お待たせ致しました!
今回で壁外調査前の話は終わって次回からは遂に壁外調査編になります!
遂に忘年会シーズンになりましたね〜!
僕は幼少期からお酒で性格が変わる人を見てるのでこのシーズンはちょっとナイーブになっちゃいますね〜共感してくれる人います?笑
あれから数日。
俺はリヴァイ班として何度目かの訓練に参加していた。
目的は、いざという時の連携を身体に染み込ませること。
言葉よりも、動きと感覚で合わせる――そういう訓練だ。
今回の内容は、巨人の模型を森の中に十数体設置し、
制限時間内にすべて仕留めるというもの。
簡単そうに聞こえるが、木々が密集しているこの森では、
速度と判断、そしてガスの配分がすべてを決める。
「この訓練、俺たちも何度かやったんだ」
エルドが背後から言った。相変わらず冷静な声だ。
「焦るな。突発的な状況で、どれだけ冷静に動けるかが見られてる」
「それと、無理な軌道を取るなよ。ガスがもたねぇ」
グンタが短く補足する。
その横で、オルオがいつものように胸を張った。
「ま、俺の記録を抜ける奴なんざいねぇけどな! 討伐数も速度も俺がダントツだ! リヴァイ兵長ですら――」
「はいはい、また始まった」
ペトラが呆れ気味に笑う。
俺は心の中で、ひとこと。
(……はいはい、うるせぇな)
今回の訓練は、俺の実力を測る目的もあるらしい。
つまり、リヴァイ班全員が後ろから俺の動きを見て評価するというわけだ。
(まぁ関係ないか……俺は俺らしくやるだけだ)
「――始めろ」
リヴァイの短い声が響いた。
号令と同時に、俺は地を蹴り、ワイヤーを放つ。
金属音とともに身体が宙に舞い、木々の間を縫うように飛ぶ。
ガスの消費を最小限に抑えながら、視界の中で最適なルートを瞬時に描く。
(……行くか)
風が顔を切る。枝の影が流れ、模型の巨人が視界に入る。
刃を閃かせ、首筋を正確に斬り抜ける。
そのまま旋回、加速、急降下――一体、また一体。
ただ“動く”のではなく、“削ぐ”。それが目的だった。
森の奥に差しかかった時、不意に目の前の木陰から模型が飛び出してきた。
咄嗟にワイヤーを切り替え、上昇。
その瞬間――ふと、頭に浮かんだ。
以前見た、リヴァイの戦い方。
彼が片方の刃を逆手に持ち替えて、すれ違いざまに斬り抜けたあの動き。
(……試すか)
右手の刃を逆手に握り替える。
重心を低く、呼吸を殺して――すれ違いざまに一閃。
風圧とともに模型の首が弾け飛ぶ。
……感覚的に、分かった。
“これだ”。何故か、それが正しいと本能が告げていた。
しかし同時に理解する。
リヴァイの動きは、まだ遠い。
俺の一撃には、あの人の“切断”の鋭さも、迷いのなさも足りない。
それでも構わず、最後の一体を仕留めると同時に森を抜けた。
息を整えながら着地すると、そこには班の面々が待っていた。
……全員、目を見開いていた。
あの冷静なエルドでさえ驚いたように口を開け、
グンタも「嘘だろ……」と小声を漏らす。
ペトラはぽかんと口を開け、そして――
エレンまで、同じ顔で固まっていた。
(いや、なんでお前まで驚いてんだよ)
「悪くない」
リヴァイの声が静かに響いた。
腕を組んだまま、じっと俺を見据えている。
「時間もそこまでかかっちゃいねぇ。ガスの消費も最小限だ。
……だが、あの片方の逆手持ちは初めてだろ? まだ荒さが目立つ。
そこさえ完璧にすれば問題ねぇ」
俺は頷いた。やはり見抜かれていたか。
「やっぱりか……掃討作戦の時のリヴァイの真似をしてみたんだがな。
後で少し教えてくれないか?」
「いいだろう」
その短い返事に、どこか満足そうな響きがあった。
リヴァイが背を向けて歩き出すと、
張り詰めていた空気が一気にほどけた。
残されたメンバーたちは、ようやく息を吹き返したように動き出す。
最初に駆け寄ってきたのはペトラだった。
「すごかったよ、ルカ! 何だかリヴァイ兵長みたいだった!」
目を輝かせながら、子どものように両手を合わせて褒めてくる。
その真っ直ぐな反応に、思わず苦笑が漏れた。
「……ああ、ありがと」
軽く肩をすくめて返すと、エルドとグンタも近づいてくる。
「確かに見事だった。あの速度と判断は、普通じゃない」
「流石、訓練兵団の首席様だな」
グンタが淡々とした声でそう言い、エルドが頷く。
そして――
「図に乗るなよ、新兵ッ!」
と、待ってましたと言わんばかりにオルオが怒鳴った。
「いい気になるな! あれくらいでリヴァイ兵長と並んだ気でいるんじゃねぇ!
