セイアと両片思いの許嫁概念   作:黒子白衣

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感想、評価ありがとうございます。
それに報えるように、頑張っていきます!





思い描いた日々の思い出

 私が赤っ恥をかいた次の日には、お父様と医院長が私の病室を訪れた。

 お父様たちは、私とメグミの関係について嬉しいそうに話してくれていた。娘がその事で悶々と悩んでいたことなど知らぬように。

 いいや、知られていない方が私にとって都合のいい話ではあった。この狸たち(狐と狼だが)は、私がメグミの婚約者(私)に嫉妬していた事を、知っていてら、自分たちの考えは間違えなかったと鼻を高くしていただろう。

 そんなお父様たちの結婚式はいつあげるや、孫は誰に似るかななど、与太話を聞き流していると。

「そうそうセイア、退院のことなんだけどね」

 と、ついでのように話始めた。

 普段は元気であることや、神秘由来の体質を根本的に解決するには難しく、治る見込みもないのに病室でずっと過ごさせるのも、精神的負担が大きい。

 それなら、今まで通り日常生活を過ごし、不調が出たら検査をしていった方がいいと結論づけたようだ。

 

 こうして、私の病院での生活は終わりを迎え、あの懐かしき平凡な日常が戻って――

 

「セイアちゃん、もしも何処か行くことがあれば、メグミも連れて行ってもいいからね」

「え?」

「ああ、是非ともそうしてもらおう。セイアは、こう見えておてんば娘だからね。メグミくんが着いてきてくれるなら安心して任せれるよ」

 

 今までとは違った日常生活の幕開けだった。

 

 


 

 

 退院後も、メグミとは頻繁に連絡を取り合い、遊びに出掛けていた。

 最初は、彼がよく買ってきてくれていたお菓子のお店や本屋さんなど、入院していた時に興味を惹かれた場所を選んでいた。

 そうだな。例えば、初めてデートに行く時はーー

 

『メグミさん、入院している時に買ってきて貰ったプリンについてなんですが」

『はい、あれですね。木の容器に入った』

『そうです!あのプリン美味しかったので、もう一度食べてみたいのでお店の場所とか教えてもらってもいいですか』

『そのお店、店内でも食べれるので、一緒に行きませんか?』

『私は大丈夫ですけど。メグミさんはお時間大丈夫ですか?』

『はい、俺は大丈夫です。お店も古民家を改築していられるようで。とても落ち着いた雰囲気でセイアさんも気にいると思いますよ』

『それなら、ぜひ、一緒にお願いします』

 

 こんな感じにメッセージのやり取りをしていたわけだが、内心はピンが抜かれた手榴弾を放り込まれたようにパニックに陥っていた。

 考えてもみろ。私とメグミが会っていたのは、病院なわけで、身なりを整えるとしても、服装はいつも患者服だったのだ。

 それから、予想だにもしないデートと。しかも、意中の、人とのデート。

 もちろん、異性とにデートも初めてだったので、何をしたらいいのか全く検討がつかなかった。とにかく、メグミに減滅されたくない、可愛いと褒めてもらいたいと、感情が頭を振り回していた。

 とにかく、デートまでに私は服を決めないといけなくなった。

 

 デート当日……。

 家の姿見の前で、バレリーナみたいに綺麗な回転を何度も何度も繰り返し、薄黄色のワンピースを花弁のように広げていた。

 結局、色々悩んでみたものの、髪色に合わせたシンプルなワンピースを選んでみた。

「褒めてくれるだろうか」

 そんな不安からか、姿見の前から離れることが出来ずにいた。

 

「セイア様、そろそろお時間ですよ」

「ああ、わかっているよ」

 様子を見かねた使用人に声をかけられ、やっと離れることができた。

 それでも、不安な薄霧は消えず。それどころか、益々濃くなっていき、テスト返却に怯える子供のように、私は重い足取りで玄関の方に向かった。

「セイア様、お言葉ですが」

 私の後ろを歩く使用人に声をかけられ、後ろを振り向く。

「セイア様はいつも可愛いです。そして、今日はいつにも増して、可愛いですよ」

 私を安心させるように、優しく微笑みかけながら、

「セイア様、楽しみましょう。相川様もセイア様とデート楽しみにしていますよ。大切なのは笑顔です。はい、ニッコリ笑って」

 わざとらしく口角を上げる使用人に、合わせるように口角を上げる。

「素敵な笑顔でございます。セイア様」

 彼女の笑顔が、言葉が私にかかる霧を晴らし、前へ進む光を灯してくれたのだった。

 

 「いってらっしゃいませ。セイア様」

 

 


 

 

 トリニティ学園の繁華街の中心地にある噴水。そこが待ち合わせだった。

 昼間ということもあり、噴水の周りには人で賑わっていた。私は、早まる鼓動を抑えながら人々の間を通りながら、彼を探す。

「セイアさん」

 私の長い耳は自然と立ち上がり、後ろを振り返った。

「セイアさん、こんにちは」

「こんにーー」

 私は思わず挨拶を飲み込んでしまった。

 病院で会っていた時のようなラフさはなく。白いシャツに灰色のベストと長ズボン、シンプルながら硬く落ち着いた雰囲気の服装から、はみ出ている白い毛並みが、太陽の光に反射して綺麗に輝いていた。

