美味しいものは、一緒に分け合って食べないと!   作:息抜きのもなか

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好きだけど全然見かけない生徒の二次創作が見たい。
じゃけん、自分で書きましょうね~。なお作者は本人未所持。正月版は持ってます。


01

「美味しいものは、一緒に分け合って食べないと!」

 

 気が付いたら、そんなことを口走るようになっていた。

 もっとお腹いっぱい食べたい。美味しいものは独り占めしたい。

 だけど、私はお姉ちゃんだから。

 

 ……お姉ちゃん?

 

 あれ、なんでそう思ったんだっけ。わかんない。何か思い出せそうな気がするけれど、どこかにつっかかっているのか、全然表に出てきてくれない。

 まあいっか。そんなことより、今は美食研究会の皆とお店に行くんだった。

 

「イズミさん、どうかされましたか?」

「ううん! 大丈夫! いこいこ!」

 

 うん、大丈夫。私は大丈夫。

 確か美味しいお魚があるお店に行くんだったよね。フウカちゃんも途中で合流して嬉しそうに声を上げてるし、あとでお寿司を作ってもらおうっと。

 

『お姉ちゃんだけ、ずるい!』

 

 私は獅子堂イズミ。ひとりっ子。

 昔のことはあんまり覚えていないけれど、たぶん、そうだったはず。

 

 


 

 

「イズミさん、どうやらこのサプリメントと肉まんを一緒に食べると大変美味のようです。少し試してみませんか?」

 

 今日も大変だった。

 温泉開発部がいつものように建物の爆破を始め、いつも以上に抵抗が激しくてまた委員長が来るまで長引かせてしまった。温泉開発部の部長は牢屋にいれることこそできたものの、こちらの被害も甚大だった。

 その戦闘の激しさを考慮してか、対応に当たった生徒は今日はもう上がっていいと天雨行政官からお達しがあったので、そのお言葉に甘えて帰路につく。天羽行政官もかなり忙しかったのか制服からはみ出している生胸が汗ばんでいた。とても煽情的だった。

 そんな煩悩を払うように途中で焼き鳥を買って別の欲に切り替えようと試みる。焼き鳥を選んだのは昨日テレビで見た百鬼夜行の(もも)なんとか水上祭で、白い綺麗な人が競技以外で画面に映るときの全てで焼き鳥を持っていたから食べたくなってしまったからだ。

 風紀委員として食べ歩きは少し行儀が悪いかなと思って食堂に寄れば、美食研究会の二人を見つけてしまい、思わず身構えてしまう。

 

「おや、こんな時間に誰かと思えば風紀委員のお方でしたか」

「こ、ここで何をしている?」

 

 美食研究会の部長である黒舘ハルナがこちらに気が付き、声を掛けてきた。

 もう一人はせめて一年の赤司ジュンコであってくれと願ったが、残念ながら美食研究会随一の食い意地が張った女、獅子堂イズミの姿が見えた。対応難易度的を考えれば鰐渕アカリとのコンビでなかっただけマシだと思うべきかもしれないが、こちらはこちらでタフなので大変だ。

 警戒しながらこの場所にいる理由を聞けば、黒舘ハルナはよくぞ聞いてくれましたと言わんばかりの表情をこちらに向けつつ、獅子堂イズミが今まさに食べんとしている肉まんの事に注目させるように腕をひらりと動かした。

 

「ええ、少しネットで面白い書き込みを発見したので、イズミさんに実証していただいていたところなのです」

 

 なんだそれはと思って焼き鳥を食べながら詳しく話を聞けば、カイザー26で売っている肉まんにダイエット用のサプリメントを詰め込んで食べるとめちゃくちゃおいしいというタレコミを見つけたのだとか。一体どこのサイトだと聞いて見せてもらったページは、食べ物界隈では有名なガセネタ塗れのライフハックを紹介するサイトだった。

 そのサイトを参考にするなんて正気じゃないと思わず抗議してしまったのだが、黒舘ハルナに真に美食を追求するのであれば与太話かもしれないと分かっていても飛び込むべきだと真っ直ぐな目で見つめられてしまって、ちょっと納得してしまって言い返せなかった。

 なんと言い返そうか考えている間に絶対に美味しくないであろうサプリメント入り肉まんを食べ終わってしまったようで、獅子堂イズミが声高に感想を主張した。

 

「歯ごたえが違うから結構面白いけど、味は予想通りだね!」

「ふむ、イズミさんがこういうということは、食べれない味ではないということでしょうか? いえ、しかし食感に好印象という時点で少し恐ろしい気もしますね」

「そんなものが美味いわけないだろ! いい加減にしろ!」

 

 それから美食に関する議論をして、少しだけ黒舘ハルナという人間の事を理解した。獅子堂イズミは議論の間に給食部の愛清フウカを捕まえておやつを作ってもらっていた。それに気が付いた黒舘ハルナが愛清フウカを誘拐しようとして、結局戦闘になった。

 非番になったはずなのに戦闘する羽目になって、しかもさっきまで話していたはずなのに普通にボコボコにされて、自分の非力を実感する結果になった。

 ともあれ、そんな一幕が美食研究会の二人と交流を持つきっかけだった。

 

 


 

 

 あの二人と交流を持ったせいか、風紀委員会としての活動時以外の時も美食委員会の二人がよく目につくようになった。

 今まで視界に入らなかった人たちをよく見つけるようになるのは、免許を取ったときの交通標識がよく目に入るようになるのと同じような感覚な気がする。まあゲヘナで道路標識なんて丁寧に守っていたら、取り締まれるものも取り締まれないのだが。一応天雨行政官には交通ルールは守るようにと言われてはいるものの、無理なものは無理だ。

 

「おい、今日はどの店を爆破するつもりだ?」

「またお会いしましたね。今日はイズミさんに実験品を食べていただくだけなので、特にどこも爆破する予定はありませんよ」

「またか? 前も創作料理モドキを食べさせてたよな」

 

 交流の時間が増えて、美食研究会の美食を探求する、と言う部分については偽りではないことを知った。所かまわず爆発しているわけではなく、彼女なりの美学があるらしい。今日のように普通にアレンジ料理をしているだけということもあるし、店を襲撃している件についても理由を聞けば襲撃されるのも納得していしまいそうな話が出てくる。

 だが、しかしやはり店を爆破するのはやりすぎである。ゲヘナの生徒ならそれぐらいしないと理解しないという主張に押されそうになったが、こいつはゲヘナ以外でも爆破するので関係ない。美学があるのはそれはそれとして、こいつらがゲヘナの問題児であることに変わりはないのである。

 

「今日は何を、げ、またサプリメントかよ。そもそもサプリメント自体が美味しくないだろ。やめとけよ」

 

 焼きそばにサプリメントをばら撒いて獅子堂イズミへ提供しようとする黒舘ハルナに呆れて目を逸らす。逸らした先のベンチに黒舘ハルナのスマートフォンが置いてあるのを発見して、そして最近彼女が参照しているガセネタライフハックのページが開いてあるのを見つけた。

 またここを参照してるのかと思って呆れたようにため息をつけば、黒舘ハルナが視界を遮るように腕を伸ばした。スマホを取るではなく、こちらが画面を見えないように体を入れてくる。

 それが彼女に対して抱いた最初の疑問。

 私が獅子堂イズミの過去に踏み込むことになった、最初の一歩だった。

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