元殺し屋の先生   作:狐ノ陽炎

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7話 アビドス対策委員会

「いやぁ~まさか先生一人で戦って勝っちゃうなんてね」

 

さっきの部屋に戻り、ホシノの開口一番が飛んできた。どこかめんどくさそうにして、それでもしっかり私の戦いを見た……そんな言い方だな。

 

「シロコちゃんは早とちりしちゃって、先生が一人で行くって言ってるんだから大丈夫だって言ったんだけどね」

 

あの一瞬で私の実力を理解したのか?私の戦いっぷりを見た後ならともかく、その前からシロコを諫めていたのか……?いや……多分そういうのは、私を理解したから出た言葉じゃないな。

 

「うん……先生は強かった」

「強いってレベルじゃないと思うんだけど……」

 

そんな事言われても私は困る事しかできない。何故なら私は……

 

「私は別に自分が強いとは思ってないが」

「……え?」

「私は自分の実力を把握しているだけだ。私が強いかどうかなんて、人によるだろう」

 

確かに私はこの子達から見れば強かったかもしれない。多勢に無勢だったし、持っている武器の質も天と地ほどの差があった。でも結局キヴォトス(ここ)では私はかなり弱い部類だ。

 

「……私はお前達と違って銃弾一発で命の危機があるからな」

「………だったら今回のような事はすぐにやめるべき」

「あー……まあ、そうだな……それが正しいよ。けど勝算無しにやったわけじゃない」

「………」

「前職の癖みたいなものなんだ。今回だけは流してくれると助かるよ」

 

数秒ほど、静寂が流れる。まあ、私の行動が原因だからしょうがないっちゃーしょうがない。

 

「あ、あらためてご挨拶します、先生」

 

赤メガネの子が静寂を破り話題を変える。正確には戻すと言った方が正しいか。

 

「私達は、アビドス対策委員会です」

 

対策委員会……やっぱり何か重大な事でも抱えてるんだな。

 

「私は、委員会で書記とオペレーターを担当している1年のアヤネ……こちらは同じく1年のセリカ」

「…どうも」

「2年のノノミ先輩とシロコ先輩」

「よろしくお願いします、先生~」

「さっき道端で最初に会ったのが、私……あ、別にマウント取ってるわけじゃない」

「そして、こちらは委員長の、3年のホシノ先輩です」

「いやぁ~よろしく、先生ー」

 

流れるようにそれぞれの紹介が済む。この流れで私ももう一度挨拶をした方がいいだろうか。……というかそもそも名乗ったか私……?

 

「ご覧になった通り、我が校は現在危機にさらされています……」

 

そのまま話が進んでしまったので、挨拶する機会を見失ってしまった。

 

「そのため『シャーレ』に支援を要請し、先生がいらしてくれたことでその危機を乗り越えることができました」

 

今日帰ったらもう一度弾薬諸々の申請を出さないとな。

 

「先生がいなかったら、さっきの人達に学校を乗っ取られてしまったかもしれませんし、感謝してもしきれません」

「そうか……対策委員会ってなんだ?」

「そうですよね、ご説明いたします。対策委員会とは……このアビドスを蘇らせるために有志が集った部活です」

 

あー、部活なんだ。

 

「うんうん!全校生徒で構成される、構内唯一の部活なのです!」

「全校生徒って事は……」

「はい!全校生徒といっても、私達5人だけなんですけどね」

「他の生徒は転校したり、学校を退学したりして町を出て行った」

 

アビドス高校が追い詰められているって書いてあったから、廃坑関連かなーとは思っていたが……。

 

「学校がこのありさまだから、学園都市の住民もほとんどいなくなってカタカタヘルメット団みたいな三流のチンピラに学校を襲われてる始末なの」

 

………。

 

「現状、私達だけじゃ学校を守り切るのが難しい。在校生としては恥ずかしい限りだけど…」

 

カタカタヘルメット団ね……。名前のネーミングはともかく、色々不思議だな。

 

「もし『シャーレ』からの支援が無かったら……今度こそ、万事休すってところでしたね」

「だねー。補給品も底をついてたし、流石に覚悟したね。なかなかいいタイミングに現れてくれたよ、先生」

「うんうん!もうヘルメット団なんてへっちゃらですね。大人の力ってすごいです☆」

 

いや……多分だけどあんな事もうしないからね?シロコに止められたし、多分出来ないから……。

 

私は私で、一つ引っかかる事があり、話を聞きながら考えていた。全校生徒はたった5人、それも廃坑寸前の学校である。

 

「そういうわけで、ちょっと計画を練ってみたんだー」

 

確かに校舎そのものやグラウンドも立派なもので、三流の不良がアジトとして使うには勿体ない代物だ。だがアビドス高校がもし不良にやられて乗っ取られたとして、連邦生徒会や私が黙ってない事を分かってないのか?

