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翌朝。
訓練場に集められた俺たち新兵は、木の柱を中心に張り巡らされたロープを見上げていた。
「まずは貴様らの適性を見る! 腰の両側のベルトにロープを繋げ! 宙にぶら下がり、全身でバランスを取れ! できねぇ奴は巨人の囮にもならん! 開拓地に移ってもらう!」
キース教官の怒声が空気を震わせる。
ロープに吊り上げられた新兵たちは、次々に体を揺らしながらも必死に体勢を保っていた。
派手に地面へ叩きつけられるような奴はいない。皆、ぎりぎりのところで踏みとどまり、時間が経つごとに汗と歯ぎしりが響いた。
(……こんなので落ちる奴いるのか?)
それでも、誰もが危うい均衡に必死で縋りついている。
バランスを取っている、というよりは転げ落ちないように耐えている――そういう印象だ。
俺の番が来た。
「次! ルカ・クロイツ!」
名を呼ばれ、腰にロープを繋がれる。
合図と同時に体が宙に浮く。
瞬間、重心の揺れが全身を襲った。だが、恐怖はなかった。
地下街の崩れかけた梁や濡れた鉄骨の上で、俺は何度も体を支え、走り抜けてきた。
あの時と比べれば、吊られる程度は遊び同然だ。
腹の奥で揺れを殺し、背中で支点を整える。
わずかに身体をひねれば――すぐに静止。
俺は柱の下で、宙づりのまま微動だにしなかった。
しばし沈黙。
見ていた新兵たちが小さくざわめく。
周囲と比べて、あまりにも揺れが少なすぎる。
「……問題なし」
キース教官は一言だけ残し、次へ進んだ。
その後、列の中から呼ばれたのはミカサ・アッカーマン。
彼女もまた、俺と同じようにほとんど揺れずに宙に浮かび、淡々と静止したままだった。
その光景に新兵たちのざわめきが大きくなる。
(……なるほど。あれが“天性”ってやつか)
俺は無表情のまま目を細める。
結局、この検査で浮き彫りになるのは“素質”だ。
俺やあの女みたいな一握りと、それ以外の凡人との差。
訓練は続き、皆がどうにか課題をこなしていった。
脱落者は出なかった。だが――俺の目には、限界ぎりぎりで耐える凡人の群れと、揺るぎないわずかな存在、その差があまりに鮮明に映っていた。
俺の検査が終わり、列の後ろにいるとクリスタとユミルが近寄ってきた。
「ルカ、さっき全然揺れてなかったよね。まるで体が装置に馴染んでるみたいだった」
クリスタが小さく笑って言う。その声音には純粋な尊敬が滲んでいた。
ユミルは腕を組み、俺と遠くにいるミカサを交互に見やって鼻を鳴らす。
「ちっ……お前とあの東洋女は別格だな。他の奴らは必死に耐えてたのに、ピクリとも揺れねぇ。正直、気味が悪いくらいだ」
2人が俺に向かって話しかけていると──
「何をやってるエレン・イェーガー!! 上体を起こせ!!」
教官の怒声が飛んだ。
見ると、エレンは腰を支点にぐるりと回転し、上下逆さまの状態でぶら下がっていた。
本人も状況が掴めていないらしく、顔を真っ赤にしたまま茫然と宙を漂っている。
「ぶははは! なんだよあいつ、へったくそだな!」
ユミルが腹を抱えて笑い出す。
「ちょ、ちょっとユミル! 笑っちゃだめだよ!」
慌てた声で制したのはクリスタだ。
けれど、ユミルの他にも肩を震わせて笑っている奴や、唇を噛んで堪えている奴が何人もいた。
俺は無言で見ていたが違和感を感じていた。
(……やっぱりおかしいな。素質以前の問題だ。装置か装着の仕方に不具合があるんじゃないのか?)
結局、この日の訓練でエレンが課題をクリアすることはなかった。
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その日の夕方。
「ルカ、だったよな! すげぇうまいって聞いたぞ! なんかコツとか無いか!?」
包帯を巻いた頭を抱えながら、エレンが俺に詰め寄る。
俺は淡々と返す。
「……コツ?強いて言うなら、前後に体重をかけ過ぎないこと、くらいだ」
「それが上手くいかねぇんだよ……あ”ー、どうすれば!」
エレンは頭を抱えて唸り、アルミンは不安そうに眉を寄せる。
俺は肩をすくめた。
「あの黒髪の女……ミカサって言ったか? そいつには聞いたのか?」
「ミカサにはもう教えてもらったんだよ……それでも無理だった!」
苛立ちと焦りをにじませた声が返る。
「なら俺に出来ることはねぇな。あの女で駄目なら、俺が口で説明したところで変わらん」
冷たく言い捨てると、エレンが悔しそうに唇を噛んだ。
ちょうどその時、ライナーとベルトルトが現れる。
「お前ら、何をしてる?」
エレンが飛びつくように声を上げた。
「ライナー! ベルトルト! お前らすげぇ上手かっただろ! なぁ、なんかコツとかねぇのか!?」
ライナーは少し困ったように笑みを浮かべて答える。
「すまんが、ぶら下がるのにコツがいるとは思えん。期待するような助言は出来そうにないな」
「そうか……」
エレンは俯き、肩を落とす。
すかさずアルミンが言葉をかけた。
「大丈夫だよ、エレン。明日にかけるしかないんだ」
その様子を見て、俺はふと口を開いた。
「……おそらく、昨日のお前の装備に不備があったんだろ。動きが少し変だった」
エレンがはっと顔を上げる。
「不備……?」
「まあ、気にするな」
それだけ言い残し、俺はその場を離れた。
(……助けたわけじゃない。あいつがここで潰れたら、使える駒が減るだけだ。俺にとって何の得にもならねぇ。
結局これは……俺自身のためだ)
そう心の中で吐き捨てながら、足を速めた。
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翌日。
エレンの再挑戦が始まった。
周囲の新兵たちが固唾を飲んで見守る中、エレンの身体がゆっくりと吊り上げられ、一定の高さで止まる。
必死に体勢を整え、揺れながらもどうにかバランスを保っていた。
(……昨日とは違うな)
俺は腕を組みながら、わずかに目を細める。
だが――それも束の間だった。
「ぐっ……く、うわぁっ!」
体重が後ろへと傾き、エレンの体がぐるりと回転。
あっという間に頭が下に向き、逆さまに吊られてしまう。
「降ろせ」
低い声でキース教官が命じる。
装置が緩み、エレンは地面に膝をついた。顔色は青白く、歯を食いしばっている。
「俺はっ……!」
悔しげに唸るエレンを一瞥し、キースは補助に付いていたトーマスへ視線を送った。
「ワグナー。イェーガーとベルトを交換しろ」
「は?……はっ!」
指示の意図を掴みきれないまま、トーマスとエレンはベルトを交換する。
そして再び試験が始まると――今度はエレンの身体は安定して静止していた。
「装備の欠陥だ。……ここが壊れるなど聞いたことがないが、新たに整備項目に加える必要があるな」
「と、ということは……!」
「合格だ。訓練に励め」
その言葉を聞いた瞬間、エレンは腕を突き上げて喜びを爆発させた。
周囲からも歓声が上がる。
(……潰れなかったか。まぁ、あの程度で終わるようなら“駒”としても失格だ)
心の中でそう呟き、俺は群衆から一歩引いてエレンを眺めた。
ルカの卒業順位は何位がいい?
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堂々の首席
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ミカサと僅差で2位
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同率1位