もちろん俺にもまだ追いついてねぇーからな!!」
顔を真っ赤にしてまくし立てるその姿に、俺は心の中で溜息をつく。
(……あーはいはい、好きに言ってろ)
オルオはまだ何か言っていたが、途中で舌を噛みそうになって黙り込んだ。
ペトラが呆れ顔で「もう……」と肩をすくめる。
その場の空気が少し和らいだ頃、俺はふと横を見た。
――エレンが妙に黙っている。
訓練の始まりからずっと、どこか落ち着かない様子ではあったが、
今はもう、何かを飲み込んだような顔をしていた。
「……どうした、エレン?」
声をかけると、彼は少しだけ目を伏せてから答えた。
「……いや、何か羨ましくってさ」
「羨ましい?」
「お前は純粋に兵士としての実力を買われてるし、その実力も群を抜いてる。
でも、俺は――ただ不安定な巨人の力だけを買われて、
夢だった調査兵団に入団できた。
それに……リヴァイ兵長たちの監視付きだ」
エレンは拳を握ったまま、小さく笑う。
その笑顔には、悔しさと自嘲が入り混じっていた。
「俺とは違いすぎるからさ」
俺は少し考えてから、ゆっくり口を開く。
「……違いなんて、どうでもいいだろ」
エレンが驚いたようにこちらを見る。
「お前が“力”で認められようが、俺が“腕”で評価されようが、
結果的に同じ場所に立ってる。
誰もが外の世界を目指して、ここにいる。……それだけだ」
エレンは目を見開いたまま、何かを飲み込むように黙り込んだ。
そして、ほんの少しだけ笑った。
「……やっぱり、ルカってすげぇな」
「いや、俺は俺のやり方で動いてるだけだ」
そう言って俺は空を見上げる。
木々の間から差し込む光が、少しだけ優しく感じた。
(お前は“羨ましい”なんて言ってるけどな……エレン。
本当に羨ましいのは、あんな無茶みてぇな夢を、今でも真っ直ぐに信じていられるお前の方だ……俺にはもう――そんな眩しいものは残っちゃいねぇ)
そう心の中で呟きながら、
俺は肩の力を抜いて歩き出した。
訓練を終え、拠点へ戻る頃には空が橙色に染まっていた。
風が涼しく、汗の残る肌に心地よい。
リヴァイ班は一度解散となり、俺とエレンは見張りの任に就いていた。
静かな帰路の途中、エレンがふと前方を見て目を細める。
「……あれ、ミカサとアルミンじゃねぇか?」
その声に俺も視線を向ける。
少し先、夕陽を背にした三人の影。確かに、見覚えのある顔ぶれだった。
エレンの表情がぱっと明るくなる。
次の瞬間には、子どものような笑顔で駆け出していた。
「おい、ミカサ! アルミン!」
その後ろ姿を見ながら、俺は息をつく。
(まぁ……無理もねぇか)
あいつにとって、あの二人は“家族”みたいなもんだ。
久々に顔を合わせりゃ、ああもなるだろう。
ゆっくりと歩を進め、少し距離を取って様子を見ていると、三人が集まり笑顔を交わす。
ミカサは相変わらずの無表情気味だが、声のトーンだけは明らかに柔らかかった。
「何かひどいことはされてない? 体を隅々まで調べ尽くされたとか、精神的苦痛を受けたとか」
「ねえよ、そんなことは」
エレンが苦笑しながら否定するも、ミカサの顔は険しい。
「くっ……あのチビは調子に乗りすぎた。いつか私がしかるべき報いを――」
ああ、リヴァイのことか。
審議所でボコボコにされた話は俺も聞いてる。
そりゃ、エレン命のこの女がキレるのも当然だ。
(まぁ……リヴァイ相手にやれるもんならやってみろって話だけどな)
そこへ他の同期たちも加わり、賑やかな声があがる。
コニー、サシャ、クリスタ、ユミル、ライナー、そしてベルトルト――懐かしい顔ぶれが並んでいた。
――本当に、よくここまで生き延びたもんだ。
「お、なんだよ、みんな揃ってんのか? でも、お前ら、ここにいるってことはまさか調査兵になったのか?」