 

「ヘルメット団は、数日もすればまた攻撃してくるはず。ここんとこずっとそういうサイクルが続いているからねー」

 

サイクル……不良たちが……?

 

「だから、このタイミングでこっちから仕掛けて、奴らの前哨基地を襲撃しちゃおうかなって。今こそ奴らが一番消耗しているだろうからさー」

 

「なるほど、ヘルメット団の前哨基地はここから30Kmくらいだし、今から出発しよっか」

 

前哨基地の場所もやたら中途半端だ。サイクルでここを襲うにしてはとても面倒な距離だ。……私の感覚での話かもしれんが。

 

「……先生はいかがですか?」

「いいんじゃねえか?」

「よっしゃ、先生のお墨付きももらったことだし、この勢いでいっちょやっちゃいますかー」

 

当然話は聞いていた。口から出たただの同意じゃない。私なりにしっかり考えて出た結論だ。カタカタヘルメット団の前哨基地となれば、その裏側を除くことができるかもしれない。

 

 

 

『カタカタヘルメット団のアジトがあるとされるエリアに入りました』

 

私は現地に居るが、アヤネはオペレーターという事もあって学校からの通信である。

 

『半径15Km圏内に、敵のシグナルを多数検知』

 

てっきり後方支援程度に考えていたが……ちょっとサポート範囲が広すぎやしませんかね……。

 

『おそらく敵もこちらが来たことに気付いているでしょう。ここからは実力行使です!』

 

まあ何でもいい……。さあ見せてくれ、対策委員会の実力を。

 

 

しかし『シッテムの箱』という物はとても便利な物だ。便利というか、これはもはやこの世に存在している事が不思議なものだ。

 

「戦闘が始まります!先生!」

 

今私は『シッテムの箱』の画面を見ている。そこにはアビドス高校の生徒達がだいたい右斜め後方から俯瞰の状態で見えており、敵の位置も障害物の位置もよく分かる映像が流れていた。要はこれを使って指示を出せばいいんだろう。しかし『シッテムの箱』に映されている映像からしてカメラが近くにあると思ったのだがその付近には見当たらない。私自身も少しその場所から外れたところにいるとはいえ現場にはいるんだが……。まあ……今は戦闘に集中するか。

 

しかし戦闘が始まったものの、私が指示を出すことなく敵が次々に倒れてゆく。数日前にシャーレを奪還するために指揮したミレニアム、ゲヘナ、トリニティの生徒達とは違い、今回はアビドス高校の生徒のみで構成されている関係で、連携力が極めて高い。だが連携よりも気になったのは、アビドス生徒一人一人の強さだ。強い……私から見ても……かなり……。

 

弾薬の補給が無くなりそうになり危機的状況に陥ったという理由にも頷ける。精々私が言えるのは、『まだ学生だから荒削りだ』ぐらいしかない。その中で特別強いのが、3年生であり対策委員長のホシノだ。普段の態度や振る舞いからは感じられないほどの圧倒的な強さ。その強さで自ら先陣を切って立つ彼女が居るからこそアビドスの本当の強さがより引き出されている。へぇ~?これはとてもおもしろいな……。

 

「シロコ、バスの後ろに3人いる。お前のドローンで先にやっておけ」

『ん……了解』

 

ここに来る前、一応学校で各それぞれの武器を確認したが、シロコは何やらドローンと手榴弾を持っていた。しかも目標の敵が先に倒れたら自動で他の敵に攻撃するという優れもの。一体どこで入手したのやら……。

 

「ノノミ、障害物二つ先に出てマシンガンで撃ちまくれ。もう敵はそれでお終いだ」

『はーい!ノノミ行きまーす☆』

 

どこかの令嬢かお嬢様に見える彼女の武器は何かと思えばまさかのマシンガン。長距離からの攻撃はもちろんの事、一気に装填すれば目の前の敵を蹂躙しかねない嘘みたいな強さである。固定型マシンガンなら使った事あるんだが……キヴォトス人の力もどうやら普通ではないらしい。まあ……今更か……。

 

ノノミがそこに居る敵を一掃した時、アヤネから通信が飛んできた。

 

『敵の退却を確認!並びに、カタカタヘルメット団の補給所、アジト、弾薬庫の破壊を確認』

 

彼女もドローンを扱えるようだが……今回は出番は無かったな。しかしまあとても有能なオペレーターだこと…。

私もホシノやシロコ達と合流し、状況の確認を行った。結果はアヤネの報告通りだった。

 

「これでしばらくはおとなしくなるはず」

 

シロコの言う通りだ。これで大人しくならなきゃ、よほどの馬鹿か…それとも……。

 

「よーし、作戦終了。みんな、先生、お疲れー」

「ああ、お疲れさん」

「それじゃ、学校に戻ろっかー」

 

いつものふわふわのんびりしたホシノに戻っている。いや、戦闘中も不思議とのんびりしている感じはあった。だが彼女の中には……シロコやノノミとは違う強さを持つ……何かがある……。

 

 

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