リアル鍛冶師のおっさんが刀匠へと至るまで   作:バナナラッシー

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クアッドビートルは刀にするなら斬馬刀が一番似合うと思うのは俺だけ?


紅の園 奇怪な出会いと 刺さる槍

「うぐぅぅぉぉ、シャンフロ引力が俺を直に襲ってやがr、ぐべぇ」

 

 クアッドビートルの突進を食らって数秒くらいだろうか?体感では10秒くらい飛んでいる感じだが、俺はまだ吹っ飛んでいる。更に言えば小枝がバカスカ刺さるせいでHPがどんどん減りやがる。

 体勢・・・体勢をもう少し安定できれば、刀で勢いを殺せるんだがな・・・

 

「お、若干勢いが弱まってきて、ってもうすぐそこに壁が!?」

 

 まずいまずいぞ。壁とキスして宿屋でリスポーンとか、情けない死に方にも程がある!スキルリキャストは・・・終わってる、体勢も少しはマシになった、刀は振れる。ならいける!

 

「うぉぉぉ!スカイムーブクイックアームバレットスピンジャストパリィ!!!!!」

 

  一か八かの空中でどうにか使えそうなスキルの重ねがけ。とてつもない衝撃と負荷が刀と腕に降りかかる。そんな強大な力を、武具という存在の中でも繊細な部類である刀で真正面から受けた場合、どうなるかなんて想像に容易い。

 

 勢いが段々と弱まっていく衝撃の中に、一つの小さな破砕音が耳に届いその瞬間に、勢いは完全に消え去った。

 

 

「げぶ・・・っはぁ、はぁ、はぁ、今ので、生き残れる、もんなんだな、はぁ」

 

 スタミナが全消費されたことで荒ぶる息を整えつつ、ひとまず状況と場所を確認する。景色は、さっきいた場所とあまり変わらない。唯一違う点は、眼の前に光る苔だらけの壁があるだけだ。

 そして・・・手に持っているのは、見るも無惨にへし折れた水刃「流転」である。

 

「あぁ・・・無理な使い方をしちまったなぁ・・・これじゃあ鍛冶師失格だぜ」

 

 弟子が親方の打った武器を折るとか、恥晒しもいいとこじゃねぇか、くそったれ。本来想定のされてない動きをすれば、刀なんて繊細な武器はすぐに折れちまうってのに。何で俺は・・・・・ 

ん?何で壊れたはずなのにポリゴン状になって消し飛ばねぇんだ?

 敵も、アイテムも、そしてプレイヤー自身も、消費したり消えたりするときは等しくポリゴンとなって消えていたはずだ。武器だけ例外なんて、そんな変な話は無いだろうし・・・

 む、テキストと名称が・・・変化している?

 

・水刃「流転」破損

刃が半ばから折られた刀。

本来の力の半分以下の力しか出力できず、刻まれた力も失われている。

修復するには元となったモンスターの希少素材が必要。

 

「な・・・修復が、可能なのか?」

 

 てっきりぶっ壊れたらそのままロストするものだと思っていたが、そうだよな。作れんなら直すことだってできるよな。元となったモンスターってのが不安要素だが、直せる可能性があるってだけでだいぶ肩の荷が降りた気がするぜ・・・

 

 実際に肩の荷は降り、切羽詰まった状況から抜け出せたことにより安心したのだろう。インベントリから回復ポーションをとり、回復をし終えさぁ立ち上がろうと手を置いた場所が、

 

 不自然に光っていないことに気づかないくらいには。

 

 光っていない苔と手が触れた瞬間、まるで魔法のように周りの花や草の壁が消え去り俺を飲み込んだ。もちろん、疲弊しきっていた俺が反応できるはずもなく・・・

 

 

 

「ふぁ?」

 

 気づけば地面とキスをしていた。ロクに受け身も取れずに、派手にすっ転んだ。だが質感がおかしい。さっきまで俺がいたのは草花の生い茂る樹海だったはずだ。しかし、今俺の感じている感触は岩のようにゴツゴツとした感触のみである。

 

「いってぇなぁ・・・今ので死んでたらどうしてくれんだよ。せっかく死力を尽くして生き残ったってんのに、転んで死んでリスポーンは悲しすぎるぜ」

 

 頭を抑えながら立ち上がりつつ考えるのは、ここがどこなのかということだ。今のところわかっているのは、岩に囲まれた暗い場所にいるという断片的な情報だけ。このゲームに限ってバクなんて無いと思うが、いかんせん情報が少なすぎるな。

 

 そこでふと振り返ってみれば、白い光がこちらに差し込んできているではないか。

 

「お、あそこが出口っぽいな。となるとここは来ることを想定されていたエリアなのか・・・」

 

 確かにこのゲームは偶発的な要素とか複雑すぎる条件とかがてんこ盛りなゲームだとは思っていたが、流石にこれはやりすぎじゃないか?

