文字起こしって大変だなぁ〜って改めて思いました……
今回はルカくんちょい無双です
アルミンがしゃがみ込んだまま嗚咽を漏らす。
「ごめん……ミカサ。エレンは……僕の身代わりに…! 僕は…何も出来なかったッ! ……」
ミカサは一瞬だけアルミンを見据え、低く落ち着いた声で言う。
「アルミン……落ち着いて。今は感傷的になっている場合じゃない……」
アルミンはきょとんとし、ミカサから距離を取る。
その隙にミカサは顔を上げ、周囲を見渡しながら声を張る。
「マルコ! 本部に群がる巨人を排除すれば……ガスの補給ができて、皆は壁を登れる。違わない?」
マルコは短く息をつき、返す。
「ああ、そうだけど……でもいくらお前がいても……あれだけの数は……」
ミカサは刃を上へと掲げ、冷たい確信を滲ませる。
「できる」
短い断言の後、刃を持つ腕を仲間に向け、続ける。
「私は……強い。あなた達より……強い。すごく強い。ので、私はあそこの巨人共を蹴散らすことが出来る! ……例えば1人でも……」
仲間の面々がざわつく。
「あなた達は腕がたたないばかりか、臆病で腰抜けだ……とても残念だ……ここで指を咥えたりしてればいい……咥えてみてろ!」
訓練兵の一人が声を上がる。
「あの数の巨人を一人で相手にする気か!」
「そんなの無理だ!」
ミカサは眉一つ動かさず返す。
「出来なければ死ぬだけ……でも、勝てば生きる。戦わなければ勝てない!」
そして躊躇なくワイヤーを放った。鋼線が空を裂き、彼女は巨人群へと飛び込む。
周囲にはまだ呆然と立ち尽くす仲間たち。恐怖に足を縫いつけられたみたいに動けないでいる。
そんな中、小さな声が俺の耳に届いた。
「……ルカも行っちゃうの?」
振り返ると、クリスタがいた。
煤で汚れた顔に、それでも笑みを作ろうとしている。けれど、その瞳は不安に揺れていた。
俺はほんの一瞬だけ息を吐き、それから肩を竦めて言った。
「ここで死ぬなんて、俺はごめんだからな」
言葉を残すと同時に、俺はトリガーを引いた。
鋼線が飛び、身体が宙を駆ける。
クリスタの表情はもう見えなかったが――それでいい。振り返っている暇なんて、どこにもなかった。
「……行くぞ」
小さく呟き、刃を抜く。
巨人の巨体が視界いっぱいに迫る。
俺は速度を殺さずにうなじへ回り込み、刃を深く叩き込んだ。熱い蒸気が噴き出し、目の前が白く霞む。
だが止まらない。蒸気を突き抜け、次の巨人へ移る。
ミカサの立体機動は、寸分の狂いもない――はずだった。
だが今の彼女はいつもと違った。速度は鋭すぎるほど鋭いが、その分だけ無駄が多い。ガスを一気に消耗している。
(……あの使い方じゃ、すぐにガス欠になるぞ)
胸の奥にざらついた不安が広がる。
その時、背後でワイヤーの音が次々と重なった。振り返ると、屋根の上で見ていたはずの同期たちが、いつの間にか俺たちを追って飛び込んできていた。恐怖に縫いつけられていた足が、今ようやく動き出したのだ。
「……すげぇ……」
「巨人が……倒れていく……」
そんな呟きが耳に届く。
だが、俺にとってそんな声はどうでもいい。目の前の巨人を一体でも多く倒し、道を切り拓く。それだけが全てだった。
だが、しばらくするとミカサの立体機動装置がついに息絶え、鋼線は宙を掴めずに切れるような音を立てた。
次の瞬間、彼女の身体が屋根から滑り落ち、瓦礫の散らばる通りへと急降下していく。
「ミカサ!」
アルミンとコニーの叫びが重なった。二人はためらわずワイヤーを放ち、彼女の落下地点へと飛んでいく。
その動きは勇敢で、そして無謀だった。だが、あいつらは迷わない。大切な仲間を助けるために。
俺は振り返らなかった。
目の前にそびえる巨人の群れ――それを切り開かなければ、いずれ俺たちは全員潰される。
だから俺はただ前を向く。鋼刃を握りしめ、アンカーを撃ち込み、瓦礫の街を縦横無尽に駆け抜ける。
「どけよ……邪魔なんだよッ!」
刃が閃き、肉を裂き、蒸気が弾ける。
振動で崩れた瓦礫が肩を打つが、止まらない。俺の進む先――補給所の屋根が遠くに見えていた。
あそこまで辿り着ければ、ガスも刃も補充できる。そうすればまだ戦える。
息を荒げる暇もなく、俺は次の屋根へ跳び移った。
──────
俺は前方の巨人を次々に斬り伏せながら進んでいた。
だが、いくら俺が刃を振るおうと、すべての巨人を討ち尽くせるわけじゃない。
瓦礫の隙間を縫うように、小柄な巨人が後方へと回り込み、続いていた仲間たちに迫っていた。
「……チッ」
