん。それで何かが変わるってんならな」
いちいち子憎たらしいやつだな。その小ばかにした顔をすぐ驚愕に塗り替えてやる。
熱した炉に素材を入れた瞬間、俺の戦いは始まった。鍛冶において火の管理は命と言っても過言ではない。しかし、現実ならいざ知らずゲームの中で熱を見極めることは本当に可能だろうか?
このゲームならできそうではあるが、普通のゲームならそこまで想定されているわけがない。
ならばどうするか・・・答えは、"勘"だ。
「・・・ここ」
そうしてテコ棒にくっつきながら引っ張り出されたクソガエルの素材は、太陽のような鮮やかな
橙色に身を包んで光り輝いていた。
だがこれで喜んではいられない。成功したならその次だ。
先程見つけた万力のような装置にテコ棒を挟み込み、素材の下になる金床と高さを合わせる。
そしたら素材の形をある程度整形する。後の折り返しをやりやすくするためだ。
炉に墨をくべて火力を維持しつつ、再度熱した素材に折り目を入れて折り返す。
そして、ここでとっておきのスキルを発動させる。
「クイックアーム」
このスキルの説明文を見た時から思っていた。もしかしたらこいつは鍛冶にも使えるかもしれないと。力加減を違わずに速さだけを上昇させる。鍛冶職にはピッタリじゃねぇか?
本来刀ってのは大槌持ったやつと小槌持ったやつがリズムよく鋼を叩きまくって出来るもんだ。
現代だと人手不足だからって理由で大槌持ったやつをプレス機とかで代用しているらしいが、そんな便利なもんはこの世界にはない。だが、この世界にはスキルがある。化学なんかよりずっと神秘的で使い勝手がいいもんがな!
叩いて、熱して、叩いて、叩いて、熱して、叩く。折り返しながらも少しずつ伸ばしていって刀の形に整えていく。
そんな作業を繰り返していくうちに、レンギンからの視線も気にならなくなっていた。
そうして平たく細い板のような状態になったら、さらに刀のような形状にするために板の先端を斜めに切り落として切先となる部分を作る。その後さらに刀に近づけるために小槌を使って鎬を入れたり、幅を狭めたりなどの微調整をする。
本来ならせんという道具を使ってあれやこれやしたりするが、もう自分でもよくわからなくなっているため無しとする。
次に焼き入れだが、リアルだと土置きという刃の方に薄く土の塗る作業を行わなければならないのだが、そんなに都合よくあるとは・・・
コトッ、という音が炉の近くの机から聞こえた。見るとレンギンが何かが入ったお椀を置いていた。
「・・・俺の焼刃土を貸してやる。その後は自分でやれ」
「・・・ありがたい」
焼刃土とは土置きにおいて必須となる物で、耐火性の土のことである。木炭や砥石などを混ぜ込んであり、その割合は刀匠ごとに異なる。そして、本来なら人に貸してあげるようなものではない。
親方の思いやりを嚙み締めつつ、焼刃土を塗り、十分に乾燥させた後、土を落とさないように慎重に熱し、一気に水に入れる。その瞬間、刀が突然発光し、その姿を変容させた。
刀身は透き通っているかのように淡い空色。それはさながら、湖が反射した青空のような、そんな美しさを感じさせる見た目をしていた。
「何をしておる、さっさとその刀の銘を決めてやんな」
俺が感傷に耽っていると、レンギンが銘決めを迫ってきた。
もう少し耽ってたっていいだろ・・・
「わかりやしたよ。そんじゃ、お前の銘は・・・」
濁りが全くないこの透き通るような美しさを表す銘・・・
「"
すると、もう一度刀が発光し澄晴という銘とテツギリという名の2つが刀身に刻まれていた。
「・・・・・」
「・・・・・」
先程までの騒々しさが嘘だったかのように消え去り、ただ静寂が工房を支配していた。
・・・え?あんだけ頑張って、これだめって突っ返されたら俺普通に泣くよ?年齢とか尊厳とかそんなの関係ないくらいに泣くよ?人目も憚らずに号泣するぞ?
俺がそんなくだらねぇことを考えていると、レンギンが口を開いた。
「まだまだ荒かったり足りなかったりしたとこはあったが、2回目の鍛冶でこれほどまでの名刀を打てたのはのは、お前が初めてだ」
「と、ということは?」
「・・・ふん、久々に熱くなっちまった。おめぇが有る程度の腕になるくらいには面倒を見てやろう。ったく、こんな気分は初めてだ」
「!・・・これから、よろしくお願いします!」
こうして俺はレンギン親方の弟子となった。
これからの鍛冶ライフに思いを馳せるとわくわくが止まらない。
待ってろよ、俺の平穏快適刀匠ライフ!
しかし、この時のテツギリはまだ知らない。
自身が突き進んでいく鍛冶ライフが平穏とは程遠い、波乱万丈な鍛冶ライフになることを・・・
『テツギリは鍛冶の新たなる可能性を見出した』
『レンギンは1人の開拓者に自身の技術を伝える決意を固めた』
『ユニークシナリオ「握り振るうは鎚と剣」をクリアしました』
『称号【鍛冶の先駆者】を獲得しました』
『称号【親方の一番弟子】を獲得しました』
『ユニークスキル【レンギン流
『ユニークシナリオ「開闢したるは鍛冶の道」を開始しますか?』
・
製作者:テツギリ
雲一つない青空のように美しい刀身を持つ刀。
古来に失われた鍛冶技術で鍛造されており、その強度は儚げな見た目とは裏腹に強靭な硬度となっている。また、素材の性質から光を切り裂く特徴を持つ。たった一つの命のかけらから限界まで折り重ねられたその刃は、ありとあらゆる困難を切り裂くことだろう。
・レンギン流
ユニークスキルであり流派スキル。ユニークシナリオ「握り振るうは鎚と剣」を正しい手順で
クリアし、レンギンの弟子として認めてもらうことで習得することが可能。
古来に失われたはずの技術が組み込まれているが、使用者の実際の腕前に準じて性能が変化する。
(実際の腕前とはリアルの鍛造方法をスキルなしでどれだけ再現できているかの評定)
つまり、どれだけレベルや熟練度が高くても実際の腕前がポンコツだとなまくらしかできない。
次回から新章に入ります。
唐突で悪いのですが、皆様は主人公の身体欠損には肯定的ですか?特に他意はないです
-
yes
-
no