 

 

 そんなこのゲームの闇を感じつつ、出口らしきところを出れば、あたり一面に赤い彼岸花が咲き誇っている非常に幻想的な空間へと出ていた。

 

「うっわぁすげぇ綺麗だな〜!千紫万紅の樹海窟もかなり綺麗な空間だったが、ここはそのさらに上を言ってる感じがするな」

 

 咲き乱れ散っていく花びら、空に光るは美しい満月、それとは対象的に中央にぽつんとあるのは枯れ果てた木一本のみ。ただ美しいだけじゃない、そこにかすかな悲壮感というか侘しさが感じられる実に良いエリアだ。

 

 

 魔導書のついでに買っていた回復ポーションを飲み干しながら、何かがありそうな中央の枯れ木へと歩みを進める。正直言って、このエリアで何かがあるとしたらあの枯れ木以外にはありえないだろう。何でかって?目立つオブジェクトが枯れ木以外に存在しないからだ。

 

 そんな考えのもと歩いていれば、枯れ木の下に人影が見えてきた。ほれ見たことか。

 

(にしたって何だありゃ?透けてる、女性?・・・ってことは、幽霊とかゴーストのたぐいか?)

 

 今まで相まみえたことはないが、ここまで広大な世界ならば幽霊なんてザラにいそうである、がしかしこんな隠しエリアに居る幽霊とか、ぜってぇ重要なNPCに違いねぇ。

 

 このチャンスは逃さんという心持ちで更に近づけば、俺の足音に気づいたのかその女性はこちら側に振り向いてきた。

 

 まず正面から対面して気づいたことだが、彼女が着ている服はまんま白衣である。今まで現代的な技術や物品をまるで見てこなかったためか、たかが白衣でもなかなかの衝撃が来るものである。

 次に容姿だが、三つ編みのサイドテールで髪を結ってあり、どことなく優しそうというか学校の保険の先生のような朗らかさを感じさせる容姿である。

 

 しかしながら、今の彼女は若干の困惑と心配?のようなものが目から読み取れる。なぜだ?

 

 

「外の方で凄い轟音が響いてたのだけど・・・・・もしかして、あなたがやったの?」

 

 ・・・この人の困惑や心配の理由をこの質問一つで理解できたわ。ひとまず俺がまず最初にすべきなのは、この誤解を解くところからしなければならない。話はそれからだ。

 

「あー、えっとですねぇ、あれは俺がやっというかクアッドビートルにやらされたというか・・・

クアッドビートルの突進攻撃を食らってここの壁に吹っ飛ばされそうになってですね、その勢いを相殺しようとした結果があれの原因というか、なんというか・・・」

 

「そ、そうなのね・・・その、見たところあのクアッドビートルの突進にあなたが耐えられそうには見えないのだけど、どうやって耐えきれたのか教えてもらってもいいかしら?

 

 あー、すげぇ怪しまれてるわ俺。そりゃとんでもない爆音が響いたと思ったら突然見ず知らずのやつがやってきて意味不明な言い訳をのたうち回ってたら、なんか怪しいって思うよな。俺でもそんな状況なら眼の前の人物を怪しく見ちまうぜ。

 

 とりあえず俺は折れた流転を取り出しながら、事の顛末を説明する。

 

「えっと、この刀とスカイムーブとかクイックアームとかのサポート系スキルをできる限り重ねがけして一撃を壁に打ち込んで勢いを相殺したら生き残れたって感じですね・・・・・あの?」

 

 自分でもめちゃくちゃだと思う事実を淡々と説明していると、彼女は俺の手元もとい折れた流転をまるでこの世あらざる物を見たかのような目で凝視していた。

 

「あのー、大丈夫ですか?」

 

「っあ、いえ、大丈夫・・・・・ただ、少し驚いていただけよ」

 

「驚く?」

 

 確かに明らかな初心者が持つには分不相応な装備だとは思うが、彼女の反応はそんなちゃちなことに対する反応にしてはかなりオーバーであり不自然だ。まさかレンギンと関係があったり?

