リビルドワールド もしもアキラに双子が居たら 作:バグキャラ
「いやー、意外と高く売れたね。あの遺物」
「あぁ……1万オーラム行けば良い方だとは考えていたが、まさか5万オーラムまでいくとはな」
『おそらく需要と供給なのよ。あの種類の遺物が余り数が無かったと言ったとこかしら』
前日に買い取りに出していた遺物の鑑定が終わり、ホクホク顔で歩くアキラとソラはハンター用品を扱うよろず屋、カートリッジフリークへと向かいながら会話を弾ませていた。
「へぇー、遺物にも需要とかあるんだ?」
「旧世界の物だろ?希少価値ってのはあるんだろうけど、使いたいやつとか居るのか?」
『おそらくは旧世界の遺物を解析して現代技術に取り入れたいのよ』
アルファの説明に2人は興味深そうに耳を傾ける。
『2人が買い取りに出した遺物がどのような物だったか覚えてる?』
「んー……なんというか、こう………部品の集まりみたいな?」
「あぁ、何かの機械だってのは分かるが、どんな物に使われていたのかは検討が付かないな」
『そう、何に利用されていたかは分からないけど、何かの機械。つまり旧世界で使われていた機械ってことなのよ』
「つまりその遺物を分解して何かしらを調べるってことか?」
「あー……使うわけじゃないんだ」
『旧世界の技術は現代の技術を発展させるより旧世界の遺物から手に入れるのが早いわ。おそらく高値で売れたのは昨日持ち込んだ遺物が珍しい機械だったり、もしくはあまり数が持ち込まれてない遺物だったってところかしら?』
「……なるほど」
「へぇー納得した。……なら今後はそういったことも考えながら遺物を集めたほうがいいのか?」
『そこはあまり気にしなくていいと思うわ。私も遺物のだいたいの相場は把握できて来たけど、その需要までは分からないから。今回は
「運がよかった……か。シェリルに手を貸したことが早速効果出てきたね」
「あぁ、幸運を分け与えた甲斐があったな」
アルファの運が良かったという言葉に2人は更に気分を良くしながらカートリッジフリークへと足を運んだ。
クガマヤマ都市の下位区画に位置するカートリッジフリーク。シズカの経営するハンター向けの用品を取り扱うよろず屋で店長のシズカは2人のハンターと会話を弾ませていた。
「その話はもう何度も聞いたわ。今ので五回目よ?」
「そうだっけ?」
「謎の人物に助けられたんでしょ?」
「そうよシズカ。お礼も言いたいし何か手掛かりとかないかしら……」
「姿の声も見せなかったってことはそういうことじゃないのかしら?」
「でもそれじゃあ私たちとしても────」
店の外からでも聞こえる声に対し、アキラとソラはどことなく入るのを躊躇い、入り口へ立っていた。
「……なんか先客がいるみたいだけど?」
「……まぁ気にすることはないだろ。入るぞ」
会話が聞こえてくる店内に2人はそのままドアに手を掛け、取り付けられた鈴を鳴らしながら入っていった。
「あら、いらっしゃいアキラ、ソラ」
「どうも」
「こんにちわー」
入ってすぐ目に入ったことで挨拶をするシズカとその他2人の女性を目にした2人は気にすることなく返事を返した。
「あー……すいません。なにか取り込み中でしたか?」
「間が悪いようでしたら出直しますけど……」
2人の入店と共に弾んでいた会話が止まったことでどこか居心地の悪いように感じたアキラとソラはそう言葉を返した。
「あら、ごめんなさいね。この2人は常連だから気にしなくていいわ」
「ん……?」
『……どこかで見たような……?』
『2人とも忘れたの?』
店長のシズカに促されるようにしてカウンターを占領していた女性の2人は横へズレるようにしてアキラとソラのスペースを開けた。
「エレナ、サラ。いい機会だから紹介しておくわ。この2人はアキラとソラ。同じハンターよ」
「……あっ、初めまして。アキラと言います」
「僕はソラです、一応2人でハンターをやっています」
カウンターに付くと同時にシズカから女性2人の紹介をされて、アキラとソラはその言葉に応じるようにして言葉を返した。
「私はエレナ。こっちはサラよ」
「あなた達と同じく2人でハンターをやっているわ、よろしくね」
