セイアと両片思いの許嫁概念   作:黒子白衣

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一か月も空いてしまい申し訳ありません。
書きたいことが増えてしまいました。
幼少期セイアは絶対可愛いですよね。


病院での思い出②

 胸に広がる暖かみが顔に広がるころには、病室の前についていた。

 彼が申し訳なさそうに私のことを下ろそうとした時に、ちょうど扉が開かれた。病室の中には、すでに父親と医院長が微笑ましい表情を浮かべ待ち構えていた。

 てっきり怒られるものだと思っていた、私は父親の表情に疑問符をつけながらも、彼の腕の中で大人しくベッドまで運ばれ、彼が私をベッドに下ろし終えるの見届けてから、父親が口を開いた。

 

 曰く、私に寂しい思いをさせて申し訳ない。

 曰く、一人で抜け出してどこかで倒れてしまったら、危険だからやめてほしい。

 曰く、病院の職員は私の面倒ばかり見る余裕はない。

 曰く、ご婦人らも何かあった時に対応することはできない。

 

「ということで、彼にセイアの面倒を見てもらおうと相川と相談したんだ」

 

 父親は医院長の隣にいる、先ほどまで私を運んでいた獣人の少年に目線を送った。

 

「彼の名前は相川メグミ。この相川医院長の息子さんだよ」

 

 父親の視線を追って彼を見ると、運んでくれた時と同じようなはにかんだ笑顔をしていた。

 改めて、彼と隣にいる医院長を比べてみると、白い毛並みが綺麗な獣人で、服装も動きやすそうな恰好をしており、医院長と同じように眼鏡を胸ポッケトにしまっていることに気づいた。

 眼鏡をしているということは視力が悪いのか。と、思考を巡らせながら顔の方を視線を移動させていくと、サファイヤのような瞳と目があってしまった。

 当然な結果であるのだが、どこか後ろめたい気持ちになってしまい、視線を急いで別の方に移動させた。

 そうこうしていると、医院長が私に近づき話しかけた。

 

「メグミは、セイアちゃんよりもお兄さんだから、色々頼ってくれたらいいよ」

 

 彼とは違うトーストにかけたら美味いしい蜂蜜のような瞳が優しく微笑んでくれた。

 

「ほら、メグミもセイアちゃんに挨拶したらどうだい」

 

「は、はい。お父様」

 

 促されゆっくりと近づく彼。

 

 瞳を左右に動かす彼。

 

 彼の緊張が私にも移ってしまったのか、私も彼の一手一投足を見逃さないように集中していた。

 

 目を瞑る彼。

 

 緊張をほぐすように息を吸う彼。

 

「相川メグミです。よろしくお願いします。百合園さん」

 

 やはり恥ずかしがりながら無理して笑う姿は、不格好で下手なものだったが。

 

 

「ゆ、百合園……セイアです」

 

 まっすぐに見つめる彼の瞳を直視できず、顔を伏せながら返事をした私はもっと滑稽だったろう。

 

 


 

 

 その日から彼は私の病室に毎日訪れるようになった。

 最初はお互い緊張してしまい、無言で過ごすことも多かったが、私が持っていた本に彼が興味を持ってくれたことから少しづつ仲を深めていった。

 私も好きな本を共有できたことに満足し、彼に本を貸して、次の日には別の本を貸していった。

 

 すると、彼も「私におススメの本がある」といい、病室に訪れる時には本を持ってきては、二人で静かに本を読むようになり。

 

 「飾り気のない読書会よりかは」といい、紅茶とお菓子を持ってきて、食べながら持ち寄った本の感想を言い合うようになり。

 

 「たまには気分転換でも」といい、病院の中庭で散歩しながら話すようになった。

 

 同年代の子と遊ぶと言うには、静かで大人しいものであったが、まだお互いのことを知らない二人には必要なお試し期間だったのだ。

 2,3週間も経つと、私も彼も緊張することはなくなり、自然に笑い話すことができるようになってた。

 

 ある日、二人で院内を歩いていると、ご婦人らに呼び止められた。

 

「おや、セイアちゃんと、医院長の息子さんじゃないか」

 

「ちょうどよかったわ。美味しいお菓子をお見舞いで頂いたの。一緒にどうかしら」

 

