影なき刃   作:洟魔

7 / 20


お待たせ致しました!!
お気に入り登録と評価ありがとうございます!!
それではお楽しみください!!

アンケートの回答はトロスト区の内容が終わってから締め切りますので皆さんどんどん回答してください!!



卒団

 

 

ついに訓練兵団を卒業する日が来た。

 3年に及ぶ訓練を終え、俺たち104期生は広場に整列し、キース教官の張り上げる声を聞いていた。

 

「これより、成績上位十名を発表する!」

 

 兵士候補生たちの間に緊張が走る。誰がどこまで食い込むのか、皆が息を詰めていた。

 名前が一つずつ読み上げられていく。

 

「10番 クリスタ・レンズ!」

 

 周囲がざわめいた。クリスタ本人も驚いていたらしい。澄んだ青い瞳を大きく開き、小さく息を呑む。

 その間にもその後の順位が発表される。

 

「9番 コニー・スプリンガー!」

 

「8番 マルコ・ボット!」

 

「7番 ジャン・キルシュタイン」

 

「6番 エレン・イェーガー!」

 

「5番 アニ・レオンハート!」

 

「4番 ベルトルト・フーバー!」

 

「3番 ライナー・ブラウン!」

 

「2番 ミカサ・アッカーマン!」

 

「首席 ルカ・クロイツ!」

 

 ざわつきはさらに大きくなる。

 ミカサを差し置いての一位。誰もが想像していなかった結果だろう。

 だが、俺にとっては特別な感慨もなかった。地下街で生き抜くために身につけた力と技術を使っただけ。訓練場の枠内でなら、勝てるのは当然だ。

 

 だが、この順位には意味がある。上位十名は憲兵団に入団する権利を持つ。安全な内地で暮らすか、それとも外の地獄に飛び込むか。

 

 その答えは、俺の中では最初から決まっていた。

 

 

 解散式が終わった後、食堂に集まった。

 訓練を共にした仲間たちと囲む最後の食事。

 俺はいつものように隅に座り、静かにパンをかじっていた。

 

 そこへ、ユミルとクリスタがやって来る。

「おい、首席様。どんな気分だ?」

 ユミルが肘で俺の肩を小突き、にやついた。

 

「別に。順位なんざ、どうでもいい」

「はぁ? 憲兵団入りの切符を捨てる気か?」

 

 ユミルの茶化すような声に、クリスタが恐る恐る口を開いた。

「……ルカ、本当に憲兵団に行かないの?」

 

「行かねぇよ。俺は調査兵団に志願する」

 

 二人とも目を丸くした。

 ユミルはすぐに肩をすくめる。だがクリスタは違った。心底不思議そうに、俺を見つめてくる。

 

「なんで? ……せっかく首席になったのに……」

 

「壁の外に興味があるんだ。地下でくすぶってた俺には、世界がどうなってるのか確かめる理由がある」

 

 俺は淡々と答え、食堂を後にする。先程言ったことは虚勢でも、理想でもない。心からの本音だった。

 

月明かりが敷き詰められたような中庭は、昼間の喧騒が嘘のように静まり返っていた。

石畳の上に柔らかな光が落ち、夜風が緩やかに頬を撫でていく。

 

訓練の疲れが残る身体を壁にもたせかけ、俺はしばし目を閉じていた。

そこへ、小さな声が横から落ちてくる。

 

「……ねぇ、ルカ」

 

振り向くと、月明かりに照らされたクリスタが立っていた。

笑みを作ってはいたが、その瞳の奥には揺らぎがあった。

 

「わたし、本当に……憲兵になるべきなのかな」

 

唐突な問いに俺は眉を動かす。

今日の発表で彼女は第十位に名を連ねた。条件は満たした。だが、その声色には迷いしかない。

 

「自分が十位になったのも……なんだか不思議で。そんな実力、本当にあるのかなって」

 

指先がぎゅっとスカートの裾を掴んで震えていた。

 

俺は短く息を吐く。

「……さあな。けど、十位に入ったのは事実だろ」

 

「でも……」

 

「疑うってことは、お前より下の奴らを全員否定することになる」

自然と声が鋭くなる。

 

クリスタははっとして俺を見た。

口を開きかけるが、言葉は出てこない。

 

「……まあ、選ぶのはお前だ」

俺は夜風を一度吸い込み、視線を空へ向ける。

「ただ――他人の目を気にして決めるなら、後悔しかしねぇぞ」

 

クリスタはしばらく黙り込んでいたが、やがて小さく「……うん」とだけ答えた。

 

俺はそれ以上追及せず、その場から離れる。

離れ際、背後で彼女の息づかいがわずかに揺れた気がしたが――振り返らなかった。

 

 

クリスタから離れた後、俺は外の空気を吸いながら歩いて足を止める。

月明かりに照らされている場所に、一人の影があった。アニだ。

 

「……アニ」

声をかけると、彼女は振り返りもせずに答えた。

「何の用?」

 

「前に……格闘術を教えてくれただろ。あの時の礼を言っておこうと思ってな」

 

アニは一瞬だけ肩を揺らした。驚いたのか、笑ったのか判別できない。

「……別に。取引だったでしょ。礼なんていらない」

 

