創造魔法による生命創造のレポート   作:Belf

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みすず観察日記(一部抜粋)(1)

【新暦68年1月7日(金)】side:茂田俊丞

 

 今日から日記をつけることにする。題して、『みすず観察日記』である。

 これを記す目的としては、作成した「みすず」の状態観察が主となる。

 後はもしこれから細かいアップデートを加えるとなった際の記録という面もあるだろうか。    

 

   

 

 ⋯⋯いや、だめだ。違うや。そういうのは全然建前だ。

 

 なんていうんだろうな、幸せを後で見返せるように、記録に残しておきたいんだ。

 昨日家帰ってきて、ご飯作ってもらってるのを見て泣いて、抱きしめられたときに、俺は色んな感情でごちゃまぜでいっぱいになった。

 それはいつもなんだけど、いつもと違ったのは、それが嫌に思わなかったってことだった。

 

 まだ分からないけど、多分あれが幸せって感情なんだろうなって思う。

 客観的に見たら歪でも、あの瞬間の俺は確かに、救われたって思えたんだ。

 そしてあの瞬間を忘れないように、これが当たり前になったときに、自分で壊したりしないように。

 何度だって見返して、大事にしていくために、今日から日記をつけるんだ。

 

 

 ⋯⋯⋯うん。しっくりきた。

 てことで。みすずのことと、みすずとの間に起きたこと。その二つを主に書いていくことにする。

 

 

 

 

 

 

【新暦68年1月10日(月)】

 

 

 みすずの稼働から5日が経った。

 この5日間で特に観察していたのは二つ。生体部分と機械部分の接続と、エネルギー炉の稼動状態だ。

 よく分かんないことをとりあえず思いつきに任せてやった中でも、特にこの二つは専門外すぎて、とんでもないエラーが起こるんだろうなって思っていたのだ。

 

 だけど。

 結論から纏めると、みすずに特に大きなエラーは起こらなかった。

 ただし問題が一点あって、炉のエネルギー効率が理論値を一割くらい下回っている。

 原因は集光器か、反射鏡か。とにかくどちらかに誤差があるんだろう。ただこれはまだ仮定で、原因の詳細な特定まではできていない。

 

 どうしたもんかなあ。目下大きな問題にはなっていないが、慢性的にみすずにはエネルギーが少し足りてない。

 具体的に言うと、ポーション一本あたりの稼働時間が、理論値だと18時間だけど、現在は16時間前後になってる。

 しかもこれは簡単な日常動作のみで測った目安で、体を動かす、以外の魔法を並行して使うならもっと稼働時間は縮まる。

 

 ただ治すには、分解して詳細な検査が必要になる。それをする程って感じでもないんだよな。

 そうだな。例えばもう一つ別にエネルギー源を持たせる、サブバッテリーをつけるとか、そういう方向で解決できないだろうか。

 正直、あまり長期間みすずが動けないような状態にはしたくないのだ。

 一人は寂しいから。

 

 ということで現状は様子を見つつ、サブバッテリーを外見を損なわない形でつけれないか試行錯誤しようと思う。

 何かしらの決定的な問題が起きれば、その際はしっかりばらして、治す。今はその決意だけでいい。

 

 

 で、肝心のみすず本人の方(前段もみすずの話だったけど)はというと、現状家族や恋人というよりは創作物の中の使用人って雰囲気が強い。

 こっからは適宜調整を入れて言葉遣いや所作を変えていく───いこうとはしてたんだけどなぁ。

 

 正直な話、そういうのに凄い罪悪感が生まれてしまっている。

 既に一つの個として尊重しちゃっているというか、なんというか。

 おかしいよな。どんなに見た目人間に近くたって、本質はAIだから主体性とかはないはずなのに。

 てかなんなら自分で作ったのに。

 

 

 俺自身接し方を迷っている。でもそれも嫌じゃない。

 不思議な感情だけど、でも明日が来るのが楽しみなんだ。

 いつぶりだろう、そんなの。

 それだけでお釣りが来るってもんだ。

 

