リビルドワールド もしもアキラに双子が居たら   作:バグキャラ

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基本的に展開は原作準拠で行きますが、もしかしたら独自展開があるかもです。
全体的に会話メインで1万字を目安に投稿していきます。


双子

 2人の少年が、荒れた荒野を歩いている。

 

 元は発展した都市だったのだろうか。少年たちの視界の先には崩壊したビルが数えきれないほどに聳え立っており、地面にはその残骸ともいうべきか、瓦礫が無数に散らばっているのが見て取れる。

 

 茶黒く汚れた衣服を身に纏い、ボロボロの銃と呼べるかも怪しい物を握りしめる2人の周りに人の気配はない。聞こえるのは遠くの方のほうで聞こえる銃声や100年単位で過去を遡った時代で製造された無人兵器の音である。

 

 ここは旧世界の遺跡と呼ばれており、その危険度は2人の所持品から比較すると、まず生きて帰れる保証はない。だがスラム街生まれの2人は成り上がる為に覚悟を持ってここへとやってきていた。

 

「……クソッ、ろくなものがねえな。そっちはどうだ、()()

 

「んーにゃ、こっちも全然。これからどうしよっか……僕たちが入る用のお墓でも掘っとく()()()?」

 

 2人の少年の名前はアキラとソラ。スラム街生まれとしては珍しい双子であった。

 

「命がけでここまで来たっていうのに……もっと奥まで行かないといけないのか」

 

「スラム街にモンスターが来た騒ぎでこの銃を手に入れたのはいいけど、流石に無謀すぎたよねー」

 

「やっぱりソラもそう思うか………」

 

「いやいや……第一ここの遺跡って確か……クズスハラ街遺跡だっけ?僕たちじゃ厳しいって次元じゃないでしょ」

 

「……なら、スラム街に戻るか?銃を持ったガキなんていたらハンター崩れのカモだろうけどな」

 

 ハンター。それは自身の装備を持って旧世界の遺跡へと足を運び、そこから遺物を持ち帰って大金を得る職業のことだった。

 

「まぁそうだろうねー……あら、またまた先客だ。───とは言っても碌なものは持ってないね。今日の成果は死体漁りで堕ちた倫理観を身に付けたくらいかな?」

 

 少年らが歩く先々でたまに見かけるのは、2人と同じく遺跡へとやってきて価値のない命を散らした無謀者か、運悪く命を落とし追いはぎに合ったであろう白骨死体である。

 

「まぁ南無南無する義理もないし、ものだけ漁ってバイバイってことで」

 

「……俺たちも後を追う日が来るかもな」

 

「罰当たりってことで?」

 

「?いや、普通にモンスターに食い殺されるかその辺の強盗にでも殺されるか」

 

「うーん、どっちみち死ぬってことだね」

 

「だな。……それよりもここから動こう。どうせこの辺りにはろくな遺物が…………」

 

「───ん?どうしたのアキ……」

 

 お互いに軽口を話ながら移動していたその時、2人の動きは止まった。

 

 誰もいなかったはずの空間に突如として女性が佇んでいたからだ。

 

『────あなたは、ハンターなの?』

 

 空中へと浮かぶ裸体の女性はそうおもむろに呟く。アキラは彼女を見た瞬間の衝撃で身体を硬直させたが、ソラは違った。

 

「……っアキラ!」

 

 手に持った対人用の拳銃ですぐさま狙いを定め、銃口の先へと女性へと向けると同時に引き金を引いた。

 

「……!ソラ!?一体なにを……」

 

「……マジか。逃げるよ、すぐにっ!」

 

 スラム街生まれの子どもにしては珍しい反射神経であったが、その結果は芳しくない。生まれ持った才能か、スラム街で生き抜くために自然と身に付いた技術かはソラ本人には分からない。だが、それによって女性に向かった銃弾が、彼女を通り抜ける瞬間を見るや否や、すぐさま硬直したアキラの手をとって走り出した。

