「ん?」
違和感を覚えた俺は手を止め、あたりを見回す。
子供用の小さな椅子、カラフルなタイル、壁には子供が書いたであろう絵が飾られている。
手元を見ると、小さな車のおもちゃが置いてある。
どうやら俺はこれを動かしていたようだ。
(てか、手ちっちゃくね?
なんか視点が低いし…)
反射的に窓を見る。どうやらここは幼稚園なのだろう、中庭には砂場や滑り台などが見えた。
しかし俺が注目したのはそこじゃない。
幼稚園児くらいの小さな子が鏡で見つめ返してくるのだ。
俺が目を凝らすと、その子も眉間にしわを寄せて見てくる。
手を振るとその子も振り返してくれた。
いや、現実逃避はやめよう。
この位置と角度からして、これは俺だ。
つまり....
(転生してるじゃねぇかーーーーーーーー!!)
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どうも、転生した二海宗です。
ちなみにこの名前は服に書いてあったもので、転生した今の俺の名前らしい。
転生前の名前は....わからない。
別にふざけてるわけじゃない、転生前の記憶から家族や友人の名前がごっそり
なくなっているのだ。
かろうじて高校生くらいだったのは覚えているんだが....
まぁ、今いくらそこを考えてもわからないだろう。
大事なのは今の俺自身の状況だ。
どうやら幼稚園児らしいってことと名前しかわからん。
いまは帰りのバスの中だ。無覚えのない景色ばかりが流れており、情報が全然ない。
「おい、しゅうのおりるとこここだろ?」
「あぁ、ごめん。」
隣の子に教えてもらいなんとかバスを降りる。
たぶん目の前の家が俺の家なのだろう。
手を伸ばし、インターフォンをおす。
ドアの向こうからどたどたと足音が聞こえてきた。
(大丈夫。落ち着いて対応すれば大丈夫なはず....)
なんとか意識を落ち着けていると、扉が開き、女性が出てくる。
「あら、シューちゃんおかえり。」
「た、ただいま。」
「早く手を洗ってきなさい。お菓子があるわよ。」
「やっ、やったー。」
そういって母と思わしき人物は家の中のほうに戻っていった。
(これでいいはず....だよな。)
コミュニケーションは問題なかったようだ。
なんとか洗面所を見つけた俺は、手を洗い、鞄を置いて母のいる部屋へと向かう。
どうやら普通のリビングのようで、机の上にはどら焼きが置かれたいた。
「小南さんからもらったの。けっこういい物よ。」
「へ、へぇ~。そうなんだ。」
全然知らない名前だが、とりあえず相槌を打ってみる。
小南なんて苗字マンガで聞いた以来だ。
とりあえず席に着き、どら焼きにかぶりつく。
(ん!?うま)
俺はついどら焼きを食べることに集中してしまった。
「おいしいでしょう、なんでも桐絵ちゃんが熱出しちゃったみたいで余っちゃったらしいの。
ほら、幼稚園で見かけなかったでしょ「ぶふぅぅぅーーー!!」きゃ、シューちゃん!!」
「つまらせちゃったの?早く水飲んで!」
ゴクゴク、ぷはぁ
「大丈夫?」
「大丈夫大丈....ばない。」ビターン!!
「え!?突っ伏しちゃって、大丈夫!?って、顔真っ赤!?熱があるんだわ!!」
(やばい、なんか、意識が....)
視界が歪んでいくのを感じながら、俺は意識を手放した。
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そんなこんなで次の日の昼。
朝、目を覚ました俺に母親は昨日のことを話してくれた。
どうやら俺は熱があったらしく、あの後布団に寝かされたのだと言う。
熱は下がったらしいが、そのことので今日の幼稚園は休みらしい。
(驚きすぎて熱出すとか、子供かよ。....子供だったわ。)
思わぬところでダメージを負いながらも、周りの状況を把握する。
時間は昼前のようで、母は働きに行った(昨日は休みらしい)らしく、
父のことは分からなかった。
どうやら今の時間帯は家にいないようだ。
(だが、今はそれが好都合だ。情報集め放題だし、“アレ”のことも調べられるかも)
家の中を動き回らないようにと厳重に注意されていたが、こんなの無視だ。
とりあえずいろいろ漁ってみるか。
~30分後~
ふむ、大体わかった。
どうやら俺には父親がいないらしい。
というのも、俺が生まれてすぐ、交通事故で亡くなったとか。
ここまで女手一つで育ててくれているとは、覚えはないが有り難い限りだ。
祖母や祖父とは関係が見られなかった。もしかすると、縁を切っているのかもしれない。
そして、今の俺は4歳、誕生日の日付もわかった。
後は住所なのだが、いまだ見つかっていない。
昼用に母が残してくれたおかゆを食べながら考えていると、インターフォンが鳴った。
(こんな時間に誰だ?)
反射的に布団に戻る。
大丈夫だとは思うが、色々動いてたのがばれるかもしれない。
耳を澄ましていると、かちゃりと鍵が開く音がした。
(鍵?母、いやそんなわけない。さすがに早すぎる。
じゃあ本当に誰だ?)
ドアが開く音がしたと同時に声が聞こえる。
「シューくーん、起きてる~~~?」
高い女の子の声が聞こえてくる。
ていうか....
(なっ、この声はまさか!!)
その人物はどたどたと俺のいる寝室へ一直線にかけてきた。
寝室の前まで来ると、扉をノンストップで開け放った。
「あ、シューくん起きてる。
きのうのどら焼きって残ってる?」
そういって声をかけてくる女の子の姿に見覚えがあった。
長く伸ばした、特徴的な明るい茶色の髪。
そして俺が知っているよりも幼い姿をしているが、間違いない。
これってつまり....
ぼふっ
「ちょ、シューくん大丈夫!!」
思わず布団に倒れた俺に女の子が駆け寄ってくる。
「シューくん!!シューくん!!死なないで!!」
泣きそうになっている女の子の少し大げさな発言を聞きながら、
俺は意識が遠くなっていくのを感じた。
意識が完全に消える直前、俺は思った。
(ここ、“ワールドトリガー”の世界かよ....)
もう一個の作品全然更新してないけど出しちゃった....
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