225年 5月 秦嶺山脈
子は水浴びを喜ぶ。いつまでもさせてやりたい。しかし、季節は変わるのだ。
わー、パンダ!パンダかわいい!朕もメンマ喰ってるからパンダだー。呂玲綺もメンマ喰うか?
「はいはい、陛下。」
ねぇねぇ知ってるか呂玲綺?
王平ってなー、荊州の新野に駐在しているらしいぞー。あぁ役立たずの朕も客寄せパンダでいいから飼育されたいなー。
「はいはい、陛下。このまま無事に帰還できたら華佗先生にお薬もらいましょうねー」
その日、魏は大いに湧いた。蜀漢の益州軍と荊州軍の同時侵攻による北伐を防ぎ、武威を示した魏帝・曹丕は今まで蔑ろにして荒れさせていた涼州の統治を改めて見直し、防備を備えるだけでなく、今こそ天たる魏に歯向かう逆賊、蜀と呉を誅滅するのだと勅令を発したのだった。
雨季が訪れる頃、天水攻略へ出兵していた蜀漢軍が本拠地・漢中に帰還した。
街亭での敗戦を聞き、諸葛亮はすぐさま全軍の天水攻略を中止、涼州ならびに祁山一帯からの撤退を決めた。主力に合流しようとしている別動隊の援護に、呉懿を殿軍に撤退路の死守が行われたこと、趙雲たちは兵力差により敗北したが兵を取り纏めて守りを固めた戦運びにより、大敗には至らず済んでいた。
結果的に兵力の消費は天水攻略前であった事もあり、街亭で敗戦した馬謖の一軍のみで益州方面軍全体では大きくはなかっただろう。出兵に消えた莫大な歳費に目を瞑れば・・・だが。
呂玲綺は街亭からの撤退戦において、敗戦が決定的になり指揮系統が混乱した馬謖軍の潰走をよく守り、街亭の南山に本陣を敷いた馬謖が逃げだす所を首根っこ掴んで敵兵から救出した。一連の活躍から史実であった馬謖とその麾下将の逃亡はなかった。皮肉なことに大義である北伐は失敗したが、重度の軍規違反となる指揮官の逃亡は無かったため馬謖の斬首は起きずに済んだのである。
おれが現実にログインして戻ってきた時、荊州を守護している筈の関羽が漢中に滞在していると報告を受けた。
関羽は宛攻略の戦闘中、病に倒れたようだ。従軍していた関平と張飛、上庸からの援軍・黄忠、厳顔が必死に戦うも、大将不在の士気低下を見抜いた魏軍司令官・司馬懿は動向を冷静に分析し、その弱点を突くように防衛から逆撃を仕掛け、速戦にて宛城包囲網を分断。荊州方面軍は各個撃破され敗戦、撤退となる。
張飛たちが将として関羽に劣っているわけではない。カリスマ、関羽にはそれがあった。そのカリスマによって将兵一丸となって戦場を戦い抜く強みが失われてしまった反動、つまりは動揺が広がった事が敗因だろう。
関羽は病に伏せた後、張飛に伴われ本陣から上庸側に撤退する事になり、その後華佗が滞在していたここ漢中に療養のため移っていたようだ。
おれが張飛と孔明を共に見舞いに訪れた時、関羽は病床ではあったが目を覚まし身を起こして迎えてくれた。どうやら体調の具合は喜ばしい事に良いようだ。華佗は過労と老化だろうと言っていた。
「兄者・・・此度の敗戦の責は某にございます、面目次第もございません。」
雲長よ、気落ち激しいのもわかる。気にするなとは言わんが、どうか頭を上げてくれ。
「陛下、やはりここは私が髭殿にお伝えするべきかと・・・」
いや、孔明。おれが言わねばならんのだ。雲長、此度の北伐における責任の沙汰を伝える。
荊州都督・関羽、そなたを荊州都督の任より解く。またその階級を3階級降格させる、よいな。
「承知致した」
蜀漢官位
諸葛亮・丞相より解任、3階級降格
関羽・荊州都督より解任、3階級降格
張飛・新野太守より解任、3階級降格
趙雲・3階級降格
馬謖・3階級降格
北伐失敗の責を問うならば、全てこの劉玄徳が悪いので諸葛亮の丞相降格嘆願を必死に止めたが、意思が固くダメだった。自身の降格を嘆願する部下とそれを止める皇帝の図という珍しいモノを見た周りの臣下たちは、諸葛亮という男の清廉さにより一層惚れたようだった。
しかし、益州軍を率いた諸葛亮を降格させたのだ。同じく荊州軍を率い、敗戦した関羽を罰しないわけにはいかなくなった。諸葛亮は荊州での責任の所在まで計算に入れていたのだろう。軍法が身内、重臣だからとて例外があってはいけないというわけだ。諸葛亮は国のため、誰よりも自己に厳しく律しているのだ。主君としてアイツの考えを汲み取ってやらないといけなかった。
陽が落ちて、関羽と面会した今日はよく冷える。もう春も過ぎようというのに、漢中の城より望む北の山々にはまだ白い色が残っている。
終雪。蜀漢の冬、夜明けはまだ遠く。
尽きる
(´・ω・`)らんらんはパンダだから難しいことはわからないよ。