 ご婦人らの誘いを断る理由もなかった私たちは、お言葉に甘え、お茶会に参加した。

 

「いやー、相変わらずセイアちゃんは、可愛いわね。来てくれるだけで癒しになるわ」

 

「ほんと、最近全然来てくれなくて寂しかったのよ」

 

「本当にね。それと息子くんと一緒にいる所を何度も見ていたから気になっていたわ」

 

「そうそう、相川さん。紅茶を淹れてくださらない。医院長の息子なら、私たち患者を御もてなしするのも大切よ」

 

「美味しい紅茶を入れることが出来るかどうかは、トリニティにとって重要なことですしね」

 

「ふふふ、相川さんが入れる紅茶は美味しいので、きっと皆さんも満足するものだと思いますよ」

 

「あら~。セイアちゃんは飲ませてもらっているのね」

 

「はい、いつも病室で淹れてくれています」

 

「いいわね~。おばちゃん、期待しちゃうわ~」

 

「……。がんばって、淹れさせていただきます」

 

「ふっ、すごい顔になってるよ」

 

 ご婦人らの猛攻にたじろいでいる様子の彼に思わず、笑ってしまう私。

 二人だけでは見れない一面を見ることが出来た私は味を占め、その後も定期的に彼とご婦人らのお茶会にお邪魔した。

 

 

 といっても、ご婦人らとのお茶会の頻度は高くないので、基本的な今まで通りの交流であったが、彼がご婦人らの無茶ぶりに答えている姿を見て。

『もしかして、ある程度のお願いごとなら許してくれるのではないか』と、少しづつ。本当に少しづつ小さなお願いごとをするようになった。

 

「相川さん、紅茶を淹れてほしいです」

 

「相川さん、私、次はシュークリームが食べたいです」

 

「相川さん、そろそろ名前で呼んで、えっ、あの。その、メグミ……さん」

 

「メグミさん、中庭まで散歩したいです」

 

「メグミさん、あの木の下で写真を……撮りませんか」

 

 メグミは私の小さなお願いを嫌な顔をすることなく、すべて聞いてくれた。

 名前を呼びあうときは、緊張したが、一度言ってしまえば慣れてしまうようで、あっという間に名前で呼び合うようになっていた。

 

 

 

 

 メグミと過ごすことにすっかり慣れてきたころ、メグミが用事で病院に来れない日が続いた。

 彼にも彼の生活があり、病院を継ぐために色々と努力していることは話の節々からわかってはいた。

 だから、出会ってから1.2か月間。毎日、私に会いに来てくれたことが普通ではなかったのだ。

 彼と撮った写真を眺めながら、お菓子を食べる。紅茶を喉に通す。本を捲る。スマホの通知を確認する。

 

「用事が終われば来てくれる」

 

 自分を励ますように、私は呟く。

 私は寂しさを埋めるように、ご婦人らのもとに訪れることにした。

 

 

「セイアちゃんいらっしゃいな」

 

 今日もご婦人らは私のことを優しく受け入れてくた。

 

「メグミ君がいないから、寂しいわね」

 

「だが、せっかくの機会だ。久しぶりにがーるずとーくをしようじゃないか」

 

「はい。ありがとうございます」

 

 私は彼女たち優しさに甘えながら、会話に花を咲かせていった。

 

「そういえば。私、聴いちゃったんですけど」

 

 お茶会も終盤に差し掛かったところで、噂好きなご婦人が話を切り出した。

「なんだなんだ。今日の夕食なら私でも知ってるぞ」

 

「夕食の話ではありません。メグミ君のことで、看護師たちが話していて」

 

「メグミさんについてですか?」

 

 この時の私は、しばらく会っていないメグミについて何かわかるのではないか、期待していた。

 

「そうなの。どうやらメグミ君、最近許嫁が出来たみたいで、病院内で噂になってるようよ」

 

 色づく世界にひびが入った。

 

「ああ、それなら私も聞いたな。だが、恐らくそれはセ、セイアちゃん?大丈夫か?」

 

「えっ、ええ。大丈夫です」

 何とか言葉を出し、「気分が悪くなったので、病室に戻ります」と伝え、お茶会を抜け出した。

 

 

 

 

「やっぱり、悪夢じゃないか」

 








病院のお話はあと1話で終わります。
もう少しお付き合いください。
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