エレンが神妙な面持ちで聞くと、コニーが当然のように答える。
「他にここにいる理由あるか?」
「じゃあ、憲兵団に行ったのはジャンとアニとマルコだけ……」
エレンが口にした瞬間、背後から声がした。
「マルコは死んだ」
振り向けば、ジャンが立っていた。
その顔には、あのいつもの皮肉も軽口もなく――ただ、静けさだけがあった。
ジャンを見たエレンが、驚いたように声を上げる。
「まさか……お前まで!? それに今なんて言った? マルコが……死んだ?」
俺も思わず息を呑んだ。
ジャンが“調査兵団”に入っていたことにも驚いた。
あいつは訓練兵の頃から憲兵団志望で、
「安全で飯がうまい場所が一番だ」と公言していたはずだ。
そんなやつが――自ら死地へ足を踏み入れている。
そして、マルコの死。
確かトロスト区奪還の頃はまだいた気がする。
穏やかで、他人をよく見ていたやつだった。
(……そうか。マルコまで、か)
ジャンはそのまま、淡々とした声で言葉を続けた。
「誰しも劇的に死ねるってわけでもないらしいぜ。
どんな最後だったかも分かんねえよ。
あいつは――誰も見てないところで、人知れず死んだんだ」
その言葉に、場の空気が一気に重くなる。
橙色の空がゆっくりと夜の色を帯び、
まるで光そのものが遠ざかっていくようだった。
ジャンたちは先輩調査兵から新しい制服を受け取り、それぞれ袖を通していた。
夕陽の光が布に反射し、革の匂いが風に混じる。少しだけ、戦場ではない“日常”の匂いがした。
ジャンがエレンに何かを問いかけ、二人が言葉を交わす。
その様子を俺は少し離れた場所から眺めていた。
――人は、こうして強くなっていくのかもしれない。
ぼんやり考えていると、視界の端で金髪と栗色の影が動いた。
振り向くと、クリスタとユミルが並んでこちらに歩いてくる。
「久しぶりだね、ルカ」
先に声をかけてきたのはクリスタだった。相変わらず穏やかで、
その笑顔だけで空気が少し柔らかくなる。
「ああ。……調査兵団に入ったんだな。
上位十人に入ってたんだから、憲兵団に行っちまえばよかったのにな」
そう言うと、ユミルがすかさず笑い声を上げた。
「だろ? けど一度言い出したら聞かねーからな、クリスタは。ふっ……入団式の時なんか泣きながら残ってたからな」
「ちょっ、ユミル! ルカの前でやめてよ!」
クリスタが顔を真っ赤にして、ユミルの腕を軽く叩く。
「悪い悪い。クリスタのその顔が見たくてな」
ユミルは肩をすくめながら笑っている。
「もうっ!」
頬を膨らませて拗ねるクリスタの姿に、思わず俺の口元も緩んだ。
「……ふっ」
小さく漏れた笑い声が自分でも意外だった。
その瞬間、二人が同時にこちらを見る。
「な、なんだ?」
クリスタは目を丸くして言った。
「ルカが笑ってるところ……初めて見た」
ユミルも腕を組みながらにやりと笑う。
「ああ、まさかお前が笑みを浮かべるなんざ想像してなかったが……中々似合うじゃねーか」
「うん! きれいだったよ?」
クリスタまでそんなことを言うものだから、思わず顔をしかめる。
「うっせぇ、余計な世話だ」
そう返すと、クリスタはにこにこ、ユミルはにやにや。
(……こいつら、ほんっと面倒くせぇ)
ユミルがからかうように笑いながら手を振った。
「じゃあな、ルカ。今度はお前の笑顔、もうちょっと見せてくれよ」
軽口を残して去っていくその背中を、俺は小さく舌打ちして見送った。
「チッ……騒がしい奴だ」
だが――クリスタはその場に残っていた。
顔を少し伏せ、金色の髪が光を反射して頬を隠している。
笑っていたはずの彼女の表情は、いつの間にか影を落としていた。
「……どうした?」と声をかけようとした、その瞬間。
クリスタがゆっくりと顔を上げ、真っ直ぐに俺を見つめた。
