ラウンドトリップ・チケット   作:闇の三流記者

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おでんの美味しい季節になったので
初投稿です


01R ウマがあう

「トレーナー……本当にすまない」

「いやぁ、これは、仕方ないんじゃないか?」

「いくらオグリちゃんでもワープはできないわよねえ」

 

 森の中、途方に暮れるウマ娘二人とトレーナー一人。

 海外帰りで久しぶりのトレセン学園周りの山を走ることを楽しんでいたオグリキャップとマルゼンスキー、そして最近ベテランと呼ばれる年数に近づきつつあった篠葉。

 既に『二度目』の人生となる篠葉にとっても初めての体験だった。

 

 迷うはずなどない。

 そんな三人が、トレーニング中に気付けば山の中。

 確かに走っていたのは山だった。

 だが、霧に包まれるまでは間違い無く舗装された道路を走っていたはずだ。

 なのに、気付けば道などない山中に。

 

「GPSロガーも、死んでるんだよなあ」

「電話はアンテナが立ってないわねえ」

「うう……」

 

 しょぼんと肩を落とすオグリの頭を撫でるマルゼン。

 そんな二人に苦笑しながら、篠葉は愛機である四足バイク、トレッシモのディスプレイを見る。

 ライツ博士との共同開発で作られた、山岳トレイルをするウマ娘をトレーナーが追うための特殊な4足バイク。

 このバイクは操作性、走破性もさることながら緊急時用の衛星GPSロガーや最低限の補修資材に医療機器なども備えている。

 その、スマホ以上に高度で耐久性もある位置確認機能が効かないことに、篠葉は天を仰いだ。

 木々の間から見えるのは星空、ふと、星座から位置を割り出せないかと思いついた。

 

 ヒシアケボノのトレーナーや、ゴールドシップのトレーナーなどはその辺りの技能に秀でているらしく、何度か役に立つからと星座の角度だのを叩き込まれていた。

 トレッシモのツールボックスから重りになりそうなボルトとピアノ線を取り出そうとしたところで、オグリとマルゼンが耳を立て、同じ方向を向く反応をした。

 

「オグリちゃん、聞こえた?」

「あぁ、だが、初めて聞く声だ」

「どうした二人とも」

 

 問いかける篠葉。

 ウマ娘の耳は、とても敏感で、そのくせ強靱だ。

 大きな音を耐えることも可能だが、小さな音も聞き逃さない。

 そんな二人の耳に聞こえたのは聞いたことのない音だった。

 

「鳴き声、だと思う」

「鳴き声?」

「ああ、凄く、なんというか懐かしい声だ」

 

 篠葉には聞こえない、そんな声。

 だが、空耳というわけではないのだろう。

 オグリとマルゼンの尻尾がそわそわと揺れている。

 

「ねぇ、トレーナー君、行ってみても良い? 

 なんかね? 凄く行ってみたいのよ」

 

 マルゼンの目が光る。

 楽しみを見つけた時のその光が篠葉は好きだった。

 だから、本当に駄目でない限りは許可を出してしまう。

 チラチラと見てくるオグリの姿も後押しし、苦笑した篠葉はスイッチを入れ、トレッシモのモーターを駆動させる。

 タキオン印の薬品による発光と定期的に相転移を起こすとか言うよく分からない特性を利用したバッテリーは、よく分からない移動の後も問題なく稼働していた。

 

「暗くなり始めてるし、ライトを使うのと、二人もこいつに乗ること。

 じゃないと許可できないぞ」

 

 スイッチに指をやり、稼働状態から走行状態にトレッシモを移行させると、後部の補助席を二人に指し示す。

 二人が座席に腰を落とし、固定具を握ったことを確認するランプの点灯を確認すると、篠葉はハンドルを絞った。

 静かに、しかし力強いモーター音が一度響き、トレッシモの四つ足が走った。

 

 高輝度LEDによるライトは適度な明るさで走行経路を照らし、内蔵コンピューターで最適な経路を算出し、その道筋をハンドル近くの3Dディスプレイに示す。

 提示されたルートを、タイヤと爪を切り替えつつ駆けるトレッシモ。

 四足歩行の利点を生かし、道なき道を宙に浮くかのようにスムーズに進む。

 

 足の先に展開した車輪はグリップを充分に発揮しているが所々濡れた場所などもあった。

 ルートマップに表示される軽度警告のポップアップの数に、やはり二人を走らせなくて良かった、と、篠葉は胸を撫で下ろした。

 

「オグリ、声は?」

「最初の一回だけだ。 けど、方向はこのままでいい」

「さっすがオグリちゃん、山ならボノちゃんにも負けてないわね♪」

 

 マルゼンの褒め言葉に、オグリはムフー、と嬉しそうに鼻息で返す。

 タマモクロスやイナリワンとのやり取りでも良くだしてくる表情に、篠葉の肩の力も段々と抜けてきた。

 登り、降り、沢を越え――暫く森の中を走る。

 

「あ、森も終わりみたいよ」

 

 その言葉に合わせるように、背の高い木々が途切れ、平地に出る。

 草の香り、風の感触、そして、獣の臭い。

 

 懐かしい香りに戸惑う篠葉だが、目の前に居るモノに、さらに驚かされた。

 額に三日月の流星を持つ馬。

 ウマ娘達には初めての、篠葉にとっては一世ぶりの懐かしい動物が、月明かりに照らされた放牧場で立ち尽くしていた。





トレーナーの設定で転生タグを消化。

所で、ウマ娘や恋姫などはTSタグは常備すべきか否か。

今後は元ウマの話も出るかも知れないし、TSタグはやはり必要なのか?
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