三国時代まで生き残りたい   作:でねでね

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28話 凍風の西、終宵と黎明2

225年 雨季

 

 第一次北伐敗戦によって蜀漢は立て直しを迫られていた。戦費によって消えた国庫と民の生活を圧迫するのを良しとせず、日夜官吏たちが政務という戦場で今も闘い続けているのである。

 軍において特に急務なのは荊州軍の再建であった。都督関羽がその任を解かれたことに重ねて、魏軍・司馬懿にけちょんけちょんに撃破され著しく兵力が下がっているのだ。徐庶のいる襄陽の防衛戦力を、前線の新野に回してなんとか戦線を維持するだけで精一杯の状態だ。

 荊州は関羽が10年以上の月日を守ってきた地、荊州軍とは関羽であった。その柱石が居なくなった影響は前線を守る将兵の士気低下どころではないのだ、民にも不安が広がり治安維持にも手を割く必要があった。

 

 諸葛亮以下参謀たちの意見も汲み取り、関羽の後任・荊州都督はおれの子でもある劉封にする。しかし徐庶、法正が睨みを効かせているとはいえ全権を任せるには経験不足でもあった。故に関羽の長子であり長年補佐してきた関平を劉封の支えとした。前線を守る同じく関羽ならびに張飛の子、関興と張苞も納得するだろう。そして必要な者は、もう1人。

 

 

 雨脚が強くなってきた日。眼下の調練場で一兵卒と等しく、びしょ濡れになりながらも声を張り上げている将がいた。

 敗戦したからなんだ。とでも言う様に次の戦場のため準備を怠らない姿が北伐帰還後からも変わらずあった。そんな奴を目当てにおれも雨に濡れながら歩いて行く。従者が身体に障ると小うるさい事を言うが、これが風情というもの、と言って黙らせた。調練中だった将兵たちが近づいて来るおれに気付く頃、ソイツは誰よりも早く臣下の礼を示した。遅れて他の指揮官、兵達と続く。

 

 あまりやり過ぎるなよ。国を護る兵達に風邪でも引かれたら戦うべき時に役に立たんぞ。

 

「そうだとしても戦場では時を選べません。我らはただ戦場にあって敵に立ち向かうのみです」

 

 それもそうだな。確かに昔からそうだったのに、ついそんな事すら最近は忘れてしまっていたぞ。

 

 漢中をお前に任すと決めた時に尋ねたことをおぼえているか?

 お前の返答は、---曹操が天下の兵を率いて進軍してきたらこれを防ぐ。もし副将が10万の兵を率いて進軍してきたらこれを呑み込む所存---とも言っていた。違いないな?

 

「間違いございません。この蜀漢、精兵ともに陛下とある限り俺を殺せる者はおりません。何人たりとも蜀漢の地を、影すら踏ませませぬ!」

 

 そうか。俺もお前を選んで後悔した事はないぞ、だからこれからも後悔させるなよ。

 鎮北将軍・魏延。お前を荊州新野の太守に転属させる。また都督・劉封の下、荊州軍・前線の軍権をお前に預ける。

 

「承知致しました!!人命賭として陛下に報いまする」

 

 おれは返事を聞いて立ち去る間際、ふと思い振り返って尋ねた。

 

 100万の敵が進軍してきたらどうする?

 

「悉く討ち滅ぼし、こちらから侵攻してみせましょう!」

 

 そうか・・・魏延、あとは任せたぞ。

 

 そう言って、背を向けて去っていくおれに気持ちの良い返事が聴こえたが、もう振り返りはしなかった。

 

 

 上庸の劉封に加え、漢中太守であった魏延を転属させ荊州を任せる事に諸葛亮は難色を示した。文治派の諸葛亮としては、武断派の劉封、魏延が荊州に固まるのを嫌ったのだろう。だが、徐庶・法正の取り成しによって鎮火する事になる。

 両名とも文治派であり、荊州派閥の身内である徐庶と益州派閥の法正に対しては強くでれない様だった。法正としても知らない奴が軍権に関わるより、益州侵攻〜漢中攻めと共に戦って癖を知っている魏延の方が御し易いと判断したのだろう。

 

 人事面での采配が終わり、次は崩壊しかけている荊州軍に益州の守備兵力を回す算段をつけようかという所で、荊州にいる徐庶を経由して急報を告げる伝書が届いた。送り主は呉の陸遜、魏が呉誅滅のため15万もの大軍で侵攻してきた事の知らせだった。

 

 

225年 8月 石亭の戦い

 

 勢いに乗る魏軍の次なる矛先は孫権に向けられていたようだ。対呉戦線の指揮官・曹休は荊州戦線の司馬懿、豫州指揮官の賈逵と共同で合肥より出陣、呉へ進軍した。

 呉帝・孫権は、大都督に陸遜を任命し軍を委ねた。陸遜は全琮、朱桓、朱然といった名将を率いて曹休を迎え撃つため布陣したのだった。

 

 漢中にて事の知らせを聴いたおれは、孫権ワンチャンやばいんじゃないか。と思い、周りの臣下たちと不安になったが伝書を読み進めると驚きの真実があったのである。

 

 そこには勢いづく魏を挫くため、呉の仕掛けた謀略の全容が記されていた。

 呉の孫権は臣下で太守の周魴に偽装投降を指示して、魏軍指揮官・曹休を呉の領内に誘い込んで殲滅するという計略だったのだ。

 そんなこんなで呉の陸遜は魏軍と曹休をコテンパンに、圧倒的に、あっという間に倒したようだ。曹休は命辛々に逃げ延びた旨が最後に綴られていた。

 

 はえ〜、孫子の末裔すっごいんだー(小並感)

 

 おれが周りの臣下たちと一喜一憂して喜んでいると諸葛亮と龐統の目が光った気がした。

 

「陛下、荊州軍の再編の件ですが予定が変わりました」

「左様、後にも先にも今しかないでしょうな」

 

 諸葛亮と龐統が2人してなんか言ってるが、朕にもわかるように言ってクレメンス。

 

 

 

 

 

 魏延が荊州に旅立つ日、おれは珍しく見送りに来ていた。魏延にはまだ伝えないといけない事があるからでもある・・・

 

「陛下に見送りまで賜るとは、有り難い限りでございます」

 

 そう?そうでもない、感謝して?

 

「この魏延と荊州に赴く1万の精兵で持って必ずや任を全うしてみせます!」

 

 そうか、そうか。朕は頼もしいぞ。荊州に旅立つのはお前1人だけど

 

「えっ?・・・・・ハッ!はっ?いまなんと申されましたか!?」

 

 荊州に旅立つのはお前だけだぞ。事情が変わって荊州に益州兵を回せなくなったから、魏延1人で行ってくれ。

 

 じゃあ、がんばってね。

 

「(´;ω;`)ソンナ~……」

 

 馬の背より何度もチラチラ振り返ってくるのを無視しながら、おれは手を振ってドナドナされていく魏延を送り出した。

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