お互いの簡単の自己紹介を終えた2人にシズカが更に踏み込んだ。
「熟練のハンターとして2人からアキラとソラに何か教えてあげたら?」
「シズカ、それさっきの話から言うこと?」
「それも若いハンターからしてみれば立派な教示よ?」
「私たちは若くないって言いたいのかしら?」
「あら、そう聞こえたかしら?」
揶揄うようにして話すシズカにエレナとサラは苦笑いを浮かべながらもアキラとソラに向き合った。
「そうね……私たちもハンター歴としては長いつもりだけど、最近ドジってね?」
「ちょっと死にかけたのよ。どんなに注意してもハンターは死ぬときは死ぬ……だからあなた達も気を付けてね」
「わかりました……気を付けます」
「はい、大切なことですもんね」
「じゃあ私たちはもうそろそろ行くわね」
「えぇ、またの御来店を」
『……あっ!』
そうしてエレナとサラはカートリッジフリークを去った後、ソラは突如として念話で声をあげた。
『どうしたソラ?』
『思い出したよアキラ!さっきの2人、この前助けた人じゃない!?』
『あ……あー!そういえば、あんな感じだったな』
『……本当に忘れていたのね二人とも』
驚くようにして2人はエレナとサラが出ていった後のドアを振り返って以前に助けた女性ハンターのことを思い出した。
『……バレなかったよな?』
『……多分』
『2人とも元気そうだったし、助けた甲斐があったわね?』
『……まぁ』
『……そうだね』
「ふふっ、そんなにエレナとサラのことが気になるのかしら?」
2人揃って後ろを振り向く様子にシズカが声を掛けた。
「……えっ───あぁ、いや!その……女性ハンターというのが少し珍しいなと思いまして……」
「僕たちもハンター歴は短いものでして……それこそこの前ハンターランク10になったばかりなんですよ」
「ああ見えてエレナとサラもクガマヤマ都市では熟練のハンターと言っていい実力の持ち主よ」
「そうなんですね。……あ、そうでした。シズカさん、また弾薬をお願いしてもいいですか?」
「あとついでに銃器の整備ツールの消耗品もお願いします」
「いつものでいいかしら?」
「はい───あ、弾薬はいつもより少し多めにお願いしていいですか?」
「あら、いいの?」
「はい……少し前に買い取りに出していた遺物が予想より多めの査定額が出たので、どうせならと思いまして」
先程受け取ったばかりの遺物の買い取り額の値段をカウンターに出して、シズカに要望の品を伝えていく。
それに応えるようにしてシズカもまたカウンターの隣の棚から2人がいつも購入していく品───AAH対応の弾薬や整備ツールに入っている詰め替え用のオイルなどを揃えていく。
「……すいません。買うのが弾薬ばかりで」
「もう少し稼げたらいいんですけど、僕たちの実力だとちょっと……」
「焦らなくていいわよ2人とも。下手に稼ごうとせずにまずは生きて帰ることが大事よ」
その言葉と共に用意された品を受け取った2人は代金を支払い、カウンターに置かれた物をリュックサックへと入れていく。
「……ん、こっちはちょっと入りそうにないな。ソラ、そっちに入らないか?」
「えー、アキラはもう少しリュックの中を綺麗にしたら?AAHのマガジンとか綺麗に揃えたらもっと入るでしょ」
「ソラは逆に綺麗にしすぎじゃないか?どうせ走ったりしたらリュックの中身が混ざるだろ」
「混ざらないように綺麗にするんだよ……ほら、一回全部出したら?───あー、その……シズカさん、少しだけカウンターを借りてもいいですか?」
「えぇ、もちろん。もしものことがあるし、日頃から整理整頓は大事よ」
「ありがとうございます───ほら、シズカさんこう言ってるんだし、ほら僕も手伝うから」
「……悪いな」
「そう思ってるなら早く済ませるよ」
そうして急遽ソラの指導の下、アキラのリュックの中身の整理整頓が始まった。
「……ほら、AAHのマガジンはここに並べて詰めて、その隣にさっき貰った銃弾の箱を入れて……」
「……こうか?」
「うん。そしてらここの収納にはノートを入れて、こっちの収納には回復薬を入れて……」
