元殺し屋の先生   作:狐ノ陽炎

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13話 対策委員会の定例会議

今日も暑い日が続く……。

いや?違うな。正確には今日も暑い場所に赴いている。ユウカのおかげで連邦生徒会の仕事やら他の書類やらがひと段落し、今日もアビドス高校に来ている。

 

「……それでは、アビドス対策委員会の定例会議を始めます」

 

対策委員会の会議に出席する事になったからだ。

 

「本日は先生にもお越しいただいたので、いつもより真面目な議論ができると思うのですが……」

 

私も別に会議とか好まない派のモンだけどさ、普段どんな会議してるんだろうな……。ちょっと何も言わずに眺めて見てみたいわそれ。

 

「何よ、いつもは不真面目みたいじゃない……」

「うへ、よろしくねー、先生」

「ああ、よろしく」

 

「早速議題に入ります。本日は、私達にとって非常に重要な問題……『学校の負積をどう返済するか』について、具体的な方法を議論します。ご意見のある方は、挙手をお願いします!」

 

さて、どうするか。私としては現状の利子だけではなくしっかり9億全てを返済するための策を打ち出したいところだが……。

 

「はい!はい!」

「はい、1年の黒見さん。お願いします」

 

黒見セリカ。

会議だからか、アヤネは名字で呼んだ。セリカも同様の疑問をアヤネに聞いていたが、やはり会議だからだそうだ……と思ったが、どうやら名字で呼ぶ会議は初めてだったらしい。セリカ以外の先輩方は全員ノリ気だったのも少し面白いな。

 

「対策委員会の会計担当としては、現在我が校の財政状況は破産の寸前としか言いようがないわっ!」

 

こんな事を言ったら申し訳ないんだが、9億もの借金をしておいて『破産していない!』ってのは無理がある気がするんだが…。

 

「このままじゃ廃校だよ!みんな、わかってるよね?」

「うん、まあねー」

「毎月の返済額は、利息だけで788万!私達も頑張って稼いではいるけど、正直利息の返済も追いつかない」

 

まあ、でしょうね。

 

「これまで通り、指名手配犯を捕まえたり、苦情を解決したり、ボランティアするだけじゃ限界があるわ」

 

実際指名手配犯を捕まえた後の金額って、いくらくらいなんだろうか。私はあくまで【殺し屋】であって【お尋ね者】では無かったからなぁ。

 

「このままじゃ、埒が明かないってこと!何かこう、でっかく一発狙わないと!」

 

まあでも指名手配犯って罪状によって金額変わってくるか。私も気づいてないだけでどこかからは指名手配されてたかもしれないしな。

 

「でっかく……って、例えば?」

「これこれ!街で配ってたチラシ!」

 

セリカは一枚のチラシを机の上に置いた。そこには『ゲルマニウム麦飯石ブレスレットであなたも一攫千金』……と書いてあった。

 

なんか…こう……ねぇ?まあ鉱石とか宝石とか、別にあまり詳しくないけどさ……これは流石に……。

 

「この間、街で声かけられて、説明会に連れていってもらったの。運気を上げるゲルマニウムブレスレットってのを売ってるんだって!」

「……」

「これね、身に着けるだけで運気が上がるんだって!で、これを周りの3人に売れば……」

 

いやちょっと待て。

こんな言い方は先生としてよくない、だから心の中で言わせてもらう。

 

コイツが会計担当で大丈夫か…!?

 

「却下ー」

「えーっ!?何で?どうして!」

 

当然のように却下された。まあ、当然だが。

 

「セリカちゃん……それ、マルチ商法だから……」

「儲かるわけない」

「へっ!?」

 

大丈夫か?コイツ借金返済以外に余計な金使ってないだろうな……?