 

「ちょ、ちょっと待てってソラ!一体どうしたんだよ!」

 

「いいから黙って付いてくる!ほら早く!」

 

 ソラの必死な様子にアキラは疑問を浮かべることをやめて走ることに専念する。つい先程まで歩いていた荒野から道を外れて廃ビルの中へと逃げ込んだ2人は、真っ先に目についた階段を駆け上がり、埃のかぶった無機質な部屋へと潜りこんだ。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

「ぜー……ぜー……ぜ……ふぅ……全く、いきなり走るもんじゃないね」

 

 お互い全速力で走ったが故に、切れた息を整えながら入り口に銃を構えるソラの様子にアキラは疑念の声を口にする。

 

「いきなりどうしたんだよソラ、お前らしくないぞ」

 

「えぇーそこからアキラ?流石にどうかと思うよ」

 

「どうかって……一体なにがだよ」

 

 自身の双子に向けて質問するアキラを呆れた様子で眺めるソラはため息交じりに説明を始めた。

 

「いやいや……だってこんな廃墟に裸の女性だよ?まず間違いなく普通じゃないでしょ」

 

「ま、まぁ確かに……でも普通じゃないって言ったって」

 

「それに僕が銃を撃った時に気づいた?銃弾が通り抜けてたよ……防がれるどころかあの距離で当たりもしないって……まず間違いなく罠じゃん」

 

「……罠?こんな遺跡の中でか?」

 

「こんな遺跡の中だからこそ、だよ。どうやってあの女性が現れたかは分からないけど、それにアキラは動きを止めた。モンスターないしハンターからすれば格好の的じゃん」

 

「……あぁーそういうことか」

 

「うん、多分あそこにあった死体はそれの被害者ってところじゃない?モンスターかハンターかあの女性に殺されたかは知らないけどさ」

 

『───あら?勝手に私のせいにされるだなんて酷いわ』

 

「「……!?」」

 

 ソラの説明に納得した様子のアキラが同じく部屋の入口に銃を構えようとしたその時、再度あの場で聞こえた女性の声が2人の後ろから聞こえてきた。

 

 アキラとソラの間に浮かぶ女性は恐ろしいほどの美貌を持ち、そしてシミ一つない純白の肌を隠すことなく裸体を晒す様子は男子2人の目を引くに十分であるが、当の本人たちはそんな余裕はない。

 

「……っいつの間に!?」

 

「くそっ動くな!それ以上近づくと撃つぞ!」

 

『私はただ話しかけただけよ。そう邪険に扱わないで貰えると助かるわ』

 

「こいつ!……っソラ?」

 

「──無理だアキラ、勝ち目がない」

 

 先程とは違い、先にアキラが銃を構えて裸体の女性へと向けたが、その腕を下ろすかのようにソラが手を添えられており、ソラ自身の表情には諦めの感情が浮かんでいる。

 

「はぁー……せっかく武器という武器も手に入れてここまで来たのにこんなあっけない最後とはね」

 

『あら、やっと話を聞いてもらえるのかしら?』

 

「……話ってなにかな、綺麗な人。殺すのなら、なるべく早く優しくが希望だけど」

 

「おいソラっ!」

 

「いや無理だってアキラ。銃は当たらない、瞬間移動が出来る、そしてここは遺跡の中……流石に詰みだよ」

 

「……っだからって!」

 

 いまだ足掻こうと銃を握りしめるアキラとは対称に、先程とは打って変わって既に諦めた様子のソラは宙へ浮いた女性へと目線を向けた。

 

『大丈夫、2人に危害を加える気はないわ』

 

「いやーそうだと嬉しいんだけどなー……出来ることならこのままお互い見なかったことでお別れできないかな?勿論あなたのことは他の誰に言わないことを誓うよ……ねっ、アキラ」

 

「え、あ、あぁ……」

 

