リアル鍛冶師のおっさんが刀匠へと至るまで   作:バナナラッシー

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十字架は背負うものではなく一方的に刺されるものです。


腹に刺さるは鉛筆という名の十字架

「さて、まず最初に聞きたいのは・・・どうやってあのエリアを見つけたのかなぁ?」

 

 首筋に槍を突き立てられながらも、俺は必死に考える。アーサー・ペンシルゴン・・・こいつは間違いなくセツナさんの言っていた、力になってくれる可能性のある開拓者(プレイヤー)のことだろう。しかしPKプレイヤーのクランが独占しているシナリオだとは・・・

 

 だが、ここで協力関係を結べればシナリオ達成への近道になるやもしれん。とにかく、まずはこの状況をなんとかしなければ話にならん!

 

「・・・クアッドビートルとの戦闘中に吹っ飛ばされてな、吹っ飛ばされたところで壁に手をついたら秘匿の花園への道が開通したってだけの話d、グハッ!?」

 

 俺が必死の弁明を図っていると、言葉を言い切る前にアーサー・ペンシルゴンは俺の背中を踏みつけ、更には首元にまで槍の刃の部分を近づけた。

 

「嘘つくにしたってもっとマシな嘘をつけないのかい?そんな絵空事にかまってあげられるほど私も暇じゃないんだけどなぁ」

 

 ・・・まぁ、嘘だと思うよな、俺でもこんな話聞いたら嘘だと思うだろう。しっかしどうしたもんかねぇ。現状ここから抜け出す方法もわからんし、何で倒れてんのかもわから・・・む?このHPとMPのバーの下のマークはなんだ?なんか点滅してるし・・・ってまさかこれって!

 

「うちのクランも今あのユニークの扱いで実質二極化しててさぁ、ここでまた新しい火種を生むのはこっちとしても困るんだよねー」

 

「・・・あんたらと俺で協力関係にはなれねぇのか?」

 

「君と?うーん・・・・・・無理かな。だってこっちにメリット無いし」

 

 少しの間を置いて、至極真っ当な理由での拒絶が返ってきた。確かに、自分達でも刃が立たなかった相手に挑んでるってのに、完全な初心者を仲間に向かい入れようってのは無理な話だろう。

 

 だがよぉ、まだ挑戦すらしてねぇのに無理だって決めつけられんのは癪に障るよなぁ?

 

「はーぁ、吐かないならしょうがないか。一旦君を殺してからまた方法を考えるとするよ」

 

 そう俺に言い放つと、禍々しい色をした槍の刃が高く振り上げられ俺の首元へと迫りくる。何のオーラも纏っていないシンプルな一撃、だが俺の首と体を分断するには十分すぎる攻撃力を秘めていることが分かる。・・・・・・・時間稼ぎはこんくらいで十分だ。

 

「バレットスピン!!!!」

 

 スキルの起動音とともに俺は地面を激しく転がる。転がっている身としては視点が中々グロッキーだが、今更そんなことを気にする必要はない。今は命が繋がっただけでも感謝だ。

 

 

 草花を撒き散らしつつもアーサー・ペンシルゴンとある程度距離を作ることができた。すぐさま刀に手を掛け警戒態勢をとる。また捕まりでもしたら今度こそどんな目に合わされるか皆目見当もつかねぇからな。

 

「・・・まさか、もう麻痺の効果時間が終わっていたなんてね。やっぱ刺す部位によって効果時間が変わるってのはかなり使いづらいかなー」

 

「冷静だな、逃げられるかもしれないってのに」

 

「逆に逃げ切れると思ってる?」

 

 刹那、アーサー・ペンシルゴンの姿が視界から消える。しかしそれはスキル発動時のオーラどころか、音や気配さえ感じさせない、本当にこの場から一瞬で消え去ってしまったかのような現象であった。

 

 ・・・・・・あれだけシナリオを秘匿しようとしていたやつが、こうもあっさりと退散するとは思えない。だが現状、まったく攻撃の気配が感じられないどころか、呼吸音や草を踏みしめる音すら聞こえないというのもまた事実。・・・・・いっちょ、賭けをしてみるか。

 

 

 昔のMMORPG系のゲームにも、あの手の尋問や拷問を得意とするやつは結構いた。そして、その手の奴らは皆一様にして謀略や策略が大好きな、知力タイプのプレイヤーだった。

 

 おそらく、アーサー・ペンシルゴンもその手のタイプのプレイヤー。なんならそこに、自分の力である程度物事をこなせるフィジカルまでついてやがる。断片的な情報で戦うのは中々怖いものがあるが、もしそうだとするのなら・・・

 