「か、かっこいいですね」

 こういう時、男の人にどのような言葉を言えばいいのかわからず。反射的に言葉が出てしまっていた。

 メグミは私の言葉に意表を突かれたかのように目を丸め、恥ずかしそうに笑った。

「セイアさんも可愛いですよ。その黄色ワンピース、とても似合ってます」

 私の長い耳はメグミの言葉を一語一句取りこぼすことなく拾い上げ、脳内で反響させる。

 「あり、がとうございます」

 「それでは、いきますか」

 メグミは私に手を差し伸べられた。先ほどは気づかなかったが、彼の手は黒い皮手袋に覆われていた。

 私が彼の手を握ると、手袋のひんやりとした感触と手袋越しに感じる肉球の柔らかさに、私の小さな手はあっという間に包まれた。

 素手に触ることはできない寂しさはあったものの。熱くなった身体にはちょうど良かったかもしれない。

 

 メグミのエスコートで、私たちはあっという間に目的にたどり着いた。

 メインストーリートから少し逸れた裏道に建っているレンガ造りの古民家の前には、小さな看板が一つ置かれていた。

「ここが目的のプリンがあるお店です」

 彼は慣れた手つきで扉を開けると直ぐに、ケーキやプリンが並べられたショーケースが目に入った。

 「ここは、種類が少ないですけど。どれも絶品ですよ」

 確かに、ケーキは、ショートケーキ、チョコケーキ、季節のフルーツタルトの3つだけで、プリンに至っては独特な木の容器に入ったものだけだった。

 「先にここで食べたいスイーツと飲み物を選んでから、奥の階段から二回に上がるんです」

 彼の説明を聴きながら、私はショーケースに入ったケーキとプリンを交互に見ていた。

 目的はプリンだったのだが、いざ実物を見てしまうと、ケーキも気になってくる。二つ頼んでしまっても良いのだが、メグミの前で食い意地を見せてしまうのは憚れる。

「私がショートケーキを頼むので、一口食べてみますか?」

 そんな私に気づいたのか、メグミは魅力的な提案をしてくれた。

「良いのですか?」

「はい。私は何度も来ていますし。それに、また一緒に来たらいいじゃないですか」

 

『また一緒に来たらいい』

 そうか、私は何か勘違いしていたのかもしれない。もう、私はメグミと何度でも何処でも一緒に好きな所に行っていいのだ。

 

「なら、はい。ぜひ、一緒にまた来ましょう」

 私たちは、プリンとショートケーキとおすすめの紅茶を二つ注文して、二階の上がった。

 二階は、テーブル席が5つ用意されており、私たちは空いていた窓際の席に腰を下ろした。

 窓からは、メインストリートの様子を見ることができ、少し建物に隠れてしまっているが集合場所の噴水も見ることもできる。

 人々の流動的な動きから目が離せないでいると、テーブルに先ほど注文した品が運ばれた。

 木製の皿に載せられた白いケーキがメグミの前に、プリンが私の前に置かれた。

「今思うと、プリンはお持ち帰りでもよかったかもしれませんね」

 と、私が冗談ぽく言うと、つられて彼も「そうですね」と笑ってくれた。

 

 ウェイターが店の奥に戻るのを見送ってから。

「いただきます」と、私はスプーンを手に持ち、傷一つないプリンの表面に沈めこませた。

 前は病院で食べていたので、どうしても色素が薄く見えたが、こうして雰囲気がある場所で見ると表面は黄金のように輝いていた。

 煌めく黄金を口に運び込む。舌に触れたとたん溶け出し、バニラの香りが口の中で広がっていく。

「美味しい!」

 私は思わず声に出してしまった。一度食べたことがあるのに。やはり、病院で食べるよりも何倍も美味しく感じてしまうものだろう。

 そんな風に感動していると、遅れて目の前にメグミが笑っているのに気づいた。

「あ、その、すみません。はしたなかったです」

「そんなことないですよ。喜んでいるセイアさんを観れて、私もうれしいです。ほら、ケーキもどうぞ」

 と、彼は自分の手元にあるケーキをフォークで切り分け、私の口元に運んだ。

「……。一人で食べれます」

「私が、こうしたいのです」

 間髪入れずそのような事を言われてしまったらどうしようもない。

 私はそのまま口を開いた。わずかな抵抗として、目を瞑ったが、心臓の鼓動音がより聴こえるだけで余計に緊張した。

「はい、どうぞ」

 ケーキ特有の甘い匂いが口に広がり、私は口を閉じた。

 美味しい。美味しかったそのケーキの味だが。

 私は、恥ずかしさでどんな味だったかわからなかった。

 ただ、目の前の彼が優しく笑っているのだけ覚えていた。

 

 

 

 

 それから、私たちは色々な場所に出かけた。

 本屋さんや美術館、映画館は勿論のこと。一人では許されなかった、海や山といったアクティビティにもメグミとなら許され、自然との戯れを思う存分楽しむことができた。

 

 

 そんな夢のような……。

 私は、病室で思い描いていた日々を過ごしていた。

 

 

 





読んでいただきありがとうございます。
次回は、トリニティ学園に入学してからの話を書けるように頑張ります。


最後に作品とは離れてしまいますが、ふぇすの感想を簡単にですが、まとめてみました。


~ふぇすの感想~

ブルアカ5周年おめでとうございます。
ふぇすには、二日間現地参加いたしました。
新幹線や早朝の列に並んでいる間も、SSを書いていたのですが、全然間に合いませんでした。すみませんでした。

さて、ふぇす会場に入ってからは、ステージの方に行っていたので、アトラクションは全く参加できませんでしたが。ステージの様子やDJライブ、新情報が出るたびに、周りの先生方の熱狂に負けないように、私も大きな声を出して盛り上がっていました。
来年もふぇすは現地で参加したいですね。
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