 

 

【新暦68年1月18日(火)】

 

 

 みすずを稼働して約2週間が経った。こうなると流石の俺でも慣れてきて、生活の中でのぎこちなさのようなものが減ってきた。

 で、晩飯の最中にそんなことを言ってみたら、みすずには俺が勝手にドギマギしていたのなんて筒抜けだったようだ。なんて恥ずかしい。

 

 でもまぁ、みすずには恥ずかしいところを見せても問題ないわけだよ。なんでかっていえば、みすずには感情がないから。

 ……その筈なんだけどなぁ。なんか、うふふふふってこう、小動物を見るような目で笑われた、ような? 日に日に表情が豊かになっていくのを感じる。

 

 で、そんなこんなな毎日のなかで。これは一つ悩みというか、気がかりというか。小田原さんのことについて色々考えてしまう日が続いていたので、いっそのこととみすずに相談してみた。

 

 内容としてはこんな感じ↓。

 

・小田原さんの特異属性が発覚したことで、彼女が転校することになった。

・原因は俺、というか部活での実験。でも三年になったら結局みんなと並びで魔力検査を受けることになっていたから、彼女の転校は早いか遅いかの違いでしかなかった。

・でも彼女のような年頃にとっては、その早いか遅いか、というのが大事なのではないか。その間に作れた思い出などもあったのではないか。

 

 

 それに対して。みすずはこんなふうに答えた。

 

『それは俊丞が悩むのも分かります。ただ、俊丞が実験を行ったのは偶然で、生徒が特異属性であることを知った以上、それを迅速に確認し届け出るのはむしろ立場上不可欠な行動だったのではないでしょうか』

 

『俊丞は正しいことをしたと思います。結果として小田原さんの心に負担がかかる形になってしまっただけであって。でも多感な時期とはいえ、子供は日々学び、そして成長していくものです。それに友達や家族のフォローもあるだろうし、新しい場所で形成される人間関係が必ずしも悪いとは限りません。結論としては、俊丞は少し考えすぎなのではないでしょうか』

 

 

 ……これさ、凄すぎるよな。

 言われたこっちもさ、もうほんとにおっしゃる通りです、としか言えない完璧な回答じゃないか?

 実際言われてハッとした。おれは小田原さんに対して過保護すぎたんじゃないかって。

 なんなら下手したら気持ち悪がられている可能性だってあるくらいだ。

 それをみすずにいったら、それはそれで考えすぎですって呆れられたけど、本当に今相談して良かったなと思う。

 

 

 いやぁー……凄い。

 このままじゃほんと、意思決定の前に相談する癖がついちゃうというか、依存しちゃいそうだよ。

 

 

 

【新暦68年2月4日(金)】

 

 

 今日でみすずが稼働してから……一月くらい? これもうやらなくていいか。日記だから内容ごとに日付ついてるしな。

 今日は仕事を早めに切り上げて家に帰った。なんでかっていうと、これから学年末テストの準備が入って忙しくなるのが分かっているからだ。

 これから遅くなるかもということをみすずに伝えたら、「?」って感じの顔をされた。

 で冷静に考えて、みすずは別に遅くまで起きてるのがつらいとかないじゃんって、ナチュラルに人間扱いしている自分にびっくりした。

 

 やばいな。こりゃ本当に家族だ。

 でもなぁ。それでふとふと思い返したんだけど、みすずを作ったきっかけって失恋じゃなかったっけ?

 で、どちらかというと、気持ち悪いからあんまり見ないようにしていたけど、みすずには恋人的な役割をきたいしているとこも多分にあったわけで。

 でも実際に関わってみると、なんか全然そんなかんじじゃないんだよな。なんでなんだろう。

 顔とか胸元とか、かなり自分好みに作ったんだけどな。

 でも現状の距離感は、なんていうんだろう。難しいけど、家族以上、娘未満、みたいな?