「すこし詰めすぎじゃないか?もう少し余裕があったほうが───」
「そしたら集めた遺物を上に入れられるし、何かあったときもすぐに取り出せるじゃん」
「……あー……そういうことか」
「…………」
バッグの中身の回復薬や筆記用具を出しては入れてを繰り返し、シズカがカウンター越しに見守れながら進めた作業は短時間で終えた。
「よし、これでいいね」
「几帳面すぎるんじゃないか?」
「僕たちは小さいリュックしか持ってないから少しは工夫しないと……」
「…………」
「あ、あの……シズカさん?」
「何かありましたか……?」
2人の作業を……否、2人の表情を興味深く見ていたシズカにアキラとソラは疑問に思い、声を掛けた。
「……ねぇアキラ、ソラ。どうしてエレナ達を助けたのを黙ってたの?」
「……!?」
「……え」
すると、返ってきた言葉に2人は僅かに身体を硬直させてしまう。
「あ、あのー……言っている意味が良く分からないんですけど……」
「助けた……というのは?」
「2人にも何か事情があるのは分かるわ。でもその事情が信用とか報復とかのものであれば、エレナとサラは信用できる人物であることは私が保証できるわよ」
「……えっと……」
「その……ですね」
「ハンター稼業を続けていくなら今後常に危険が付き纏うもの。でも、その中でお互いに信用できるハンターが見つけられるのは貴重なことだと思うわ」
『な、なんでバレた……?』
『さっき振り返っただけでバレるのは流石にないはず……』
アキラとソラの返す言葉とシズカの話す言葉が上手く嚙み合わないことに2人は汗を流し、表情を硬くした。
「私の店で販売している弾薬の薬莢は製造番号が記されていてね?何か問題があったときに、それを照会するんだけど……」
「弾薬……ですか?」
「……っ」
「ソラは気づいたかしら?エレナと一緒に渡した手紙と弾丸」
「……あ」
「───いやいや、別に僕たちも遺跡で銃を撃ちますし……たまたま落とした物を誰かが使ったんじゃないですか?」
「ふふっ、そうかもしれないわね」
既に手遅れであろうとソラは何とか誤魔化そうと言葉を紡ぐが、微笑むシズカを前に余計な一言だったかと思ってしまう。
「それにエレナに渡した手紙……あれはここで買ったノートでしょ?」
「……いやー……ノートなんてどこでも売ってるじゃないですか?僕たちが買ったノートだなんてそんな……」
「さっきアキラのリュックの中身を整理していた時に一度だしたノートは一ページだけ破れていたのよね?丈夫な紙質だからそう簡単には破れないんじゃないかしら?」
「……えっと……そのですね?」
「それに回復薬のボトルもそう。エレナが一度私に見せてきたんだけど、旧世界製の回復薬だったわ。この辺りで使われている回復薬って大体は企業が作製したものを使っている人が多いんだけど、2人は同じのを使っているのね」
「…………あー」
「……どうしようアキラ」
明確な証拠が3つも並べられては否定のしようがなく、アキラとソラは諦めたように口を開いた。
「……その、黙っていてもらえませんか?」
「あの人達にはあんまり知られたくなくて……」
シズカの推測に白状するように項垂れる2人を前に突如として笑い出す。
「やっぱりアキラとソラだったのね。少し確証が無かったからカマをかけてみたのだけれど」
「────え……は、え!?」
「さっきの話は⁉弾薬とか回復薬とか……」
「製造番号は本当だけど、ノートや回復薬もあくまで私の推測よ。完全な証拠にはまだほど遠いわ」
してやられたという表情でシズカを見る2人に本人は続けるように話す。
「ごめんなさいね。このことを黙っているのは約束するわ」
「……まぁ、話さないのであれば一応は……」
「……本当に言わないでくださいね?」
「勿論よ。でも、事情を話すのであればなるべく早くが良いと思うわ────あの2人……というよりサラがね?助けられたというのがとても嬉しかったのか、何度もこの話をするのよ。それこそアキラとソラがここに来る直前にも同じ話をしていて」
2人の耳元で他者に聞かれないように話すシズカにアキラとソラもまた顔を近づけた。