振り返った瞬間、その光景を目にした。同期たちが動けずにいる。恐怖に足を縫いつけられている奴もいた。
その中で、ジャンが立ち止まり、焦った目で状況を見ていた。
俺は屋根を蹴り、ジャンの隣に並ぶと短く言い放った。
「お前があいつらの指揮を取れ。俺は前方でなるべく多く仕留める」
「はぁ!? 俺が? お前がやった方が――」
「俺もそこまでガスに余裕があるわけじゃねぇ!」
俺は息を吐き捨てるように遮った。
「正直、目の前の奴らで精一杯だ。だからジャン……お前がやれ」
ジャンは驚いたように目を見開いたが、すぐに歯を食いしばった。
仲間の命がかかっている。その重みを理解している顔だった。
「……クソッ! 分かった! お前は前を抑えろ!」
「任せた」
それだけ言い残し、俺は再びアンカーを放った。鋼線が宙を裂き、視界が揺れる。
背後でジャンの怒声が響いた。
「全員ついてこい! 俺の指示に従え!」
その声に押され、動けなかった仲間たちが一斉に走り出す。
……悪くねぇ。あいつは口だけの男じゃない。戦場でこそ光る奴だ。
俺は視線を前に戻し、次の巨人に刃を振り下ろした。
──────
補給所前――。
俺は立体機動で飛び込み、周囲に群がる巨人のうなじを次々と斬り裂いていた。
巨人の巨体が崩れ落ちるたび、地面が揺れる。だが、終わりは見えない。数を減らしても、次から次へと現れる。
(……キリがねぇ。それでも、後方に道を作るしかない)
振り返ると、ジャンたちが補給所の窓を割り、仲間を引き連れて中へ突入していくのが見えた。
その瞬間、胸の奥に少しだけ安堵が広がる。――だが、油断はできない。
巨人がまた一体、俺の前に足を踏み出した。歯を剥き出しにし、唾液を垂らしながら近づいてくる。
俺は刃を握り直し、低く息を吐いた。
「……こっから先は通さねぇ」
ワイヤーを撃ち込み、巨人の背を駆け上がる。うなじを斬り裂くと蒸気が噴き出し、視界が白く霞んだ。
その間隙を突き、さらに二体目へ飛び移る。刃は鈍ってきていたが、迷いはなかった。
背後からは同期たちの声がかすかに届く。
「中に入れたぞ!」
「早く来い!」
俺は短く息を吐き、周囲の巨人を最後に数体仕留めると、補給所の窓際に着地した。
割れた窓から中を覗くと、仲間たちの姿が見える。荒い息を吐きながらも、互いに声を掛け合っていた。
(……間に合ったな)
刃を払って血を飛ばし、俺も補給所の中へ飛び込んだ。
ようやく、戦場の只中から一息抜ける瞬間だった。
補給所に入った瞬間、空気は重く張り詰めていた。血と汗の匂い、仲間の荒い息遣い――それらが狭い空間に充満している。俺が瓦礫を跨いで入ると、すぐにアニとクリスタが駆け寄ってきた。
「無茶したね」
アニは淡々とした声で言いながらも、視線の奥にわずかな驚きがあった。
「怪我してない?」
クリスタは煤だらけの顔で、それでも俺を気遣うように覗き込んでくる。
「……別に。これくらい――」
そう返そうとした瞬間、耳をつんざく轟音が響いた。
壁が崩れる音だ。
補給所の外壁が粉砕され、瓦礫が飛び散る。光を背にした影がのぞき込んできた。巨人だ。
「クソッ……!」
誰かが叫び、あたりは一気に混乱する。叫び声、刃を抜く音、後退する足音が交錯する。
俺は即座に立体機動装置に手をかけた。
「下がってろ」
そう言い残し、前に出る。狭い空間での討伐は危険だが、ためらっている暇はない。
巨人が口を開け、補給所内に手を伸ばそうとした瞬間――
轟、と鈍い衝撃音が響いた。
目の前の巨人が、不意に横から殴り飛ばされる。壁を突き破り、外へと転がっていった。
「……なに?」
誰もが息を呑む。
代わりに立っていたのは――別の巨人だった。
その異様な存在は俺たちに目もくれず、周囲の巨人へ拳を叩き込んでいく。
巨人が、巨人を殴り飛ばしている――。
混乱の中で、誰もが言葉を失った。
俺は刃を構えたまま、その光景をただ見据えていた。
「……なんだ、あれは……」
背後でクリスタが小さく息を呑む気配が伝わってきた。
補給所を満たす恐怖は、別の形へと変わろうとしていた。
――それが、この戦場を大きく動かす異常の始まりだった。
ヒロインは誰がいい?
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クリスタ(ヒストリア)
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アニ
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ペトラ