 

「そもそもゲルマニウムと運気アップって関係あるのかな……」

 

あくまで私の考えだが、『運』ってのはその人が生まれ持った一種の才能だよ。『運気アップ』とかいうのはくだらない腑抜け以外の何物でもない。自分で磨けるものじゃないし、鍛えられるものでもない、天賦のモノなんだよ。

 

「そっ、そうなの?私、2個も買っちゃったんだけど!?」

「セリカちゃん、騙されちゃいましたね。可愛いです☆」

 

いや可愛かねーよ。十分大事じゃねーか。

 

「まったく、セリカちゃんは世間知らずだねー。気を付けないと、悪い大人に騙されて、人生取り返しのつかない事になっちゃうかもよー?」

 

…………。

 

「そ、そんなあ……そんな風には見えなかったのに……せっかくお昼抜いて貯めたお金で買ったのに…」

「大丈夫ですよセリカちゃん。お昼、一緒に食べましょう?私がご馳走しますから」

 

まあ、他のみんなが許せるんだったら私は特に何も言わないけどさ。多分よくある事なんだろうな。それだけセリカがお金に対して必死になっているとも見て取れる。

 

「ほかにご意見のある方……」

「はい!はい!」

「えっと……はい、3年の小鳥遊委員長。ちょっと嫌な予感がしますが……」

 

「我が校の一番の問題は、全校生徒がここにいる数人だけってことなんだよねー」

 

確かにそれはそうだ。実際は学校に降りかかっている借金とはいえ、それを稼ぐ生徒数が少なければ手元に集まる金額は比例して少なくなる。

 

「トリニティやゲヘナみたいに、生徒数を桁違いに増やせれば、毎月のお金だけでもかなりの金額になるはずー」

「え……そうなんですか?」

「そういうことー!だからまずは生徒の数を増やさないとねー、まずはそこからかなー。そうすれば議員も輩出できるし、連邦生徒会の発言権も与えられるしね」

 

連邦生徒会……やはりそれが原因で、何もしなかったのか?本当にそれが理由なら、私としては到底許す事は出来ないな。

 

「鋭いご指摘ですが……でもどうやって……」

「簡単だよー、他校のスクールバスを拉致ればオッケー!」

 

うん……うん?突然の超脳筋無法者思考に恐らく私は顔に出てただろうな……。

 

「はい!?」

 

うんアヤネ、その反応正解。

 

「登校中のスクールバスをジャックして、うちの学校への転入学書類にハンコを押さないとバスから降りられないようにするのー」

 

どうせその中には再転校させない書類を無理矢理書かせておくデバフ付きなんだろうな。なんだろ、そういう突発的なアホ思考私は嫌いじゃないんだよな。

 

「それ、興味深いね」

 

シロコも思ったよりパワータイプだな。まあ、私も興味ないかと聞かれれば嘘になる……やらないけど。

 

「ちょ、ちょっと待ってください!そんな方法で転校とかってありなんですか!?それに、他校の風紀委員が黙っていませんよ……」

 

こう見えて私は倫理観のある方だと自負している。思考回路的に見れば終わっていても、実際に行動に起こすかと言えばそうじゃない。ロリコンは二次元に興奮するのであって、実際はノータッチだとよく聞くじゃないか。あれと一緒さ。

 

「いい考えがある」

「……はい、2年の砂狼シロコさん…」

 

「銀行を襲うの」

「はいっ!?」

「確実かつ簡単な方法。ターゲットも選定済み。市街地にある第一中央銀行」

 

ヤバイ、もっとパワープレイが来た。しかも実行から逃走まで、結構しっかり作戦を練ってあって普通に面白い。今、笑うのを必死に耐えている。堪えろ私……こんなんで笑ってはいけない……!これは()()()()()()()()()なんだ……!!

 

「5分で1億は稼げる。はい、覆面も準備しておいた」

「うわー、これシロコちゃんの手作りー?」

「わあ、見てください!レスラーみたいです!」

 

普通に耐えきれないから目立たないように窓辺に移動して外でも見ておこう。

 

「いやー、いいねぇ。人生一発でキメないと、ねえ、セリカちゃん?」

 

ついさっき誰かさんが言っていた言葉をホシノは言った。誰かさんって……まあセリカって言ってるけど。

 

「そんなわけあるか!!却下!却下ー!!」

 

これもまた、当然のように却下された。でも私からしてみれば、犯罪に引っかかって損をするよりは幾分かマシだなとも思ってしまった。通常状態ならそうは思わないが、こちらは9億もの借金を抱えた状態だからだ。

 

「はあ……みなさん、もうちょっとまともな提案をしていただかないと……」

「あのー!はい!次は私が!」

「はい……2年の十六夜ノノミさん。犯罪と詐欺は抜きでご意見をお願いします……」

 

「はい!犯罪でもマルチ商法でもない、とってもクリーンかつ確実な方法があります!アイドルです!スクールアイドル!」

 

ほう…?

