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巨人が巨人を攻撃する――そんな常識外れの行動に、全員の動きが止まった。
混乱のざわめきが広がる。
その時、別の窓が破られ、ワイヤーを使って三人が飛び込んできた。
ガス切れで死んだと思っていたミカサ。そしてアルミンとアルミンを背負っているコニーだ。
「あっぶねぇー……もう空だ。やったぞ! ギリギリ着いた!」
コニーが肩で息をしながら叫んだ。だが、その顔は妙に明るい。
「やったぞアルミン! お前の作戦は成功だ! 皆! あの巨人は巨人をぶっ殺しまくる奇行種だ! しかも俺達には興味を示さねぇ! あいつを上手く利用できれば、俺達はここから脱出できる!」
ざわめきが広がる。
「……巨人を利用する?」
誰かが疑うように呟き、ジャンが苦い顔をした。
「巨人に助けてもらうだと? そんな夢みてぇな話……」
「夢じゃない」
ミカサが短く断言する。刃を握るその手に迷いはない。
「奇行種でも何でも構わない。ここであの巨人により長く暴れてもらう。それが――現実的に私達が生き残るための最善策」
俺はその言葉を聞きながら、窓の外で暴れる巨人を見た。巨人が巨人を殴る——現実の戦場が、まるで理屈を越えた偶然を差し出している。アルミンの作戦が当たり、奇行種が本当に“都合良く”動いてくれている今、この波に乗らない手はない。
(利用できるものは利用する。それが生き延びる術だ)
静まり返った空気の中で、俺は口を開いた。
「……確かにな。俺はそれに乗るよ」
生き残るためなら、どんな非常識でも構わない。
場の空気が固まった瞬間、アルミンが前に進み出る。
その瞳は震えていない。細い腕でリフトを指し示しながら、全員に向けて説明を始めた。
「作戦はこうだ……リフトを使って中央の天井から大勢を投下する。同時に巨人の顔に向かって一斉射撃して視界を奪う。その間に天井に隠れている八人が、急所を狙って斬りかかる。――一度きりだ。全員の命をかけることになる」
アルミンが小さな声で言った。
「運動能力的に最も成功率が高そうな8人にやってもらうけど……全員の命を背負わせてしまって……その……ごめん」
ライナーが静かに頷く。
「問題ないね」
アニも冷めた声で続けた。
「誰がやっても失敗すれば全員死ぬ……リスクは同じだ」
アルミンは視線を落とし、苦しそうに言葉を漏らした。
「でも……僕なんかの案が……本当にこれが最善策なんだろうか」
マルコが強く言い切る。
「これで行くしかない。時間もないし、もうこれ以上の案は出ないよ……後は全力を尽くすだけだ!」
ミカサもすぐに言葉を挟んだ。
「大丈夫。自信を持って。アルミンは正解を導く力がある」
俺は壁に背を預け、深く息を吐いて口を開いた。
「これが最善だと思ったんだろ? なら後悔するな」
アルミンが小さく頷いた。わずかに震えていた肩が、そこでようやく止まった気がした。
俺たちはそれぞれ、巨人の急所を狙う位置へ散った。俺は天井の梁に体を伏せ、刃を構えながら下の巨人どもを見下ろした。心臓の鼓動がやけに静かに感じる。
中央のリフトが降下し、止まる。
リフトに乗っているやつらはそれぞれ銃を前方に構えてその時を待つ。
大勢の人間に釣られて補給所内にいた全ての巨人がリフト周辺に集まり徐々に近づく。そして、遂に巨人との距離が目前に迫った時、アルミンの声が響いた。
「……今だ!」
次の瞬間、リフトに乗った仲間たちが一斉に引き金を引く。轟音と火花が散り、巨人の顔面を火薬の閃光が覆った。
「――ッ!」
視覚を奪われた巨人たちがのけぞった瞬間、俺は梁を蹴り、宙へ飛び出す。重力に引かれる感覚が一瞬だけ胸を突き抜け、次の瞬間には刃を振り下ろしていた。
首筋を裂く感触。熱と蒸気が一気に噴き上がる。
俺は着地と同時に周囲を見渡す。
ミカサは鋭い動きで一体を仕留め、アニは冷たい正確さで巨人の首を裂いていた。ライナーとベルトルトも問題なく片をつけている。
だが――。
視界の端で、コニーとサシャが仕留め損ねていた。
巨人が呻きながら立ち上がり、掴みかかろうとする。
