異世界クロスオーバーアイランド -Multiverse Crusaders 2nd-   作:サツキタロオ

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テスト許すまじ。


第2話:ネオ・ロサンゼルス

 

「それにしても……不思議なところだな。」

「ああ。見た目は普通の草原にしか見えない。ただ……」

 

ヴァーリはぐるりと辺りを見渡す。

目に入るのは、この世界でしかありえない光景だった。

背丈ほどある鮮やかな紫の果実を実らせた木々。地面に淡く光る鉱石。大地を闊歩する、見たことのない形状の獣。

どれもが“異質”であり、間違いなく異世界であることを確信させる。

 

「人とか……居るのか?」

「分からない。だが、僕たちは何としても生き残らなきゃいけない。」

 

ケリュドラはそう言うと、迷わず草原を歩き出した。

 

そのとき――ヴァーリの目が遠くの一点で止まった。

「……!」

 

地平線の向こう、緑の中に異質な灰色が立ち上がっている。

それは自然の造形ではありえない、限りなく人工的に作られた巨大な壁だった。

 

「もしかしたら……人が居るかもしれない!」

「よし、行こう!」

 

二人は互いに顔を見合わせ、駆け出した。

やがて近づくにつれて、その正体がはっきりする。

そこに聳え立っていたのは、鋼鉄で築かれた巨大な防壁――高さ数十メートルはあるだろうか。

 

「……間違いない。人が造ったものだ。」

「入れないか、試してみよう。」

 

ヴァーリとケリュドラは緊張を抱えながらゲートらしき場所へ向かった。

そこには一人の人影が立っている。

 

…………………………

 

「あー、だり……なんで俺がこんなこと……」

 

低くぼやく声。そこに居たのは、小柄な少女だった。

灰色の髪を短いポニーテールにまとめ、無造作に腰へ手を当てている。

鎧でも軍服でもなく、簡素な制服のような装備を纏い、手にはライフルらしきものを持っていたが、やる気はなさそうに見える。

 

――門番。

そう呼ぶにはあまりに気怠そうな雰囲気の少女が、そこに立っていた。

「おーい。そこの門番。」

 

ヴァーリが声をかけると、少女は面倒くさそうに顔を上げた。

「……ん? お、なんか見たことない奴ら発見〜。」

 

灰色の短いポニーテールを揺らし、少女は軽い足取りで近づいてくる。

間近で見ると、確かにこの地の住人というよりは外から来た者の雰囲気を漂わせていた。

 

「ふむふむ……やっぱりこの辺の連中じゃなさそうだな。」

少女はじろじろと二人を見回し、あっさりと肩をすくめる。

 

「まあいいや。自己紹介しとくか。俺は響。もともと横須賀鎮守府で艦娘やってたんだけどよ……いきなり変な怪物に襲われて、気がついたらこんな場所に飛ばされちまってな。で、今はこうしてだっるい門番やってるってわけ。」

 

「ヴァーリ……怪物って……」

「俺たちをここに連れてきた奴かもしれねぇな。」

 

二人が目を合わせて低く呟く。

響は首をかしげつつも、気楽な調子で手を振った。

 

「まあまあ、細けぇことは置いとけ。とりあえず中に入れ。外にいるよりは百倍マシだぜ?」

 

彼女は巨大ゲートの脇にある小さな人用ドアを解錠し、ヴァーリたちを招き入れる。

内部には無機質な鉄の通路が続き、その奥には下へと伸びるリフトがあった。

 

「ほら、乗れ。街はこの先にあるんだ。」

 

三人はリフトに足を踏み入れる。

動き出すと同時に、金属音を響かせながらゆっくりと動き始めた。

 

「ここはな、本来は政府が移民計画ってやつを進めるために造った場所なんだよ。だけど計画は途中で頓挫してさ。結局、中途半端に完成したまま放置。金も人も無駄になったってわけ。」

 

「ヨコスカって場所には……そんなものまであるのか。」

「異世界人にこの手の話をするとはなぁ……いや、人生わかんねぇもんだ。」

 

響が苦笑したところで、リフトが停止する。

目の前のシャッターが開き――

 

「お、着いたぞ。」

 

