一部シンフォギアキャラファンへ不快な思いをさせる描写がありますのでご注意ください。
前回までがアニメ1話分ぐらいと想定していましたが、恐らく1話Aパートも言っていないのだろうな…と考えていた作者です。
第4話どうぞ
「風鳴、翼?」
大夢は瞠目した。輪郭しか判らないような顔で「目を見開く」という表現は可笑しいが、確かに大夢は瞼が開いていくのを感じた。幼馴染が大ファンのトップアーティストが奇怪な格好で自分に刀を向けている、改めて考えても驚愕に値した。
(何で水着…レオタード?いやでも刀…え?は?なんかの撮え…なわけないか)
「動くなと言った!動けば斬る!」
「!」
突き付けられた切っ先、静まり返る場に、自分の呼吸だけが耳障りに聞こえる。よく分からないが恐らくアクションを起こせば切り伏せられる。今の彼女にはそんな凄味が心臓を刺し貫いているようにさえ思えた。
「え、えーと…あのすいま────」
大夢は恐る恐る両手を上げた。まずこちらに抵抗の意思はない、そう示すつもりだった。
右肩口から痛みが駆け抜けたのはその時だった。
白い体に入る赤い筋、割れた洞から赤い血が吹き上がり、斬られたと認識した時には腹にも赤い切り傷が入っていた。
「ぁいぃっ!?」
「悪鬼滅殺ッ!」
振り抜かれた刀に押し出されるように廊下に転がる。体を抱える大夢の目に突撃する風鳴翼が見えた。思わず地面を蹴って床を滑る。彼がいた場所に亀裂が走った。
「ちょ、ちょっと待って────」
「問答無用ォ!」
右からの袈裟懸けを避けて、続く突き上げに前転する。背中から迫る殺意を勘だけで躱すたびに冷える肝を抑えながら廊下を走る。途中転がっていた黒塊を投げつけて進行を阻もうとしたが、風鳴翼は止まるどころか雄叫びを上げさらに加速。彼女の剣幕に怯んだ大夢の、壁へ伸びた手を斬り落とした。
「うぅ!?」
(何なんだよこの人!?)
綺麗に分かれた断面を抑えながら大夢は呻いた。訳が分からないまま体が代わり、訳も分からないまま切りつけられ、今また訳も分からず腕を失った。何でこんなことになった、大夢は目の前の戦姫を睨んだ。
刀を構え迫る風鳴翼。その姿は破壊彩る世界においても凛として麗しく。口元から響く
胸の歌を絶刀に秘め、轟く雷鳴となりて駆け抜ける────
────去りなさい!夢想に猛る炎…
(歌いながら戦ってる!?)
逆立ちしながら回転する彼女の足が見えたのを最後に光が消えた。目元に走る痛みと湿り気に顔を覆う。同時に下からの衝撃に体が打ち上げられる。妙な解放感、直後に降り注いだ鮮烈な痛みを最後に大夢の意識が切れた。
神楽の風に 滅し散華せよ!────
全身に日本刀を生やした鬼が大地へ落ちる。轟音と共にビルへ着地し、粉塵立ち込める地表を見下ろす。鬼の姿は見えない、地表を広がる血が僅かながら見えて来たところで耳元で声が聞こえた。
『翼、何かあったのか?』
「いえ、討ち洩らしを片付けただけです」
『……そうか』
戻ってこい、とだけ途絶えた通信を聞き流して翼は刀を見やった。付着した血が伝い、鍔を超えて滴ろうとする。だが腕に落ちる寸前に横一閃、血を振り落とした。
「…弱すぎる。」
血痕に背を向けて飛び上がる。頭の奥で燻る炎は、まだ消えない。
「災難だったな。ノイズに出くわすたぁ」
「はいぃ…」
JoySTARのバーカウンターにもたれかかった藤二にペットボトルが投げ渡された。パチァと軽妙な開封音が鳴り、空いた口からミネラルウォーターを一息流し込む。口を離してああと息を零す藤二を見たマスターは明後日の方へ顎をしゃくった。
「で…アイツはずっとあんな感じか」
「はい」
顎の先、カウンターから離れた席にめぐみが座っている。流れる髪に隠れて表情は見えない。彼女の視線の先には握りしめた両手、その間から真っ黒な四角い塊がのぞいている。
「シェルター開いたら真っ先に出てって追いかけてったら、めぐみがあのスマホ見つけたとこでした」
「大夢は?」
「……まだ、見つかってないっス」
警報が晴れ、シェルターから出られためぐみは一目散に駆け出していた。脇目もふらずに走り出し彼女に驚いたが、行先は見当がついていた。その背中を見失わぬように追いかけ続けること数十分、大夢が降りたという駅付近で藤二が立ち止まった時、めぐみが大夢のスマホを見つけていた。
火に巻かれたのか、真っ黒に外装が焦げ付いたソレが大夢のモノと判別するのは難しかった。しかし僅かな希望を胸に電源スイッチを押すと、映り込んだのは三人の写真。ソレを見ためぐみはその場で崩れ落ちてしまった。
ノイズは人だけを狙い、触れるだけで人を炭に変えて
だが長居は出来なかった。ノイズが過ぎると警察が後処理にやって来る。悪いことをしたわけではないがどこか後ろめたさを感じた藤二はめぐみをひっぱると、駅から離れた場所で運航していたタクシーを拾いJoySTARに駆け込んでいた。
めぐみは着いてからスマホを握ったまま動かない。時折祈るように両手を胸に置くが、しばらくするとだらりと腕を下ろして、また不意に両手を胸に当てる。それを繰り返す様を見ていた二人だったが不意にマスターが藤二の肩を突いた。
「どうすんだ、来週のライブ。二人で出るわけにもいかねぇだろ」
「ちょ、今その話するんすか?」
「今しないで何時するんだよ。お前ら三人のデビュー、先方が考えてくれるッて話だろ」
「それは…こんな状況で出来るわけないでしょ」
「じゃあ諦めんのか?」
「…だから今する話じゃね」
声を大にして話を遮ろうとした時、奥から物音がした。音の方へ振り替えると厨房の奥、勝手口があるところだ。何があったのか、訝しむ藤二の背中をマスターが押した。
「見て来い」
「俺が!?」
「お前以外誰がいるんだよ」
早く行け、と急かされた藤二は口をへの字に歪める。しかしマスターは動かないしめぐみは論外。仕方なしと藤二は厨房へ赴き勝手口を開けた。
いつもより重い感触と共にドアが開く。見えたのは黒ずんだ壁とせわしなく動く室外機、そして青年が傷一つ無い肌を惜しみなく晒して倒れこんでいた。
「大夢?…え、なんではだ…嘘だろ、え、生きてる────?」
大夢の体を揺らし反応を見る藤二。慌ててめぐみを呼びに戻った彼は、大夢の手に折りたたまれた音叉が握られていることに気づかなかった。
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