 

「そういえば自己紹介がまだだったわね。私は遠き日のセツナ、気軽にセツナって呼んで頂戴」

 

 明らかに話をずらされた気がするが、自己紹介をされたんなら返さなけりゃ失礼だな。

 

「俺はテツギリ。セカンディルのレンギン工房の見習い鍛冶師だ。よろしく頼む」

 

 この名乗りかっこいいな。これからNPCに名乗るときはこう名乗ろうかな。流石にプレーヤー相手にこの名乗りをするのは少し気恥ずかしさが勝っちまう。

 

「セカンディルのレンギン工房の見習い・・・ということは、鍛冶師なのに一人でこの樹海窟に入ってクアッドビートルと戦闘をして生き残った・・・ってこと?」

 

「まっまぁ、そういうことになりますね」

 

 マジで文字に起こしたら俺相当イカれたやつなんじゃないか?鍛冶師のクセに腰に刀引っ提げて普通に冒険してんだけど。いやまぁ今のところ戦えてるし、できるだけ自分の力で素材を取りてぇしな。このスタンスは当分変わらんかな。

 

 そんな自問自答をしていると、遠き日のセツナもといセツナさんは先程の困惑だらけの態度から一転して、何かを決心すような堪えるような視線で俺を見つめて衝撃の一言を口にする。

 

 

「テツギリさん、お願いがあります。どうかあの人を・・・ウェザエモンを眠らせてあげてはくれないでしょうか?」

 

 頭を下げ発せられた言葉が告げられた瞬間に、俺の眼の前に一つのウィンドが出現する。

 

 

      『ユニークシナリオEX「此岸より彼岸へ愛を込めて」を開始しますか?』

 

 

 棚からぼた餅って状況を実体験すとは夢にも思わなかったな。吹っ飛ばされて流転がへし折れたときはなかなか堪えたが、まさかこんなサプライズがあるとは。

 

 ユニークシナリオEX。おそらくかなりハードなシナリオになるというのは想像に固くない。だが俺は、そんな難易度どうこうを差し終えてもこのセツナという女性を助けたいと思った。なぜか?     

 あんな切実な視線を送られちまったんなら、叶えてやりてぇと誰でも思うだろ。

 

  俺はウィンドに表示された『はい』のボタンを押す。

 

「その話、詳しく聞かせてください。まだまだ未熟な自分ですが、何か力になれるかもしれない」

 

 どんな苦難であろうと、必ず乗り越えてみせようじゃないか。

 

 

 

 

 

 

 

「それで、そのウェザエモンって方はどんな人なのですか?」

 

「ウェザエモン・・・・・彼は、私の恋人なの。ちょっとしたすれ違いで私が死んで・・・それからずっと、彼は私のお墓をずっと守り続けているの・・・私が死んだその日からずっと・・・」

 

 なるほど、ウェザエモンっていう人は相当セツナさんを死なせてしまったことを悔やんでいるらしい。自分の一生を墓守という役割に捧げているのだから、その後悔は計り知れないだろう。

 

「生きていた頃の私が死んで、どれだけ経ったのかは分からないけれど、気づいた時には私はこうなっていた・・・・別に私は死んだ事を未練に思っているわけじゃないの」

 

 話が読めてきたぞ。自分は未練が無いけど、ウェザエモンの方が未練がありすぎて覚悟が決まりまくってるから墓守の役割に終わりをつけさせた休ませたい、楽にしてあげたい、そんなところじゃないか?

 

「死とは終わり。終わってしまったものは過去であって、誰かの今・・・未来を縛るものではないわ。だから、私はあの人が今も私の(過去)に縛られ続けていることが耐えられない・・・」

 

 ・・・ニュアンスはあっていたんだがな。それに当てはめる理論がものすごく哲学的だった。

 既に死んでしまった者にとっては、その死をずっと引きずっている家族や恋人を見るのは、やはり辛いことなのだろうか。

 

 そして、今まで下がり気味だったセツナの視線が満月へと移る。

 

「彼は私が構築したプログラ・・・ええと、魔法を使ってここに結界を構築したの。月光の魔力を利用し、座標を次元の裏側に「反転」させることで誰にも干渉させないように」

 

 今のはとりあえず聞き流しておくとして、座標を次元の裏側に反転・・・難しく考えそうになるが、簡単に言えば俺らのいる世界を表、それを反転した別の世界を裏と定義したのだろう・・・

 やっぱ意味わかんねぇわ。

 

「でも月がその光を失う時・・・新月の夜だけは結界に綻びが出来る。彼のいる裏座標へと通じる綻びが生まれるの」

 

「そんでその綻びの中に飛び込んで、ウェザエモンと戦うってことですか」

 

「えぇ、その認識で問題ないわ」

 

 そう話を言い終えると、再びセツナが頭を下げる。

 

「どうか・・・よろしくお願いします」

 

「必ず、セツナ殿の願いを叶えると誓いましょう」

 

 この願いは、ただ願いのまま消えてはいけないものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「彼は・・・とても強いわ。あなたよりも強い子達が何人も集まって彼に挑んだのだけど・・・誰も彼には勝つことができなかったわ」

 