「サシャとコニーだ!」
「急げ援護!」
「クソッ……!」
俺は飛び込もうとしたが、位置的に間に合わない。
瞬間、ミカサとアニが横から斬り込み、二体を同時に沈めた。血飛沫と蒸気が舞い、二人は無言のままコニーとサシャを庇う。
蒸気の匂いが充満する中で、残りの巨人も次々と倒されていった。
刃の感触、肉を裂く音、仲間の息遣い……すべてが重なり合い、最後の巨体が床に崩れ落ちた時、補給所に静寂が戻った。
「……全部、倒した……」
誰かが呟くと、次第に安堵の声が広がっていく。
俺は血と汗に濡れた刃を下ろし、アルミンの方を見た。
小柄な背中は震えていなかった。
(……こいつの作戦がなけりゃ、俺たちは全員死んでたな)
胸の奥でそう呟き、俺は深く息を吐いた。
───────
「急げ! ガスと刃を補給しろ!」
ジャンの声が響き、皆が一斉に動き出す。
俺も装置を外し、ガスの補給に向かおうとしたところで――背後から声がかかった。
「……ルカ!」
振り返ると、クリスタがこちらに駆け寄ってくる。そのすぐ後ろには、いつもの皮肉げな笑みを浮かべたユミル。
「無茶したね……」
クリスタが眉を寄せ、心底心配そうに言う。
その目は、作り物じゃなかった。さっきまで死と隣り合わせにいたせいか、今は素直な表情が滲み出ている。
俺は肩を竦めてみせた。
「これくらいで死ぬなら、そもそもここにいないだろ」
「……怪我してない? 本当に?」
クリスタがさらに近づき、俺の腕や肩を確かめるように視線を走らせる。
横でユミルが鼻で笑った。
「おいおい、そいつに構ってる暇があったら、てめぇもさっさと補給しろよ。死にたくなきゃな」
「……ユミル」
クリスタが小さく睨む。その仕草に俺は思わず吹き出しそうになった。
戦場のただ中でも、この二人のやり取りは変わらない。
俺は刃を確認しながら、淡々と答える。
「心配すんな。生き延びるつもりなら、ここで止まってる暇なんてねぇ」
クリスタは一瞬だけ黙り込み、それから小さく頷いた。
「……うん。絶対、生き延びようね」
その言葉に俺は答えず、ただガスの補給口に装置を接続した。
──────
ガスの補給を終えた者から順に、次々と外へ出て壁を登り始めていた。
俺も装置を確認し、鋼線の張りを確かめると、補給所の出口を抜けて外気を吸い込んだ。
血と煙と蒸気が入り混じった匂い――生温い風が頬を撫でる。
「……さて、行くか」
壁を目指そうと視線を上げたとき、屋根の上に固まる数人の影が目に入った。
ミカサ、アルミン、その2人が一点を凝視していた。
嫌な予感がして、俺もそちらに駆けた。
瓦礫の屋根に降り立った瞬間、空気の重さに気づく。誰も声を発していない。
目線の先――
そこには、あの異常な巨人がいた。
さっきまで暴れ狂っていたはずのそいつは、膝をつき、肩を上下させていた。
更には全身を無数の巨人に群がられている。
両腕は根元から吹き飛び、切り株のように残っているだけ。
蒸気は立ちのぼっているが、再生の兆しは一切ない。
まるで、疲弊して力尽きた人間のように。
「……なんだ、ありゃ」
思わず口から漏れる。
巨人が、巨人を殴り飛ばすだけでも異常だった。
だが――巨人が疲労で膝を折るなんて、聞いたことがない。
隣でアルミンが唇を噛んでいた。
ミカサも目を見開き、その姿をただ黙って見つめている。
誰も言葉を発せない。俺自身も、この異様な光景を受け止めきれなかった。
その重苦しい沈黙を破ったのは、ミカサの声だった。
静かで、だが鋭く突き刺さるような響き。
「……どうにかしてあの巨人の謎を解明できれば、この絶望的な状況を打破するきっかけになるかもしれないと思ったのに」
その言葉に俺も同意見だった。
ただでさえ巨人というものは俺達のまだ知らない謎が多い。
加えてあの異常な奇行種だ……間違いなく何かしらの進歩はするだろう。
「同感だ。あのまま食い尽くされちゃ何も分からずじまいだ……あの巨人にこびりついてるヤツらを、俺達で排除して……とりあえずは延命させよう」
そう深く考え込んでいると横からライナーが口を開く。