 一番近いのは家族かなぁ、やっぱり。でも奥さんって感じではない。

 

 ……そんなものか。そもそも一々誰かとの関係性を、既存の言葉になぞらえる必要こそないのかもしれない。俺とみすず。それだけでいいのだ。

 

 

 

【新暦68年2月20日(日)】

 

 学年末テストが明日から始まる。この期間中、実際のところはそこまで残業をすることがなかった。

 なんでだろうな。気づいたら仕事が早くなっていたみたいだ。みすず作りに本腰を入れたあたりで、とにかく早く帰りたかったときに自分なりに効率化しまくっていたのがデカいのかもしれない。

 あとはテスト作成をみすずに手伝ってもらえたっていうのもある。結局自分だけだと考えすぎちゃって時間かけちゃってたからなぁ。ほんとにみすずがいてくれてよかった。

 

 ということで、また忙しさも一段落したので、今日は久しぶりにお酒を飲んだ。みすずも晩酌に付き合ってくれて、彼女は魔力ポーションを飲んでいた。

 どこで学んだのか、おじさんみたいに「くぅ〜、たまらねぇぜ」なんて言いながら口元を拭ったりもしていた。

 

 

 あー。楽しいな。この一ヶ月とちょっとの期間は、それまでの人生全部を足しても全然届かないくらい楽しい。

 生きるのがこんなに楽しいなんて、この歳でも気づけてよかった、なんて思う一方、もっと早く自分の幸せってものに目を向けていればとも思う。

 

 たらればは言ったって仕方ないけどね。

 でもやっぱり悔しいよ。結婚とか、恋愛とかさ。

 デートとかも、俺は人生で一度だって行けたことがない。

 花火を見たこともなければ、映画だって一人で見たことしかないし、誰かに送るプレゼントについて悩んだことだってない。

 

 俺の生き方が悪かったのかなぁ。でもさぁ、ならそれに気付なかった過去は、誰をどう責めれば晴れるのだろうか。

 自分が悪いんだろうなぁ。でもあの頃は分かんなかったよ。いつだって必死に生きていた。その時の最大限の視界で、ない頭使って必死に考えていたさ。

 

 

 それじゃあだめだったのかなあ。

 よくわかんないや。

 

 とりあえず。みすず、ありがとう。

 

 

 

【新暦68年2月25日(金)】

 

 

 学年末テストが終わった。ここからは採点と成績処理があるから、テスト前よりもっと忙しくなる。

 

 とは言っても夕食の時間が遅くなるくらいで、特段生活の何かが変わるという訳ではないが。

 あ、でも。近隣のスーパーが開いてる時間とかの関係で、買い出しが少し面倒くさくなるな。うちの近所はどこも閉まるのが早くて、9時にはコンビニくらいしか選択肢がなくなる。

 

 となったらもう学校の近くで買うとかになってくるんだけど。なんて考えていたら、みすずから私が行きましょうか?という提案を受けた。

 

 ⋯⋯これは。基本みすずからの申し出は有難く受け入れてる俺だけど、流石に一旦保留にした。

 

 正直ちょっと怖い、よな。自分以外の人間とみすずが関わることは。

 

 俺と話す、家事をこなすとかそのくらいだったら、彼女の能力で全然問題ない。

 それに多分、買い物自体はできると思う。というかむしろ買い忘れたりしない分俺より優秀かも。

 

 でもなぁ。外に出るってことは、それだけ不確定要素が増えるということだ。

 もしも変な人に絡まれたら? 思わぬ事故で機械部分が露出するようなことになったら?

 そもそも稼働時間という制限もある。外に出ている最中に災害が起こったりしてポーションが飲めないまま活動限界が来たら?

 

 

 という不安を、みすずにそのまま伝えてみた。そしたらみすずは素直に引き下がってくれたが⋯⋯⋯でも、彼女の厚意や、こういう自発的な行動はなるべくやらせたいとも思ってしまっている。

 

 ちょっと今は無理だが、この繁忙期を抜けた先でなら、二人で外出することから初めてみるのはありかもしれない。

 

 

 

 ⋯⋯ちなみにこれは、デートの経験としてカウントしていいのだろうか?

 

 

 

 

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