「え!?俺の前にウェザエモンに挑んだプレ・・・開拓者たちがいたんですか!?」

 

 まさかもう先に発見している人がいるとは・・・一体どうやってこんなとこを見つけたんだ?それに俺よりも強いプレイヤー達・・・おそらくクランだろうな。どこのクランなのかはわからないができれば協力していきたいところだな。

 

「それに・・・彼は自身の敵対者となるものの力を抑制する力があるの。だから・・・どれだけ熟練の開拓者であっても、彼の前では中堅レベルの力に落とされてしまう」

 

 力の抑制・・・レベル制限かステータス制限のどっちかだな。このレベルの力が使えるってことは、ウェザエモンってラスボス級の敵なんじゃ・・・

 

「できれば、アーサー・ペンシルゴンという開拓者を探して・・・きっとあなたの力になってくれるはず」

 

「さっき言っていた集団でウェザエモンに挑んだ内の一人ですか?」

 

「えぇ、私の親友で、あの中だったら一番信頼してる人だわ」

 

 アーサー・ペンシルゴン・・・とにかくこのプレイヤーを探してどうにか事情を説明して仲間にしてもらう他無いな。

 

「他に質問はある?」

 

「えっと、じゃあ最後に、あなたはずっとここにいるんですか?」

 

 この悪く言えば花と枯れ木しか無いこの空間に、この人はずっと一人でいたのだろうかと、少し気になった。地縛霊のような存在だと言われたらそれまでだがな。

 

「・・・えぇ、私はずっとここにいるわ。でも、あなたたちからは魔力の満ちる満月の日じゃないと私のことが見えないの」

 

 ・・・まさか、このイベントの発生条件が月の満ち欠けで決まるってことか?つまり半月や新月の日じゃそもそもクエスト自体発生しないと・・・恐ろしすぎる。

 

「そうなんですね・・・貴重な話をありがとうこざいました。必ず、あなたの願いは叶えます」

 

「ふふ、期待しています」

 

 

 

 改めて決意を言葉にし、特殊エリア『秘匿の花園』の出口へと向かう。

 とにかくこれからやることは、レベル上げ、スキル・武器の取得、アーサー・ペンドラゴン捜索の3つ、おまけでクアッドビートルへのリベンジといったところか。目標や行動方針が決まると人は行動しやすくなるからな。

 

 裏面から見ても一箇所だけ不自然に輝いていない苔の壁に触れた瞬間に、虹の森が視界いっぱいに広がる。秘匿の花園とは正反対な空間をイメージしてデザインしたのだろうか?

 

 

 とにかくこの樹海窟を突破しようと思いいたり、数分歩いた地点で異変に気づく。そう、あまりにも敵エネミーがいないのだ。ストレージパピヨンはもちろんのことエンパイアビーすら一匹も見当たらない。

 

 「誰かが狩っていったのかねー、にしたって狩りすぎだと思うが・・・うん?何だこの音?」

 

 ここは樹海窟、つまり閉鎖された空間だ。そんなところでこれは・・・風切り音?しかも、だんだん近づいてきている!

 

 すぐさまインベントリから澄晴を取り出し、振り向きざまに抜刀する。

 その瞬間目に入ったのは、黄色と黒色のオーラを纏った槍が眼の前まで迫っている光景だった。

 

(間に合わん!!!)

 

 ほぼ目の前にまで迫った槍を躱すことは不可能である。だが、逸らすことなら可能なのである。 

 

 槍と刀が数刻重なり合う。刀はどうにか槍の軌道を逸らそうとするが、槍は少し軌道が斜めに変わっただけで、テツギリが刺されないという運命を打破することはできなかった。

 

「グッッ・・・」

 

 槍はテツギリの鳩尾部分から少しズレて腹部へと突き刺さっていた。そして数秒後、槍が引き抜かれたと同時にテツギリは前方に倒れ込む。

 

「いやーびっくりしたよ。まさか私の奇襲に君が反応してくるとは思わなかったからさぁ」

 

 俺を槍で突き刺したのは、紫の髪に端正な顔、レア度の高そうな革防具に身を包み、禍々しい色合いの槍を携え、名前の横に髑髏・・・PKプレイヤーの証のマークを付けた・・・

 

「君、阿修羅会の人間じゃないでしょ?どういう経緯であのエリアを見つけたのか、お姉さんに今節丁寧にまるっきり全部話してくれないかな?」

 

 アーサー・ペンシルゴンその人であった。




セッちゃん目線だったらね、アーサーは優しい友達みたいな感じだからね、認識の齟齬が出ちゃうのは仕方ないことだったんだよ・・・豹変しすぎじゃねぇか?

唐突で悪いのですが、皆様は主人公の身体欠損には肯定的ですか?特に他意はないです

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