いつの間にか屋根に上がってきていたようだ。アニやベルトルト、ジャンもいる。
ジャンが息を荒げ、叫ぶ。
「正気かライナー! やっと……この窮地から脱出できんだぞ!」
だがアニは静かに言葉を差し込む。
「例えば……あの巨人が味方になる可能性があるとしたら……どう? どんな大砲よりも強力な武器になると思わない?」
ジャンは言葉を詰まらせ、苛立ちを隠せないまま睨み返した。
「ッ! ……味方だと? 本気で言ってんのか……」
俺は静かに息を吐き、視線を巨人へと向けた。
「……利用できるもんは利用する。それが化け物だろうが関係ねぇ」
その言葉にジャンは口を閉じる。
するとアルミンがこちらに来る巨人を見つけると目を見開きながら呟く。
「……あれはッ! トーマスを食った奇行種……」
その瞬間――膝をついていた“異常な巨人”が、突如として咆哮を上げた。
まるで挑発に応じるように立ち上がる。
両腕は失われていたはずなのに、身体を震わせ、残った肩ごと前へと突進した。
土煙を巻き上げながら、そいつはトーマスを食った奇行種に体当たりをかます。
轟音。
奇行種が吹き飛ばされ、壁際の建物に叩きつけられた。
だがさすがに限界だったのか、“異常な巨人”は膝から崩れ落ち、土煙を巻き上げながら地面に倒れ込んだ。
肩で息をするように蒸気を吐き出し、もはや動ける様子はない。
「……さすがに、力尽きたみたいだな……」
ジャンが荒い呼吸のまま、肩を落として言った。
「もういいだろ! ずらかるぞ。あんな化け物が味方なわけねえ……巨人は巨人なんだ」
そう吐き捨てると、彼は踵を返し、壁の方へと背を向ける。
だが――俺を含め、その場にいた全員の視線はまだ前方に釘付けだった。
動かなくなった巨人の姿。
その倒れた巨人のうなじに、何かが蠢くのが見えた。
最初は蒸気のせいかと思った。けれど次の瞬間、はっきりと“人影”が浮かび上がった。
「……っ!?」
思わず息を呑む。
仲間たちも一斉に息を詰め、その視線は巨人の背に釘付けになる。
さっきまで狂ったように巨人を殴り飛ばしていた“異常な存在”――その正体が、今まさに姿を現そうとしていた。
ジャンだけが背を向けかけていたが、俺たちの視線の先に気づき、足を止める。
その顔は驚愕と恐怖に引きつっていた。
やがて、蒸気を突き破るようにして――
崩れた巨人のうなじから、血まみれの腕が突き出た。
「……人間!?」
誰かが声を上げる。次いで肩、頭、胸と、ずるりとその身体が引きずり出されていく。
目に飛び込んできたのは、見覚えのある顔。
「……エレン……?」
ミカサが迷いなく飛び降りた。
瓦礫を踏みしめ、巨人の肉塊からエレンを引きずり出す。彼女は震える指で耳を彼の胸に当てた。
しばしの沈黙。
ミカサの肩が小さく震えたかと思うと――次の瞬間、彼女はその場で泣き崩れた。
静かに涙を流すのではない。誰も見たことのないほど、声を荒げた大泣きだった。
「……エレン……!」
仲間たちが動けずに見守る中、アルミンが膝をつき、震える手でエレンの左手を握った。
その目には涙が浮かんでいる。
「ごめん……エレン……僕は……僕は……!」
胸を締めつけるような嗚咽が響いた。
その横で、ジャンがかすれた声を漏らす。
「これを……エレンが……やったってことか……?」
俺はただ黙って、その姿を見つめていた。
“異常な巨人”の正体が、エレンだった――その事実が、まだ頭に馴染まなかった。
(……あり得ねぇ。巨人から人が……それもエレンが……)
だが、確かなのはひとつ。
俺たちの絶望的な戦場に、今までにない“新しい現実”が現れた、ということだった
クリスタ圧倒的に人気ですね〜
ヒロインは誰がいい?
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クリスタ(ヒストリア)
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アニ
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ペトラ