 覚悟が決まったのか、それとも単に吹っ切れただけなのか。悲壮な表情を浮かべたままのソラは裸体の女性へと話しかける。

 

『そうね……なら改めて聞かせて欲しいわ。あなた達2人は私のことがちゃんと見えているの?ここがどこかわかる?名前はなに?』

 

「……そんなに一度に聞かれると答えずらいなー。ついでに何か服を着てくれるとありがたいんだけど」

 

「確かに……せめて何か羽織るくらいはできないか?」

 

裸体の女性から迫られるように質問を受けたソラは、どこか気まずそうに目をそらしながら答える。それはアキラも同様であり、わずかに頬が染まっている様子が見て取れる。

 

『あら、そう?確かに聞こえているみたいだし、それでいいわ。それに貴方もさっきクズスハラ遺跡って口にしてたみたいだから、そこについても理解できていると判断させてもらうわ』

 

 そう言って裸体の女性が答えた直後、突如として身体のラインが浮き出た近未来的なドレスを纏った服がその体に現れた。

 

『私はアルファ。よろしくね』

 

「……アルファさんか、こちらこそよろしく。僕の名前はソラで」

 

「俺がアキラだ」

 

『アキラにソラね、覚えたわ。それで、あなた達はハンターってことで良いのかしら?』

 

「んー……僕たちはハンターかって聞かれたら、はいと答えたいところだけど……今のところただの死体漁りしか成果がないね」

 

「ん?あぁ、おれとソラは今日が実質ハンター歴一日目だからな。一応はハンターってことでいいんじゃないか?」

 

「いやー流石に無理があるでしょ。そんな実力も装備もないし」

 

「…………それもそうか」

 

『そうね、その点については聞かなかったことにしておくわ』

 

 なにか言いたげのアキラをよそに、ソラは残りわずかな余生で疑問を解消すべくアルファへと質問を投げた。

 

「えっと……色々と質問させてもらってもいいかな?」

 

『勿論よソラ。私に答えられる範囲であればなんでも答えるわ』

 

「なら、そのお言葉に甘えて。……初めに聞きたいんだけど、アルファさんは僕たち2人を殺しに来たってわけじゃない……よね?」

 

『そうよ』

 

「そりゃ良かった。えっと……次にアルファさんについてなんだけど───お化けだったりする?身体が透けてるし……」

 

「そうだ、それが一番大事だな……あんたは一体何なんだ?幽霊……とか」

 

『ふふっ、違うわアキラ、ソラ。あなた達2人が見ている私は拡張現実の一種。いわゆる旧世界の技術と呼ばれているものの成果よ』

 

「……拡張……現実?ソラは聞いたことがあるか?」

 

「いや、僕にもさっぱり。お化けじゃなってことだけしか理解できないね」

 

『仕組みとしてはあなた達2人の脳が眼と耳から得た情報を処理する過程に外部から更に情報を送りこむことで私が認識できているってこと』

 

「うーん……全く理解できないな」

 

「そうだね……旧世界の技術っていくと意外にも納得できそうだったけど」

 

『簡単に言えば私の姿は2人にしか見えないってことだけを理解してもらえたらいいわ』

 

「……ふーん」

 

『あら、アキラはあんまり驚かないのかしら?』

 

「……ん?いや、ただ単に現実が理解できていないだけだ。こういうことはソラの方が得意だろ?」

 

「いきなりこっちに投げないでよ全く……まぁ、とりあえずアルファさんは僕たちにしか見えなくて。なおかつ敵意がないってことでいいのかな?」

 

『そう捉えてもらって良いわ』

 

「おっけー、とりあえずは安心したよ。正直さっきから、いつ殺されるのか内心びくびくしてたからね」

 

『私のことを信じてくれないのね』

 

「いやいや……そんなことはないんだけどさ。こう……なんというか、僕とアキラってさ。スラム街……えっとスラム街ってわかるかな?都市の周りにあるような廃墟みたいな場所で生まれ育ってきたからさ。こういった場面に慣れてないんだ」