「取引だろうがなんだろうが、役に立ったのは事実だ」

俺は真っ直ぐに言葉を返す。

 

月光に照らされたアニの横顔は、わずかに口角を上げているように見えた。

「……あんた、律儀だね」

 

「俺は俺なりに借りは返す主義だ」

 

アニはそこでようやく振り返り、じっと俺を見た。

その眼差しは冷めているようでいて、どこか柔らかい光を帯びている。

 

「……じゃあ、返してもらったことにしとくよ」

 

短くそう言うと、アニは踵を返し、月明かりの下を静かに歩き去ろうとしたが、途中で止まった。

そしてアニは少し間を置いて、俺の方を見ずに口を開いた。

 

「ルカ……あんた、死なないように。……約束しなよ」

 

その声はぶっきらぼうで、いつもの彼女らしい強がりに聞こえた。

だが、言葉の奥に滲む本音は隠せていなかった。

 

俺は短く息を吐き、視線を夜空に向けたまま答えた。

「ああ」

 

それ以上は言葉を重ねなかった。

だが、アニの背を見送る胸の奥に、確かな重みが残っていた。

 

 

俺はその背中を見送りながら、わずかに笑みを漏らした。

――あの時教わったのは、技だけじゃない。人と向き合う姿勢も、少しだけ

 

----

 

翌日。

街に行くと妙にざわついていた。今日は調査兵団の壁外調査の日らしい

市民たちは、口々に声援を飛ばしていた。

 

「頼んだぞ!」

「外の世界を切り開いてくれ!」

「皆の無事を祈ってる!」

 

街のざわめきが最高潮に達したその時、隊列の中に見覚えのある顔を見つけた。

小柄だが、どの兵士よりも凄絶な気配を纏う男――リヴァイ。

 

(……リヴァイ)

 

3年ぶりの再会だった。

俺がまだ地下にいた頃、ほんの一瞬だけ交わった縁。

まさか、こんな形でまた目にすることになるとは思わなかった。

 

兵士たちは群衆の声援を受けながら進んでいく。

俺は人波をかき分け、馬上の彼のすぐそばまで出た。

 

リヴァイの鋭い眼が、わずかにこちらを見下ろした。

互いに言葉は少なくていい。そういう間柄だ。

 

「……元気そうだな」

俺がそう呟くと、彼は鼻で笑った。

 

「お前もな。地上に馴染んだか?」

 

「まぁな」

 

短く答える俺に、リヴァイは視線を戻し、隊列を保ったまま進み続ける。

だが、その一瞬だけ、確かに昔の繋がりが蘇った気がした。

 

すれ違いざま、俺は小さく言葉を投げた。

 

「……死ぬなよ、リヴァイ」

 

彼は振り返らなかった。

ただ片方の口角が、わずかに上がったように見えた。

 

そして群衆の歓声に包まれながら、調査兵団の隊列は街の外へと消えていった。

 

 

 

 

街での調査兵団出発を見送り、リヴァイと短い言葉を交わした後。

 

俺は持ち場である壁上に行き、固定砲の整備に取りかかっていた。

油を差し、ボルトを締め、角度を確認する――単調だが確実な作業。

リヴァイの背を見送った余韻が、まだ胸の奥に残っている。

 

(……死ぬなよ、リヴァイ)

心の中で繰り返しながら、砲身に触れたその時だった。

 

壁上の固定砲の整備をしていた俺の耳に、唐突な轟音が突き刺さった。

地面が揺れる。風が押し寄せる。

何が起きたのか分からないまま、俺は反射的に砲身に手をかけ、視線を正面に向けた。

 

視界の端、巨大な影がゆっくりと立ち上がっていた。

雲を突くような異様な高さ――壁と同じ高さに迫る“超大型巨人”。

 

「……あれが、そうか」

 

5年前、シガンシナを蹂躙した巨人。

地下街の奥で、怯えた子供の声越しにしか知らなかった“悪夢”が、今まさに目の前に現れている。

 

すると再び振動が襲い、壁全体が軋んだ。

視界が白に染まり、鼓膜を突き破るような轟音が全身を叩きつけた。

足場が揺れ、砲台ごと吹き飛ばされそうになる――その瞬間、俺は反射的に立体機動装置のアンカーを撃ち込んでいた。

 

「っ……!」

 

腰に食い込む衝撃と共に、ワイヤーに支えられ宙吊りになる。必死に息を整えながら壁にぶら下がり、何とか落下を免れる。

風が渦を巻いて押し寄せ、砕けた石片が雨のように降り注いだ。

 

そして壁の下に広がる光景を、俺は静かに見下ろした。

砕け散った石、立ち込める土煙、そして壁に空いた巨大な穴。

 

――ここから、地獄が始まる。

 




こちらにルカのイメージ画像を貼っておくので興味がある方はご覧ください!
興味が無いまたは自分の中のルカのイメージを崩したくないという方は素通りして頂いて構わないです!!


【挿絵表示】

ヒロインは誰がいい?

  • クリスタ(ヒストリア)
  • アニ
  • ペトラ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。