 その瞬間、一つの風切り音が後方から迫ってきた。

 

 明らかに武器による攻撃だ、がしかし・・・・・・あまりにも()()()()

 

「一艘飛び」

 

 スキルにより通常のジャンプよりはるかに高く飛び上がる。ただの後ろからの奇襲ならこれで回避成功だが、俺は迷わず空・・・ではなく天井を見上げながら抜刀する。するとあら不思議、さっき消えたはずのアーサー・ペンシルゴンが槍を構えながら落ちてきてるではないか。

 

「んなっ!?」

 

「やっと余裕そうな笑みが崩れたな?アーサー・ペンシルゴン!」

 

 迫りくる槍の側面を思いっきり刀で弾き飛ばす。その瞬間、槍ごとアーサー・ペンシルゴンが派手に横方向へとかっ飛んでいった・・・軌道を逸らすだけで良かったんだが、ちょっと当たり所が良すぎたな。

 

 

 

 地面へと着地しアーサー・ペンシルゴンが吹っ飛ばされたであろう場所へ行けば、既に体制を立て直した後だったようだ。もう槍を構え直している。さすがはプレイヤーキラーと言うべきか・・・対人慣れしているな。

 

「・・・どうして私の奇襲がバレたか、教えてくれたりはしないかい?」

 

「さぁな、たまたまだ」

 

「随分と適当なはぐらかしだねぇ・・・」

 

 そうしてまた両者が武器を構え、駆け出そうとした瞬間。その一瞬の静寂を切り裂くかのように響き渡る巨大な羽音が両者の間に割り込んだ。

 

 ドォン!!!という木々を砕く破砕音と共に現れたのは黒く光り輝く甲殻を持ち、俺をこの辺境までふっとばした挙句、水刃「流転」をへし折った張本人ならぬ張本虫、クアッドビートルそのものであった。

 

「おいおいおい、なんで今あいつが飛んでくるんだよ!」

 

「うげぇ、あいつ槍が通りにくいから嫌いなんだよなー。ここは逃げさせてもらうとするよ」

 

「あ、おい待ちやがれ!!」

 

 クアッドビートルに気を取られているうちにアーサー・ペンシルゴンは何らかのスキルを発動したのか、カメレオンのように姿が背景に溶け込み、完全に見えなくなった。

 

 

 さて、実質一人なったと言っても過言ではない状況で眼の前にモンスターがいれば誰にヘイトが向くかなんて、一目瞭然だよな?当然、俺に向いてくる。

 

「すぅーー・・・・・・っち、仕方ねぇ。ここでリベンジマッチ開催と洒落込もうじゃねぇか」

 

 そそくさと逃げていったあの外道については一旦忘れよう、まずは眼の前の宿敵に集中だ。澄晴を構え、いつでも攻撃、守備ができるように神経を研ぎ澄ます。

 

 刹那、クアッドビートルが羽を震わせ俺に目掛けて猛烈なスピードの突撃を繰り出してきた。だが今回は奇襲ではない、正面からの突撃だ。であれば、返せない道理は・・・ない!

 

「ジャストパリィィィィ!!!!」

 

 前回のレベルアップと同時に生えてきたスキル、ジャストパリィ。樹海窟を散策する中で何度か使ってきたが、こいつは中々に使い勝手のむずいスキルだ。効果だけを見れば大抵の物理攻撃を無効化してくれる便利スキルなのだが、いかんせん判定がシビア。しっかり攻撃を受け流せる体勢でかつタイミングよく攻撃に当てないと発動が失敗する。

 

 しかしだ、変則的な攻撃ならいざ知らず、突撃なんかの直線的な攻撃なら・・・

 

ガキィン!!!

 

 爽快なクリティカル音とともに三角状のエフェクトが波紋のように広がる。そこから剣道で言う返し胴の要領でクアッドビートルにカウンターを加える。

 

「って硬ってえなぁてめぇの甲冑は。傷一つ付いちゃいねぇじゃねぇか」

 

 やはりただの斬撃じゃ駄目か・・・ならば次はこいつだ。

 

 そうしてインベントリから取り出したのはグラップルと白銀鋼のツルハシ。あいつの甲殻を見たときから思ってたんだ、鉄みてぇな質感だなって。なら、水晶大蝦蟇(クリスタルフロッグ)のように採掘・・・はできなくとも砕くことはできんじゃねぇか?