 

「……そうだな。いつだって騙され、搾取されてきたんだ。こういった話ですら常に疑ってきたから、その……気を悪くしたのなら、謝る」

 

 ソラの言葉に続けてアキラも銃を腰に仕舞って、話に加わる。

 

『そうだったのね、私は気にしてないわ』

 

「えっと……それで、さっき言ってたアルファさんの話ってのは一体?」

 

「……確かに、すっかり忘れてた」

 

『そうね、なら本題にはいりましょうか。───あなた達2人をハンターと見込んで依頼したいことがあるの』

 

「………依頼?」

 

「…………俺たちにか……?」

 

 怪しい。アキラはアルファの言葉に疑問を浮かべ、ソラは疑いの目線を向ける。

 

『そう、依頼よ。あなた達2人にはとある遺跡の攻略をして欲しいの』

 

「遺跡の攻略……か」

 

「アルファさん質問。その遺跡ってこんな銃一丁だけ持ったスラムの子どもが攻略できる難易度?」

 

『アルファでいいわよソラ。その質問にはそうね……正直いって無理よ。2人が1万回挑戦できたとしても最低100万回は死ぬわ』

 

「ひゃ、100万回って……」

 

「桁が増えてるんだけど」

 

『現代と比較しても超が3個も4個も付くレベルで難易度が高い遺跡よ』

 

「……いやいや無理だろ」

 

「アキラに同じく」

 

『────だけど』

 

「「……?」」

 

『その遺跡の攻略に関する報酬としてあなた達2人をサポートするわ。だから、その超がつく遺跡でも必ず攻略できる。そして遺跡が攻略できた暁には、非常に高額で売れる旧世界の遺物を2人に進呈するわよ。どうかしら?」

 

「きゅ、旧世界の遺物だと!?」

 

「それに高価で売れる……か」

 

『どう?依頼を受ける気になった?』

 

 本題を話し終えたアルファがその美貌で優しく微笑みかけ、2人からの返答を待つ。その様子にアキラとソラはお互いに顔を合わせて、頷いた。

 

「……そのー悪いんだけさアルファさん」

 

「あぁ、アルファの依頼については断るよ」

 

『……二人とも?』

 

「いやーその……アルファさんの提案はすごい魅力的なんだけどね」

 

「あぁ、ソラの言う通りだ。アルファの提案を聞いて、俺たちがどうしてここに来たのか分かったんだ」

 

『……なにかしら?』

 

「───俺とソラは今まで何度も騙されて踏みにじられてきたんだ」

 

「そうそう……美味しいものが食べられるよーとか徒党にいれてやるよーとか…………思い出しただけでも散々だったね」

 

「そんな言葉に釣られては裏切られ、騙され、なにかも失ったんだ」

 

「……残ったのは大事な兄弟だけ」

 

「だからもう……俺たちは踏みにじられない。そのためにハンターになったんだ、2人で成り上がって、そして……もう奪われないために」

 

 アキラはそう言い切り、ソラもまた同意を示している。が、それに対しアルファはどこか狼狽えたような、慌てたような表情である。

 

『……はっきり言って今、あなた達は幸運を使い果たしたといっても過言ではないわ。こんなにおいしい依頼を受けられるなんてそれこそ今後不幸しか訪れないと断言できるほどによ』

 

「いやーアキラは前から運が悪かったけど、ついは僕の運も使い切ったかー」

 

「俺たちは覚悟を持ってこの遺跡に来たんだ。そこで死ぬなら俺たちの幸運はそこまでだったってことだろ。……そもそもだ。アルファの依頼は他のハンターでもいいんじゃないか?」

 

「そうだね。自分たちで言うのもなんだけど、正直僕達以上に強いハンターなんて数えきれられないくらいにはいるでしょ。わざわざアルファさんが僕達に提案する理由が分からない」

 