光が溢れ込み、三人の目を照らした。

一歩踏み出した瞬間、視界いっぱいに広がったのは――

 

高層ビルが林立し、空中を行き交う軌道列車。ガラス張りの塔と巨大な広告ホログラム。どこか近未来的でありながらも、何処か不思議な街並み。

 

「ようこそ――ここが『ネオ・ロサンゼルス』だ!」

 

両手を広げ、響が笑う。

「「おーー……」」

 

ヴァーリとケリュドラは言葉を失い、ただ目の前の光景に見入っていた。

「……とにかく、詳しい話は奥の本部で聞いてくれ。暫くは俺が案内してやるよ。」

響は気の抜けた口調のまま歩き出し、二人もそれに続いた。

 

「まず、ここに入ってすぐが工業エリアだ。ここじゃ、バトルマシンやら色んな兵器の開発をやってる。」

 

「バトルマシン……?」

ケリュドラが問い返すと、ちょうど右手から重々しい足音が響いてきた。

 

ガシャン、ガシャン、と鉄の塊が歩く音。

現れたのは、人型とは言い難い、ずんぐりとした機体。両腕にはフォークリフトのようなアームを備え、資材の入った巨大な木箱をいとも簡単に持ち上げて運んでいく。

 

「あれがそうか。」

「BM-03《ベガルタ》。“EDF”って世界の連中が開発した最新鋭のバトルマシンらしいぜ。今はこうして運搬係に使ってる。」

 

「最新鋭の兵器を……荷物持ちに?」

ヴァーリが半ば呆れた声を漏らすと、響は肩をすくめた。

「仕方ねぇだろ。運搬用アームも造ってあるし、他に向いてる奴もいないんだ。ま、使えるもんはなんだって使うってのが、この街のルールさ。」

そう言って響は歩を進める。

通路の先に、賑やかな声と香ばしい匂いが流れてきた。

 

「で、少し進むと左が商業エリア。ここじゃいろんなもんが買える。」

 

ヴァーリとケリュドラが視線を向けると、そこには人で賑わう広場が広がっていた。

露店では異世界の果実を売る商人、金属細工の武具を並べる鍛冶屋、謎の魔道具を並べる行商人、有名なスーパーやコンビニ。

さらには、屋台から漂うスパイスの匂いが食欲を刺激する。

 

「……なんか、思ったより普通に“街”だな。」

「異世界人やら元の世界から飛ばされた奴らやら……寄せ集めで出来てる街だからな。文化も品もごっちゃ混ぜだが、逆に何でも揃う。」

響は口元にニヤリと笑みを浮かべる。

「もう少し進んだ右には住居エリアだ。まあ、つまり住まいだな。家賃は月2万7千円。」

「安いんだな。」

ヴァーリが素直に感想を漏らす。

 

「俺にとっちゃ嬉しい限りだよ。」

響は小さく笑いながら視線を向ける。そこには質素ながらも整然と並んだ集合住宅があった。洗濯物が風に揺れ、子どもたちが路地を駆け回っている。確かに異世界の街とは思えぬほど、どこか懐かしい「日常の匂い」があった。

 

「――さて、こっからは上層スペースだ。エレベーターに乗れ。」

 

三人は無骨な昇降機に乗り込み、上へと上がっていく。

金属の壁がゆっくりと後ろに流れ、やがて視界が開ける。

 

広々とした上層は、街全体を一望できる場所に造られていた。無数の建造物と光の筋が眼下に広がり、まるで一枚の巨大な機械仕掛けの絵画のように輝いている。

 

「……すげぇな。」

ヴァーリは思わず息を呑む。

 

そんな景色の中心に、ひときわ巨大な建物がそびえ立っていた。

無駄に広大で、威圧感すらあるその建物――それこそが、この街の心臓部。

 

「ここが本部だ。」

響が軽く顎をしゃくる。

 

「デカいな。」

「まあ、デカいだけだけどな。威厳だけは一丁前だ。」

 

軽口を叩きつつも、響は三人を中へと促す。

自動扉が重々しい音を立てて開き、冷たい空気が流れ込む。

 

こうして三人は、街の中心――「本部」の内部へと足を踏み入れた。





前作でも響とヴァーリって早い段階で会ってるんですよね。
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