「話を聞くたびにその内容が変わっていてね?年齢も性別も分からないはずなのに彼とか言い出し始めちゃって……サラは乙女だから、そのうちどこかの富豪や大企業の御曹司やご子息が趣味でハンターをやってて、偶然自分たちを助け出したとか言い出しかねないわよ」
「…………」
「…………」
シズカの推測に2人は顔を見合わせて数秒、頷いてシズカに向き直った。
「シズカさん、絶対に言わないでください……」
「……むしろ変な感じで推測してくれた方がバレにくいってのもありますし……」
「分かったわ。でもサラの感じを見るに、多分時間で解決できるような問題じゃないと思うからそこは注意してね?」
笑みを浮かべるシズカにアキラとソラは苦笑いを浮かべながら店を後にした。
クズスハラ街遺跡近くの荒野。剥き出しの岩肌を感じさせる地面の上で、2人はAAHを構えながらその引き金を引いていた。
「……すまんソラ!撃ち漏らした!」
「大丈夫アキラ!こっちで行ける!」
2人はお互いに背を預けて、周囲から絶え間なく遅い掛かるウェポンドッグに向けて銃口から弾を撃ちだしていた。
常に背後を狙うウェポンドッグに2人は死角を無くすように位置を調整しながら、的確にその急所を狙っていく。
既にアキラとソラの周りには多くのウェポンドッグの死体が視界に映し出されているが、2人の死体は映し出されていない。
「────────」
「……え、マジかよ!?」
「あれも来るの!?」
モンスターの群れに対処が慣れてきたところで突如として大きな雄叫びと共に荒野の向こうから大きな影が見えてきた。
いつの日か見た変異した巨大なウェポンドッグ。左右不揃いの脚と肥大化した瞳。割れた顎から垂れ下がる大きな舌が2人へと向けられていた。
「……いや、行ける。僕が脚を狙うから」
「あぁ、俺が仕留める」
幸いにもアキラとソラを狙うウェポンドッグの群れは先程撃ち殺した個体で最後だ。周囲に警戒する必要はなく、落ち着いて変異個体のウェポンドッグへと対処へ移った。
「…………」
「…………」
距離はまだある。だが、その巨体が疾走したときのことを考えると、その猶予はあまり残されていない。
2人は落ち着いてAAHの銃口を狙い定めた。銃口から伸びる弾道予測線がこちらへ向かってくるウェポンドッグの脚部へと向けられた。
数瞬、ソラの撃ちだした数発の弾丸が左右不揃いの脚へと着弾した。膝から先を失ったウェポンドッグは支えを無くしたことで体勢を崩し、胴体から大きな音を立てて荒野へと倒れ伏した。
「───アキラ」
「あぁ」
動きながらも正確に脚を撃ち抜いたソラから声が掛かった。動きは止めた───ならば次はアキラの番であった。
「…………」
アキラの構えるAAHの銃口から伸びる弾道予測線もまたウェポンドッグの頭部───否、肥大化した瞳を狙い定めていた。
相手に猶予は与えない。そう言わんばかりの表情でアキラは引き金を引いた。放たれた数発の弾丸はこちらを向くウェポンドッグの瞳に吸い込まれるようにして着弾すると、そのまま瞳を潰してその奥の小さな脳へと達し、その巨大な身体を動かす司令部を破壊すると共にその者を絶命させた。
「……よし」
「勝てたね」
その2人の言葉と共に辺りにまき散らされたウェポンドッグの血や肉片が姿を消した。目の前の巨大な肉塊もまた端から背景へと溶けるように姿を消していく。
『お疲れ様2人とも。良い結果だったわ』
血と肉で覆われた荒野がまるで何事もなかったかのように元に戻ると、1人の美女が姿を現した。そのまま2人の下に近づいてくると、アキラとソラもまたその美女に応えた。
「……いやー、案外なんとかなるもんだね」
「今日は一度も死ななかったな」
『えぇ、初めての群れの交戦で初めて訓練で一度も敵に近寄らせずに仕留めた───訓練の成果は実感出来てきたかしら?』
「映像相手だけど何とかやっていけそうって思ったかな?」
「少し無駄弾が多かったようにも思ったけど、まぁそこは今後の訓練次第ってところか」
そんな他愛ない会話をアルファとする中で突如として、アルファがこの荒野から遠くない遺跡へと目線を向けた。
「……ん?どうしたのアルファさん」