『前提としてそのハンターたちの大半は私のことを認識することすら出来ないのよ。割合で言うとソラが言った強いハンターの内の99.9%はこの提案自体をすることすら無理ね』

 

「んー……とは言ってもね」

 

「あぁ、流石に怪しすぎる」

 

『それと、さっき2人にいった幸運っていうのは私も含まれているのよ』

 

「……なんでアルファも含まれるんだ?」

 

『それだけ私を認識できる人が少ないからよ。それこそ私を認識できるハンターがここに2人、それも双子で訪れたことは私にとって何よりの幸運なの。この機会を逃したら私は最低でも次の機会を100年単位で待たないといけないわ』

 

「……そんなにか」

 

「……アルファさんのことを悪く言うわけじゃないんだけど、必ずって言葉自体が詐欺師が使うような言葉って認識だし……第一そのサポート自体がどんなものなのかも分からない」

 

『なら、契約してみない?そしたら必ずって言葉の意味をすぐに実感できるサポートを2人にお届け出来るわ』

 

「…………どうするアキラ?ここまで言われると断るのも申し訳なくなってきたんだけど」

 

「……ソラはどうなんだ?多分俺が決めるよりもソラが決めたほうが良いほうに向かうと思う。俺は運がないからな」

 

「ちょうどいま僕もその運を使い切ったってアルファさんに言われたとこなんだけど」

 

 アルファとの契約に関する判断をアキラから投げやりに託されたソラは、スラム生まれであるが故に少ない知識を用いて必死に組み立てて行き、一つの提案を思いついた。

 

「……それならさ。アルファさん、提案があるんだけど」

 

『何かしら?契約に関することなら前向きに聞かせてもらうわ』

 

「勿論その契約についてだよ。………途中でアキラは文句言わないでよ?アキラが僕に任せたんだから」

 

「当たり前だ。ソラのことなら信頼できる」

 

「ふふっ、ありがとアキラ。僕もアキラを信頼してるよ。───それでアルファさんに提案なんだけど、そのサポートってやつのお試しみたいなのはできないかな?いわゆるアルファさんとの契約での参考にしたいんだ」

 

『お試し期間ね……いい提案だわ。私との契約で得られるサポートを2人に体験させればいいのよね?』

 

「そうだね。────そしてアキラと僕がアルファさんを信用できると判断したなら契約するって形でいいかな?」

 

『良いわよ』

 

「……追加の要求だ。俺とソラ、どっちかが怪しいと感じたらその時点で終了だ」

 

「えー……アキラは文句言わないって言ったじゃん」

 

「これぐらいはいいだろ」

 

『もちろん良いわよアキラ。大切な契約の前だからね、お互いに疑ってこそ信用が生まれて、信頼も出来るというものよ』

 

「まぁアルファさんが良いっていうならいっか」

 

『でも、私からの要求をさせて』

 

「……わかった。流石にこっちから押し付けすぎは対等じゃないからね。でも流石に無茶ぶりだけは遠慮させてもらうよ?」

 

『心配しなくていいわ。私からの要求はたった一つ……と言うよりは約束事ね───私の指示には必ず従うこと。これだけよ』

 

「どうしよう、すっごい不安」

 

「安心しろソラ。俺もだ」

 

『でないといくら私のサポートがあっても2人が死ぬわよ?』

 

「わかった」

 

「……分かった」

 

 従わないと死ぬという言葉に2人は間を置かずに答えた。

 

『よし……それならまずは私のサポートを体験させるためにもここから出ないとね。ここから下を見て貰える?』

 

 アキラとソラ、両方の承諾を得られたアルファは直後、姿を消すと部屋の窓側へと移動していた。その指示に疑問を浮かべつつもお互いは頷きあってアルファの下へと移動する。既にガラスの無いただの窓枠から顔を覗かせた2人は、驚愕の表情を浮かべた。

 

「……うわっ、なにあれ……?」

 

「……スラムに入ってきた狼と似ているな。いや、でもなんだあの背中に生えている銃みたいなのは」

 

