リアル鍛冶師のおっさんが刀匠へと至るまで 作:バナナラッシー
「なあ、あんた今どこに向かってんだい?サードレマにいい店があるからって逆戻りしたかと思えば、ここどっからどう見ても裏路地だぜ?こんなところに店があるっていうのか?」
そう俺は眼の前を歩く俺をここにつれてきた張本人に問いかける。すると、返ってきた返答は思いの外あっさりとした返答だった。
「PKプレイヤーが表立って街を練り歩けると思う?それに、下っ端とかならいざ知らず、私みたいな有名人はもう人が集まっちゃってしょうがないんだよ」
「それ絶対お前に恨みを持ってる奴らが殺りに来てるだけだろ・・・」
「どうだろ、皆泣きながらこっちに走ってくるから、私の美貌に感動してるだけじゃない?」
こいつは素でこんなことを言ってんのか?ロールプレイングだと信じたいところだが、多分これが素なのだろう、うん。交渉の仕方とか戦い方でだいたい察せられる。
そうこうしている内に、本当に店らしきものが見えてきた。名前は・・・『蛇の林檎』か。
「ほら、ちゃんとあったでしょ?」
「あぁ、それはわかったけどよぉ、この店にあんた入れんのか?PKってこういう店には入れないイメージがあるんだが・・・」
「心配ご無用、なんてったってこの店はPKでも入れる珍しいタイプのお店だからね。私たちPKにとっては、全然客は来ないしPKも入れるしで会合にはもってこいの場所なんだよね」
「へぇー、そういう店もあるのか」
言うなれば、ならず者たちが集まる酒場みたいな感じなのか?だとしたら男として中々くるものがあるな。昔憧れていたことがこんな形で叶うことになるとは・・・
OPENと書かれた看板のかかったドアを開けば、カランと鳴るベルとともに閑散とした店内が視界一面に広がった。内装はthe・洋風といった感じで、一人グラスを拭いているマスターらしき人物が、より雰囲気を引き立たせている感じがする。
「マスター、いつのものやつ2つで」
「・・・」
なんだ今のシーン、まるで海外の古い映画みたいじゃないか。めちゃくちゃかっこいい。いつものやつで通じてるし、マスター無言で準備始めてるし、すげぇなシャンフロ。
話し合い、及び取り調べは壁際の二人用の席で行われた。席についた瞬間にマスターからのサービスでドリンクが置かれたが、いつの間にこんなもの作ってたんだ?
「さて、まず最終確認だけど、本当に君が秘匿の花園を見つけたのは偶然なんだよね?」
「ああ、何度も言ってるが本当に偶然だ。自分でも信じられないくらいにな」
「うん、まぁ一旦はその言葉信じることにするよ」
・・・・・・苦虫を噛み潰したような顔になっていることは黙っておいてやろう。俺もあの話をどうにか信じるしか無いと思ったらあんな顔になるだろうから。
「はぁー、とりあえず、簡潔に自己紹介をしよう。私はアーサー・ペンシルゴン、職業は魔槍使いで、所属クランは阿修羅会、一応副オーナーをやってるよ。よろしく」
「ご丁寧にどうも。俺はテツギリ、職業は鍛冶師で、クランではないがNPCの師匠に弟子入している見習いだ。よろしく頼む」
中々良い自己紹介ができたと思っていると、なぜか眼の前のアーサー・ペンシルゴンの動きが突然の石のように固まり動かなくなった。
「うん?どうかしたか?」
「え!?あ、いや、その、もう一回職業のところを言ってもらえない?」
「え?普通に鍛冶師だが・・・」
するとアーサー・ペンシルゴンは信じられないものを見るかのような目で俺のことを見てきた。
「け、剣士とか盗賊とかじゃなくて、鍛冶師?本気で言ってる?」
「本気も何も、俺は正真正銘の鍛冶師だぞ?」
俺は証拠として自身のレベルや職業なんかが記入されているプロフィールウィンドウをアーサー・ペンシルゴンの方へと表示する。
「うわぁ、本当に鍛冶師じゃん。え、じゃあなんで鎚じゃなくて刀を使ってるの?鍛冶師はハンマー系以外のスキルを覚えられないのに」
「いやだって、自分で作ったり育成した武器は自分で使いたいもんだろ?」
「その意見に賛同はするけど、実行に移せるような胆力を持ったプレイヤーは見たこと無いなぁ」
ふーむ、意外とハンマーとか鎚以外を使う鍛冶職プレイヤーは少ないのか?やっぱスキルを取得できないってのがキツイのかねぇ。このゲーム、スキルがかなり強いタイプのゲームっぽいし。
