三国時代まで生き残りたい   作:でねでね

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16話 赤壁の戦い3

211年 1月 荊州貸与問題

 

 土地とは、ただ徳のある者に帰すのみで、なんら所有が定まっているものではない。

 

 

 荊州貸与。いつかの蜀漢と孫呉の紛争の火種となり、劉備たち義兄弟が死ぬ原因となる問題である。

 魯粛が伝えてきた要求に対し、おれ達は早急に協議する事になった。

 

 まず、現状の荊州領土を振り返り確認する。

 

 荊北→新野・襄陽が曹操、江夏が孫権

 荊南→江陵が孫権、武陵・零陵・桂陽・長沙が劉備となる。

 

 また現在、朝廷に認められた劉琦が荊州刺史で劉備軍に所属している。故に劉備が荊州を領有するのが正当であり、名士・豪族が従うのだ。それを踏まえて朝廷の意向を無視する要求の理由を魯粛に問う、何故だ。

 

 魯粛の言い分は、荊州奪還は孫呉の尽力のおかげだからという。また、今の荊州の領有権は劉琦が死ねば無くなるとも。だから劉琦の死後かつ劉備軍が益州を平定したら返せ、、と。

 

 ふむ、痛いとこを突くな。ま、周瑜が死ねば当然ともいえる。

 

 孫呉の戦略は周瑜の天下二分の計、周瑜がいるから荊州そして益州を見据えて軍を分けれる。だが、その大黒柱が死んだ、故に魯粛。

 やはり周瑜は自身の後任を、孫呉国内で疎まれているのに魯粛にしたのか。

 

 魯粛は諸葛亮と同じく天下三分の計の考案者だ。しかし諸葛亮と違い、漢を建て直すため(天下統一)ではない。孫呉という国が独立して存続する事を重視している。漢という老木は切り捨てようとするのは儒教に合わない考え、だから疎まれる。

 

 荊州貸与(ここでは主に江陵のこと)による孫呉の利点は3つ。

 短期的には、軍の建て直しによる戦線の縮小をする為。これは周瑜に代わる方面司令官がいない事でいま荊州を手に入れても守れない。故に劉備に江陵を含む荊南・長江中流の安定を任せる。

 中期的には、荊州の利権を保留にする為。荊州における孫呉の名士・豪族への影響力は弱い、故に時間を稼ぎ地盤を造る。

 長期的には、荊州を貸し与えたという外交のカードを持つ為。

 

 これらは劉琦が病弱であり永くはない、という前提により成立する。

 

 そして、おれ達のメリット。

 益州平定の際に、江陵の孫呉という後顧の憂いを断てる、、、か。第三極として、劉備軍は発展途上。劉備軍の荊州の地盤が固まりきってない今しかないというわけだ。

 

 周瑜、あいつ死の間際にここまで考えて未来の孫呉のために、最も現実を俯瞰していた魯粛に託したか。

 孫権には、おれや曹操には無い若さという時間がある。孫策の大志を引き継がせる為とはいえ、見事でしかない。

 

 さて、どうするか、と零してみる。

 諸葛亮は、今は魯粛のやりたい様にさせ、後でどうにでも出来るという顔だ。だが、おれはバッドエンドを知っている。

 

 おれはこの場にいる関羽含め重臣全員の顔を見る。答えは江夏で沈む夕陽を眺めた時に決めていた。

 

 魯粛殿、貴殿の要求を呑もう。江陵を含む荊南すべてを孫呉に返還する。

 ただし、我らの条件を足してもらう。

 返還は貴殿の言う条件に加えて、上庸(益州・漢中と襄陽の間の都市)を我が軍が落とした後、共に曹操軍の支配下にある襄陽を攻略する事だ。そして、荊北の襄陽と新野の領有を認めてもらう。

 それを孫権殿が約束しなければ、我らは孫呉と矛を交えてでも荊州を護る。貴殿が死んだ後も必ず履行させろ。

 

 周りの臣下から、特に荊州出身のやつらが何を勝手な事を、という視線を送ってくる。うるさい。もう決めたんだ、文句言うな。

 わかったな徐庶・諸葛亮・龐統、戦略を練り直すぞ。

 

 それで魯粛殿、返答は如何に?

 

「身命を賭して、我が主君を納得させましょう」

 

 そう応えた魯粛とおれは笑顔だった、いつかは天下統一のため戦う事になろうとも。

 

 

 

 魯粛が去った後、おれは参謀たちにネチネチ突かれるのが嫌で、一先ず私室に退散。布団に包まって外界の情報をシャットダウンした。

 しばらくすると誰かやってきた。

 

「ふふん、劉備様も中々豪胆な事をするものね。孫策兄さまを思い出すわ!」

 

 孫尚香だった。

 良いじゃないか、偶には先が見えない高い所からだって飛び降りたくなるんだ。

 

 孫尚香はふーん、そんな事ある?と言って去って行った。

 

 孫尚香にはあのように言ったが、あーあやっちゃった!とも思ってるのだ。もう引き返せないけど。

 

 

 

211年 冬

 

 最近、酒場で聞く民たちの話題のトレンドは、西涼の錦馬超が長安を陥落させた話らしい。

 馬超が曹操を攻めた理由は、親兄弟を謀殺された恨み。とか、親は曹操に臣従してたのに、反曹操派の涼州軍閥周りが勝手に馬超を担いでなし崩しで攻める事になって親兄弟が処断された。とか好き勝手に物語を話していた。

 酒を飲みながら、民たちの声を聴いていると興味深い事を知ることがある。今日も1つあった。

 曹操が馬超征伐のため、西に軍を進めたことで、益州・漢中の張魯が曹操に対抗しようと勢力拡大の為に益州牧・劉璋を狙っているらしい。

 

 

 という事で、益州牧の劉璋さんが悪い張魯から守ってくれ、と同族の誼でおれ達に依頼をしてきたんですねー。

 あれあれ?使者の張松さんが益州全土の地図も献上してくれました。おかしいですね、これでは劉璋さんの本拠地・成都の攻略を誰かが狙っていた場合に大変な事になってしまいます。

 張松さんもウチの参謀たちもみんな悪い顔してますねー。

 もちろんおれは劉璋さんを助けに行きますよ、だって同族ですから。

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