リアル鍛冶師のおっさんが刀匠へと至るまで 作:バナナラッシー
テスト期間なんてもっと嫌ですよね?
もう勉強なんていやいや。
「はは・・・こいつはすげえ・・・」
本日二度目の感嘆である。まさか今のゲームがここまで進化しているとは思わなかった。
「ディスプレイの中の世界がそのまま現実になったみたいだ。」
たくさんのプレイヤー、おそらくNPCが呼び込みをしているだろう掛け声、まるで現実そっくりの
土や草のにおい、かすかに感じる風。どうなってやがるこのゲームは。
とりあえず、いったん落ち着ける場所が欲しいな・・・
手ごろなベンチを見つけた俺は、とりあえずの基本操作を学んでいた。
「はいはい、手をすっと引くと出る感じね・・・あ、出た」
とりあえず自分のステータス画面を開いてみた。
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PN:テツギリ
LV:1
JOB:鍛冶師(鎚使い)
3,000マーニ
HP(体力):30
MP(魔力):10
STM(スタミナ):30
STR(筋力):25
DEX(器用):10
AGI (敏捷):5
TEC (技量):20
VIT (耐久力):1(7)
LUK(幸運):10
スキル
・武装鍛造
・アイアンスマッシュ
装備
右:見習いの鎚
左:なし
頭:なし
胴:放浪の外套(VIT+3)
腰:放浪の袴(VIT+3)
足:草履
アクセサリー:放浪の竹笠
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まず魔法は使う気がないので最低値に、スタミナと筋力を高めることで一撃一撃を重たく、
ヒット&アウェイ戦法がやりやすいようにした。器用と技量は鍛冶で使う可能性があるので少し高めに割り振った。敏捷が5なのは色々削っているから仕方がない。幸運はほとんど適当だ。うん。
耐久と体力はいらない。すべて弾き飛ばせばいいからな。
「それよりもこのスキル、『武装鍛造』・・・絶対これが鍛冶用のスキルだろ。」
もうわくわくが止まらない。頭の中ではすでにどんな刀を作ろうか考え始めている。
「えぇっと、なになに・・・スキル熟練度、設備の質、素材のリソースによって武器の効果や性能が強化される。鍛冶には二つのやり方があり、システムに登録されている物を作ったり少し改造したりするか、完全マニュアルで自分の思考と手の動きで武器を作ると…」
え?絶対後者のほうがいいじゃん。マニュアルの方が性能が上がるし、自分が好きなように形を作ることができるってことだろう?
確かに量産ができないというデメリットがあるが、そんなの作りまくればいいだけじゃないか。
ここで注釈をいれさせていただこう。本来マニュアル操作だとかなりの時間や頭を使うため最初は皆システムに登録されているものから作り始めるのだ。
しかしこの男は現実の厳しい鍜治場の中で常に頭を使いながら正確に、そして素早く形を整える
作業に慣れてしまっているため、感覚がくるってしまっているのだ。
「そうと決まれば、さっさと基本の準備をして鍛冶をするぜ!」
「鍛冶屋?こんな田舎にそんなもんはねえよ。」
「え?」
頭が真っ白になった。
とりあえずマップを購入しなきゃ何も始まらないと思いアイテムショップに寄ったんだ。
そこでさ、さりげなく「ここら辺に鍛冶屋ってありませんかね?」と聞いてみたんだ。
そしたらこの返答だ。
「いやほらあの武器とか作る鍛冶屋ですよ?流石にこんだけ広さがある街にないなんて・・・」
「だからこのファステイアには鍛冶屋なんて専門的な店はねえよ。」
「いやでもあの屋台とかには武器が・・・」
「あれはセカンディルからの輸入品だよ。マップだと、『跳梁跋扈の森』を超えたとこだ。」
「じゃあここで鍛造したりとかは・・・」
「あぁ、ないな。」
絶望である。明らかにチュートリアルの町なのに、スキルとかについては教えくれたのに。
なんで鍛冶系は次の街に持ち越しなんだ。
「兄ちゃん、見たところ鍛冶師だろう?セカンディルならある程度の設備は整っているはずだから鍛冶ができると思うぞ。あそこの近場には『四苦八苦の沼荒野』があるしな。」
「四苦八苦の沼荒野?」
なんだその絶対めんどくさいって分かるゾーン。
「なんだ、知らないのか?武器に使えるような鉱石が取れる沼地だよ。あそこの鉱石でできる武器はどれも頑丈だって評判だぜ。」
頑丈かぁ。なるほど、どの鉱石ごとにもいろんな特性があるってかんじだな。
いくら何でも細かすぎると思うが、これならたくさんのパターンが楽しめそうだ。
「鍛冶師を目指す兄ちゃんに一ついいことを教えてやろう。何でも四苦八苦の沼荒野には夜になるとそこにあるたくさんの鉱石を取りこんだ主が現れるって噂があるんだ。」
「主?そいつは強そうだが、その主が何だってんだよ?」
「ここから本題だ・・・なんでもその主はため込んだ鉱石が胆石となって体の中で合金化してるらしいぜ。そんな鉱石で武器を作ったらどうなっちまうんだろうなって話だ。」
合金、それはリアルで何でも聞いている言葉だ。形や模様によっては合金を使って形成しやすくしたり、逆にがちがちに固め合わせて頑丈にしたりする。
そしてここはゲームの世界だ。主ってのはおそらくボス的なモンスターなんじゃないか?
