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超大型巨人によって壁が破壊され、巨人が次々と壁の中に入って来る。
すぐに集合の号令が鳴り響いた。
訓練兵全員が駐屯兵団の本部に集められる。
壁の破壊によって防衛線は崩壊、今すぐ戦闘体制を整えなければならないと教官が告げた。
「貴様らも兵士の一員だ! 命令があれば前線にも出てもらう!」
空気が一気に張りつめる。
それでも誰一人声を上げない。恐怖はあったが、足は震えていなかった。
これが実戦――そう理解するだけだった。
配置の指示が下る。
俺は後衛の支援班。任務は避難誘導と巨人討伐の援護。
すぐ隣にはミカサ・アッカーマンの名があった。
後衛の担当場所――内壁近く。
ここは前線に比べれば比較的静かだ。
だが、遠くで上がる黒煙と地響きが、前線の惨状を雄弁に物語っていた。
立体機動装置のワイヤーが唸る音、巨人の咆哮、誰かの悲鳴。
その全てが風に乗って届いてくる。
「……来るぞ!」
兵の一人が叫ぶ。
視線を上げると、瓦礫を蹴散らしながら一体の巨人が走ってくるのが見えた。
だが、その軌道はおかしかった。
俺たち後衛を完全に無視し、門の方――避難中の住民の方へ一直線に向かっている。
「なんで俺たちを無視する!?」
「奇行種だ! 考えるだけ無駄だ!!」
焦りと混乱の声が飛び交う。
駐屯兵団の精鋭が相手をするはずだったが、距離を詰められない。
腕は立つ連中だが、目の前の“異常”に飲まれていた。
それは訓練では絶対に再現できない恐怖――現実の“巨人の速さ”だった。
俺は既に腰を落としていた。
立体機動装置のトリガーを握り、息を整える。
「ミカサ」
「分かってる」
言葉はそれだけで十分だった。
次の瞬間、二人のアンカーが音を立てて発射される。
鋼線が風を裂き、俺たちの身体を宙へと引き上げた。
奇行種が、こちらに気づいたように顔を上げた。
濁った瞳が俺を映し、口が裂けるように開く。
唾液が地面に飛び散ったが、恐怖はなかった。
むしろ、全身が冷静だった。
「右から引く」
「了解」
ミカサが右側へ回り込み、わざと巨人の視界を奪うように動く。
その完璧なタイミングを逃さず、俺は上昇角度を変えた。
狙うはうなじ――一撃で仕留めるための、最短ルート。
鋼刃が閃く。
瞬間、巨人のうなじが裂け、蒸気が噴き出す。
「……終わりだ」
巨体が揺れ、膝をつき、地面に崩れ落ちた。
振動が地面を伝い、埃が舞い上がる。
ミカサが軽やかに着地し、俺の方へ短く視線を寄越した。
「……さすが」
「お前の誘導もな」
互いに無駄な言葉はない。
だが、互いの強さへの信頼だけはそこにあった。
だが、安堵は一瞬だった。
門の方を見ると、避難の列が止まっている。
住民が門の前で立ち尽くしている。
その先に、異様な光景があった。
巨大な荷車が門の中央に挟まっている。
周りには商人風の男たち――荷を守るように取り囲んでいる。
避難の妨げになっているのは明らかだった。
その中心で怒号を飛ばしている男が一人。
腹の出た中年で、見るからに“金の匂い”をさせている。
どうやらこの街の商会の人間らしいが、名前は知らない。
「……何やってるんだ、あいつら」
ミカサも目を細めた。
「荷物を優先してる……?」
信じがたい光景だった。
巨人が迫っているというのに、荷物を手放さない。
周囲の駐屯兵も動けない。
それが街でも権力のある商会の荷車だと気づいたからだ。
苛立ちが腹の底で渦を巻く。
訓練の時よりも冷たい怒りだった。
「……くだらねぇ」
俺はアンカーを引き抜き、地上に降り立つ。
ミカサも続く。
住民たちの間を抜けて、ゆっくりと歩いた。
「今、仲間が死んでいる」
ミカサの声が響く。
その静けさが、怒号よりも恐ろしかった。
「住民の避難が完了しないから……巨人と戦って死んでいる」
人々が息を呑む。
目の前の少女の声が、まるで冷気のように広がっていく。
だが、男は一歩も退かない。
「それは当然だ! 住民の命や財産を守るために心臓を捧げるのがお前らの務めだろうが! タダ飯食らいが100年ぶりに役に立ったからっていい気になるな!」
なるほど――理屈は通っている。
だが、それは“安全な場所”でしか通じない理屈だ。
この場でその言葉を吐くのは、狂気以外の何者でもない。
俺はゆっくりと前に出た。
足音が一歩、また一歩と響く。
男はこちらを睨むが、その目の奥に僅かな怯えが見えた。
「……何で未来の話なんかしてんだ?」
「……あ?」
「これから死ぬのに」
俺の声は低く、淡々としていた。
だが、その一言で空気が凍る。
男の顔から血の気が引く。
ミカサがその隣で、さらに冷たく囁いた。
「……死体が、どうやって喋るの?」
リーブスが息を詰まらせた瞬間、部下たちが慌てて荷車をどかした。
避難路が開け、住民が次々に門を抜けていく。
泣き声、安堵の叫び、瓦礫の崩れる音が混じり合う中で、ようやく戦場の喧噪が遠のいた。
そんな中、息を切らせながら駆け寄ってきた一組の親子がいた。