「まぁ、テンパらせてる側の俺が言うのも何だが、そろそろ本題に入らないか?ほらちょうど頼んでたやつも来たみたいだし・・・って早くね?」
音もなく迅速に置かれていくケーキにただただ驚愕していると、マスターは軽く礼をしてからカウンターへと戻っていった。マジで何者だよあのマスター。
「・・・そうだね、じゃあ早速だけど、君は墓守のウェザエモン、ひいてはユニークモンスターについてどこまで知ってる?」
「墓守のウェザエモンについてはセツナさんから軽く聞いたが、ユニークモンスターってのは何だ?字面からして強いということくらいしか伝わらんが」
「ユニークモンスター、別名七つの最強種。その名の通りこの世界に七体しかいないラスボスレベルの最強エネミー。今公に発見報告が出てる2体だけでも最上位レベルのプレイヤー達が皆一様に瞬殺されるくらいにはヤバイやつらの総称だよ」
「オーケー、わかりやすくまとめてくれてありがとう。とりあえずヤバいってことだけ分かれば十分だ。・・・・・・なぁ、なんで今そのユニークモンスターについての説明をしているんだ?」
ものすごーく嫌な予感がするぞ?ほら見ろ、あからさまにこいつがニマニマしだしたじゃないか!明らかに初心者には荷が重そうな言葉がのしかかりそうな気がする!
「墓守のウェザエモンは、公には報告されていないユニークモンスターだよ」
「・・・っスー・・・・・・ちなみに、ユニークモンスターの中だとどのくらい強いとか、そういう感じのやつってありますかい?」
「う〜ん、私の知ってるユニークモンスターは三体しかいないけど、その中なら一番強いんじゃないかな?他2体もそんなに詳しい情報はないから断定は不可能だけどね」
俺は無言でペンシルゴンの注文したケーキを口に運ぶ。この世界では中々味わえなかった砂糖による現実に近い味わいに舌を弾ませつつ、過酷な現実から目を背けようと・・・
「私、嘘つくやつと有言実行しないやつが一番キライなタイプでさー、眼の前にそんなクソ野郎がいたら、私何をしでかすかわかんないなー」
こいつ、わかってて言ってやがるな。俺が非協力的な行動をしようもんならこいつは何が何でも俺を破滅の道へと引きずり込もうとするだろう。・・・だが、こいつがあの場で俺を殺さずにこの場で話し合ってるってことは、何かしらの勝算や打算があるのだろう。うん、無ければ詰みだ!
「俺も嘘つくやつや、挑戦せずに物事を諦めるやつが嫌いでな。まずは墓守のウェザエモンについての情報をご教示願いたいんだが、どうかな?」
「もちろんいいとも!協力的なプレイヤーは大歓迎さ!」
「うーん胡散臭い」
「教えを願っておいてその態度はどうなのかなー?」
なにはともあれ、まずは情報がなきゃ判断すらできない。とりあえずは、墓守のウェザエモンについて知ってることを全部教えてもらわなきゃな。
「まず最初に、ウェザエモン相手に集団戦は意味をなさないってことを念頭に入れておいてほしいかな。数で押し勝とうなんてことは通用しないよ」
「まるで経験してきたかのような口ぶりだが、戦ったことがあるのか?」
「戦ってなかったらこんな説明できないでしょ。まだ阿修羅会にまだ攻略意欲があったときに上位十五人で討伐隊を組んで何回か挑んだけど、フルボッコにされただけだったね」
対人戦に強そうなPKクランの精鋭たちでも瞬殺とは・・・墓守のウェザエモンってのはどんだけいかれてんだ?・・・
「今の阿修羅会には攻略意欲がないのか?」
「あー・・・、まっいいか。前にうちのクランは実質二極化してるみたいなこと言ってたじゃん?実はその分断でうちの主力の奴らが抜けちゃってね。いま阿修羅会に残ってるのは、今の君でも倒せるような豆粒くらいだよ」
「話が読めないな。主力が抜けるくらいにひどい分断なんてそうそう起こるもんじゃないだろ」
「簡単に言っちゃえば、ユニークモンスターとの遭遇時に手に入るステータスポイントの独占にクランのリーダーが舵を切り出してね、それをつまんねって思った主力陣がクランから抜けた。ただそれだけの話しだよ」
「そんな仕様があるのか。ちなみにそのポイントの量ってのは?」