 2人の視線の先に居るのは、複数の銃身を兼ね備えた武器を背から生やした狼の群れがいた。

 

『おそらくさっきソラが私に向けて銃を撃った際の音に釣られてきたモンスターね。今の時代ではウェポンドックと呼ばれているわ』

 

「……あー、その。あの時はすいません……」

 

『気にしなくていいわよソラ。銃弾も当たってないし、なにより私のサポートを見せるにはちょうどいい相手よ』

 

「……まさか倒すのか?あのモンスターをこの銃で?」

 

『流石にそれは無理ね。なによりその銃は対人用よ、その辺のモンスターに向けたところでアキラが死ぬのがオチだわ』

 

「なら……どうするんだ?」

 

『このビルから出るためにはあの群れの中を突っ切ってもらう必要があるわね』

 

「……マジ?」

 

『えぇ、マジよ。さっき私から逃げた時と同じくらいの速度で走れば十分だわ』

 

「いやいや、普通にあの背中の銃で撃たれておしまいな気がするんだが」

 

『そこで私のサポートがあるのよ。さっき2人に教えたでしょ?私を認識できている理由が、外部から情報を送り込んでいることって。それをあのモンスターたちにも同じことをするの』

 

「……ん?なら僕たちがアルファさんが認識できているのは、なんでだ?モンスターにできて僕達以外のハンターには認識できない理由が分からない」

 

『それを説明するにはまた長い説明が必要だから、後でいいかしら?とりあえずあのモンスターを私が引き付けるって思ってくれたらいいわ』

 

「いわゆる囮ってやつか」

 

「……確かにアルファさんは身体が透けてるんだし、これ以上ないほどに適任だね」

 

『なら決まりね。ひとまず下へ降りましょうか。あまり音は立てないようにね』

 

 その言葉にアキラとソラは静かに頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2人が逃げ込んだ廃ビルの一階へと移動した一同は、身を隠しながら静かにウェポンドックの様子を伺っている。

 

「……すごいねアキラ。本当に銃火器が背中から生えてるよ」

 

「本当に生物かアレ」

 

『あれを2人が喰らったら木っ端微塵ね』

 

「そうならない為にも自慢のサポートをお願いするよアルファさん」

 

「……具体的にはどうするんだ?ただ闇雲に突っ走ればいいのか?」

 

『そこは適宜指示を出すからそれにしたがってくれればいいわ。まずは私があのモンスターたちの行動パターンを把握して個体の差異まで完璧に分析するの。そして2人が飛び出した後に、私が囮になって援護する』

 

「ま、なるようなれば良いよ」

 

「あぁ、タイミングが来たら行ってくれ。覚悟は決めた」

 

 指示に従うと言った以上は反論するつもりはない。ひとまず2人は覚悟を決めた。

 

『気合十分でなによりね。ではカウントするわ、0になったら飛び出して』

 

「「了解」」

 

『始めるわ。……10……9……8……7……6……」

  

走るのに邪魔な銃はズボンの腰へと仕舞い込み、静かにアルファのカウントダウンを待った。

 

『……5……4……3……2』

 

 2人の心臓はカウントと共に加速していく。もしかしたら飛び出した瞬間に死ぬかもしれない。走る最中に転んでモンスターの餌食になるかもしれない。そんな想像をするだけで脚がすくみそうだった。

 

 だが、アルファのサポートを受けると2人で決めたのだ。なら、それに従うだけだ。

 

 どんな結果になったとしても

 

『……1……0!』

 

「「……!」」

 

 アルファの掛け声と共に飛び出した2人は一目散に荒野を走り抜けていく。それに気づいたモンスターもまた彼らを追いかけるべく動きだすが、突如としてモンスターたちの目の前に女性が立ちはだかった。

 

『こっちよ。可愛いオオカミさん』

 