これはまた良策を持ってきたな。確かに売れればしっかり稼げるし、全員が活動に集中できる……たぶん。私がプロデューサーにでもなってしまえばいつでも売りに出せるが……。

 

「アニメで観たんですけど、学校を復行する定番の方法はアイドルです!私達全員がアイドルとしてデビューすれば……」

「却下」

 

あらら、委員長からの却下宣言が即、飛び出してしまった。どうしてだろうか、『犯罪をしない』という項目をクリアしている点においては、一番の良策だと思ったんだが。

 

「なんで?ホシノ先輩なら、特定のマニアに大ウケしそうなのに」

「うへーこんな貧弱な体が好きとか言っちゃう輩なんて、人間としてダメっしょー。ないわー、ないない」

 

私からしてみれば、銃弾を余裕で耐えてる時点で貧弱な体ではないと思っている。だから特に問題は無い。

 

「決めポーズも考えておいたのに……。じゃーん!」

 

「水着少女団のクリスティーナで~す♧」

 

問題なのはネーミングセンスだったか……。どうして水着なんだろうか、暑いから水着で居るのが涼しいから……とか?ポーズの事は知らん、私はアイドル活動とか興味無かったからな。

 

確かにこれはまともな会議ではない。

学生だけでやっているにしてもこれはとても酷い。それでも私が口を出すなり、怒ったり注意したり出来ないのは、こういう事をするのが対策委員会の青春だと思わされるからだ。銀行を襲う仕立てをしっかり練るシロコや徹夜で決めポーズを考えるノノミは至って真面目だろうし、真面目にふざけて突拍子もない案を出してくるホシノは面白い。まあセリカは……許されてるのもあるが、それだけ必死なのだろう。それらに頭抱えて振り回されるアヤネも……。

 

「あのう……議論がなかなか進まないんですけど、そろそろ結論を……」

「それは先生に任せちゃおうー。先生、これまでの意見で、やるならどれがいい?」

 

やっぱりな。私が面白そうな顔をしているのを気づいていたのかは定かではない。正直、私は選択に困った時『私が一番面白いなと思ったもの』を選んでいる。これまでの3つの意見、そうだなー。

 

「まあ無難に、銀行を襲うでいいんじゃねーか?」

「ぶ、無難!!?本気で言ってますか!?」

「あはははー!よし、決まりー!それじゃあ出発だー!」

「きゃあ~☆楽しそうです!」

「ほ、ホントに?これでいいの?」

「うへ~いいんじゃなーい?」

 

よーし、先生終了のお知らせか。

 

「計画は大胆なほどいい。でしょ、アヤネ?」

「…………」

 

 

「いいわけないじゃないですかぁ!!!!」

 

ガッシャーン!!!

 

「出たー!アヤネちゃんのちゃぶ台返しー!」

 

遂にアヤネの脳がキャパオーバーしたのだろう。部屋にある長机を丸々持ち上げてひっくり返した。普段遠慮がちな人が怒ると怖いって言うけど、アヤネはどうやら『爆発するタイプ』らしい。私はあくまで予想しかしてないが、ホシノはこれが見たくて私に意見を出してノッて来たんだと思う。

 

「きゃあ、アヤネちゃんが怒りました!非常事態です!」

「うへ~キレのある返しができる子に育ってくれたねえ。ママは嬉しいよーん」

 

その後アヤネにめちゃくちゃに説教をされてしまった。私としてはこういう展開を望んではいたし、無事に先生生活が終了しなかったから大満足である。

 




無事にマジカル自警団はどちらも引くことが出来ました。あ、スバルも50連で出てきました。
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