三国時代まで生き残りたい   作:でねでね

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23話 夷陵の戦い‐表‐

222年 春 夷陵の戦い

 

 孫権軍

 大都督・陸遜

 配下将・韓当、孫桓、朱然、徐盛、丁奉、潘璋他

 

 冬の雪解けを待った劉備軍は東進を再開した。

 おれは斥候より孫呉の大都督・陸遜は撤退を繰り返した末、夷陵を抜ける境・夷道とその後方に布陣したと報告を受ける。夷陵は狭い盆地になっており、益州から荊州方面に続く山脈の終わり際。対して夷道は周囲を森林に囲まれ、一通に近い戦場で正面の殴り合いをしなくて良くなる地形、つまり防衛に()()()()()位置となる。おれ達が夷道を包囲する前までは。

 

 

 夷陵、陸遜。うっ、頭が、、、。

 と冗談はさておき嫌な火計だけは気を付けておかないといけないな。敗戦は避けられなくなる。ここまでは陸遜の思惑通り釣られたのだろう。

 

 おれ達は夷陵の盆地を抜け、夷道に差し掛かった。

 進軍途中、黄権が総大将は後方の秭帰辺りに本陣を置いて待ってろ。と言いたげに、おれを老人扱いしやがったので黄権には夷陵の北方・臨沮側の魏軍介入を抑えに行ってもらいます。

 まぁ黄権の進言も理解できるんだけどね、撤退する時は長江の川の流れに逆らう事になるし益州まで一通で逃げ道が限定されるから。

 だが、陸遜の火計が頭にチラつくので前線から下がるのは嫌なのよ。対処するにしてもこの時代無線とか無いし、夷道制圧できたらその先は江陵まで平野となり、おれ達のいる夷陵の防備も固まるからな。

 

 夷道の守将は孫桓、父は孫性ではなかったが優秀故に孫策に孫家へと迎えられ王族の親族筋となった武将の子だ。

 こちらは孫桓の守る夷道を包囲し攻撃を加えながらも、実際のところは陸遜側の救援で前線への釣りだしを狙ったのだが、相変わらず動きはなかった。

 

 と思いきや、まさかの陸遜自ら一軍を率いて奇襲を仕掛けてきた。こちらも奇襲されたとは言え、兵力差が圧倒的だったので即座に撃退できたが、まぁ陣営を探りに来たのだろうな。

 来るか、、、陸遜。

 

 おれは布陣している諸将へ伝令を出す。

 

 敵は火計をしてくるだろう。しかしその狙いは火による被害ではなく、一時的に指揮系統を混乱させ各個撃破する為。敵軍の一斉攻撃が来るぞ、迎え撃ち、逆に敵陣へ突撃せよ。活路は江陵への前進である。

 

222年 6月 深夜

 

 かつて洛陽へ向かう夜に見たのと同じ様に、益州方向・おれ達の後方陣地に備えている補給線が炎上する光が見える。

 ここまでは筋書き通り、あとはおれと陸遜どちらの脚本が優れていたかの結果発表だ。

 

 陸遜率いる敵軍は陸路と長江を利用した水軍からの側面揚陸にて奇襲を仕掛けてきた。

 本来の水軍の動きは夷陵の補給線あたりまで遡上して後方からの包囲殲滅を狙ったのだろうが、こちらは周倉に夷陵付近の水域に水軍を展開し、後方だけは間者はともかく軍勢は回り込めないようにしていた。兵達の動揺も最小限に抑えた、ここから先は殴り合いだ。

 

 夜空に光る星々と西方の立ち昇る火を明かりとして、劉備軍は陸遜の包囲殲滅に対して江陵のある平野への全軍前進突撃を取った。

 前面への一点集中によって、夷道の拠点を轢き潰し駆け抜ける。おれも愛馬・的盧に跨り剣を手に乱戦を走る。

 

 見たか陸遜!こちらには関羽も張飛もいる。単純な武力差で此の天下で張り合える者はそうはいないのだ。

 

 あと少しで夷道を抜け平野に出る。先に進んでいる関羽と張飛が陣を構え、諸将が合流しだい陸遜たちを無視して江陵を奪取、武陵で武力蜂起している馬良と連携し永安からの増援に呼んだ陳到と挟み込んだ形になった陸遜を殲滅する予定だ。

 

 

 あと少し、あと少し、あと少しで森を抜ける。

 

 

 護衛と共に的盧で森を駆け抜けていく、耳に響く風切り音がうるさい。

 闇夜の薄暗い道でおれは突然肩に熱を感じ、落馬した。落ちた衝撃で意識が朦朧とする中、何事かと自身の肩を見ると一本の矢が刺さっていた。護衛達も急に落馬したおれに驚いて、進んだ道を戻ってきているのが視界の端に映る。

 

 矢で射られたのか?と理解するのと同時に周囲から5人ほどの敵兵が出てきた。まさか本当に当たるとは思っていなかった、という様な顔をしている。

 おれは咄嗟に剣を構えようとするが、先頭の敵兵が槍を突き出した。

 

 凶刃は、槍の穂先はおれの胸に刺さった。刺した張本人はそのまま力任せに槍でおれを押し倒す。

 

 

 ああ、その顔はおれが初めて殺した痩せた農民によく似ている。

 

 

22?年 春

 

 おれが死んだ後、関羽たちは江陵まで陥落させ永安からの陳到と合流するも孫権誅滅の進軍を停止、蜀漢国内の統制に奔走することになる。跡継ぎの劉禅が皇帝に即位し、丞相・諸葛亮が補佐をする。また魏の曹丕、呉の孫権からの侵攻も危惧されたため、内外の統制に5年間の歳月を掛ける事となった。

 そして、5年という月日は老人の域に片足を踏み込んでいた関羽・張飛たちには長く、その命数が尽きる。

 

 二人の最期は家族に看取られ、奇しくもおれ達義兄弟の始まりであった良く晴れた春の日に似ていた。

 

 

‐GAME OVER‐




リアルに劉備がプレイ中に討死して涙を禁じ得ない。関羽と張飛も寿命迎えちゃいました。ちゃんと名品与える事を肝に銘じてセーブデータを無言Load。
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