 自身の瞳に映るアルファを認識したウェポンドックは、自身の背中に備えた銃火器の砲火を上げた。モンスターの群れによって生み出された凄まじい密度の弾幕は、視界に映るアルファを完全に捉えており、そのまま攻撃の餌食に────なることはなく、そのままアルファを通り抜けて辺りの荒野へと着弾していった。

 

 その様子にアルファは変わらず、モンスターたちの前へと立ちふさがって注目を引くために荒野を舞っている。モンスターたちは絶えず銃弾をアルファへと浴びせ続けるが、その一発たりもと当たりはしない。

 

 そしてアルファがモンスターの注意を引くこと約数秒。彼女に迫る弾丸は止まり、乾いた機械の音だけが場に残った。

 

『ふふっ、もう弾切れかしら?あっけないものね』

 

 そうモンスターを煽るように言葉を吐くアルファの下へ突如爆発音が響き渡った。

 

『!───来たわね』

 

 その爆発は、弾を打ち切ったウェポンドックもろとも吹き飛ばし、残ったのは荒れた大地と肉塊だけである。

 

 突如として現れたモンスターは少し前に見たウェポンドッグに似た外見をしているが、その背中からはウェポンドックとは比較にならないほどに巨大な大砲を生やしている。狼の部分は群れを作っていたウェポンドッグ達とは異なり、4本以上の脚を備えており、それぞれの位置は非対称である。全体的に(いびつ)であり、機能美に正面から喧嘩を売っている姿をしていた。

 

 その歪さはモンスターの頭部にまで及んでおり、眼球は右に2つで左に1つ。それでいて左の眼球はこれ以上ないほどに肥大化して、まずまともな視界は見えていないようであった。

 

 下顎も大きく割れており、口の中に備えた舌が大きく垂れて悪臭を放っている。

 

『あなたには悪いけど、私の為の踏み台になってもらうわ』

 

 そんな異形ともいえるモンスターに対しアルファは笑顔でそう言い放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2人が逃げ込んだビルから走りだしてから約十数秒。お互いは死に物狂いで脚を動かしていた。

 

「……なんかひと際デカい音が聞こえたんだけど、振り返ったらマズいやつだよね!」

 

「まず間違いなく死ぬだろうなっ!気になるなら後ろを振り返ってみてもいいぞソラ、俺はゴメンだがなっ!」

 

「僕だって嫌だよ!それよりアルファさんは!?消えたって訳じゃないよね!?」

 

『もちろんここに居るわ』

 

「うわっ!?いきなり目の前に出ないでよ!びっくりしてコケそうだったじゃん!」

 

『転んだら死ぬだけよソラ。それよりも次の指示を出すわ、アキラも聞いてね』

 

「あっはい」

 

「なんだ?」

 

『細かい指示だけど、従ってくれたら死ぬことはないわ。もし少しでも戸惑ったりでもした……』

 

「従う!従いますから指示を下さい!」

 

「なんでもするから早くサポートとやらをやってくれ!」

 

『やる気十分ね。それならいくわよ、死にたくないなら死ぬ気で付いてきなさい!』

 

 死ぬ気で走りながらもそう答えたアキラとソラの様子に満足したアルファは細かく指示を出し始めた。

 

『次のビルを左折して壁を背にして3秒数えて!そして来た道を戻って5秒走る!走り終えたらすぐそばの瓦礫に身を隠して7秒たったら横にビルに逃げ込んで!』

 

 アキラとソラが全速力で駆けては止まってを繰り返し。逃げ込む先々がいまだ正体を確認できていないモンスターの攻撃によって粉々になっていく様子に走馬灯を感じながらも、ただひたすらに指示に従っていた。

 

「ヤッバすぎ!走馬灯見るの何回目だよもう!」

 

「俺は4回だ!ソラは──」

 

「奇遇だね!僕も4回!アルファさん、次は!?」

 

『次は銃を構えてカウントしたら全弾撃ち切って。もちろん2人ともよ』

 

「わかりましたー!アキラ、準備はいい!?」

 