「一回につき20ポイント。」
「・・・独占しようとするのも頷けるな」
中々エグい仕様だな。遭遇するだけでステータスポイントが20も手に入るってのは、単純に考えば1遭遇につき4レベルアップということとイコールだ。普通のゲームならまずゲームバランスが崩れるだろうな。
「でもさぁ、わざわざ抜けていった連中にまで箝口令を敷くくらい徹底して隠すのは、ゲーマーとしてどうなのって感じがしない?」
「少なくとも昔のMMOなら非難と暗殺祭りになっていただろうな」
隠すのも独占するのも、その行為自体は当人たちの自由だが、利益ばかりにかまけてゲーマーとしての心意気を見失ってしまうのはいただけないな。そっちがやらないなら俺が、私が、ってなるのも十分頷ける。
「だから私たちでウェザエモンは倒しちゃおうって話なんだけど、まだ準備も何もできてないからできることは限られるんだよねー」
そう言いながらペンシルゴンはケーキを頬張る。まぁ確かに、今の俺のレベルは大台の30を超えて33レベルだが、明らかにユニークモンスターに挑むようなレベル帯ではないだろう。
「俺の今のレベルが33なんだが、どこまでレベルを上げるのが理想的だ?」
「レベルについてはあんまり気にしなくてもいいよ。あいつと戦闘になると、レベルがカンストしてるやつでも強制的に50レベルにまで下げられるから、レベル50まで上げておけば問題なし!」
さらっととんでもない能力が暴露されたな。強制的なレベルダウンってもうラスボスとかが使ってくる技じゃねぇか。だが初心者の俺にとってはありがてぇな。後17レベル上げれば最低ラインには立てるってことがわかっただけでも僥倖だ。
「他にもヤバい技は結構あるんだけど・・・どうせなら実物を見てどう感じたかを言ってほしいんだよなー」
「お前、俺にウェザエモンについての情報を教えてくれるんじゃなかったのか?」
突然こいつは何を言い出すんだ?初心者に初見で化物に向かわせるのは、はっきり言って殺害宣告と等しいと思うんだが違うか?
「いやぁー、それよりもこっちのほうが面白そうだからさー。それに次の満月の日はちょうどクランメンバーがウェザエモンのいるエリアに来れない日なんだよねー」
「・・・あんた、図ったな」
最初からこいつを信じていた俺が馬鹿だったのかもしれないが、こいつはこういうやつだってことをすっかり忘れていた。とりあえず俺に初見で突撃させてその反応を楽しもうとかそういう魂胆だろう。まじで良心をどこにかなぐり捨ててきたんだ?
「まぁまぁ、その代わりに実入りがいい経験値の稼げるスポット教えてあげるからさー」
「・・・情報はくれるんだろうな」
「目と肌で感じてきた方が信憑性が増すタイプの情報だからさ・・・ね?」
うまく言いくるめられた気がしないでもないが、たしかに実際で体験した方が見えてくるものもあるというのもまた事実。無謀な挑戦をするのもありかもしれないな。
「はぁー、わーった、やってやるよ。なんなら初見攻略してあんたのやりがいを奪ってやる」
「それは実に頼もしい言葉だねぇ」
そう言いながらペンシルゴンは立ち上がり2人分の会計を済ませ出口へと向かう。この場合は俺が奢られても許されるよな?
「最後にフレンド登録をさせてくれない?後々の連絡手段が欲しいんだ」
「初めてのフレンドがあんたかよ・・・」
「ふふ、感極まってむせび泣いてもいいよ?」
「遠慮しておこう」
そうして俺のフレンド欄に初めてプレイヤーネームが載った。昔やってたゲームではあまりフレンドを作らなかったが、今回はどうなるかな。
「これでも君に期待してるんだ。良い働きを願ってるよ」
「自分から仕組んでおいてよく言うぜ・・・」
そうして俺とアーサー・ペンシルゴンは分かれた。
とりあえずはこの地図の場所でレベル上げかねー。
ペンシルゴン:サンラクくんとカッツォ君は今何してるかなー
唐突で悪いのですが、皆様は主人公の身体欠損には肯定的ですか?特に他意はないです
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yes
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no