 

 ダメ押しのフロストエンチャントをツルハシに付与しつつ、グラップルを使い高い木の枝へと移動する。チャンスは一回、高所からの落下攻撃からのスキルであいつの甲殻を破壊する。幸い、ツルハシでも大乱撃なんかのスキルを使えることは確認済みだ。

 ツルハシは一振り一振りのスタミナ消費がデケェからな。外れれりゃそのままお亡くなりだ。

 

「そんな目で睨むなよクアッドビートル。今そっちに降りてやるから、な!」

 

 グラップルを使い、そこら中にある木の枝に引っ掛けては移動するを繰り返す。じわじわと、しかし着実にクアッドビートルとの距離を詰める。クアッドビートルが一瞬でも俺を視界から外したとき、そこが一番の攻撃チャンス・・・!

 

「!ここだぁーー!!!」

 

 クアッドビートルが高速で周りを移動し続ける俺を目で追いきれなくなり背を向けた瞬間、俺はグラップルでの移動をやめ、ツルハシを構えながらクアッドビートルの背に向かって落下する!

 

「うぉぉぉ!アーマーブラストからの大乱撃!!!」

 

 アーマーブラストで装甲など似たするダメージを上げ、落下エネルギーとスキルによる連撃で甲殻を破壊しにかかる。

 

 一撃目、甲殻にヒビが入る。

 

 二撃目、甲殻のヒビが広がる。

 

 三撃目、甲殻に穴が開き傷口が凍結。

 

 四撃目、凍結した箇所事砕く。柔らかい部分にツルハシが刺さる。

 

 その瞬間、クアッドビートルが激しく暴れ出す。生身に攻撃が届いて焦ったのだろうか、突然の動きに俺は対応できずクアッドビートルの背から振り落とされる。白銀鋼のツルハシを残して。

 

「がは!?・・・・・・っち、ここまでか」

 

 HPはもうミリ、スタミナは枯れ果て、手に残っているのはクアッドビートル相手には効果の薄い澄晴のみ。これは完全に、詰みってやつかね。まだクアッドビートルは暴れているが、いずれ落ち着いてきたらまず真っ先に俺を攻撃してくるだろう。そのときに俺が出せる手札があるかと言われれば・・・まったくないな、全て出し尽くしてこれだ・・・潔く負けを認めるしか・・・

 

 

 

 

 ・・・こんなところで諦らめんのか?今の俺の目標はセツナさんの願いを叶えることだ。墓守のウェザエモン。ユニークシナリオEX、名前、世界観との親和性、どこをとってもクアッドビートルとは比較にならんくらいの強敵であることは間違いない。そんな相手に挑むってんのにこんなところで野垂れ死んでなんか・・・いられねぇよなぁ?

 

 俺が澄晴を鞘から抜き立ち上がれば、ちょうど暴れ状態の解除されたクアッドビートルが静かに俺を睨みつけていた。実にいい目だ、闘志が燃えたぎっている。俺も見習わなければな。

 

「俺ぁ・・・墓守のウェザエモンを倒すためにここに立っている・・・そのための道がどれだけ困難な道だろうと・・・踏破してやるよ!!!」

 

 啖呵を切り、いざ決死の覚悟で突撃しようと瞬間、俺の耳元でここで聞こえるはずのない声が聞こえてきた。

 

「その言葉、しっかり心に刻みなよ?テツギリ君」

 

「なっ・・・」

 

 俺の横を猛スピード駆けていったプレイヤー・・・アーサー・ペンシルゴンは足にオーラを宿したかと思えば、一艘飛びをはるかに上回る高さまで飛び上がり、クアッドビートルの背に乗ったかと思えば・・・

 

日差しの穂先(スピアオブサンレイズ)!」

 

 ものすごい光とともに、俺の開けた穴に槍を突き立てた。直後、今まであれほどまでに活発に動いていたクアッドビートルが動きを止め、ポリゴンとなり爆散した。

 

「さてテツギリ君、今君は私に聞きたいことがたくさんあるって顔をしているね」

 

 優雅さすら感じさせる手つきで槍を仕舞うと、クアッドビートルの素材をこちらに突きつけながら俺にこう告げた。

 

「実は私も今君に聞きたいことがたくさんあってさー。この素材はあげるから、少し時間をくれないかな?」

 

 ・・・おかしいな。相手は満面の笑みのはずなのに、寒気がしてきたぞ?

 

 

 

 俺は大人しく素材を受け取り、アーサー・ペンシルゴンに付いていくことにした。自分で言っちまったからな、どれだけひでぇ目にあわされても耐えきってやるさ。

 

 ・・・拷問とかされたら即逃げてやる。




もうね、テツギリのアーサー・ペンシルゴンに対する印象は「外道」に固定されちまいましたよ。
「悪辣魔王」になる日は来るのかな?

唐突で悪いのですが、皆様は主人公の身体欠損には肯定的ですか?特に他意はないです

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