「勿論だ!こんな銃で撃つ意味はあるのか知らねえがなっ!」

 

 爆発音が響き渡る中で廃ビルの2階に隠れた2人は、腰にしまった銃を取り出して冷静に構える。ソラの持つ銃は既に使ってしまったことで残り僅かな弾薬しかないが、それでもアルファの指示に従って機会を待つ。

 

『準備はいいかしら?』

 

「あぁ、ソラは?」

 

「こっちもいけるよ。何をするのか分からないけど、さっさと終わらせようよ」

 

「だな。アルファ、カウントを頼む」

 

『任せなさい。私がカウント始めたらすぐにここから移動して反対側のビルへと向かって。0になったらぶっ放しなさい』

 

「おーけーアルファさん」

 

 そうして、アルファのカウントが始まり、再度2人は駆けだした。爆炎が上る荒野を一目散に走っていく。飛散する瓦礫が走る体へと当たってなんども転びそうになるが、隣を走る兄弟の手によって支えられて建て直した。

 

 彼らはいつも、2人で生きてきた。

 

『5……!4……!3……!2……!1……0!』

 

 0のカウントと共にビルへと向かっていた道の真ん中で武器を構えて引き金を引いた。

 

 直後、彼らの銃の射線上に割り込むようにして現れたのは巨大な瞳であった。

 

「……おわぁ!?」

 

「なんだよコイツっ!」

 

 そう驚愕の声を上げながらも引き金を引く手は止めない。銃のスライドが後退するまで打ち続けて、そして引き金を引いても銃弾が出ないことを確認したその時、その瞳の主であったモンスターは大きな悲鳴と共に地面へと倒れ伏した。

 

「……でっか。こんなの倒したの?この銃で?」

 

「………信じられないな」

 

『2人ともお疲れ様。よくやったわね』

 

「アルファさんか……ありがとうって言いたいところだけど、流石にちょっと休ませて……しんどすぎる……」

 

「アルファのサポートがどれだけすごいのかはとりあえず分かったから……きゅ、休憩を……」

 

『ならせめてあのビルに移動しなさい。こんな屋外の真ん中で座り込んでいては、とても目立つわ』

 

「アルファさんほどじゃないよ」

 

「だな」

 

『軽口を叩ける程度にはまだ余裕があるってことね。どうかしら?もう一回サポートを体験してみる?』

 

「「 むり 」」

 

『なら立なさい』

 

「了解……はぁ、よっこいしょっと。アキラもほら、手」

 

「あぁ……悪い」

 

 そうして2人は手を取りながら廃ビルの中へと移動して、その階段上で腰を下ろした。

 

『さて、どうだったかしら?銃とも怪しいそれであのモンスターを倒せるようにしたのは、もちろん私のサポートがあってものよ。───そう、私のおかげよ!』

 

 息を整える2人の目の前でそう自信満々の表情で語るアルファに、アキラとソラは目線を向ける。

 

『どう?私のサポートを体験した気持ちは?あんなにすごいサポートを体験したんだから、もう契約したくなったんじゃない?あら、なにかしらその表情は。もっと感謝だってしてくれてもいいのよ?』

 

「……その、なんだ」

 

「アキラの言いたいことはわかるよ。正直その自慢が無かったら契約したかも」

 

『そう恥ずかしがらなくてもいいわ。そうね、今はお礼の一つ程度で満足してあげるわよ?』

 

 2人はお互いに顔を向けて、頷いた。

 

「「……ありがとうございました」」

 

『あのサポートは、契約の中でもほんの一部よ。どうかしら、契約してみる?』

 

「……もうちょっとだけ考えさせてもらうよ」

 

「…………その辺はソラに任せた」

 

『ふふっ、その時を楽しみにしているわ』

 

 いくつもの廃ビルが荒野の瓦礫の仲間入りを果たしたその場所で、お互いはただその存在について考えつつ、ため息を吐いた。

 

 

 

 

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