「何かあったか?」
そんな言葉を掛けた直後、遠くから大きな音が聞こえてきた。
「……え、何この音……」
「……デカいな。遺跡の建物が崩れて───」
『アキラ、ソラ!すぐに遺跡に向かって、早く!』
「「……!」」
その音の正体に推測を立てる2人にアルファが慌てたよう様子で声を掛けると、アキラとソラもまたその言葉に従うようにして地面のリュックサックを手に取り、走り始めた。
『状況を簡潔に話すわ───遺跡の中でトレーラーがモンスターの群れに襲われているの』
『も、モンスターの群れ!?』
『ちょ、ちょっと待ってくれ……なんで遺跡の方に向かうんだ?』
『そうだよ!逃げる方向は逆じゃない!?』
走りながらの会話は息が切れやすくなるために念話での会話へと移行した2人は、今の状況をアルファから聞いて驚きの声をあげた。
『残念ながら既に2人もモンスターの群れに補足されているの。開けた場所で戦っても勝ち目はないわ』
『まじかよ』
『遺跡の中でやり過ごすってのは?』
『その手もあるけど、しくじったらAATを2丁持っただけのハンター2人でモンスターの群れと戦う羽目になるわよ』
『ならその逃げてるトレーラーの人と合流して戦わないといけないのか』
『トレーラーの人たちが死んだら次は僕たちの番って訳か……お願いだから僕たちが付くまで死なないでね!』
『俺たちの運はどこにいったんだよ……シェリルを助けたことで運が少しは戻ってきたんじゃないのか!?』
『その運は今朝の買い取り額で使い切ったわ』
『無くなるの早すぎ!』
そんな話をしながら遺跡がすぐそこまで見えてきたところで、モンスターの群れから溢れた個体がアキラとソラを視界に収めた。
『ちょ、ちょっと気づかれたっぽいよ!?』
『このまま進んで大丈夫なのか?』
『大丈夫、このまま真っすぐ走りなさい!移動経路はその時に指示するわ』
『今のうちに回復薬でも飲んでおいたほうがいいかな?走るだけで結構しんどいんだけど』
『そうね、体力を消耗した状態で戦っても勝率が下がるだけだわ』
『休憩なんか取れそうにないな』
『訓練直後に実践かー……死ぬかも』
『死ななかった時と同じように動けばいいのよ。来るわ、構えて』
走りながらお互いのバッグに手を突っ込むと、取り出しやすい位置に収納しておいた回復薬のボトルを取り出し、中身の錠剤をそのまま口の中へと放り込んだ。
2人はAAHを構え、目の前を走ってくるモンスターへと銃口を向けた。既に視界でのサポートはされており、撃破優先度の高いモンスターが強調して表示されている。
「俺が4番と5番をやる」
「なら僕は1,2、3番だね」
滑るようにして腰を落とし、弾道予測戦をモンスターの頭部へと定めて2人は引き金を引いた。
落ち着いた銃撃は走ってきたばかりの2人の息を切らしながらもモンスターの弱点へと命中し、肉塊へと変えた。
『……よし』
『なんとか当たったね』
『訓練の成果が出ているわね』
『こんな緊迫した状況で体感したくなかった!』
『トレーラーの人たちはどうしてる?』
『遺跡の路地に追いつめられているわ。運悪く倒壊したビルが道を塞いでいるみたい』
『可哀そうに……僕たちの不運が見知らぬ人にまで影響してる』
『なら急ぐぞ!2人であれだけの量は流石に無理だ!』
そのままアキラとソラは肉塊と化したモンスターをその場に残して遺跡へと向かっていった。
崩れたビルに行く手を遮られたトレーラーの銃座と瓦礫にて銃を構える者がモンスターの群れに銃弾をまき散らして応戦を続けていた。
『ぎりぎりセーフ!』
『いえ、もうすぐトレーラーの機銃の弾が切れるわ。すぐに応戦して』
『全然セーフじゃない!』
立往生したトレーラーの隣のビルにたどり着いたアキラとソラは、即座にビルの窓枠から顔を乗り出して、モンスターに立ち向かう2人を援護する形で銃撃を始めた。
トレーラーの横で応戦する人物に飛び掛かろうとしていたモンスターはいの一番に撃ち抜かれ、続く2体目、3体目もまた着弾と同時に血しぶきを上げていった。
『いくら何でも多すぎるでしょ!?』
『こんなのに襲われるところだったのか!』