土埃まみれの母親が、小さな女の子の手を引いている。目には涙が浮かんでいた。
「……ありがとう……! 本当に、ありがとうございました!」
母親はミカサと俺に深々と頭を下げた。
女の子は怯えた顔で俺たちを見上げていたが、やがて無邪気に笑い、
「お姉ちゃんたち、すごかった!」と小さく叫んだ。
ミカサは少し目を見開くと、静かに刃を納め、右拳を胸に当てて敬礼した。
俺は視線を落とし、わずかに息を吐く。
言葉を返すことはなかった。
感謝など、俺の人生でほとんど無縁だった。
ただ、その親子の顔を見た瞬間――
胸の奥で、何かが微かにざわついた。
(……感謝されるなんて、らしくもねぇ)
目を逸らし、再び立体機動装置を確認する。
油の匂いと血の臭いが混ざったこの空気の中で、
一瞬でも“温かさ”を感じた自分が、少しだけ気に入らなかった。
ミカサが振り返り、短く言った。
「……行こう。まだ残ってる巨人がいる」
「ああ」
それだけ返して、俺たちは再びワイヤーを撃ち放つ。
蒸気と煙の中へ、再び飛び込んでいった。
蒸気の匂いが濃くなってきた頃、遠くで鐘の音が鳴り響いた。
――撤退の合図。
戦場に響くその音は、勝利ではなく「限界」を告げていた。
巨人を数十体は斬っただろう。
刀の刃は鈍り、ガスの残量もある程度余裕があるが、もう一度数十体の巨人と戦えるかと言われると心許ない。
それでも、俺の身体にはまだ戦える感覚が残っていた。
「撤退だ! 全員、壁上へ登れ!」
上官の怒号が飛ぶ。
だが、ミカサはわずかに眉を寄せると、そのまま振り返った。
「……前衛の撤退を支援してきます」
「待て、アッカーマン! 命令違反だ!」
制止の声が上がるが、ミカサはもうワイヤーを放っていた。
その背中は、迷いなど一切なく、ただ“守るべきもの”に向かっていた。
俺もすぐに装置を構える。
「……ったく、勝手な奴だな」
呟きながら引き金を引く。
鋼線が空を裂き、ミカサの背を追うように俺の身体が宙を駆けた。
前衛の区画はすでに崩壊していた。
煙と瓦礫、血の臭い、巨人の咆哮――それらが混ざり合い、まるで地獄の底のようだ。
俺とミカサは立体機動で屋根を渡りながら進んでいた。中衛も危うい状況にあり、巨人の群れがじわじわと迫っている。
視界の先、崩れた屋根の上に兵士たちが集まっているのが見えた。ライナー、ベルトルト、そしてアニ。その横にクリスタとユミルの姿もある。
ミカサは一瞥しただけで素早く降り立ち、アニに何かを問いかけると、そのまま走り去っていった。向かう先は分かっている。――アルミンの元だ。
俺はその場に残り、アニと目が合う。彼女は少しだけ眉を動かし、低く言った。
「……生きてたんだね」
「別に。心配されるほどやわじゃねぇ」
肩を竦めて返す。だがアニはそれ以上何も言わず、ほんの僅かに目を細めただけだった。
アニとのやり取りが途切れたとき、背後から小さな声がした。
振り返ると、クリスタが立っていた。煤で頬が汚れているのに、いつものように笑おうとしている。
「……ルカも、無事だったんだね」
俺は短く頷く。
「まあな。死ぬほど鈍くはねぇ」
クリスタは少し息をつき、視線を落とした。
「よかった……。誰かがいなくなるのは、やっぱり……怖いから」
その言葉に、胸の奥が少しだけざわついた。
戦場に立つ以上、誰かが死ぬのは当然だ――そう割り切ってきたはずなのに。
「……お前も死ぬなよ」
俺は気づけば口にしていた。
クリスタは一瞬驚いた顔をしたが、すぐにまた微笑んだ。
その笑みは、さっきまでと違って作り物めいていなかった。
「……うん。約束する」
その時、少し離れた場所からミカサの声が響いた。彼女はアルミンの前に立ち、何かを強く問い詰めている。
俺たちの耳にも、その断片が届いてきた。
「……エレンが……食われた……?」
風が止んだかのように、場の空気が凍りついた。
クリスタが小さく息を呑む。アニも表情を固める。ライナーとベルトルトは一瞬だけ目を伏せた。
俺はただ、黙って立っていた。
胸に何か重いものが落ちる感覚――だが、涙も声も出なかった。
(……仲間の死、か)
地下街でなら、こんなもの日常の一部だった。
けど今は違う。目の前にあるのは「命を賭けて隣に立ってきた奴の死」だった。
エレンと深く話したことはない。けれど、確かに同じ戦場で生きてきた。
――なのに。
割り切れるはずの俺の中に、奇妙な違和感が残った。
(……何が違う? なんでこんなに、胸がざわつく)
誰も答えはくれない。
アルミンは崩れ落ち、ミカサは目を閉じて短く息を吐いた。
その場の空気全体が、重く、冷たく沈んでいった。
ヒロインは誰がいい?
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クリスタ(ヒストリア)
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アニ
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ペトラ