そんなボスのドロップ品ならさぞいい性能の武器を作れるだろう。
「そいつはいい情報を聞いた。ありがとな、おっさん。」
「いいってことよ。」
俺は気前のいい店主に別れを告げ、店を出た。
・・・なぁ今のって本当にNPCなんだよな?
なんか問答の受け答えとか、噂話をこそっと教えてくるしぐさとか、人間よりも人間してるんですけど?
「俺は今、とんでもない時代を生きてんのかもしれないな。」
ともかく、鍛冶への道は開けた。いざファステイアにレッツゴー!
って、そんなすぐに行けるわけないですよね。
今俺の目の前には、それこそディスプレイの中でしか見たことがなかった化け物がいた。
そう、『ゴブリン』である。
「あの餓鬼のようなフォルム。手に持ってるのは石の斧。まんまゴブリンだな。」
やはりまだチュートリアルのようだ。どんなゲームでもゴブリンは雑魚扱いなんだな。
「ウギャギャ!」
「おっと危ない・・・とりあえず、この世界での戦闘に慣れないとな。」
沼地の主の胆石が武器なれるんだから、どんなモンスターでも武器になれるんだろう。
その中にはボスモンスター的な存在だっているかもしれない。
なら、そいつらに勝てるようになるためにまずは慣れなければならない、この仮想世界に。
「いくぜ・・・『アイアンスマッシュ』!」
「グギャ!」
血代わりのポリゴンをまき散らしながらゴブリンが痛快なほどに飛んでいく。
そのままゴブリンは木にぶつかり、ポリゴンとなって消えた。
「あ、レベルあがった。」
まさか一撃でやれるとは思わなかったな。当たり所が良かったのか?
「ふむ、1レベルあがるとスキルポイントが5ポイントもらえるのか。」
これは配分がなかなか大事だな。器用貧乏になったら何もできなくなりそうだ。
「ドロップ品は・・・お、ゴブリンの歯か。」
いかにも武器に使えそうな形状じゃないか。でもこんな小っちゃいとなにも作れなそうだな。
・・・歯って溶かすとかできんのかな?
俺がそんなくだらないことを考えているうちに、新たなお客が来たようだ。
「きゅきゅ」
「ナイフを持った・・・ウサギ?」
なんだこの世紀末アニマルは。見た目はかわいいのに武器はちっともかわいくねえ。
なんだあの赤いナイフ、いかにも何人か殺しましたみたいな・・・
「きゅぴ」
「っつ!」
俺は首元に迫りくるナイフをすんでのところで躱した。
なんつう速度だ。さっきのゴブリンと比にならねえぞ。
「きゅい」
「うおっ・・・っぶねえ!一瞬でも気を抜いたらすぐにファステイアに逆戻りだ。」
今の俺にとっちゃ、あんなウサギでも中ボス位の立ち位置なんだよ!
俺は半分やけくそ気味になりながらも、毎回首に突っ込んでくるウサギにアイアンスマッシュを叩き込みまくった。
あの包丁は落ちなかった。
テツギリ「別にいいもん、包丁なんて別にほしくないもん・・・あの素材何なんだろう。」
このままだと我がオリ主がどっかの素材愛好家みたいになっちゃいそう。
???「あなたも鉱石の味を体験してみてください。飛ぶぞ。」
唐突で悪いのですが、皆様は主人公の身体欠損には肯定的ですか?特に他意はないです
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yes
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no