三国時代まで生き残りたい   作:でねでね

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12話 再起

207年 新春

 

 長江の天際に流るるを。

 

 荊州。北部と南部で特色があり東西南北に繋がる交通の要衝である。荊北は交通、政治的、学術的要衝であり。荊南は水運が整備された豊かな農業地域、そして天然の要害・益州に繋がる。

 曾て、または今、そして未来において、孫呉が荊州を狙う理由は長江中流域に存在している戦略的重要地である為だ。孫呉の本拠地・揚州は長江下流にある。つまり雄大な長江を利用され、上流からの攻勢を常に警戒しないといけない。孫呉が強力な水軍を持ち続け、荊州を手中に収める事に駆られるのは、地政学的に国防戦略として必要なのだ。よって荊州は後の三国時代の中間地域であり、これより先の激戦地である。

 

 

 おれ達は曹操に敗戦した後、荊州牧・劉表さんの庇護下に入った。荊北の新野に拠点を構え、対曹操の最前線として備えている。この数年間で曹操は北征を続け、故・袁紹の河北を引継いだ遺児達の抵抗空しく、残すところ幽州のみとしていた。河北平定が終われば、この荊州にやってくるのだろう。前回の戦より更に戦力差が開いていく現実に焦り、夜しか眠れない。

 曹操が河北にかかりきりのタイミングは何度かあった。その度に劉表さんに袁紹を助けるよう北伐の許可を願ったが、すべて却下されてきた。消極的な意見を切り返す事が出来ない歯痒さを感じる。我が軍に足りないものは、それは情熱、思想、理念、あとなんだったか忘れたが、そして何よりもーーー知力が足りない!!

 

 今日も今日とて、政務を臣下に丸投げし良い人材はいないかと酒場に入り浸っていた。

 顔なじみになった店主から、いい加減働けよという厳しい視線を感じるが、こっちは真剣に人材確保の為に来てるのだ。きっと店主には、壊れるほど飲んでいても、3分の1も伝わらない。

 

 酔っ払った頭の片隅に歌が聴こえる。

 

「明主は賢を求むれども、却って吾を知らず、、、」

 

 おれは、キミ頭良さそうだね。とは決して声に出さず、ちょっと一緒にお茶しない?と誘う。

 彼は朗らかに笑いながら了承してくれた。いいやつじゃないか、名前を教えてくれないか?と尋ねると。

 

 単福、と一言応えた。

 

 

 

 酒を一献と言わず、浴びるほど飲ませ沢山の話をしたが、こいつはやはり頭が良い。

 

「今日は楽しい時を過ごせましたぞ、劉玄徳殿」

 

 なんだ気付いていたのか、単福なんて偽名使ってたからわかってないのかと思ってた。

 

「貴方に見つけていただく為、某はこちらに馳せ参じ街中で歌っていたのです。故あって身の上を隠しておりました、改めまして徐福と申します」

 

 10年ぶりだな、ドラ息子。よろしく頼む。

 

 

 

 ーーーあと徐福って方士の奴と紛らわしいから、今日から徐庶って名乗ってね。

 

 

 

 

 徐庶が仲間になった! 徐庶を軍師に任命した!

 

 

 

207年 4月 

 

 徐庶を軍師に任命したことにより、参謀の枠が劉備軍結成25周年を前にようやく埋まった。さっそく劉表さんのいる襄陽に赴き、曹操軍と一戦交えたい旨を伝えた。予想通り開口一番断られたが、徐庶が弁舌にて了承を勝ち取る。

 

 徐庶の初陣は新野から北進した先での防衛戦となった。ついでに関羽の長男・関平も連れていく。

 

 劉備軍・趙雲、陳到、関平、徐庶、劉備

 曹操軍・曹仁、于禁、李典、夏侯蘭

 

 曹仁の八門金鎖の陣には苦い記憶しかないが、今日は敗ける気がしないな。

 

 曹操軍とは互いにやや距離をとって対陣する。敵将は隙を見せない名将だ、どう崩すのか徐庶に献策を求めると簡単に言う。

 

「かつて劉備様が辛酸をなめた八門金鎖の陣。この徐庶にお任せあれ」

 

 徐庶は趙雲率いる騎兵500に指示を出し、敵陣の連携を崩す弱点を的確に当てていく。寡兵で大軍を打ち破る。今まで呂布を筆頭に関羽、張飛などの個の武力では見てきたが、一糸乱れぬ統率力と的確な知略でもって敵を屠る軍の姿は参謀の必要性をおれに訴えかけるような、伝えるような戦い運びだった。

 

 

 

 日が暮れ始める頃、曹操軍は退却していった。此方の損害は軽微であり完勝と言えるだろう。

 

 夕日を背に徐庶はおれに語りかける。

 勢力基盤を作り上げるうえで名士・豪族に必ず礼を尽くさないといけないのだと。劉備という君主は知識を持つ者たちに頭を下げ、協力を求め、仰ぎ見る事が出来るのだと広く、皆に知らしめろと。

 

 

「劉備様、御人徳のある我が君に申し上げます。伏龍を迎えに行ってはいただけないでしょうか」

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