『まだその可能性は消えていないわ。あのトレーラーの機銃が頼りだから、援護の手を緩めてはだめよ』
『もちろん!』
『多めに弾を買っておいてよかったよ!』
先程と同様、視界に表示されるモンスターとその弱点を的確に狙い撃っていくアキラとソラにトレーラーで応戦していた者たちが声をあげた。
「援護がきた!緊急依頼の成果が出たなカツラギ!」
「こっちも機銃の再装填が完了だダリス!運がようやく向いてきた!」
2人の援護と機銃の弾薬補充を終えたことでトレーラー一帯に銃弾の音が辺りに広がり、その弾幕を濃くしていく。
追い詰められたこの状況が、逆にモンスターの進行方向を制限したことで効率よくモンスターを蹴散らしていき、大きな騒ぎと共に向かってくるモンスターを殲滅するに至った。
『お、終わった……?』
『もう居ないよね?』
『大丈夫、索敵範囲内にモンスターはいないわ。頑張ったわねアキラ、ソラ』
『僕たちこそお礼を言うべきだよ。アルファさんのサポートが無かったら今頃は───』
『あぁ、アルファが居なかったら俺たち2人はあいつらの腹の中だ。助かった』
『……どうするアキラ?一応トレーラーの人たちに応戦したわけだし声だけでも掛けとく?』
『……そうだな。変に勘繰られるのも嫌だしな』
そうして2人はトレーラーの前で一息つく者たちの下へと向かっていった。
6軸、計12輪のタイヤを備えた大型のトレーラーの下へ向かった2人は、大柄な人物と入れ墨の目立つハンターから声を掛けられた。
「助かったぜ、緊急依頼のハンターか?」
「(子どもだと……?あの射撃の腕と判断力から相当なものだった……義体者か?)」
「緊急依頼?何それ」
「俺たちも襲われて逃げてきたんだ。他に戦っているやつがいるみたいだったから応戦して良かったよ」
「……あ、本当だ。情報端末に緊急依頼ってやつが届いてる」
「そうか、お前たちもか。お互いついていなかったな!」
『まぁこっちは彼らの巻き添えになっただけだけどね』
『でも応戦しないと僕たちもやばかったしお互い様ってやつだよ』
『あぁ、トレーラーの機銃が無いと危ないところだったからな』
「俺はカツラギだ」
「ダリスだ、さっきは危ないところを助けられたな。ありがとう」
「俺たちはこのトレーラーで商売をしていてな。店舗と倉庫を兼ねていて、仕入れから丁度都市へと戻る予定だったんだ」
手を差し出して自己紹介をする2人にアキラとソラもまた応じる。
「俺はアキラだ」
「僕はソラ。一応2人でハンターをやってるんだ」
「ハンターになり立てだがな」
「お、ハンターならお客さんじゃないか!何かの縁だ、何か買うなら安くしておくぜ?」
そういって自己紹介と共に手を差し出して握手を交わす4人。カツラギの高笑いだけが目立つようにしてそのままアキラとソラの背を強く叩いていた。
「そうだアキラ、ソラ。俺たちはこれからクガマヤマ都市へと向かうんだが、乗せていこうか?」
「あぁ、こんな状況の後なんだ。遺跡探索する気にはなれないだろ?」
「……え、いいの!?」
『アルファ、今日はもう帰ろう。いや、絶対帰る。決まりだ、今日は帰るぞ』
『わかったわ。帰りましょう』
ソラの驚きの声とアキラの必死な声にアルファもまた了承し、カツラギに返事をする。
「よし、なら頼む」
「お安い御用だ。ほら、乗ってくれ」
「やったー!乗り物に乗るなんて初めて!」
アルファの言葉とカツラギの言葉と共に飛び乗るようにして足場に脚を掛けて、飛び乗るソラの後に続くようにアキラもまたトレーラーへと乗り込んだ。
「そうか、お前たちは車に乗った事すらないのか」
「腕の立つハンターは自前の車を持っているもんだ。お前たちもいずれ買う機会があるだろうな」
「なら頑張って成り上がらないとね。車かー……何オーラムくらいあればいいんだろ?」
「とにかく稼いでいくしかないな。大丈夫だカツラギ、全員乗ったぞ」
「よし、出発だ!」
そうして4人と1人が乗り込んだトレーラーは、運転するカツラギの高笑いと共に辺りに散らばったモンスターの肉塊を引き散らしながら遺跡を後にした。
ストック分が無くなったので、また頑張って書き溜めてから投稿します。