今年一年、健康に執筆活動と読書が出来ますよう、皆様私と作品たちを宜しくお願いいたします。
新年一発目なので短めです。
豪、剛、轟。
けたたましい駆動音と共に破砕したコンクリートが持ち上がる。白い糸に絡まれて周囲の瓦礫を芋ずる式に引っ張り上げてしまうが、ショベルカーは目一杯アームを動かして瓦礫をまとめ上げると、側のダンプカーへ。
いい手際だ、弦十郎は思わず感心した。満杯になったダンプカーの後ろ姿を見送っていると、入れ替わりに部下の一人が現場へ入ってきた。
「封鎖区画全ての遺体の回収が終了しました。後は、コレだけです」
「そうか」
耳打ちされた言葉に首肯する。東京・渋谷の封鎖地区は徐々に解放されて、残すのは一か所だけ。
首を無くし足も断たれ、横たえる大きなツチグモの胴体を睨む。これから死骸は一課・二課合同で解体し、部位ごとに生態調査の為に二課本部への搬送が予定されている。未知の特異災害に身の締まる思いだったが、不意に近くの職員が口を開いた。
「本当に何なんでしょうか、これ」
「ノイズとは根本的に違う、生物的でありながら、まるで絵巻の中から出て来た妖怪にも見えるが…まるで分らん」
「ノイズじゃないってことは、人を炭化させられないってことですよね?」
「ああ……見たのか?」
「はい、遺体は残っているのに遺族に返せないなんて…」
「
「しかし…」
部下たちの懊悩に弦十郎は部下の肩に手を置いた。肩にこもる熱と力に部下は押し黙り、それを見た弦十郎も目を伏せる。
封鎖場所で数々の死体を皆が見てきたのだ。口から臀部まで串刺しにされた者、かろうじて人であったと判別できる灼けた炭の痕、中身を吸われたかのように皮だけになった者……原形をとどめていれば御の字の状態、あの死体を遺族にどう説明すればいいのか。奇々怪々極めた家族の惨状を果たして受け止めきれるのか。政府がノイズ災害と報道することを決めた時、内心安堵した自分がいることに嫌気が刺しもした。
だが今は仕事中だ、弦十郎はうつむいた視線を上げた。頬を叩くと部下たちに指示を出し、彼らも切り替えるように各所へ散っていく。そして自分はツチグモの胴体の、切り落とされた首の側にいる了子に声をかけた。
「了子君、それから何か解ったか?」
「ご期待には沿えないわ。見た目は完全にクモだけど採取した細胞は生物のそれとは逸脱しているから当てになんない…現地調査ではここが限界ね、後はウチのラボでしっぽり解剖させてもらうわ」
了子は小さく首を鳴らして、手にしたタブレットを弦十郎へ見せる。写されたのは二つの成分表と「一致」の二文字。
「体組織の性質は、《ホワイト》のそれに似ているみたい」
「何!?」
「首の一部から腐葉土が検出されたわ。風で飛ばされたのか、ごく一部しか検出されなかったけど間違いない」
見つけられたのは奇跡ね、と一人呟く了子の言葉に弦十郎は死骸を見た。《ホワイト》と同じ体質、その言葉に多くの疑問と姪の姿がよぎる。いまだ全容の見えない彼らの姿と、彼らへ依然消えない怒りを持ちながら防人の使命を果たさんとする彼女が横たえる様を思い出し、喉から呻るように息を吐く。
弦十郎の耳に轟くような悲鳴が飛び込んできたのはその時だった。
「何?なんなの!?」
「どうした!?」
悲鳴の方へ振り向き駆ける二人。見ると一課の職員が尻もちをついている。藻掻く彼の足の先には────
「嘘でしょ…まさかまだ」
「生きて、いや動けるのか…!」
切り落とされたはずのの頭が大口を開けて職員へ迫っていた。
バチンバチンと顎を開閉する勢いだけで職員に迫る頭。職員は逃げようとするが腰でも抜かしたのか、地面をうまく蹴り上げられていない。やがて二っつの距離は縮まり、白くとがった牙が彼への足へと刺さろうとしていた時。赤い影が割って入った。
「怒ん!」
裂帛の気合と共に放たれた正拳突きはツチグモの牙を折り、眉間を大きくへこませた。殴られた頭は作家ボールのように転がり、防音壁にぶつかり静止する。頭はびくびくと痙攣していたがしばらくするとはたと動かなくなった。
沈黙した首を見て弦十郎は振り抜いた腕を見た。思い切って殴ってみたが拳の先が赤く腫れあがっているが、何度が手を開いて閉じ、手首を振って調子を確かめる。後ろにいた了子は弦十郎に駆け寄らず、すぐ横を通り過ぎて転がった首に駆け寄った。
「ノイズじゃないなら、俺でも何とかなるか」
「流石♪でも参ったわね。首を落とされても生命活動を停止させられないなら、今の私たちじゃ対処できないわよ」
「シンフォギアでも無理か?」
「技術的問題もあるけどそれ以前に翼ちゃんよ。まだ意識戻ってないんでしょ」
「病院の緒川からは未だはない…変に刺激を与えないでくれ了子君」
えいえいとボールペンで首を突く了子を止める弦十郎。了子は弄り足りなさそうであったがすぐに切り替えて指示を出し始めた。死体は出来る限り細かくしなければならない、必要事項と関係各所への対応を考えていると、ふとある場所に視線が止まった。
封鎖地区を区切る防音壁の一角、壁を支える鉄パイプが少しばかり壁を突き出している。弦十郎はそこをじっと見つめていると、背後から声を掛けられた。
「弦十郎君?」
「────ああ、何でもない。」
突然止まったことを怪しんだのだろう、眉をひそめた了子へニッと笑いかける。了子は大丈夫だと判断しその場を離れたが、弦十郎の視線は再び空へ戻っていた。
「────三本角は初めてだな」
弦十郎のつぶやきは重機の駆動音にかき消されて誰の耳にも届かない。弦十郎は現場を出て本部へ戻るべく、近くの駐車場に止めていた車のドアに手をかけた時、懐の携帯が震えだした。
「緒川、どうした?」
『大変です、翼さんが!』
「意識が戻ったのか!」
『はい、ですがいきなり暴れ始めて…』
「聞かん坊め…すぐ向かう」
電話越しのらしくない焦り声に、弦十郎はアクセルを踏み込んだ。
次回もお楽しみに。
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(今後の展開)死亡キャラ生存はいる?
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いる!
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いらない!