その瞳は、どこか怯えにも似た揺らぎを帯びている。
「ねぇ、ルカ……」
少し間を置いて、彼女は言った。
「ルカは作った“私”じゃなくて――本当の私を、受け入れてくれる?」
一瞬、言葉を失った。
さっきまでの明るい空気とはまるで別の、静かな声だった。
その表情には、不安と、どこか罪悪感のような色が見えた。
「本当のお前がどういう奴なのかは知らないが……」
俺はゆっくりと息を吐き、目を合わせた。
「それが“本当の姿”なら、受け入れてやるよ」
クリスタの瞳がわずかに揺れた。
「……本当?」
「本当だ。そもそも先に言ったのは俺の方だろ。
“俺の前で作った顔をやめろ”ってな」
その言葉に、クリスタは少しだけ目を丸くして――
やがて、ほんのりと微笑んだ。
「そうだったね……」
風がそっと吹き抜け、金髪が夕陽を受けて揺れる。
「ありがとう。ルカ……」
そう言って見せた微笑みが、やけに眩しく感じた。
なぜか、その顔が――頭から離れなかった。
それから数十日が過ぎた。
日々の訓練と整備、打ち合わせが繰り返され――気づけば、壁外調査はもう明日に迫っていた。
夜。
拠点の屋上に上がった俺は、眠れずに空を見上げていた。
冷たい風が頬を撫で、雲ひとつない夜空に無数の星が散らばっている。
地下街にいた頃は、こんな光景を想像すらできなかった。
あの暗く狭い天井の下では、空なんて存在しないも同然だったからだ。
初めて地上に出て、この星空を見た夜のことを、今でもはっきり覚えている。
あの時感じた“世界の広さ”――何度見ても、飽きることはなかった。
「眠れないの?」
背後から、穏やかな声がした。
振り返ると、そこにいたのはペトラだった。
月明かりに照らされた横顔が、柔らかく笑っている。
……ああ、少しな」
星空を見上げたまま答えると、ペトラは俺の隣に腰を下ろした。
一緒に夜空を仰ぎながら、ゆるく息を吐く。
「緊張してるの?」
「してるわけないだろ……ただ寝付けなかっただけだ」
「ふふ、そういうことにしておくね」
彼女はいたずらっぽく笑う。その横顔が月光に照らされ、柔らかく光っていた。
「でも、ルカでも緊張とかするんだね」
「だから違うって言っ──」
「私も怖いんだ……」
言いかけた言葉を遮るように、ペトラがぽつりと呟いた。
その声には、少し震えが混じっていた。
「死ぬかもしれないって思ったことは、何度だってある。
今回の壁外調査も、不安しかない……。
あれだけ“頼りにして”って言っときながら、みっともないよね」
「……誰だって怖いのは当たり前だろ」
俺は淡々と言う。
「俺でも少しは不安な面はある。逆に、不安が一つもないやつの方がおかしいと思う」
ペトラは静かに目を伏せた。
少しの沈黙の後、俺は言葉を足した。
「それに、リヴァイやエルド達もいるんだ。
あんたが死ぬリスクは低いだろうよ」
「……ありがと、ルカ」
ペトラは小さく笑った。
「でも、そこは“兵長やエルド達”じゃなくて、“俺が”の方がカッコよかったと思うけどな」
「何で俺なんだよ。リヴァイ達でいいだろ。
先輩が後輩に守ってもらおうとするのか?」
ペトラはくすっと笑い、月を見上げたまま言う。
「まぁ、そこもルカらしいけどね。それじゃあ可愛くないよ?」
そう言って、彼女は手を伸ばし、俺の頭を軽く撫でた。
不意を突かれ、思わず肩がわずかに跳ねる。
「……おい」
「ふふっ、なんか弟ができたみたい」
「……勝手に姉ヅラすんな」
「そういうところも弟っぽいって言ってるの」
ペトラは楽しそうに微笑み、夜風に髪を揺らした。
その表情を見て、俺は小さく舌打ちする。
けれど――不思議と嫌な気はしなかった。
ヒロインは誰がいい?
-
クリスタ(ヒストリア)
-
アニ
-
ペトラ